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[東京 21日 ロイター] - 福井県立大学の服部茂幸教授は、アベノミクスで円安・株高が進んだが、
輸出は伸びず輸入コストの上昇が実質賃金の目減りにつながったと指摘した。
また、現状の為替水準は相当な円安で、多くの企業経営者はさらなる円安を望んでおらず、
日銀の追加緩和で企業出身の委員らが反対に回ったのが象徴的だと述べた。
株高の恩恵は日米同様に国民全般に均てん(トリクルダウン)しておらず、
アベノミクスに評価できる点は少ないと語った。
服部教授(訂正)によると、製造業の空洞化などで、円安になっても輸出が回復しにくい構造になっており、
アベノミクスは「政策以前に診断が間違っていた」と批判する。1997年の消費税増税時と比べ、
今年4月以降の消費の落ち込みは大きく、実質所得の落ち込みが大きいのが原因と指摘する。
金融緩和は「財政ファイナンス(財政の穴埋め)として財政を支えるため、ある程度必要」としつつも、
長期金利がすでに史上最低水準にあるため、日銀による国債買い入れをこれ以上拡大しても
効果は少ないとした。ただ、質への投資で国債需要が高まっていることから「長期金利が急上昇するリスクは少ない」とみる。
服部教授は今年8月に著書「アベノミクスの終焉」を出版し、反アベノミクスの立場を鮮明にしている。
主なやり取りは次の通り。
─アベノミクスをどう評価するか。
「円安となり株が上がっただけで、あまり評価する点がない。第2の矢である財政政策の効果は認める。
金融緩和は財政ファイナンスとして財政政策を支えるためにある程度は必要としても、これほどの金融緩和は必要ない」
「アベノミクスの2大目標である円安による輸出拡大と、実質賃金の引き上げは、ともに失敗している」
─輸出はなぜ伸びない。
「輸出が伸びないのは円高が理由ではなく、空洞化や新興国のキャッチアップなどが問題とわかった。そもそも政策に取り掛かる前の診断の段階で、誤診があった」
─実質賃金はなぜ下がるのか。
「実質賃金は下がり続けているように思われているが、民主党政権時代にさほど下がっていなかった。
大きく下がり始めたのが、安倍政権の特徴。消費税増税前からマイナスが拡大しており、
消費増税だけが原因ではない。日銀の金融緩和による物価上昇もその1つの要因」
「今年の消費税増税を景気腰折れの要因とみる向きが多いが、総務省の調査によると1997年の増税時よりも、
4月以降の家計調査における消費支出の前年比下落幅が圧倒的に大きい。消費増税は2次的な問題で、重要なのは賃金と所得の実質での低下だ」
「実質賃金を上げるには、名目賃金の引き上げが必要。企業の責任を追及する方向もあるが、政府が解決できる問題なのかというレベルから考える必要がある」
「2013年度の成長率は表面的には上昇したが、消費税引き上げ前の駆け込み需要と政府支出だけ。
それがなくなると今のようなマイナス成長になるのは、想定外でもなんでもない」
─アベノミクスによる円安をどうみるか
「いくら金融緩和しても、無限に円安が進むことはない。ドル/円JPY=EBSが120円に近づいているが130円、140円になるとは考えにくい」
「さらなる円安進行が進めば国内産業、中小企業が悲鳴を上げる可能性が高い」
「アベノミクス開始当初は、経団連に加盟しているような大企業は円安を歓迎したが、これ以上はかえって逆効果との声が広がっている。
日銀が10月31日に追加緩和に踏み切った際、反対した審議委員が企業関係者であったのが象徴している」
「購買力平価や実質実効為替レートでみても、相当な円安水準にある」
「多くの輸入企業・内需型にとっては、価格転嫁は難しく円安は原材料価格の上昇。仮に転嫁できたとすれば、消費者にとって実質所得の減少となる」
「長期金利はゼロ以下にはならない。すでにゼロ近辺であり、これ以上の金融緩和は意味がない」
「長期金利が急上昇するリスクは低い。しかし、上がらないのは決してよいことでなく、日本経済が悪いため、
質への逃避で国債需要が高まっているだけ。銀行は貸出より国債運用がよいと思っており、金利は上がらない状況にある」
─金融緩和の恩恵が広く浸透する現象は起きていると思うか。
「今の米国の状況をみれば、トリクルダウンが起きないのは明らか。株価は史上最高値を更新していても、
中間層以下の実質賃金が下がり、オバマ大統領は(中間選挙で)大敗した。アベノミクスでトリクルダウンが起きないのは、決して不思議なことでない」
URLリンク(jp.reuters.com)
ンタビュー:実質賃金目減り、企業は一段の円安望まず=服部教授