08/08/09 19:54:44
>>679
肩に置いた手を振り払われた時、サイがそう思った。＞虫けら
『「うわあ！すげー！これで十五機だぜ！」「へぇーっ！」“アークエンジェル”の左舷格納庫の一角で、少年たちが口々に興奮した声を発していた。
通りかかったトールが近づいて声をかける。「なにやってんの？」“スカイグラスパー”のシミュレーターを取り囲んでいたミリアリアやカズイが振り向く。
「あ、トール、見て！この子すごいの！」「わぁっ！？また一機！」シミュレーターに座り、操縦桿を握って“スカイグラスパー”を操っていたのはカガリだった。
興味を引かれたノイマンも寄ってきて、みなの背後からのぞき込み、面白がりつつも意外そうな顔になる。「たしかにやるねえ。えーと、カガリちゃんだっけ？空中戦の経験ある？」
カガリは得意げに笑い、トリガーを引いた。画面の中では最後の敵機が撃ち落され、シミュレーション終了をしめす画像に切り替わる。被験者の成績が並び、カガリの名前がダントツの
トップに表示された。みなが感嘆の声を上げると、カガリはまんざらでもないといった表情になる。「二発くらっちゃったかな」「でもすごいじゃん！俺なんか、戦場に入ったとたんに
落とされたもん」カズイが興奮して言い、ミリアリアは「私も……」と情けなさそうに笑う。「え、なになに、みんなもうやったの？」トールが身を乗り出す。
「お前ら軍人のくせに情けなさすぎ。銃も撃ったことないんだって？」カガリはぴょんと座席から飛び出した。「んなこっちゃ死ぬよ？戦争してんだろ、戦争」
馬鹿にした調子で言い、立ち去る彼女を見送って、ノイマンが苦笑いする。「…たしかに」「なによぉ、威張るようなことじゃないわよ、銃撃ったことあるなんて」
カガリの背中を見やりながら、ミリアリアがつんとして言うと、「撃ったことないのも威張れることじゃないな、軍人なんだから」ノイマンがちくりと釘を刺す。
ミリアリアとカズイが、しゅんとして顔を見合わせた。』