06/10/07 15:32:43 wpWgs0r30
映画「道」という作品は、
身近にあるかけがえのないものを失ってから自覚するという、
人間誰しもありがちな愚かさを描いて深い余韻を残す作であるが、
このテーマを活かしたままトレースするには、「子猫は実は生きていた」という
甘い展開はあり得ない。
失われたものは2度と取り戻せないという完全喪失による強い悲劇性があってこそ、
このテーマが活きて来るからである。
従って、作品テーマが活かされていないものに「インスパイアされた」という表現は
妥当ではなく、それは単なる表面的なネタ扱いに過ぎないと言い得る。
70~80年代の西岸であれば、ヒロインのジェルソミーナに相当する子猫の死を
描き、映画で描かれたテーマの忠実なトレースを試みたやもしれぬ。
わかりやすい勧善懲悪とハッピーエンド症候群の蔓延が西岸が有していた「作家性」
を自己抑制させ、抹殺する方向に働いているとしたら残念でならない。