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異種交配を妨げる線虫の“キラー精子”
URLリンク(www.nationalgeographic.co.jp)
James Owen for National Geographic News July 30, 2014
他種のオスとの交尾は命懸けだ。少なくとも線虫の場合は。
他種の線虫と交尾したメスがしばしば“キラー精子”に感染し、それが不妊
や早期死亡の原因となることが明らかになった。この新しく発見された現象は、
ある生物種と別の種とがどのようにして異なった存在であり続けるのかとい
う進化の謎を解明するヒントとなるかもしれない。
腐りかけの果物や野菜で生きるカエノラブディティス属(Caenorhabditis)
の線虫を、異種交配させる実験が行われた。研究チームはこの透明な虫が交尾
するとき何が起こるのかを蛍光色素を用いて観察したところ、異種の精子がメ
スの子宮を突破し、早期に卵を受精させ、卵巣を破壊することを発見した。
いくつかのケースでは、精子が線虫の体内深くにまで侵入し、致命傷を負わ
せることもあった。異種交配後生き残ったメスはしばしば不妊となり、同種と
の交配ができなくなった。
「不妊の発生率は、交配させる種の組み合わせに強く依存することが分かった」
とトロント大学で生態学・進化生物学の教授を務める共著者のアッシャー・
カッター(Asher Cutter)氏は電子メールで述べている。
最も極端な例はC.ブリグサエ(C. briggsae)をC.ニゴニ(C. nigoni)のオ
スと掛け合わせた場合の不適合で、95%のメスが不妊になるという研究結果が
出ている。
◆精子戦争
なぜ馴染みのない線虫の精子がこのような害をもたらすのかは、まだよく分
かっていないとカッター氏は続ける。
ひとつの可能性としては、精液または精子自身に、本来なら精子をメスの生
殖輸管内に留めておく筋細胞を弛緩させる化合物が含まれていて、このため制
御不能な“精子侵入”が起こるのかもしれないのだという。
「異種交配が有害になりうるという証拠はたくさんあるが、通常それは精液中
のタンパク質や精液と一緒に運ばれる物質」がメスに対して問題を引き起こす
もので、精子そのものではないとノースカロライナ大学チャペルヒル校の生物
学教授マリア・セルベディオ(Maria Servedio)氏は指摘する。
キラー精子のメカニズムがどんなものであるにせよ、この不運なカップリン
グをもたらす背景にある原因が、動物が異性の生殖上の策略に適応する強い進
化圧であると研究チームは考えている。このような適応は通常、種特異性が非
常に高い。
線虫の場合は乱交の性質があるので、複数のオスの精子はメスの体内で卵と
の受精を巡って競争する。するとメスの生殖器官は、この精子戦争に耐えるよ
う適応する。
自身と同種の精子に対応できる態勢を整えている線虫は、別種と交尾した場
合、まさに文字通り行き過ぎてしまう可能性がある。
線虫は“自由恋愛”の傾向があるが、実際に研究では、より大きく攻撃的な
精子を持つ種との交尾を積極的に避けるような証拠が得られている。
配偶者選択を調べる行動実験では、メスが「這って逃げ、他種との交尾をよ
り強く避ける」行動も見られたとカッター氏は指摘している。
今回の研究結果は、7月29日に「PLOS Biology」誌で公表された。
URLリンク(www.nationalgeographic.co.jp)
画像:異種交配を妨げる線虫の“キラー精子”Photograph by Heiti Paves/Alamy
原論文:PLOS Biology: Intense Sperm-Mediated Sexual Conflict Promotes Reproductive Isolation in Caenorhabditis Nematodes
URLリンク(www.plosbiology.org)