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「つまりね、他の人が書かないようなことを盛りこんでおけばいいのよ。
すると地図会社の担当の人は『あの子は文章は書ける』って思ってくれるわけ。
すごく感心してくれたりしてね。仕事をまわしてくれるのよ。
べつにたいしたことじゃなくていいのよ。ちょっとしたことでいいの。
たとえばね、ダムを作るために村がひとつここで沈んだが、
渡り鳥たちは今でもまだその村のことを覚えていて、
季節が来ると鳥たちがその湖の上をいつまでも飛びまわっている光景が見られる、とかね。
そういうエピソードをひとつ入れておくとね、みんなすごく喜ぶのよ。
ほら情景的で情緒的でしょ。普通のアルバイトの子ってそういう工夫をしないのよ、あまり。
だから私けっこういいお金とってるのよ、その原稿書きで」
「でもよくそういうエピソードがみつかるもんだね、うまく」
「そうねえ」と言ってみどりは少し首をひねった。
「見つけようと思えば何とか見つかるものだし、見つからなきゃ害のない程度に作っちゃえばいいのよ」