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大学進学率が50%を超え、真理の探究にとりくむ象牙の塔という大学のイメージはすでに過去のものとなった。
今や大学は、そのあたりの民間企業も真っ青な、徹底した経済の論理による支配が強まっている。
しかし、まさかここまで、と関係者を震撼させたのが、最近、文部科学省が国立大学に示した方針だ。
この問題を伝えた数少ない報道である『東京新聞』9月2日付朝刊の
「国立大から文系消える?文科省が改革案を通達」と題された記事ではこう紹介されている。
「文部科学省は先月、同省の審議会『国立大学法人評価委員会』の論議を受け、
国立大の組織改革案として『教員養成系、人文社会科学系の廃止や転換』を各大学に通達した」
通達の文言を素直に読めば、たしかに記事タイトルどおり、文系を廃止して理系への転換を促している
としか読めない。ところが同記事中で文科省担当者は「今回の通達は文系学部の廃止や
理系への転換を提案しているのではない。先に示された役割に基づいて、改革してほしいだけだ」
と語っている。あたかも国の強制ではなく、大学の自主性に委ねているかのようだ。
しかし、担当者の言葉に登場する「先に示された役割」が曲者なのだ。
たとえば、横浜国立大学教授の室井尚氏は自身のブログに「国立大学がいま大変なことになっている」
という記事を投稿(5月15日)。すでに今回の通達が先どりして実質化されている様子を生々しく報告し、一部では話題になっていた。
「昨年度6月に閣議決定された『国立大学改革プラン』に従って、呆れるほどスピーディに
平成25年秋にはほとんど決定された『ミッションの再定義』によって各国立大学や各学部が
目指すべき『ミッション』が、文科省によって一方的に各国立大学に通達された。
『各大学との意見交換によって』と書かれてあるが、実際にはそうではない。文科省からすでに
文言がほとんど書き込まれ、自主的な数値目標だけが空欄になった『ミッション』が一方的に各大学に突きつけられたのである」
「この表の2,3,4には埼玉大学、千葉大学、横浜国立大学と関東一円の地方大学が並んでいるが、
文科省がこれらの大学に求める『ミッション』は共通している。つまりは理工系か医療系に力を注げということだ。
実際、文科省の担当者からは多数の私学がある神奈川県では、教育コストがかからない
文学部系は私学に任せて、理工系に集中させないと税金を投入する意義を問われると
財務省から言われているとの発言があったそうで、その結果ぼくたちが所属している『人間文化課程』は、
実態は全く異なるのに単なる教員養成系の『新課程』と一緒くたにされて
『廃止』と告げられてしまった(リンクの後ろの方に書いてあります。ほんの二行だけ。
これも最初っからこう書き込まれていた)。文科省が国立大学の課程・学科を直接『廃止せよ』と言ったのである。」(上述の室井氏のブログより)
文科省の露骨な指示によって、すでに国立大学での教員養成系、文系の廃止は着実にすすめられているのだ。
福井県でも、県下でたった2つしかない人文社会科学系のひとつである福井大学地域科学課程の廃止
が決定し地元に波紋を広げていると福井新聞が8月6日に伝えているところからも、事態が相当進展していることは間違いない。
「国立大学」は2004年に設置形態が変更され、国立大学法人という独立行政法人となった。
文科省のHPなどには、大学の自主性を高め柔軟な教育研究をすすめるためと謳われているが、
国からの運営費に頼らざるを得ない財政構造になっていることから、結局、国すなわち時の政府の方針に逆らうことができないのが実際だ。
こうした、大学に市場原理が導入されカネをうまない学問を切り捨てていく流れが、いっそう加速しているのには、もちろんあの男の登場が背景にある。
あの男、安倍首相は5月6日のOECD閣僚理事会基調演説でこう語っている。
URLリンク(news.livedoor.com)
国立大学から文系学部が消える!安倍首相と文科省の文化破壊的“大学改革“