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また、芥川龍之介は、我執(エゴ)をモチーフにした作品を多く著しています。初めて
の童話「蜘蛛の糸」には、慈悲深いお釈迦様でも救い得ぬ存在として、カンダタという人
間が描かれています。原典は、大乗仏教の経典「カルマ」で、祈る人間が多ければ多いほ
ど救われる話ですから、芥川は、全く逆の話に仕立てています。そして、最後になる童話
「白」という作品では、自らをかけて他の人の命を危機から救うことにより、自己救済の
道をつけています。
人間は、脆さも強さも、醜いところも清らかなところも併せ持つ存在です。あるがまま
の自分を見つめ、社会の中で、いろいろな人との関わりの中で、ありたい自分になってい
くものだと思います。
皆様の多くは、教師を目指されていますが、教師も一つの職業であるとともに、時間を
かけて、児童・生徒とのかかわりの中で、教師として育っていくものです。自分を大事に、
学び続け伸び続けていく楽しさと、他の人と関わり合って共に生きる喜びとを、ぜひ教え
子となる人たちに語ってください。教師自らが、未来を信じ、夢や希望を大事に育むこと
によって、未来を拓く勇気を幼い人たちにも持たせることができるのだと思います。
この京都教育大学に学んだことを礎として、皆様それぞれの明日に向かって、大きく羽
ばたいていってください。これからの社会での大いなる活躍と幸い多い豊かな人生である
ことを心から祈念いたしております。
本日は、本当におめでとうございます。
平成22年3月25日
京都教育大学 学長 位藤紀美子