09/02/06 20:40:33 /lVssuV1
攻防が何度か続いた。
そして450が肉をまた数枚入れた時、私は勝負に出る事にしました。
この狂犬たる物、待ちは相応しくねぇ…ここは攻めていくしかない!
*ざぱっ*
450 「何してんだィ、撥ねさすんじゃないよ!」
430 「あーら失礼ー? 何たってよく分からないものでー!?」
412 「熱ッ! それアク取りって動作じゃ…あちゃちゃちゃ!!」
ふふふふ、そうだ! さっきは余裕を見せられたが今回はそうは行くか!
私はNDに関しては疎い、その疎さを武器に攻めに出てやるぜ!
430 「あーらー? アク取ってたら肉すくっちゃいましたよー?」
ふふふ、これが今回の私の狙い!
確かに優雅じゃないですが、事前知識0の私は初心者!
初心者の無礼な行動は1回だけは許されるッ! 教えられたら使えない1回限りの手段!
450 「チッ、ざーとらしいねェ…仕方ないから食やいいだろ」
412 「あーもう、油がシミになっちゃう…」
ふっはっはっはー! 目標撃破ァ!!
ざまぁみろ! 初心者が万事不利とは限らないんだぃ!
狂犬ナメんじゃねぇ! どんな逆境だろうと覆してきた恐怖の存在だぞ!?
しかしこれでもドローでしかない、優位に立つにはもう1つ何かやらねば…。
そこに、食べ頃の肉が1枚私の視野に!
何時の間にか姉さんが入れていたらしいが、白菜の影で全く気付かなかった…!
よっしゃもらったぁぁぁぁ!!!
*しゅぱっ!*
突如、私の箸と激突しそうになった箸があった。持ち主は…450だ。
同時に気付かれていたらしい…くっそ、箸バトルするわけにもいかねぇ…!
自分の肉が1枚も入ってない状態でタブーをすると、次に入れたのが没収らしい。
430 「…退けよ」
450 「お前サンが退かしよ」
*ひゅばばばばばばばばばっ!!*
即座に箸の攻防戦が始まった!
要するにカチ合っちゃいけないのなら、合わさずに先に掴めば勝利確定!
私の方が速さは上だが、450は巧みに箸を操って攻めるコースを妨害してくる!
536:華麗?なる食卓 後編 5/8
09/02/06 20:42:28 /lVssuV1
くっそ、速さは上だけど箸使いが上の450に攻めに入らせたらお終いだ!
私の指のスピードは既に限界値、長続きさせるわけには行かない…!
それは恐らく450も同じだ、あの巧みな操作にフルパワーを注いできてるはず。
まだ肉は残ってるが、ここで譲るわけにはいかない! 肉1枚が勝敗を決する!
上等だ! この一突きに全てを…賭けるッ!! ご主人様、私に力を!!
430 「肉よ、私の手元に! 独裁者に野菜を!」
450 「飼い犬に肉は勿体無さ過ぎるだろう、神サンよォ!」
*じゃばっ! びちゃっ!*
二人「あ…」
412 「………」
2つの箸から逃れるように、空高く舞った肉は見事に姉さんのデコに。
よく見ると…私達の優雅なる箸バトルで油が撥ね放題だったらしく、そこら中油だらけ。
あらら、この人の事すっかり忘れてたわ。めっ、狂犬☆
412 「あ、貴方達は…!!」
肉をぺらーっと剥がしながら姉さんは般若の顔になっていった。
やっべ、これ死亡フラグ? よりによって最悪のパターン踏んじゃった?
何でこの人、普段は大した事なさそうなのに怒るとこうコエーのよ。
これには流石の450も青褪めている…。
412 「油は愚か肉も撥ねさせるなんて…言語道断です!
2人とも、問答無用でアウトーッ!!!」
430 「しまったぁぁぁぁぁぁ!!!」
450 「チィィ…犬コロに気を取られすぎた!」
こうして、私達の肉は大半を姉さんに取られてしまった。
ぐぬぬ…私とした事がイージーミスで大事な大事な宝を手放す事になろうとわ!
しかし、姉さんにリードを取られたとしても私にとってはさしたる問題ではない!
そう、この嫌みったらしい年増させ倒せれば私の目標は完遂されるのだ!
まだだ、まだ勝負は付いてない! この姑の悪の手からご主人様を守る為にも!
起き上がれ、私の手首!
412 「もう…帰ったら着替えなきゃ」
姉さんが何かブツクサ言いながら自分の肉を眺めている。
私も450も姉さんも既に大分消費してる…恐らく450と私の取り分はほぼ互角だろう。
残り数枚ともなれば、1枚ごとにデッドヒートになるのは確実…!
537:華麗?なる食卓 後編 6/8
09/02/06 20:44:23 /lVssuV1
412 「あれ…この肉まだ凍り付いてますよ?」
少しの沈黙を破ったのはまたしても姉さんだ。
この人、狙ってやってんのか素でやってんのか掴み辛いな…。
見てみると、姉さんの肉は下が見事に凍っていて剥がれなくなってる。
450 「ちぃと解凍が甘かったかねェ? まだ凍ってるたァ…」
430 「…あれ、私のも凍ってんじゃん!?」
450 「…こいつァしたりだ、アタシのもご覧の通りさね」
気になって見てみたら、見事に私のも450の肉も凍っちゃってます。
あらら、これどーすんのよ? 剥がすにも肉が悲惨な事になりそうですよ。
無理にそんな事をすればまた指摘が来るかもしれない…。
450 「仕方ないねェ、一気に入れて熱で剥がれるのを待つしかないよ」
412 「そうですねー、これは無理に剥がしたら破れちゃいますし」
なるほど、全部ブチ込んで自然に剥がれるのを待つわけね?
…って、ちょい待て。全部ブチ込むって事は、一気に入れるのと同じじゃん。
何のつもりかと450の方を見てみると、私に余裕の笑みを浮かべてきている…!
そういう事か、よーく分かったぜ450? そろそろ決着の時って事をなぁ!
丁度いい、いくら異常出力の私でもそろそろ指間接が悲鳴あげてきた所だ。
やってやろうじゃないの…その一世一代の大ケンカ、買ってやらぁ!
*ぐつぐつぐつぐつ…*
肉を入れたのは全員だった。
2人とも最後の大勝負に挑んできてやがる…!
ありったけの野菜をデコイとして投入し、自分だけ取りやすい様に布陣していく。
そして訪れる煮えるまでの時間…! この短時間で私は攻略コースを作らなければならない!
450と姉さんの妨害を掻い潜って、肉を救出する光のロードを!
*ぴしゅっ!*
恐らく、攻略コースは今見えた1つしかない。
450もそうだが、姉さんの方が未知数で迂闊なコースを作るわけには行かないからだ。
まぁ最悪姉さんは放っておく。多分それ程酷い妨害はしてこないから。
問題はそう、この年増だ! 普段から高いモン食ってるくせに食い意地張りやがって…!
こいつの撃破が達成された時が、私の勝利確定!
412 「そろそろですかねー?」
肉が程好く煮えた色に変わってきている…。
勝負の時が来た! 私のやるべき事はただ1つ、Destroy the 450!
538:華麗?なる食卓 後編 7/8
09/02/06 20:46:17 /lVssuV1
*しゅばばばっ!*
即座に私は先制の箸を入れる!
私の布陣にある肉は何時でも取れる、それを残して450の城に攻め入る!
小細工抜き、真っ向勝負! 最後の力を振り絞って、いざ勝利の栄光を!
*しゅびっ!*
450 「(そう簡単にやらせるかィ!)」
即座に450が守備に回る! 半煮えの野菜を巧みに動かしてコースを塞いでくる!
畜生、こいつ野菜の使い方がうめぇ! 野菜を掴んだら攻めに入らせちまう!
正直私は守備があまり得意じゃない、最初の「威嚇」射撃でぶっ殺す方だし。
だから、攻め続ける! 野菜の僅かな隙間をあくまで優雅に箸で通すッ!
430 「(―っんの野郎! 普段からいいもん食ってんでしょうが!
たまには人に親切に分け与えないとコルトバみたいに肥えるわよ!)」
450 「(ハッ、PMに肥えるも糞もあるかィ! そっちこそ何だィ?
さっきからキッタない真似ばかりで、ええ? 本当に野性に返っちまったんじゃないかィ!?)」
430 「(あーらごめんなさいねぇ! ND知識ってどうにも疎くてー!)」
450 「(そんなんで未来の嫁と上手くやってけんのかィ!? 危ういねェ!)」
430 「(い、痛い所つくんじゃねぇ! 私とご主人様の仲はそんなモンで壊れないわ!)」
*しゅびっ! びしぃっ! ざばっ!*
前回の反省を踏まえ、あくまで油が飛ばない優雅な箸バトルが繰り広げられる!
こんにゃろ…!! 相手も最後の大勝負とあってか一歩も譲らない!
その時! 勝利の女神、マイスウィートご主人様は私に微笑んだ!
*ぷ~ん*
450 「なっ…んがっ!」
1匹のハエが450の目の前を通り、鼻に止まった。
これには流石の450も手で払い除けたが、それがミスだ!
私の前でそういう真似はするもんじゃねぇなぁ、1秒も逃さぬ狂犬相手に!
430 「もーらったぁぁぁぁぁぁッ!!!」
450 「ククク…、甘い、ヨウカンみたいに甘いねェ!」
450は急に余裕の笑みを取り戻し、既に逆の出て掴んだ箸を出してきた!
何ィ、こいつ両利きか!? 両手で箸というミスは流石にしてなく、既に払い除けた手はフリー。
くっそ! 引き下がる手はない! 今までの最高の反応速度!
指間接、リミッター解除! ご主人様の微笑を裏切るわけには行かないッ!
430 「(勝利の栄光は頂きよ! ヒトラーの尻尾!)」
450 「(負けて小便でも散らすんだねェ! 見境なしの色魔!)」
*ばしぃっ!!*
539:華麗?なる食卓 後編 8/8
09/02/06 20:48:56 /lVssuV1
…肉は掴んだ。
確かに掴んでいる。私の箸はガッチリと獲物を捕らえている。
しかし、私だけじゃない。450の箸も同時に掴んでしまっていた。
何てこった…ここに来て箸合わせという痛恨のミスが!
*ぷつっ*
あれっ?
肉、切れちった…真ん中で切れて、丁度私と450に1個ずつという状況。
どうやら結構スジんとこが弱ってたらしく、私と450の箸攻撃で崩壊したようだ。
姉さんは見てないのを確認し、私達はささっと肉を頬張る。
うん、バレなきゃいいんですよ。450と珍しく利害一致、黙秘黙秘!
430 「(…次こそは私が制してキングオブミートの称号をもらうわ! もぐもぐ…)」
450 「(クックック…犬は大人しく首輪付けて寒天の夜中で寝ときよ! んぐんぐ…)」
さぁ、食べた所で次なる肉を…って、あら?
私の前に広がっているのは、数少ない野菜だけが取り残された寂しい鍋。
…あ、あれ? 肉何処? 私と450の陣地内にたくさんあった肉、何処だぁー?
二人「ハッ!?」
急いで同じ視線を向けると…そこには肉を頬張っている姉さんの姿が!
ま、まさか…!?
430 「ね、姉さん…全部食べたの!?」
412 「2人とも、肉を放置しすぎですよ。美味しくなくなっちゃいますよ?」
…この顔は間違いない、たらふく食べて幸せの時間を味わってる顔だ!
や、やっちまったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
450 「あ、アタシとした事が…熱中しすぎちまった…!」
思わぬ伏兵の奇襲に450は愕然として、私と同じくorzな格好になる。
450以外に敵はいないと思ったが…畜生甘かった! 相手はワンオブサウザントだ!
私達のバトルの真っ最中に、気付かれない様に箸を運んで肉全部掻っ攫いやがった!
(いや…普通に取っても貴方達が気付かなかっただけですけど。)
こうしてシャブシャブ鍋バトルは全ての肉を消費して終わりました。
姉さんの一人勝ちと言う、450に負けるよりあまりに屈辱的な最後を迎えて。
ちなみに私と450の取り分はキッチリイーブン。それ以外は全部姉さんに盗られました。
ド畜生…また勝負が付かなかった…いや、それよりも新たな撃破対象が増えた!
この恨みはいつかぜってー晴らす…! 見てやがれ年増より年増!
412 「………誰が年増より年増ですって?」
430 「ちょっ、心読むの反則、反則!」
- 終 -
540:名無しオンライン
09/02/08 00:34:16 4MRQsFEC
次スレどうすんの?
今470KBだぜ
541:名無しオンライン
09/02/08 03:24:14 mY/K6mAs
落ちたら立てておk
542:名無しオンライン
09/02/09 03:13:07 OtBeaGGu
ヒュマオと413の人、事後報告だけどキャラ借りさせてもらったわ
543:413の奇妙な1日 1/8
09/02/09 03:14:14 OtBeaGGu
その日は本当に、気まぐれを起こしただけに過ぎなかった。
私はGH-413、不甲斐ない某ラスカルのパートナーマシナリー。
不甲斐ないとはいえ、主人は普通のヒトとは違う事情を持っている。
主人は、機動警護部に所属してはいるが、本所属ではないわ。
調査部に所属し、その中でも飛び切りの汚れ仕事を任される部門にいる。
「強行調査部」…調査とは名ばかりの、諜報部と並ぶ程の戦闘集団。
要するに、ガーディアンズにとってよろしくない集団を消滅させる番犬のような物。
主人は、ラスカルという蔑称の通り、その番犬の1匹…。
私は主人の所属先を知っているし、どんな仕事をしているかも知っている。
だけど、それを喜ばしく思わなかったり、気に病む事もなかったわ。
だって、してもしょうがないじゃない? それが主人の仕事なのだから。
パートナーマシナリーとして出来る事は、何も言わずにいる事じゃないかしら?
私の発言で主人の仕事に支障が出るなら、それこそ余計なお世話だわ。
そしてその気遣いに気付かれた時、私の内なる思いは成じ…ご、ごっほん!
と、ともかく! 私は主人の仕事に関与する気は全然なかったの。
でもその日だけは違ったわ、偶然にも主人の次の獲物になるかもしれないPMの情報を手に入れたの。
…それは私と同じGH-410シリーズ、万能な戦闘力で人気なGH-412だった。
このPMはまだ保留とされているらしい。
ガーディアンズ総裁府が監視を行っている為、調査部も諜報部も迂闊に動けない。
本部の仕事に茶々を入れれば、あの総裁にどんな処罰を食らうか分からないしね?
戦闘力、欠陥詳細、全て未知数…ただ1つ分かる事は、ガーディアンズにすら反発するという事。
それに加え、マスターである人物は勤務態度最悪でも、戦闘技術は高いという厄介な現実。
他にも複数の危険性があって、もしもの事態があれば即座に抹消開始という準備状態らしい。
未知数か…、不甲斐ないとはいえ主人が負けるとは思わない。
主人はこれまでに、多数の「ワンオブサウザント」と呼ばれる異常固体を粛清してきた。
この娘も可哀想だけど、またグラールからPMが1人消えるだけ、ただそれだけ。
いつもはそう思っていたんだけど、今回だけは違った。
私はどうしてか、この写真に写る一見、何の変哲もないGH-412に興味が沸いた。
544:413の奇妙な1日 2/8
09/02/09 03:15:23 OtBeaGGu
444 「姉さま~? どうしたんですかぁ?」
413 「わっ!? お、脅かせるんじゃないわよ…」
同居人のGH-444がひょいっと顔を覗かせる。
迂闊だったわ、こんな声を挙げてしまうくらい上の空だったなんて。
他の人には…聞かれてないわよね? よし、OK。
444 「何かあったんですか? むつかしい顔してますよぉ~?」
413 「そうかしら…普通でしょう?」
444 「でもでも、姉さまがあんなふうに驚くなんて珍しいですし~」
413 「あのね、私は銅像じゃないのよ? 驚いたりもするわ」
…全く、人を何だと思ってるのかしら?
こんな状態じゃ主人は愚か、最近来たクソ忌々しい居候にも馬鹿にされるわ。
毎日毎日ベタベタベタベタ…私がそこまで進むのにどれだけ苦労すると…。
ハッ、ごほんごほん! と、とにかくこのままじゃいけないわ!
413 「…444、ちょっと出かけてくるわ」
444 「え~、それなら私も行きますよぅ?」
413 「444、悪いけど今回だけは譲れないわ。私1人で行かせてちょうだい」
444 「…そ~ですかぁ、分かりましたぁ」
この娘は変な所で鋭く、私の今の気持ちも察してくれたようだ。
幸いにもこのGH-412が住んでいる部屋も把握している、行くのはそう難しくない。
444 「それじゃあ、姉さまがいない間に進展させちゃいますね~♪」
413 「ちょ、何言ってるのよ!? 大体、何を進展させるって言うの!?」
…少し褒めたらこれだから、全く。
こうして私は、気まぐれで主人の次の目標になるかもしれないGH-412の部屋に向かった。
見に行った所で何をするかなんて考えていない、ただ行かなければいけないと思った。
向かう最中、色んな考えが私の頭の中をぐるぐる回っていた。
もし、いなかったら再度尋ねるべき?
もし、仲良くなってしまったらどうしよう?
もし、本当は凶暴なPMだったらどうするべきだろう?
もし、主人が負けてしまいそうな実力の持ち主だったらどうしよう?
考えても仕方ないわね…さっさとPPTシャトルの手続きをしてしまおう。
545:413の奇妙な1日 3/8
09/02/09 03:17:00 OtBeaGGu
着いた所は、コロニーとは違ってそれぞれの部屋に庭があるニューデイズの宿舎だった。
流石にニューマンが作り上げただけあって、優雅よねぇ…庭もあるなんてね。
コロニーに庭なんて作られても、結局は真っ暗な宇宙空間しか見えないんだけどね。
手入れも大変そうだし、そういう事を考えるとコロニーが一番気楽でいいわ。
仮にも初対面だし、いきなりピンポンを押してコンニチハは気が引けるわね…。
これが444の友達とかなら通じるんだけど、相手は主人の獲物になるかもしれない存在。
そんな妙な存在に、気の利いた挨拶を出来るほど私は雑学に詳しくはないしね。
とりあえず、私は裏に回って庭を覗いてみる事にした。
他の誰にも、見られないように。
413 「(…視界縮小、遠近最大距離で…)」
タケと呼ばれるND独特の木材で作られた柵の僅かな隙間から中を覗く。
気付かれないように、識別信号発生装置を切り、レーダーにかからない状態で。
そこには…いた。一見本当に何の変哲もない、箒を持って庭を掃除しているGH-412が。
随分と手馴れた手付きね…庭の作りは彼女によって出来た物なのかしら?
NDに住む変わり者なビーストのPMながらに、こうして見ると変わってるわねぇ…。
すると突然、そのGH-412はこちらを横目で見ながらはっきりとした声で言った。
412 「どなたですか?」
…気付かれてる!?
そんな、識別信号も出していないしレーダーのジャミングもしてるのよ!?
柵で姿は隠れているはずだし、音も出していないはず…何故気付いてるの!?
…落ち着いて、私。BE COOL、ただの独り言かもしれないじゃないの。
ここで迂闊に姿を出すのは危険よ、もう少し様子を見るべきだわ。
そんな私の自分への言い聞かせも、次の一言であっさりと弾き飛ばされてしまった。
412 「…私にGH-413の知り合いはいませんけど、ご主人様に御用ですか?
ご主人様ならローゼノムに出撃してますので、今は留守ですよ」
…独り言なんかじゃないわ。
彼女は、完全に私の存在に気付いている。
普通ならば絶対に気付かれないはずなのに、彼女には見えている。
そして、彼女の目付きがとても凍りついた鋭い物に見えた。
背筋が凍る…こ、これが主人が粛清してきた異常固体ワンオブサウザント!?
わ、私の主人はこんな得体の知れない存在と戦い続けてきたって言うの!?
改めて主人の謎の深さを認識しつつ、無数の後悔の念が私の頭の中を支配し始めた。
来なければよかった。
気まぐれなんて起こさなければよかった。
私はここで終わりなのかもしれない。
…冷静な判断が出来なくなっていた私は、何時でもハルプセラフィを取り出せる状態にあった。
そして、震えているのを懸命に我慢して、口を開いた…。
546:413の奇妙な1日 4/8
09/02/09 03:18:37 OtBeaGGu
413 「…失礼、覗き見るつもりじゃなかったの」
412 「あ、ごめんなさい! 怒ってるわけじゃないんです!」
返事は私の予想を覆す物だった。
だけど、私にはその声は死神の囁きにしか聞こえなかった。
412 「と、とにかく玄関に行きませんか!? こんな所で話を続けても仕方ないですし」
413 「…そうね、一旦仕切り直しましょ」
掃除器具を片付ける音が聞こえてくる。
彼女は単に箒を置いているだけなのかもしれない。
だけど、私には武器の用意をしている音にすら聞こえてきたわ。
一体何を仕切り直せって言うの? 殺し合いの仕切り直し? 笑えないジョークね。
…GH-412の得意武器はレイピアとハンゾウが一般的だけど、相手は異常固体。
もしかすると、私達には許されていない規格外の装備品を持っているかもしれない。
…ダメだわ、私は完全に混乱している。全く頭が回らなくなってしまった。
逃げるなら今の内だけど、気付かれた以上はこのまま有耶無耶には出来ない。
あの450は消えるのは別にいいんだけど、主人と444にまで被害が広がってしまう。
それだけは避けたい…私は覚悟を決めた。
*ぷしゅ~*
ドアから出てきたのは、先程のGH-412。
別段武装をしているわけではなく、客人に普通に挨拶する格好だった。
412 「いらっしゃい…って言うのも妙ですね」
413 「………」
言葉が出ない。
ただでさえ頭の中グルグルなのに何て言えばいいのよ、こんな状況で。
既に私の服は冷や汗でびしょ濡れ、だけどその不快さなんて感じてもいられない。
ただ何も言えず、じっと412を見つめ続けるしか出来なかった。
412 「ささ、中にどうぞ」
413 「…え? で、でも」
412 「こんな所で要件を済ませるのも味気ないじゃないですか、ね?」
まるでこちらの動揺を察知したように、412は引き気味の私に中に入るように勧めてきた。
断るにも言葉が出ないから、私はただそれに従うしか出来なかった。
NDの風習として靴を脱ぐ部屋なんだけど、迂闊にも靴を転がしてしまったわ。
412 「さ、こちらに居間がありますよー」
413 「………え、ええ」
…今、私の目の前には無防備な412の背中がある。
私の心の闇に潜む悪魔が囁き始めた。
殺るなら今しかない。
547:413の奇妙な1日 5/8
09/02/09 03:20:36 OtBeaGGu
主人と444に危害を加えず、一番事の収束に導ける方法。
それは私には、目の前にいる412の殺害しか思い浮かばなかった。
PMを壊されたガーディアンズが復讐に来る可能性だって、冷静なら十分に考えられた。
でも、それすら思い浮かばない程に私には余裕がなかった。
私は平凡な413でしかない。
そして相手は、主人ほどの腕前でようやく倒す事が出来る異常固体。
秘密兵器を隠し持っているわけでもない私が、まともにやりあって勝てるとは到底思えない。
そうなれば、私が勝つ為に出来る手段なんて奇襲や騙し討ちの類しかなくなる。
もう私は、その悪魔の囁きに身体を委ねて行くしかなかった…。
汗だくで湿った手で、ハルプセラフィを静かに構えた。
狙うは人間の脊髄に当たる箇所…重要神経を切断してしまえば、どうにでもなる。
…殺れ、やれ、ヤレ!
殺すしかない、ころすしかない、コロスシカナイ…!
412 「…どうして、私を殺そうとするんですか?」
413 「ハッ!?」
振りかざした刃を、一気に降ろそうとする手が止まった。
412の不意の言葉により、私は又しても度肝を抜かれ、悪魔から解放された。
…息苦しい。フォトンエナジーが身体の中を暴れ回っている。非常に気持ち悪い。
今にも吐きそうな私は、身体を支えるのが精一杯だった。
背中を向け続けている丸腰の412に、武器を持った私はただただ圧倒されるばかりだった。
413 「な、何を言ってるのかしら…わ、私は…(ぜぇっ、ぜぇっ)」
412 「…分かるんです。貴方がどんなにレーダーで移らないようにしても。
何て言うかな…人間で言う気配みたいな感じで、大体分かっちゃうんですよ」
非科学的すぎる言葉だ。
412 「…私の事、酷く誤解してませんか?
私は何も、貴方をこれから機能停止させようだなんて思ってませんよ?」
そう言って彼女は振り返った。
その表情は、怒るわけでもなく、悲しそうでもなく、何故か笑顔だった。
差し伸べられた手は、私のハルプセラフィを握る手を静かに下ろし、胸の前にやった。
そして、彼女はその手を両手で包み、笑いながらこう言ったの…。
412 「…私は、お客さんを歓迎しようとしてるだけです。
だから、こんな物騒な物はしまいましょう? お茶菓子を食べるフォークにしては大きすぎますよ?」
その手はとても暖かかった。
私は緊張の糸がぷっつりと切れ…。
*どたっ!*
412 「わ、だ、だ、大丈夫ですか!?」
ただ、その場に崩れるしかなかった…。
548:413の奇妙な1日 6/8
09/02/09 03:22:22 OtBeaGGu
413 「本当に御免なさい…私、どうかしていたみたい。
最初にかけられた声で、すっかり混乱していたわ…」
私は412と居間のコタ・ツダイに座っていた。
汗びっしょりになってしまった為、私はシャワーを貸してもらうだけに留まらず
412から服を貸してもらったんだけど…どういうわけかこれ、GH-422の服なのよね。
もう、何でこんな所にニャックルの服があるのよ? 胸元が寒いったらありゃしないわ。
でも、これくらいすれば少しはあの鈍バカも私に…そうよ、少しくらい振り向いたっていいわよね?
412 「さ、どうぞ」
413 「………ハッ!? あ、ありがとう。頂くわ」
…迂闊、また想像の世界に旅立つ所だったわ。
412が出してくれたお茶を飲み、冷静さを取り戻そうと必死になる私。
らしくないわ、今日の私は全然らしくない。誰にも見せられない恥晒しよ。
ミスターファイアーヘッドになってないかしら…。
ネタが古い? いいのよ、私は捏造なんてしないし手柄の横取りもしないわ。
413 「…聞いてもいいかしら?」
412 「はい、何ですか?」
413 「どうして、武器を構えた私にあんな事をしたの…?
私はもしかしたら、手を振り解いて斬りかかっていたかもしれないのよ?」
412 「貴方がそんな事をする人には思えなかったからです。
何かに脅えてるんじゃないか、そう私には見えたんです」
413 「全てお見通しだったわけね。
でも、どうしてそんな事が貴方に分かるのかしら?」
412 「そういえば、どうしてでしょうね?」
412はきょとんとしながら考え込み始めた。
…本人でもよく分かっていないのかしら? その妙な観察力に。
普通、レーダーにも映らない物の存在なんて確認できっこないわ。
412 「上手く説明出来ないんですけど~…何時の間にか分かる様になってたんです。
そこには人がいる気配がするなーとか、この空気は私にとって凄い危険だなーとか」
413 「…何それ? まるで漫画みたいな話じゃない」
412 「あはは…そう言われてみればそうですねー。
でも、実際そんな感じだからそうとしか言えないんですよ」
彼女は笑っている。
なるほど、確かにこれは異常ね。というか、解釈次第では脅威だわ。
だって見えない物の存在に気付けるんでしょう? 奇襲が通じないじゃない。
戦う事しか考えない連中が妄想の限りを尽くせば、彼女の危険度は鰻登り間違いなしね。
まぁ、私も最初は恐怖したけど…今はそうでもなくなった。
むしろ、この娘になら何を話しても大丈夫なんじゃないかとも思うようになった。
ヒュマオ「娘って失礼だろ、初期型って事はお前よりもっと歳うえんぷれすぅ!!!」
黙ってなさい。女性の歳に触れるなんてデリカシーのカケラもないわね。
412 「私からも聞いていいですか?」
413 「え、ええ…大体察しはつくけど」
412 「では改めて、どうして今日はここに?」
549:413の奇妙な1日 7/8
09/02/09 03:24:13 OtBeaGGu
私は全てを話す事に決めたわ。
主人の所属先、主人の裏の仕事。そしてその標的にされかねない事実を。
きっと私の主人の事をとんでもない奴だと思うかもしれない。恨み言も言われるのを覚悟の上だ。
けど、彼女は途中で怒りながら立ち上がる事もなく、私の話を黙って聞き続けてくれた。
413 「…どうしてか、貴方に興味が沸いたのよ。
こんな言い方は失礼かもしれないけど、今回だけはどうしてか。
いつもは単にPMが1人消えるだけだと思ってたけど…」
412 「そんな事情があったんですね…」
412はお茶を飲み、ふぅと一息ついた。
412 「確かに私も同じ状況だったら、気にしちゃうかも。
あーでも、見に行ったら余計変な事を考えて眠れなくなっちゃうそうです」
413 「あ、貴方何とも思わないの? 今から殺しますって言ってるような物なのよ?」
412はお茶碗をテーブルに置くと、少し悲しそうな顔になった。
412 「…私が異常なのは、最近は私自身がよく分かってきてるんです。
他のマシナリーが出来ない事も出来ちゃうし、分からない事も分かるし。
同じような固体と戦って勝っちゃうし、それから体のいいお茶屋さんにされるし…!」
…お茶屋? 後半に凄い怒りを感じるのは気のせいかしら?
いや、気のせいなんかじゃないわね。手が震えてるのが分かるし。
とにかく複雑な状況にあると言うのだけは理解した…本当に色んな意味で。
412 「ガーディアンズを恨みはしますけど、それはあくまで上層部です。
貴方のご主人様みたいな、生きる為に止む無くそういうお仕事をしていらっしゃる方なら
私には何も言う権利はありません。だって怖いじゃないですか?
人間で例えるなら、SEED感染体が堂々と歩いてるような物ですよ。
私だって自分がワンオブサウザントじゃなかったら、いなくなってほしいと思っちゃうかも」
…まるで人間みたいな物言いね。
私達はガーディアンズに仕える事が最優先とプログラムされているから、逆らおうとは思わない。
でもこの娘は、はっきりと自分の意思を持っている…。
412 「あ、でも勿論抵抗はしますけどね?
ご主人様が私を捨てない限り、私はご主人様のパートナーでありたいですし」
413 「…それは困るわ、私も貴方と戦わなきゃいけなくなっちゃうじゃない」
412 「あはは、そうですねー。それじゃあ、そうならないようにしてください」
…私に何が出来るって言うのよ。
気が付いたら、私はすっかりジョークを飛ばせるくらいに落ち着けていた。
550:413の奇妙な1日 8/8
09/02/09 03:26:54 OtBeaGGu
彼女は異常を持つワンオブサウザントと言われる存在。
ガーディアンズにとって、恐怖の対象であり可能なら即座に消さなければならない存在。
でも、私は会ってみてそれは少し極解じゃないかと思えてきた。
実際に話してみると、彼女は私達とあまり変わらない、パートナーマシナリーだ。
自我を持っていたり、特異な性能を持ってはいたけど、それが万事危険に繋がるかしら?
現に私が今、彼女と居間でお茶を飲んでいるこの状況こそがいい証拠じゃない?
一度は死も覚悟したのに…骨折り損だわ。最初から分かっていれば恥かかなくて済んだのに。
気が付くと、夜はすっかり更けていた。
413 「…あら、すっかり長居しちゃったわね。
私はそろそろ帰る事にするわ」
412 「あ、ごめんなさい。すっかり話し込んじゃって…」
413 「いえ、いいのよ。お陰様で色んな事が分かったわ。
貴方には迷惑だったかもしれないけど、私はここに来てよかったと思ってるの」
来なかったら、こんな事に気付けなかったしね…。
きっと他のワンオブサウザントも、色んな事情があるんじゃないかって。
412 「あはは、じゃあ是非またいらっしゃってください」
413 「…え? ちょ、ちょっと待って! そ、それは流石に…」
412 「どうしてですかー?」
413 「わ、私は一度気の迷いとはいえ貴方を殺そうとした存在なのよ!?
それに、私の主人がいずれ貴方を殺しにかかってくるかもしれないのよ!?
そんな人に、是非また来てくれなんて言ったらダメよ! もしかしたら…」
412はくすくすと笑い始めた。
412 「でも、今は違うでしょ?」
413 「だ、だからっ…むぐっ」
412は人差し指で私の口を塞いできた。
412 「それに、私と戦う事になったら困るんでしょう?
避ける為に何とかしてくださいって言ったじゃないですか~。
私は信じてますよ? 貴方はもう私を殺そうとしたりしない人だってね?」
…また見破られてるみたい。
参ったわ、この娘には今の私じゃどうやっても勝てないみたい。
413 「…そ、そうね。気が向いたらまた来てあげてもいいけど?」
412 「ふふ、それじゃあその時を楽しみにしてますね」
こうして、私は412に見送られ、帰路に着いた。
本当に色んな事があって、色んな事を考えさせられる1日だった。
そして迂闊にも私は、彼女が標的にならない事を願う様になっていた…。
551:413の奇妙な1日 エピローグ
09/02/09 03:28:39 OtBeaGGu
*ぷしゅ~*
413 「只今」
部屋のドアロックを解除して、私が一番最初に見た物は…。
444 「あ、姉さまおかえりなさい~!」
いつもの様に明るく、私の帰りを歓迎する444の姿と…。
ヒュマオ「遅かったな、何処に行ってたんだ?」
450 「あ、お帰りなさい」
主人の膝の上に…450がすわっ…!!
私の電子頭脳の、理性と言うアプリケーションが機能を停止した。
目 標 確 認 、 排 除 開 始 !
413 「………ふんっ!」
*ひゅんひゅん、ざっくぅ!!*
ヒュマオ「ヴぉばまぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
450 「きゃあああああっ、ご、ご主人様ぁぁぁぁぁっ!!!!」
すっかり忘れてた。
混乱していた時、ハルプセラフィの出力を最大にしてから、ずっとそのままだったわ。
ま、問題ないでしょ? いいお灸だわ、私を差し置いて450を膝の上になんか…。
じゃなくって! 家の中とはいえメルヘンな事をしていた罰ね!
- 終 -
552:名無しオンライン
09/02/09 19:35:11 zzPVdu31
491kか。ヤバイな・・・ちと行ってくる
553:552
09/02/09 19:43:38 zzPVdu31
ERROR:新このホストでは(ry
後は、頼ん・・だ・・ぞ
合言葉は
( ゚д゚ )<倫理的におk
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
\/ /
 ̄ ̄ ̄
[ ´・ω・`]<創作能力がしょぼいんだけど投下していいの?
( ゚д゚)<倫理的におk 尋ねる暇があったら投下マジオヌヌメ
[ ´・ω・`]<凄く長くなったんだけどどうすればいい? あとパシリ関係ないのは?
( ゚д゚)<空気嫁ば倫理的におk 分割するなりうpろだに上げるなりするんだ
[*´・ω・`]<エロネタなんだけど…
( ゚д゚)<ライトエロなら倫理的におk あまりにエロエロならエロパロスレもあるよ
【PS0/PSU】ファンタシースターシリーズのエロパロ
スレリンク(eroparo板)
[ ´;ω;`]<叩かれちゃった…
( ゚д゚)<叩きも批評の一つ。それを受け止めるかどうかはおまいの自由だ
m9(゚д゚)<でもお門違いの叩き・批評はスルーマジオヌヌメ するほうもそこを考えよう
[ ´・ω・`]<投稿する際に気をつけることは?
( ゚д゚)<複数レスに渡る量を書きながら投稿するのはオヌヌメできない。まずはメモ帳などで書こう。
m9(゚д゚)<あとは誤字脱字のチェックはできればしておいたほうがいいぞ
[ ´・ω・`]<過去の住人の作品を読みたいんだけど
( ゚д゚)<まとめサイトあるよ URLリンク(www.geocities.co.jp)
保管庫Wiki URLリンク(www21.atwiki.jp)
( ゚д゚)<前スレ
【PSU】新ジャンル「パシリ」十七体目
スレリンク(ogame3板)
( ゚д゚)<次スレは容量が470kを超えるか、>>800を超えた辺りから警戒しつつ立てよう
554:名無しオンライン
09/02/09 20:38:06 OtBeaGGu
すまん、立てたはいいけどスレ名書き換え忘れた
555:名無しオンライン
09/02/10 00:28:28 D/gV5oib
そのまま使う事になりそうなんで誘導
スレリンク(ogame3板)l50