09/10/23 01:27:21 W2+BytxP
己は詩によって名を成そうと思いながら、進んで師に就いたり、
求めて詩友と交って切磋琢磨《せっさたくま》に努めたりすることをしなかった。
かといって、又、己は俗物の間に伍《ご》することも潔《いさぎよ》しとしなかった。
共に、我が臆病な自尊心と、尊大な羞恥心との所為《せい》である。
己《おのれ》の珠《たま》に非《あら》ざることを惧《おそ》れるが故《ゆえ》に、
敢《あえ》て刻苦して磨《みが》こうともせず、又、己の珠なるべきを半ば信ずるが故に、
碌々《ろくろく》として瓦《かわら》に伍することも出来なかった。
己《おれ》は次第に世と離れ、人と遠ざかり、憤悶《ふんもん》と
慙恚《ざんい》とによって益々《ますます》己《おのれ》の内なる臆病な自尊心を
飼いふとらせる[#「ふとらせる」に傍点]結果になった。