08/09/16 14:29:35
マーサ妃が久しぶりの妹君の来訪で挨拶をかわしておられると、いつもの気の利かない
女官がいきなり告げました。
「ナール王子がお戻りです」
「ま、いけない、そんなご予定でしたかしら?」
「わ、私たちもお暇を・・・ごめんなさい、お姉さま・・・あ、妃殿下・・・」
あわてる人たちの前にもうナール王子がにこやかに入っていらっしゃいました。
「あ、そのまま、そのまま。資料を取りに戻っただけです。」
「ごめんなさい、私、うっかりして・・・」
「すぐまた出かけるので、妃には知らせなくても良いと言ったのですよ」
鈍重そうな女官は、入り口の一番邪魔になるところに、どすんとつったったまま口答えをいたしました。
「王子様のお帰りは必ずお知らせするようにとお妃様からいつも言われております。」
王子は苦笑され、マーサ妃は「もっと早くに知らせてください」とおっしゃいました。
「早くと申しますと、いつくらいにお知らせすればよろしいのでしょうか?」
「私がお出迎えに出られるように、臨機応変に」
「臨機応変ではわかりません。そういったことは妃殿下が我々に細かく命じてくださらなければ」
って初めて出来ることです。」
「後で話しましょう」マーサ妃は困ったようにおっしゃいました。