10/04/20 21:01:34
増田ファン氏があまりに高橋・総論を推奨するので、つい衝動買いしてしまったw
>>581
>あと、高橋則夫・刑法総論では、行為規範と制裁規範の双方からの説明を
>行っているが、見落としているのかもしれませんが、裁判規範からの説明
は>オミットしてよろしいのでしょうか?
【高橋・総論10頁】
それでは、この条文は誰に向けられているのだろうか、すなわち、「名宛人は誰か」という問題である。
まず、この条文の名宛人が裁判官であることは自明の事柄である。・・・それでは、行為者は何に違反
するのかというと、この条文から導かれる「人を殺すな」という行為規範に違反するのである。この場合、
行為者はわれわれの中から登場するのであるから、行為規範は、行為者を含む一般人を名宛人とするもの
であるといえよう。
このように、刑罰法規は、裁判規範であることを前提として、刑法上の行為規範を明示するとともに、
その行為規範に違反した場合には刑罰を科すという制裁規範を明示するのである。
したがって、行為規範と裁判規範という対置はミスリーディングであろう。
山中教授もほぼ似たような考え方です【山中・総論17頁以下】
刑法は、行為を規制する行為規範としての機能と裁判のときに準拠すべき裁判
規範としての機能の両面をもつ。刑法学においては、これとは別に、行為規範
と制裁規範に区別されることがある。これは、規範の名宛人による区別でもあ
るが、むしろ規範の「要件」部分と「効果」部分の機能に重点が置かれる区別
である。
行為規範は、人々の行為に指針を示すことによって犯罪が行われないように事
前的に予防する機能である。・・・そして、事前告知にもかかわらず、行為規
範が侵害されたときに、制裁を科することによって、事後的にその犯罪のもた
らした効果を減殺し、社会の動揺を鎮静化する必要がある。それによって法秩
序に対する信頼が回復し、それがさらに犯罪の予防効果をもたらす。このよう
に、行為が一定の要件を充たしたときに法律効果として一定の制裁が科せられ
ることを定めた規範を制裁規範(Sankutionsnorm)という。