04/05/01 02:49 w3Xa9JIS
太と細の物語が膨らみまくったです。おまいらのせいだ。ありがとう。
なのに萌えどころかノワール気味。
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「帰ったぜ」
あばら家の入り口に申し訳程度にかかったむしろをくぐると、
まだ細が針仕事をしていた。
「おう…今日は早かったな」
細はこっちも向かずに無心に針を布に通し続けている。
早いもんかよ。もう朝が近いってのに。
一本のろうそくの明かりだけを頼りにちくちくとやってるこいつの姿を見るたびに
何かに対する怒りが腹の底から沸いてくる。
「…今日の収穫だ」
背中のずだ袋をひっくり返して、一つずつ床に並べる。
英国の商館に出入りする金髪の貿易商の車から奪った貴金属類だ。
「大量だな」
「こっちも見ないのにわかるのかよ」
「わかるさ おめえの仕事だ」
褒めてくれてんのはわかる。俺の腕を信頼してくれてんのもわかる。
だが歯がゆい。
「おめーのお陰だぜ、細。ありゃ完璧に中国人の使用人の服装だった。奴も油断してた」
「その油断を一度に利用できるのはおめえしかいねえけどな」
完璧な変装と迅速な強盗殺傷、こいつが俺たち二人のやり口だ。
物心つくころから今までずっと、俺たちはこれで糊口をしのいできた。
それしかやり方を知らなかった。貧民出のガキなんてみんなそんなもんだ。
細が続ける。
「で、持ち主はどうした」
「ぶっ壊したさ 車も持ち主も」
「一人か?」
「…ガキがいた」
針が一瞬止まる。