14/08/27 21:49:51.60 oTjmQT6S0
ずっと忘れられない出来事がある。
今から約20年前、ロンドンからコーチで2時間程度の街にある大学に留学していた。
宿泊はホームステイと寮、どちらも可能だったけれど
自分は必要以上に他人と関わり合うのが苦手だったので寮にした。
10畳ほどの個室でバストレイキッチンは8人で共同、男女混合だったけれど
まあ快適だった。ちなみに自分は女。
大学は恐ろしいほど広く、敷地内に湖だの草原だのがいくつもあった。
洗濯は大学の敷地内(寮からは少し離れている)にコインランドリーがあり
格安(洗濯が当時のレートで1回25円くらい。乾燥も同じくらい。)で使用可能だった。
自分はちゃんとその都度洗剤を持って行っていたけれど、大学生だからいい加減なもので
そこらじゅうに洗剤だの柔軟剤だのが散乱していた。
つまりは日本円で50円程度あれば、大きな洗濯機で乾燥までできる。
洗濯だけなら25円あればOKだった。
本来は大学の学生しか使っちゃいけないものだったけれど、
戸口に鍵があるわけでもなく、24時間使用可能だから
その気になれば外部の人間も使えるものだった。
とはいえ、その街自体は所謂「イギリスの中流の街」という感じで、
地元住民にそんな得体のしれないコインランドリーを使う人なんておらず
そこでは「いかにも学生」という人以外は見かけたことがなかった。
そもそも大学が郊外に位置していて、地元の住宅からも少し距離があった。
昼間は学生で混み込みだったし、うっかり目を放すと綺麗な洋服は盗まれてしまう可能性があったので
あるとき自分は「まあ寮からは少し離れているけれど、大学の敷地内だし、夜中でも(学内に24Hバー等もある)
人通りがゼロってわけじゃないから、まあ大丈夫だろう。」と真夜中に洗濯に向かった。
コインランドリーのドアを開けた瞬間・・・・・・
そこでは10人くらいの子供が(一瞬ではっきりとは分からなかったけれど、2歳~8歳くらいまでのヒスパニック)
せっせと洗濯をしていた・・・・・。
絵本のような非現実的な、不気味な光景に仰天し、ぴしゃっとドアを閉めてそのまま
寮に戻り、誰にもそのことは言わなかった。
多分他にも気が付いている人はいただろうし、もしかしたら大学関係者も知っていたかもしれない。
それ以来決して夜中にコインランドリーにはいかなかった。
あの子たちはどういう事情であそこにいたんだろう。
どこに住んでいたんだろう。
どう見てもまともな教育を受けているようには見えなかった。
自分の目がおかしかったのかもしれない、精神的に疲れていただけかも・・・・と思うこともあったけれど
現代でもこうなら、20年前はもっと酷かっただろうし、あそこで洗濯していた子供たちも
決してまともに外を歩ける環境にはいなかっただろうと思う。
大学進学率が他の先進国に比べて低く、身分制度の名残が強く残るイギリス社会では(無論学校によるけれど)
大学生はある意味特権階級。
その大学のコインランドリーで、真夜中洗濯をする幼児(8歳くらいの子もいたけれど)という光景が
あまりにも奇妙で、多分一生忘れられないと思う。