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当時、満州国のハルビン特務機関長を務めていた樋口季一郎のところに、
ハルビンのユダヤ人協会会長・カウフマン博士が飛んできて、同胞の窮状を訴えた。
しかし、満州国外務部(外務省)を飛び越えて、独断でユダヤ人を受け入れるのは、
明らかな職務権限逸脱であった。
が、樋口季一郎は自分の判断で、ユダヤ難民全員を受け入れることを認めた。
この樋口季一郎のユダヤ難民保護に対して、案の定、ナチス・ドイツ政府から強硬な抗議が来た。
しかし、彼は人道主義の名のもと、それをきっぱりとはねつけたのであった。
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樋口は、関東軍司令部からの出頭命令を受け、参謀長・東条英機(後の首相)に対して
「ドイツのユダヤ人迫害は人道上の敵とも言うべき国策である、
それに日本と満州が協力するのは由々しき問題である。
日本とドイツの友好親善を望むが、日本はドイツの属国ではない、
また満州も日本の属国ではないと信じて満州国代表部に忠告した。」
と述べた。樋口は、東条の顔を正面から見据えて言った。
「東条参謀長!ヒトラーのおさき棒をかついで、弱い者いじめをすることを、正しいとお思いになりますか」
東条は、ぐっと返事につまり、天井を仰ぐしぐさをしてから、言った。
「樋口君、よく分かった。ちゃんと筋が通っている。私からも中央に対し、この問題は不問に付すように伝えておこう。」
樋口を待っていたのは、「不問」どころか、参謀本部第2部長への栄転だった。
ドイツからの「善処」要求のわずか5ヶ月後に、このような人事を行ったということは、
「人種平等を国是とする我が国はヒトラーのお先棒は担がない」という強烈なメッセージではなかったか。