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シリアでの過激派組織「イスラム国」(ISIS)による日本人人質殺害事件以降、
アメリカのCIAやイギリスのMI6に匹敵する対外諜報機関を求める声が与党内などで高まっている。
自民党のプロジェクトチーム(PT)は4日、対外諜報機関の新設を検討する議論を開始した。
ロイターなどの海外メディアも、日本の「インテリジェンス(諜報活動)」を巡る動きに注目している。
◆“普通の国”になるために不可欠
ロイターは、「戦後、連合国が旧日本軍の諜報機関を解体してから70年が過ぎようとしている。
日本の与党議員たちは今、英国のMI6などをモデルにした対外諜報機関の設立を目指している」と記す。
自民党のPTは、今後MI6などを視察した後、秋までに提言をまとめたいとしている。
また、PTの座長を務める岩屋毅衆院議員は、もし政府が新しい諜報機関が必要だと判断すれば、
来年にも法案が制定されるかもしれないと、ロイターのインタビューに答えている。
拓殖大学海外事情研究所の川上高司教授は、「日本が“普通の国”になるためには、諜報機関の存在は重要だ」とコメント。
ロイターはこうした考え方を、「新たな対外諜報機関は、安倍首相が作り上げようとしている安全保障の枠組に不可欠なものとなる」とまとめている。
最諜報能力強化を目指す最近の日本の動きを、安倍首相が掲げる「戦後レジームからの脱却」の一つとして捉えているようだ。
◆5機関の「縄張り争い」
米ニュースサイト『Value Walk』も、日本の対外諜報機関に関する特集を組んでいる。
戦前、冷戦時代、冷戦後の状況を網羅し、現在は「警察庁」「公安調査庁」「防衛省情報本部」
「外務省」「内閣情報調査室」にそれぞれ、5つの諜報部門が併存していると解説している。
そして、「各々が直接首相官邸に報告を上げている」と、非効率ぶりを指摘。
これらを一つにまとめ、分析する機関がないことを問題視している。
5つの機関の「縄張り争い」も問題視されている。
ロイターは、「日本の既存の諜報部門には計4000人が所属しているが、
異なった大臣の元に分散し、官僚主義的な縦割りによって情報の共有が妨げられている」と記す。
『Value Walk』も、
「冷戦終結から四半世紀経ったというのに、日本はいまだに変化し続ける世界情勢に合わないヴィンテージなシステムに頼っている」と皮肉を込めている。
『Value Walk』は、「日本の諜報システムの弱点」が露呈した例として、1996年のペルー大使公邸人質事件などを挙げている。
同事件では、マルクス主義を掲げる極左テロ集団に首都リマの日本大使公邸が占拠され、大使ら24人の日本人が人質となった。
同メディアはその中で、
「外務大臣が現地に飛んだが、初期の基本的な情報をカナダ大使から教えてもらわなければならず、初動の遅れにつながった」というエピソードを強調している。
◆9条は秘密諜報活動を禁じるものではないが・・・
「市民の反対」も、もう一つの障害として挙げられている。
ロイターは、昨年12月に施行された特定秘密保護法制定の際に、市民やマスメディアの大きな反対があったことを挙げている。
また、米ニュースサイト『インターナショナル・ビジネス・タイムズ』は、その際、
安倍首相は「(日本人の)生命を守るため、情報がテロリストの手に渡るのを防がなければならない。
生命と財産を保証するためにも、特定秘密保護法をできるだけ早く制定しなければならない」などと反論したことを紹介している。
ロイターは、新しい諜報機関の設立は、旧日本軍の特務機関や特高警察など
「シビリアンコントロールを外れて暗躍した戦時中の諜報機関の記憶を(一般市民)に呼び起こすかもしれない」としている。
『Value Walk』もこの件に触れ、「憲法9条は秘密諜報活動を禁じるものではないにも関わらず、大衆の目には諜報機関と軍国主義が深く結びついている」と記す。
また、仮に諜報機関の設立が決まっても、CIAやMI6のように機能するようになるまでには何十年もかかるというのが、各メディアや識者の共通した見方だ。
先の拓殖大学の川上教授は、既存の機関の統合、エージェントの増員、情報の集約といったプロセスだけでも、米英レベルに達するまでに「最低30年はかかる」と指摘。
ロイターは併せて、警察庁が新機関の主導権を握るのが「合理的」だが、
「外務省と公安調査庁はそれを好ましく思わないだろう」という識者の見解を載せている。
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