06/10/22 03:10:46 SfFEbu6E
「信夫はいい子だよな」
芭唐は幼稚園の頃から将来は学者さんになる、とのたまっていた中姉の、優等生そのものといった顔を眺める。
「そんな信夫ちゃんもママの言いつけに逆らってるよな」
「おや、聞き捨てなりませんね」
「布ナプキン使えって言われてるのに、こっそり紙ナプキン買ってきてさ」
「そ、それは、・・・荷物になるから・・・」
「ダイオキシンが発生するのに」
「学生には学生の事情があるんです。そのへんは臨機応変ですよ。
あなたなんかタンポン使ってるでしょう。ぜったい使うなって言われてるのに」
「だから信夫も使えって。便利だぞ」
「いやですよ。体に悪い」
「なんでも母さんが正しいってもんでもないだろ。冥が胸気にしなくなったのオレのおかげだぞ」
早くから胸が大きくなっていた冥に、母さんはだぶだぶの服ばかり着せていた。
冥自身も猫背がちになっていたのだが、芭唐にすすめられて今風の服を着るようになってからは肩で風を切って歩いている。
今では胸を強調するぴったりとした服も平気で着ている。
「それはそうですね」
うつくしい姉をたいへん自慢している中姉も、それに異論はないらしい。
「でも、下着まで派手にしなくてもいいと思いますよ。見せるもんじゃないんだから」
「見せるための下着だよ」
眼鏡の奥の目が鋭く光る。
「あんまりへんなこと言わないでくださいね。お母さんが聞いたら卒倒しますよ」
「ふん」
「わかってるでしょう」
ああ、知ってるよ。芭唐は口の中で小さくつぶやいた。
小さい子が犠牲になるいやな事件があると、ぽろぽろと涙を落としていること。
自分たちに重ねているのがわかる。あの強い母が、自分たちのことになると、弱くなる。
「あなたの行動があまりにも目に余るようになったら私、お母さんに言いつけますよ。
あなたが姉さんのベッドにもぐりこんでること」
切り札を出して、信夫はふふん、と笑った。
にくらしいけど自分の姉だけあって美人だな、と思う。
「貞操帯をつけられても知りませんから」
「それは勘弁して欲しい。マジで」
「だったらせいぜいレズごっこで満足してるんですね」
「ちぇー」