12/03/02 15:14:37 B7hSD/vw
「わしの後輩に遠州は森の石松の子孫ではないかちゅうのがおってな。
趣味は喧嘩や。なにしろ喧嘩が好きなんじゃて。
そやなあ7,8年前の秋の日曜日のことじゃった。亡くなった先輩の一周忌があって、前日はたらふく酒を飲んだ。起きたらそいつが気分が悪いちゅうんや。そいつは石松とちごて大して酒は飲まんのじゃが。
酒を体から出すゆうて朝風呂にはいり、飯も食わずに昼前にゆっくりと宿を出た。
わしを甲府まで送ってくれるのがそいつの約束で、わしらはそいつのボロ車で中央道を東に向かった。
駅に一番近い甲府昭和ゆうインターでR20に出て、そこまでの高速代金はわし持ちじゃけ財布を取り出したところ、ボロ車の後ろから左を爆音を響かせてバイクが何台かやってきてすり抜けようとしていた。
先頭のバイクにはなんじゃらの旗が数本立っていた。無賃で通り抜けようゆうんじゃね。
連れがわしからカネ受け取りながら、昼間っからバカがいますね、と笑顔で言うちょった。
車はやや料金所スペースの無いところに止まっておって、奴は体を伸ばして金を爺ちゃん係員に払おうとしておった。
バイクもスペースがないので1台づつ注意深く通っていきよった。
が、3台目あたりの兄ちゃんがいきなりボロ車のどてっぱらを蹴りよったんや。
これが悲劇の始まりやった。やらんでもええことをなあ・・・・。
蹴りを入れられた音を聴いた奴はいきなり運転席のドアを開け、危ない!と叫ぶ料金所爺ちゃんの制止を振り払って、車の前を回りまさに横をすり抜けようとしていたバイカーにウエスタンラリアートをかまし、首に手を掛けた。バイカーはきゃーっと叫んでそのままどっすーんと腰から道路に落ちた。よう見たら女の子やったわ。主を失ったバイクはそのまま数メータ走って横倒しになった。
奴は冷静にバイクを道端に引き寄せ、エンジンを止め、キーを引き抜いてどっか遠くの藪の中に放り投げた。
ほんで、地上で悶えてるその女の腰にもう一発蹴りをいれた。
その時、最前の先頭の兄ちゃんがヘルメット脱いで、あの旗持って、このやろー!と走ってきた。
わしは心の中で、あああ止めとけよと思っただけ。
兄ちゃんが横に振り回す旗を奴が軽く除けた次の瞬間、奴の得意のカウンターが兄ちゃんの顔面に炸裂、兄ちゃんはもんどり打ってこれまた地上に倒れた。
奴は兄ちゃんの顔面にまた蹴りを入れて、遠州独特の表現で、このこぞー!世の中なめんじゃねーぞー!と言いつつまたどっかを蹴り飛ばした。
兄ちゃんは路上でのたうち回っていた。すぐそこに残りの2,3人の若者がやって来たが、奴がてめーら、やんのか!と言うとまるでドラマみたいに皆後ろ向いて戻っていった。
わしは料金所の爺ちゃんに、そろそろ警察呼んだ方がいいんじゃないですか?と一応丁寧に言ったんじゃ。
兄ちゃんと姉ちゃんは体ひきづって道路の端にちょこんと座っておった。そこへ奴が近づくと明らかに怯えた態度で顔を俯かせたままあっちの方を見てた。姉ちゃんは泣いておったわ。
奴は、一言 ばーか!と言って車に戻った。
そこから甲府駅まで15分程度、確かに反対側をパトカーがサイレン鳴らして走って行った。
わしらは駅前でほうとう=山梨の煮込みうどんを食って、来年の再会を誓って別れたんじゃ。
奴の別れ際の言葉、ああすっきりした、これで酒も抜けました。じゃあ、気を付けて。