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資本主義経済の下では貧富の格差が拡大を続ける宿命にあるのか。
フランスの経済学者、トマ・ピケティ氏が著書「21世紀の資本」で提唱した理論を巡り、世界で活発な論議が巻き起こっている。
「ピケティ現象」とも言われるブームに火が付いたのは、一握りの経営者の巨額報酬など
格差問題が深刻化した米国だ。分厚い学術書にもかかわらず、世界で100万部のベストセラーとなった。
欧米を中心に200年以上の税務統計を分析したところ、株式や不動産などの資産から得られる利益の伸びが、
賃金上昇率を上回っていたことが分かったという。
ピケティ氏はこうしたデータを根拠に、将来にわたって資産家への富の集中が続き、貧富の差は拡大していくと結論付けた。
確かに、著書に掲載された多くの図表からは、不平等が広がっていく傾向が見て取れる。
経済発展とともに格差は解消するという、経済学で主流の説を覆す内容が、学界をはじめ各方面に一石を投じた意義は大きい。
一方で、自説を裏付けるために都合のいいデータを選んでいる、といった指摘もされている。
資本主義国で格差が際限なく広がるメカニズムの論理的な説明はできるのか。他の指標を用いても同じ結論が得られるのか。
企業や個人の自由な行動と公正な競争を重んじる資本主義経済の在り方に関わる問題提起だけに、多角的な検証が求められよう。
ピケティ氏の主張で疑問なのは、格差解消の処方箋として、富裕層に対する世界的な資産課税強化を提唱していることである。
税負担の軽い国や地域に資産が逃避するのを防ぐ狙いだろうが、各国が一斉に増税で歩調を合わせることは、
政治的にも実務的にも、ほとんど不可能だ。
そもそも、報酬が従業員の数百倍の経営者も珍しくない米国より日本の格差は小さいなど、
国によって状況は大きく異なる。税制を同列に論じるのは無理がある。
富裕層に重税を課すことは、働く意欲をそぎ、成長を鈍化させる要因になりかねない。
ピケティ説に乗じ、過剰な所得再分配を求める声が、日本でも強まってきたのは気がかりだ。
成長の恩恵を受ける富裕層と、取り残される低・中間所得層という単純な図式を掲げ、
バラマキ策を唱えるのは無責任だ。教育や職業訓練の充実など、努力すれば所得を向上できる機会を広げる政策にこそ、力を注ぐべきである。