03/06/05 01:20 NywMXABu
満天の星空のもとでマンションの階段を上がる。鍵を鞄から取り出しドアを開けると、
一日の間にたまっていた蒸し暑い空気が一気にあふれ出した。そのまま部屋に上がりスー
ツの上着をハンガーに掛けると、南側に面した大きな窓をいっぱいまで開く。夏にしては
珍しい乾いた風を感じて少し心が軽くなると、テーブルの上に氷を用意してからドサッと
椅子に腰を下ろした。
酒をゆっくりとグラスに注ぎ一口含む。と、そのまま椅子の背にもたれかかり、月明か
りの照らす中で白い天井を仰ぎ見て一言呟いた。
「あの真中がなぁ・・・」
ゆっくりと立ちのぼってくるウィスキーの甘く、そしてほろ苦い香りがやさしく部屋を
満たしはじめていた。