10/02/15 00:12:04 JkGu0fjd
「と、言う訳なの」
「なるほどな。
―ジャスミン」
俺が声をかけると、しがみついていた顔を上げる。
涙と鼻水で酷い有様になっているので、ハンカチを取り出して拭ってやった。
「その気持ちだけで十分だよ、ありがとう」
微笑みながら言うと、彼女は再び泣き出した。
「うっ……ひっく……」
「もう泣くな、ジャスミン。
貴重品かも知れんが、アレはヒトじゃ食えないんだ」
「……え?」
やはり知らなかったらしい。
どういう訳か、アレはショコラでありながら食べられないのだ。
まぁ、ラッピー達が作る物だから、そこまで期待していなかったのだが、手に入れてちょっとがっかりしたのは事実だ。
「貰えれば嬉しいが、どうせなら食べられるほうがいい」
「そう言うだろうと思って、用意してありますわよ」
ガーネッタの台詞に合わせて、リカがキッチンからワゴンを押してきた。
「じゃーん!
ショコラを使ったフルコースだよーっ!」
コース料理でショコラといえば普通はデザートだが、普通の固形タイプに始まり、生、トリュフなどの定番は言うに及ばず、ザッハト
ルテやショコラフォンデュなど、お菓子類はふんだんに用意され、飲み物はホットショコラにショコラリキュールを使ったカクテル。
そして、フルコースと言うだけあって、特定地方でしかお目にかかれないモーレ・ボブラーノやリソト・デ・ショコラといった、ショ
コラを使った料理がしっかりと用意されていた。
最初は大げさだと思ったが、そう言えるだけのメニューにちゃんとなっていた。
「……これは凄いな、話に聞いたことはあるが、ショコラ料理なんて初めて見たぞ」
素直に驚くと、みんなが満足げに微笑んだ。
「頑張った甲斐……あった……。
一番頑張ったの……ジャスミン……料理のレシピ……いっぱい探して……メニュー作った……」
コーラルの言葉にジュエルズとロザリオが相槌を打つと、褒められた当人は顔を真っ赤にして俯いてしまった。
「マスター、冷めないうちに食べようよ。
ショコラ尽くしだけど、今日の夕食なんだから」
すっかり準備されていた食卓に、リカがそれらをせっせと並べていく。
「あ、ああ、そうだな……」
内心では料理の味がとても不安だったが、腹をくくってショコラだらけの食卓に着いたのだった。
感想:ちょっと変わった味だったが、旨かったので、全員で平らげてしまった。
――終わり――