08/11/03 20:56:13
マリー・アントワネットが自分用にあつらえた印象指輪の、「今ほど価値あるものだったことはない」と言うその銘
とは、何を語るものだろう?フランスの王妃ともあろう身が、スウェーデンの小貴族の紋章を指輪に刻ませ、無数の装飾品
の中からたったひとつ選び出し、監獄の中でさえ指にはめ続けていたその銘とは?
銘は五文字のイタリア語だ。死を直前にして、かつてよりいっそう真実味を増したその言葉は、「全てが我を君へと導く」
死の激情、「もはや終わりである」という灼熱の炎が、死を待つこの無言の挨拶から吹き上げ、生きた肉体が灰になる
前に今一度激しく燃え立ち、遠く離れた男、彼は知る、彼女の心は彼への愛で死ぬ寸前まで鼓動していること。この別れの
挨拶からは、永遠というものが呼びかけられている。移ろいやすさの中にあって、決して移ろうことない感情が新たに
誓われている。ギロチンの陰で、この最後の言葉は、比類ない偉大な愛の悲劇を語っている。もう幕が下りてもかまわない。