【MAR】156at WCOMIC
【MAR】156 - 暇つぶし2ch435:次号ネタバレ
04/10/13 17:34:41 VJekpnQ0
都合良くパワーアップしたギンタにしこたまぶっ飛ばされたギロムだったが、
メルへヴンを廻る衛星の一つに、それこそアテネ五輪の冨田選手の如く
伸身の新月面宙返りでぴたりと着地を決めた。
その10点満点の演技に我ながら酔いしれるギロムではあったが、
アテネとは違い、この星にはあいにくと観客が誰もいない。
したがって、当然貰える筈の拍手が少しも無い訳だが、
お陰でギロムは当初の満足もどこ吹く風で、次第に腹を立てていった。
「あ~ちくしょう!なんだってここには誰もいねぇんだ!
 ここがアテネだったら、今頃拍手と歓声の雨あられ、
 当然、金を取った俺には政府からイイ女の一人や二人あてがわれて、
 連日ホテルでずっこんばっこんしてるところだっつーの!」
ギロムは地面にぺっと唾を吐き、怒りをあらわにしてそう叫んだ。
その時である。ギロムの耳に誰かの声が聞こえてきた。
見ると、ギロムの立っている所から十数メートルほど離れた所に
惨めなほったて小屋が建っていて、そこから一匹のウサギが出てきた。
「うるさいよ、お前さん。月ではあまり大きな声を出しちゃいけないルールなんだ。
 そんな事も知らないなんて、お前さん、さては新参者だね?」
それは確かにウサギではあったが、詳しく言うなら動物のウサギではなく、
ウサギの着ぐるみを着た人間であった。しかも、ギロムはその男に見覚えがあった。
「そ、そうだ、思い出した!お前はアリババじゃねーか!何でお前こんなトコに
 居るんだよ?しかもそのけったいな着ぐるみはなんだ?
 しっぽの所がほつれて取れかかってるぞ。」
「だ~か~ら。大声出すなって。それに俺の名前はアリババなんかじゃない。
 ホレ、これが俺の名刺。」
そう言うと、彼はそのほつれたしっぽの部分からごそごそと名刺を取り出し、
ギロムにそれを差し出した。そこにはこう書かれていた。
─有限会社チェスの駒 アリババ─
「あっ!間違えた!」
ギロムが名刺の文字を読み終わるより早く、そのウサギ男は
急いで名刺をギロムからひったくった。
「お、おまっ!やっぱアリババじゃねーか。チェスって見えたぞ!」
「今のは違うって!」
「何が違うんだよ!もう一回さっきの名刺見せてみろよ!」
「う~さぎさんったら読まずに食べた~」
「あっ、お前、なに名刺食ってんだよ!おら、吐き出せ!」
「名刺ってなんのことかな~?ふふん。」
「ふふんってなんだ!むかつく野郎だな~」

その後、彼ら二人は小一時間ほど殴りあった。
けれど、殴り合っているうちに彼らの間には奇妙な友情が芽生え、
メルへヴンに帰る方法もないし、それからの二人は月の上で末永く幸せに暮らした。
こうしてギロムは真の友情を得、ギンタの言うところの“かわいそうな奴”では
なくなった。むしろ、不毛な殺し合いに没頭するギンタの方こそ、
本当の意味で“かわいそうな奴”なのだと、遠くメルへヴンの地を
月から眺めながら、アリババとおそろいのウサギの着ぐるみを着た
ギロムは考えるのであった。<了>


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