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9月22日(ブルームバーグ):元日本銀行副総裁の岩田一政日本経済研究センター理事長は、
今の円安は行き過ぎとの見方を示した上で、現在の情勢は、円安が「自国窮乏化」につながり、
景気後退に至った2008年前半に似ていると警鐘を鳴らした。
岩田氏は19日のインタビューで、「日本経済の全体のバランスを見て、ファンダメンタルズに近いレートと言われれば、
1ドル=90-100円ではないか」と指摘。現在の水準は「円安方向にやや行き過ぎになっているのではないか。
経済全体に与える影響もプラスとばかりは言えず、むしろネットでマイナスということもあり得る」と述べた。
19日の東京市場でドル円相場は109円台に乗せ、08年8月以来の水準までドル高円安が進んだ。
日銀の黒田東彦総裁は同日、20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に出席するため
訪れたオーストラリアのケアンズで、「今の動き自体について何か大きな問題があるように思っていない」と述べた。
黒田総裁の円安容認論に対し、同じ元財務官の渡辺博史国際協力銀行(JBIC)総裁が同105円程度だった3日、
「これ以上円安になること自体がどちらかというとマイナスになる産業が増えてきている感じがする」と述べた。
自国窮乏化の先例
岩田氏は「円安が進み、エネルギー価格も上昇ないし高止まりすると、交易条件は大幅に悪化する。
企業の仕入れ価格は大きく上がるが販売価格はあまり上がらず、利潤が圧縮され賃金も抑制される」
と指摘。その上で「実質所得の国外流出が輸出や生産、所得の増加といった効果を上回ると、
経済全体として消費者の効用の水準は低下する」という。
それが実際に起きたのが08年前半。円相場は現在とほぼ同じ100円台後半から110円程度で推移。
円安と原油価格高騰で消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)は上昇を続け、
同年夏に前年比2.4%上昇とピークを付けた。そうした状況下で景気は08年2月に後退局面に入った。
岩田氏は「相対的に拡張的な金融政策と原油高騰の組み合わせで、08年前半は言ってみれば
自国窮乏化の状態にあった。交易条件の悪化は、消費者からすれば産油国から増税されるのと同じだ。
しかも、今年8月の景気動向指数の結果次第で、テクニカルな意味で景気後退と認定される可能性がある点も、
08年前半との類似点の1つだ」という。
その上で、「今は幸い、地政学リスクがあるにもかかわらず、原油価格は落ち着いているので多少は救いだが、
水準としては高いので、自国窮乏化のリスクが徐々に表れている」という。
消費増税はやるしかない
安倍首相は年内に来年10月の消費再増税の是非を決めるが、景気の低迷から延期論も浮上している。
しかし、岩田氏は「今の税・社会保障制度を維持すると、政府債務のGDP比率はどうしても発散する。
そういうことを考えると、やるしかないというのが私の見解だ」と語る。
岩田氏は日本経済は3つのリスクを抱えているという。1つはフィスカル・ドミナンス(財政支配)。
「民間部門が国債をこれ以上買いたくないと思った時、それが始まる。
それまでは中央銀行が長期金利をある程度コントロールできるが、それが外れてしまうと、
デットのダイナミクスが金利を決めていくようになってしまう」という。
次が長期停滞。経済成長は労働投入、資本投入、全要素生産性の3つで成り立っているが、
労働投入は中長期的にマイナス。「資本投入も良くてせいぜいゼロ。全要素生産性が現在の0.7%程度のままだと、
われわれの標準予測では今後50年、平均してゼロ成長が続く」という。
岩田氏は「社会保障制度を改革しなければ、少子高齢化により、働く世代の税と社会保障の負担が増えていく。
働く世代の貯蓄率は下がり、可処分所得は減る。そうすると1人当たりの実質消費水準も下がっていくが、それでもいいのか」と問い掛ける。
URLリンク(www.bloomberg.co.jp)
岩田元日銀副総裁:円安は「自国窮乏化」-08年と類似