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朝日新聞が30年前の『誤報』を認めて、関連記事(少なくとも)16本を一括取り消ししたことが話題となっている。
ここではその中身自体には触れないけれども、いわゆる慰安婦問題のきっかけとなった報道だけに、その誤報の生み出した影響は計り知れない。
さて、多くの人は「なぜこのタイミングで訂正したんだろう?」という点にも疑問を持っているようだ。
日韓関係悪化を見るに見かねてか?それとも国民からのプレッシャーに耐えかねてか?実は、単純に社内的な都合によるものだろうというのが筆者の見方だ。
日本の大企業は今でも年功序列制度が根幹にあって、年功の多い人がポストにおさまって組織を動かすことになる。
朝日新聞なんてご多分にもれず超がつくほどコテコテの年功序列組織で、記者として優秀だった人が
45歳前後以降に本社デスクや編集委員や経営陣に昇格していくシステムを今でも堅持し続けている。
こういう組織ではノウハウを蓄積しやすいというメリットがあるが、一方で発想の転換が難しかったり、自浄作用が働きにくかったりというデメリットもある。
たとえば、ある記者がスクープ記事を書いて、その時の上司たちが認めて紙面に載ったとする。
その10年後「あの記事は誤報かもしれない」と社内で噂になったとしても、それを口に出来る者はまずいないはず。
というのも、問題の記者はもちろん、記事を認めた上司たちもみな10年間の年功で上のポストに出世しているはずであり、
「あんたにも責任のある記事が誤報らしいんですけど」なんて誰も言えないからだ。
いや、これがジャーナリズムという共通のモノサシを持っていて、納得できないことがあればばんばん同業他社に転職できるジャーナリストなら文句も言えるだろう。
でも、朝日新聞社の社員はその多くが新卒で入って定年まで勤め上げるサラリーマンである。
社風に染まることはあっても、社風に逆らって泳ぐことなんてハナから期待しないほうがいい。もちろん、本来は権限のある人間が率先して身を正すべきだったが、
年齢的に上がり待ちの彼らもまた、あえて泥をかぶる気にはなれなかったのだろう。
なんとも低レベルな話だと思うかもしれないが、同紙が30年間誤報をほったらかしにしてきた真相は、大方こんなところだろう。
言いだしっぺの記者が今春退職した直後だという事実も、それを裏付けているように見える。30年間やり続けた爆弾リレーがいよいよ爆発したわけで、
まるで30年間の無責任の当事者みたいに見られている現経営陣には、筆者はちょっぴり同情している。
とはいえ、そういう会社で禄を食んできた以上、きっちり責任はとらせるべきだ。
第三者機関を入れて調査報告書を作り、事後処理のめどが立った時点で経営トップが引責辞任するくらいのみそぎは、最低限必要だろう。
それすらやらないようでは、これから朝日が紙面で、企業や政治のいかなる責任を追及しようと、もはやネタにしか見えないだろう。
とりあえず、朝日新聞社に取材されたくないという人は、朝日の記者に何か聞かれたら「30年間誤報をほったらかしにしといて謝罪一つしない朝日新聞にお答えしますが~」
なんて枕詞をつけてみてはどうか。恥ずかしいからきっとボツにしてくれることだろう。
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城繁幸(じょう・しげゆき)
人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。
2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。
06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。
08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。
★1 2014/08/16(土) 17:04
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