08/11/08 13:36:19
ベン・ヒルズ『プリンセス・マサコ ―菊の玉座の囚われ人』1
「彼女に言ったんですよ、『どこに住んでいるかは言わないでくれ。君がプリンスと付き
合っていてもいなくても、愛し合っていてもいまくても、婚約していてもしていなくても、
ぼくにはどうでもいいことだ。何も言わないでくれ。それは君の問題だから、ぼくは知り
たいとは思わないよ』ってね」
とロバーツは言う。オックスフォードは秘密を守り、雅子はそれ以上メディアに悩まされ
ることなく学業を続けた。
雅子がどうしてオックスフォードで学位をとらなかったのかについてはさまざまな憶測
がめぐらされている。おそらく好意的に解釈して、あるいは単にお涙頂戴が好きなのか、
日本のメディアはこれを体調が悪かったせいだとしている。雅子は丈夫なたちではなく、
ときどき風邪やインフルエンザで寝込むことがあった。しかし、彼女が学業を終えなかっ
た本当の理由はそのことではない。
雅子は国際関係学のマスター・オブ・フィロゾフィーを目指して学び始めた。しかし、途
中でそれほど難しくないマスター・オブ・レターを取ることに方針を転換した。これも論文
を提出しなくてはならないが、学期末試験は受けなくてもいい。おそらく、難しすぎると思
ったのか、あるいは、イギリスの湿っぽい冬で体を壊し、方針を変えなければならなかっ
たのかもしれない。