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◆家計への過大な負担は避けよ
さらなる消費増税が、景気の停滞に追い打ちをかけることはないか。
消費税率を予定通り2015年10月に、8%から10%へ引き上げるかどうかを巡って、政府・与党内で論議が活発化している。
財政再建は先送りできない課題だが、今年4月の消費増税後、消費の低迷が続いていることを軽視してはならない。
仮に「消費税10%」に踏み切るのなら、食料品など必需品の税率を低く抑える軽減税率を導入し、家計の負担を和らげるべきだ。
◆迫られる難しい決断
安倍首相は7~9月期の国内総生産(GDP)などの経済指標を確認し、年末までに増税に踏み切るかどうか決める方針だ。
見送った場合、社会保障費の財源確保がさらに厳しくなり、20年度までに基礎的財政収支を黒字化する政府目標の達成も遠のく。
かといって、増税の影響で景気が腰折れし、デフレを脱却できなくなっては、元も子もない。
首相は、「国民の生活に資する判断をしたい」と述べている。景気や財政の状況を総合的に勘案した、難しい決断を迫られよう。
消費税率を10%に上げる場合には、大きな影響を受ける消費の動向に、特段の注意を要する。
代表的な指標である家計調査では、一般世帯の消費支出が4月から5か月連続でマイナスだ。
天候不順もあり、夏のボーナス商戦は低調で、エアコンなど耐久消費財への支出が急減した。増税前の駆け込み需要がほとんど見られなかった旅行などのサー ビス消費も、不調が続いている。
増税後の「反動減」とは別に、消費増税分を含め3%を超える物価上昇率に、収入の伸びが追いついていないことが、消費不振を長引かせている大きな原因だ。
円安で穀物や資源の輸入価格が上昇し、食料品などに値上げの動きも広がってきた。節約による「生活防衛」に動く消費者が、一層増える恐れがある。
政府が消費税8%時に打ち出した5・ 5兆円規模の経済対策は、公共事業が中心で、消費者向けの施策は限られた。低所得者への1万~1・5万円の給付措置も、家計支援としては力不足だった。
政府は、消費が落ち込んだ教訓を踏まえ、「消費不況」の防止に有効な対策を検討すべきだ。
◆対象品目をどう絞るか
軽減税率なら、1回限りの給付金とは違い、負担軽減の効き目は持続する。対象品を購入するたびに軽減措置の恩恵を実感できることから、消費者心理の冷え込みを防ぐ効果も期待できよう。
自民、公明両党は8日の与党税制協議会で、軽減税率に関する本格的な論議を始動させた。
気がかりなのは、昨年末の与党税制改正大綱で、消費税率10%時に軽減税率を導入する方針が明記されたのに、依然として自民党と公明党に温度差があることだ。
公明党の斉藤鉄夫税制調査会長が、「軽減税率導入に不退転の決意で臨む」と積極姿勢を見せるのに対し、自民党の野田毅税調会長は、「これから丁寧に詰めていく」と慎重である。
自民党を支持する中小企業団体などは、事務負担の増加などを懸念して反対している。
確かに、品目によって違う税率が適用されれば、帳簿作りや納税事務の手間は増える。
ただ、欧州諸国の大半は、日本の消費税にあたる付加価値税に軽減税率を導入している。海外の先行事例を研究し、どうすれば民間の事務負担を最小限に抑えられるのか、議論を深めたい。
軽減税率を全ての「飲食料品」に適用すると、税率を1%軽減するごとに、消費税収は年6600億円も減る。対象品目をどう絞り込むかが課題だ。
公明党が、穀物や生鮮食料品に対象を限って、減収額を抑える案を練っている。与党協議で、具体策の検討を急ぐべきだ。
◆新聞と書籍にも配慮を
欧州諸国など軽減税率を採用する国の大半が、食品と並んで新聞や書籍を対象としている。
とりわけ、日本の新聞は戸別配達率が9割以上にのぼり、多くの家庭にほぼ毎日、新聞が届く。これが、民主主義や活字文化を支える大きな役割を果たしている。
書籍も、多様な知識の普及に貢献してきた。
新聞や書籍は、単なる消費財ではなく、豊かな国民生活の維持に欠かせない公共財と言える。
海外の例にならい、日本も新聞や書籍について、軽減税率を適用すべきである。
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