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井田良『刑法総論の理論構造』引用文献リスト(コメント付)24
目の前の人を熊だと信じてこれを撃とうとする人をその行為から遠ざけさせる
ために、「人を殺すな」という、故意行為を禁止する規範を差し向けてもそれ
は無意味である。
その行為者には人という認識が欠けている以上、当の本人の認識する事情の
もとでは「人を殺すな」というのは理解不能な命令でしかない。
「刑罰の威嚇はいわば行為者の周辺を無益に通過するのみなのである」
ー田宮裕「過失に対する刑法の機能」同『刑事法の理論と現実』103頁
注意すべきことは、条文と(条文からその解釈を通じて導かれる)構成要件
とは同一ではないということである。
ー井田良『犯罪論の現在と目的的行為論』66頁以下
松原芳博「犯罪論における『構成要件』の概念について」西原古希第1巻48頁以下
ドイツにおいても、構成要件と違法性阻却とを体系的に分離する見解が通説である。
Hans Joachim Hirsch,in:Leipziger Kommentar,11. Aufl,1994 VOr§32 Rdn.5 ff.
およびそこに引用された文献を参照。
刑法36条の正当防衛規定については「行為規範相互の衝突を調整するメタ規範」
として裁判規範にすぎないとする見解もある。
Karl Heinz Gossel,Uberlegungen zum Verhaltnis von Norm,Tatbestand und dem Irrtum uber das Vorliegen eines rechtfertigenden Sachverhalts,in:Festschrift fur Otto Triffterer zum 65.Geburtstag,1996,S.97 ff.