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憲法B 2004年度 社会科学部 前期試験問題 西原博史 持ち込み可
2004年8月、主権移譲後に治安上の問題が深刻化し、派遣された自衛隊員が日々襲撃の恐怖に怯えながら過ごすイラクで、
ついに耐え切れなくなった西原ヒロシ2等陸曹が、イラクからの撤退を求めて司令部に申し入れを行い、その申し入れを拒否
されたことにより、48時間、上官の命令による職務遂行を拒否した。そのことに基づいて、西原2等陸曹は、同年11月、
部隊が日本に引き上げるのを期に、懲戒免職の処分を受けることとなった。
西原元自衛官は、この懲戒免職の取り消しを求める裁判を東京地裁に起こした。その際に西原元自衛官は自らの主張の根拠
として、自分が祖国防衛の目的のために自衛隊に入隊したものであって、アメリカの世界戦略のために働かされることはそもそも
自衛隊の任務ではないものであり、憲法9条の上で「防衛のための必要最小限どの実力」とされている自衛隊を海外任務に送り出す
のは憲法9条に違反するものであるから、イラク特措法が憲法に反し、無効であると主張した。
ところが、東京地裁は2005年8月15日の判決で、以下のように述べて原告の請求を棄却した。
「本件イラク特措法は、主権国家としてのわが国の存立の基礎に極めて重大な関係をもつ高度な政治性を有するものという
べきであって、そのイラク特措法が違憲なりや否やの法的判断は、この法律を提案した内閣およびこれを制定した国会の
高度の政治的な判断と表裏をなす点が少なくない。それゆえ、イラク特措法が違憲なりやいなやの法的判断は、準司法的
機能をその使命とする司法裁判所の審査には、原則としてなじまない性質のものであり、従って、一見極めて明白に違憲
無効であると認められない限りは、裁判所の司法審査権の範囲外のものであって、それは第一次的には、国会およびそれを
運用する自衛隊の判断に従うべく、終局的には主権を有する国民の政治的批判に委ねられるものであると解するを相当と
する」
西原元自衛官は、この判決を不服として東京高等裁判所に控訴した。
あなたは、東京高等裁判所の判事補として、この控訴審を担当することになった。裁判官会議において部統括判事はまず、東京
地裁判決が請求棄却の理由としてあげたこの部分を上げて、それに対するあなたの法的評価を求めている。あなたの意見はどうか?
(イラク特措法の違憲性に関する問題については、ここで取り上げる必要はない)
本件はフィクションであり、現実に存在するいかなる人物・団体とも関係しない