06/11/04 03:39:04 4GHZLGaP
「ねぇ、斗貴子さん」
「なんだ、カズキ？」
ホムンクルス・鷲尾との戦いのあと二人は浅からぬ傷を負い、
さらに斗貴子はホムンクルスの胎児に寄生されているために
足が麻痺して立つことすら出来ない。
カズキはそんな斗貴子をオンブして銀成学園へ向けて山中を走っていた。
負ぶわれながら斗貴子は蝶野邸の場所を教え、走りながらカズキはそれを聞いている。
斗貴子が教え終わったあとに、カズキがふと口を開いた。
「鷲型のホムンクルスは俺と斗貴子さんを『つがい』って言ってたけど、どういうことなんだろう？」
「え？」
あまりにも唐突な質問に斗貴子は面食らった。
「だって二人で行動しているって判っているはずなのに、わざわざ確認するなんて」
「あぁ……」
鈍い。実に鈍い。
たぶんカズキは『つがい』という意味を単なるコンビや二人一組の意味で受け取ったようだ。
鷲尾の言ったのは恋人や夫婦を意味してのことだろう。
「斗貴子さん、『つがい』ってどういう意味だっけ？」
「二人一組という意味だな」
そうともはっきり言えない斗貴子は口を濁して無難な意味を提示する。
「そう、だよなぁ……」
走りながらカズキは考えているらしい。
たまに「まさか」「いやいや」とつぶやいて、ひたすら悩んでいる。
（普通、悩むことか？）
さすがパピヨンのマスクをかっこいいと言っただけある。
何かずれている男だ。
悩んでるカズキを見て我慢できず斗貴子はつい言いたくなってしまった。
「その、たぶんヤツが言った意味は私たちが『夫婦』とか『恋人』とかの意味だと思う」
カズキの顔が後ろの斗貴子へくるんと向いた。
「へ？もしかしてやっぱり？……うわっ！」
「！」
向いた拍子にカズキがバランスを崩して斗貴子を取り落としそうになった。
「いいからキミは前を向いて走りなさい！」
斗貴子は自分の方に向いているカズキの顔を片手で前へと向け直した。
「わかった、斗貴子さん」
言ってしまって斗貴子の顔は赤くなった。
カズキの顔が赤いのも走って上気しているだけではないだろう。
しかし先にはさらに彼女の顔を赤くする「満員電車でも、繁華街でもオンブされた状態」という
事態が待ち受けているのだった。