09/06/13 06:51:36
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小生は,過去に担当した公判で青天霹靂の無罪を4回くらっています。
そのうち3回は控訴して,適正妥当な逆転有罪判決となっています。ほぼ問答無用の破棄自判に近く,原審判決の無罪誤判を鋭く突いた短い高裁判決文でした。
しかし,うち1件は控訴せず私自信も不控訴意見で一審で無罪が確定しました。
というのは,無罪判決直後に小生自身が直に補充捜査を実施し,その結果,被害者が虚偽供述を行っている蓋然性が高いと判明し,その裏付け証拠もわずかながら得られたからでした。
ヒヤリとしました。もう少しで冤罪有罪を得るところだったからです。
被害者の供述をそれなりに裏付ける(ように見えた)客観証拠まであったとはいえ,被害者に騙された(少なくとも疑わしきは被告人の利益でなくてはならない)己の未熟さを痛切に実感しました。
一時は本気で辞職も考え眠れなくなりました。
もともと小生は,高校生のころから,日弁連のまとめた再審や誤判に関する文献を読み漁り,最悪の冤罪を防ぐには死刑廃止しかないのではと思いました。
そのため,このころからずっと死刑廃止論でした(現在はやむを得ない必要悪で国民の総意である立法に従うという立場)。
そして,弁護士諸先生の熱意と真摯なご努力で再審無罪を得るよりも,その前段階で,誤判や冤罪有罪判決を防ぐにはどうしたらいいかと考えました。
結論は,裁判官や検事が当初審で慎重に証拠を吟味しないとこれを回避できないのではないかという思いに至りました。
主に別の理由で検事になりましたが,この高校時代の思いは生きていて,在職中は自分の事件で冤罪は絶対に出すまい,という思いで職務にあたってきました。
その自分が被害者に騙されたので痛切に恥じました(起訴検事も小生の補充捜査結果を伝えたら仰天してましたので,起訴検事も騙されたのでしょう。)。
幸い裁判官がとても有能で被害者の供述に疑問を抱き,無罪判決を書いてくれたので,冤罪有罪判決だけは回避できました(異動の挨拶のときに裁判官に個人的に無罪のお礼を申し上げました)。
しかし,もし裁判官が有能でない人だったらと思うと,事態の重大さが自分を襲い,数日間は眠れぬ夜を過ごしました。
同僚の現職の皆様とP志望の方の重要な参考のために,恥を忍んで。<(_ _)>