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自閉症、腸と脳のつながり明らかに
URLリンク(www.nationalgeographic.co.jp)
ナショナルジオグラフィック Melissa Pandika for OZY November 17, 2014
ストレスが激しい腹痛やけいれん、断続的な痛みといったつらい腹部症状の
原因になることは知られているが、腸の異常は脳にも影響を及ぼす可能性がある。
自閉症が初めて認知されてから約60年。症例数は急速に増え、国連の推定で
は世界で最大7000万人が自閉症スペクトラムに分類されるという。だが、原因
や治療法は未だ解明されていない。
一方、頼もしい手掛かりが腸で見つかっている。これまでの研究により、自
閉症児と健常児では、微生物叢と呼ばれる腸内に生息する膨大な数の微生物に
著しい違いがあることがわかっている。そして今回、カリフォルニア工科大学
で行われた研究の結果、微生物が自閉症の一因となる可能性が初めて明らかと
なった。「Cell」誌に先月掲載された論文によると、試験的なプロバイオティ
クス療法によってマウスの自閉症様行動が軽減し、すでに臨床試験の準備に入
っているという。
現在、自閉症に対しては主に行動療法による治療が行われている。しかし、
今後はプロバイオティクス(ヨーグルトなどに含まれる、生きた“体に良い”
微生物)による治療に取って代わる可能性が出てきた。
自閉症は、コミュニケーション及び社会相互交渉の障害、反復的な行動とい
う3つの基本的特徴を有する一連の疾患を指す。
自閉症を持つ子どもに最も多い健康上の訴えは胃腸障害だ。米国疾病予防管
理センター(CDC)によると、自閉症児が慢性的な下痢や便秘を経験する可能性
は、健常児より3.5倍以上高いという。
これらのヒントに基づき、アリゾナ州立大学の研究者らは、自閉症児と健常
児から採取した便検体に含まれる腸内細菌を分析。その結果、自閉症児の腸内
細菌の種類は極めて乏しく、腸が病原体による攻撃の影響を受けやすくなって
いる可能性が明らかとなった。また別の研究でも、自閉症患者と健常者では腸
内細菌の種類と数が大きく異なることが判明している。
今回は、腸内微生物叢が自閉症の原因かどうかを調べるため、カリフォルニ
ア工科大学の博士研究員エレイン・シャオ(Elaine Hsiao)氏が実験を行った。
妊娠中にインフルエンザにかかった母親から生まれる子どもは自閉症を発症
するリスクが2倍になるという先行研究に基づき、シャオ氏は妊娠中のマウスに
偽ウイルスを注射し、自閉症様症状を呈する仔マウスを出産させた。
その後、仔マウスは“腸管壁浸漏”と呼ばれる症状を示した。腸内細菌によ
って作られた分子が血流に入り、脳に到達する可能性もある状態だ。
それでは、腸内細菌はいかにして行動に影響を及ぼすのだろうか?シャオ氏
がマウスの血液を調べたところ、“自閉症”マウスの血液には腸内細菌が作り
出す4EPSと呼ばれる分子が46倍も多く含まれていた。さらに、健康なマウスに
4EPSを注射すると、不安行動の増加が見られた。自閉症患者では、これと似た
分子が高いレベルで検出されている。
次に、シャオ氏はマウスの胃腸障害に効果が認められているバクテロイデス
・フラジリスを餌に加えた。
5週間後、“自閉症”マウスの腸管壁浸漏は解消し、血中4EPS値も大幅に低下。
腸内微生物叢は健康なマウスの状態に近づき、行動にも改善が見られたという。
しかし、治療を受けたマウスのケージに新しいマウスを移しても相変わらず
相互交渉は見られなかった。
その上、シャオ氏によるとプロバイオティクスは胃腸症状を呈する一部の自
閉症患者にしか効果がない可能性があるという。また、臨床試験が行われない
限り、この結果が人間にも当てはまるのかは不明だ。
とはいえ、ユニバーシティ・カレッジ・コークで解剖学と神経科学の教授を
務めるジョン・クライアン(John Cryan)氏は、自閉症研究者は腸内細菌の重
要性を過小評価すべきでないと指摘する。「我々の腸には、脳を構成する約1キ
ロの神経細胞と同じくらい重要な約1キロもの微生物が生息しているのだから」。