15/02/28 11:18:07.45 *
URLリンク(toyokeizai.net)
抜粋
事故から半年以上が過ぎて、「日本では毎時0.23マイクロシーベルト以下におさえるという基準が示された」という事実。
感じた不安や怒りをあえて書かずに読者の想像に委ねようとする姿勢が、本書では貫かれている。
わたしが最初に想像してしまったように、「放射線の影響=生物の体への直接的な影響」というイメージを持つ人は少なくないと思う。
しかし現時点では、人が住まなくなったことによる自然環境の変化が、生物に多くの影響を与えているようだ。
たとえば、放射線量の高い地域でモンシロチョウが姿を消したことが紹介されている。それはモンシロチョウの幼虫が食べているアブラナ科の植物が、
人がいなくなって草刈や畑での耕作をしなくなったために背丈の高い草に覆われてしまったことが原因のひとつだと考えられる。
また、何百年にもわたって守り継がれてきた田畑は、わずか数年で外来の植物に覆いつくされてしまった。
こうした「身の回りのあたりまえの自然」は、その価値が見過ごされがちであることを、改めて思い知らされる。
“地域で動植物を調べている人々を動かしている原動力は、慣れ親しんだ土地の自然が大好きで、
それが今後も失われずにあってほしい、という愛着です。それだけに、原発事故で野山を歩くこともできなくなり、
外来種がはびこり、草が生いしげった田畑や水路を見なければならないのは、非常につらいことだろうと思います。”
里山や田畑、水路、草原などが入り混じった環境は複合生態系と言われ、じつは原生的な自然よりも生物の多様性に富んでいる場合がある。
しかしそれは人の手が入って初めて成り立つものであり、田んぼに水がはられないことによって、水を必要とするカエルが減った。
カエルが減ることによって、それを餌としていた生物たちも、いずれは姿を消すかもしれない
本書で唯一、奇形について触れているのは、ヤマトシジミという小型のチョウだ。琉球大学の研究者が原発事故後の5月に、
事故現場周辺で100匹以上のヤマトシジミを採集して調べた結果、野外で採集したチョウに、目がくぼんだり脚が変形するなどの異常が見つかった。
放射線の影響を受けていない沖縄のヤマトシジミに放射性物質を含んだ餌を与えて飼育したものにも、異常が見つかった
昆虫と人間とでは、体の大きさも違えば、世代交代のスピードも違う。食べものを選べない野生生物は人間とは異なり、
放射性物質に汚染された餌を食べ続けている。昆虫や動物に起きた変化を、短絡的に人間にあてはめることはできない。それでも……。
“大切なのは「大丈夫ですか」とたずねることではなく、自分で考えること。事故がおこってしまった東北地方で、多くの人びとは、
これからもくらしてゆくことを、考えぬいた末に選びました。そのためにも、自然界の異変にはしっかりと目を向けてゆかなければなりません。”