10/03/31 23:49:11 10/W20mQ
「では、頼みましたよ」
唐突に男は言った。
(だから内容を説明してからそう言ってくれ)
黒衣の男は正面のデスクに座る男のいつもの態度にいつもの感想を抱く
場所はガーディアンズ調査部、座っている眼鏡の男は部長
そして机を挟んで向かい合う黒衣の男、こちらは調査部特務科、通称番犬部隊の隊員である。
「…任務の説明を求めます」
無駄に爽やかな笑顔で黙っている上司の態度にこちらから聞かねば説明されないと判断し質問する
残念ながらこれもまたいつもの事なのだ。
「今回はグラール各地で確認されているナノトランス現象の調査です
本格的に調査隊を派遣する為にはある程度の安全確保が必要ですからね
尤も…リュクロスの時の様に想定外の事態は得てして起こりうるものですが」
本当に察しが悪い、と小さく溜息を吐き首を横に振る部長
黒衣の男…ヒュマオは面倒なので話を進める事に専念した。
「発生箇所はランダムだと聞いていますが?」
偶発的に発生する現象の調査などどうしろと言うのか、観測できなければ調査も始めようがないのだから
「既にフォトン濃度からナノトランス空間の発生しそうな日時、場所は特定できています
あなたは調査端末を身につけて該当の時間、場所にいれば結構です」
当然ながら準備はしているらしい、ある意味当たり前の事だが行き当たりばったりの多いガーディアンズではあまり安心できない
「しかし、最近は呼び出されても調査部みたいな仕事させますね」
ヒュマオの調査部らしからぬ発言、だが、番犬部隊の性質を考えれば尤もな疑問
「人手不足です」
部長は一言で片づけた。
「臨時隊員の集まりは良好と聞いていますよ?」
SEED事変後のグラールは混乱が続き、代理請負業として様々な傭兵企業、機関が誕生した。
対抗手段としてガーディアンズは新規隊員獲得の為に隊員を常駐隊員と臨時隊員の二種類に分類
ガーディアンズとしての制限は増えるものの免責事項も多い臨時隊員枠は新規及び復帰隊員で賑わっていると聞く。
「臨時隊員には調査権限を持たせられません、調査部に臨時隊員がいないのは御存じでしょう?」
臨時隊員だけになったらどうする気なのか
浮かんだ疑問は口に出さずヒュマオは端末を身につけ、挨拶をして退室した。