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病気になっても治療代が払えず、病院窓口で払う自己負担分の治療代を無料にしたり
安くしたりする病院にかけこむ人がいる。普通の診療とはちがう「無料低額診療」という仕組みだ。
患者数は年間で延べ700万人を超え、ここ数年で延べ100万人近く増えた。
年をとって病気になったり失業で収入が途絶えたりして、医療を受けにくくなった人たちが増えている。
■月3万円払えず倒れた
大阪市に住む元タクシー運転手(58)は、血液のがんの一種である悪性リンパ腫と糖尿病
で二つの病院に通う。どちらの病院も無料低額診療をしていて、窓口で払う自己負担分をただにしてもらっている。
2011年春、糖尿病が悪化して倒れた。少し前から営業成績が落ちて給料が減ったため、
自己負担で月約3万円の治療代が重荷になり、治療のためのインスリン注射を減らしたからだ。心配した病院から無料低額診療をすすめられた。
その後にリンパ腫で手術し、今年1月には仕事をやめざるを得なかった。3月には妻(52)もパート先の
食品工場が移転して解雇され、夫婦で月に合わせて約20万円の収入は途絶えた。
元運転手はずっと公的医療保険の協会けんぽに入って保険料を納め、失業後も国民健康保険に
入っているため、治療代の7割は保険から出る。だが、病気で収入が減り、
自己負担の3割分が払えない。妻も高コレステロールで月に1回、無料低額診療を受けている。
元運転手が通う西淀病院(大阪市)では、11年から無料低額診療を始めた。
13年度には、生活保護を受けている人を除くと、年間で延べ約6200人が無料低額診療を受けたという。
人事・総務部長の山本嘉子さんは「高齢化や非正規労働者の増加で格差が広がり、
普通に生活していても大病で医療費が払えなくなる人が増えている」と話す。
日本では、公的医療保険から治療代の多くが出る「国民皆保険」の仕組みがあり、
窓口で払う自己負担は比較的安く済む。だが、自己負担分を払えず、国民皆保険の恩恵を受けられない人が増えている。
全国の年間患者数は全体で延べ10億人近い。厚生労働省の調べでは、
このうち無料低額診療は12年度に延べ約706万人いて、09年度より延べ約90万人増えた。無料低額診療をする医療機関も339施設から558施設に増えた。
本来は生活が改善するまで利用する診療だが、生活が苦しいまま生活保護を受けた人も多い。
西淀病院によると、治療代を払えずに無料低額診療を受けてから生活保護になり、
そのまま通い続ける人も多いという。生活保護は国と自治体が自己負担分も含めて治療代を出し、すべて税金でまかなわれる。(松浦新)
■住居転々、無保険に
大阪市の西淀病院には、収入が減ってかけこんでくる人のほかに、そもそも公的医療保険にも入っていない
「無保険」の人が訪れる。保険がないので普通の診療を受けられず、とりあえず治療代の自己負担分をただにしたり安くしたりする無料低額診療を受けるためだ。
この9月、患者にアドバイスなどをする相談員の辰巳徳子さんは、40歳代の男性の相談を受けた。会社勤めだというが、保険に入っていなかった。
8年ほど前まで国民健康保険(国保)に入っていた。だが、引っ越した際に住民票を移さず、
新しい住所で保険に入り直す手続きもしなかった。自ら保険を手放してしまったのだ。
URLリンク(www.asahi.com)
病院代の自己負担払えぬ人急増 年延べ700万人が減免