08/08/05 19:04:38
(カガリが撃墜されて行方不明になったシーン)
『「MIAと認定されますか?」ナタルが淡々と問うた。その言葉にマリューは眉をひそめる。「…なんです、それ?」サイが小声でたずねると、
トノムラがやはり声をひそめて答えた。「戦闘中行方不明。まあ……『確認してないけど戦死でしょう』ってことだな、軍人には」
サイとミリアリアがぎょっとした様子で顔を見あわせる。マリューはナタルの問いかけに、むっとした顔で応じた。「それは早計ね、バジルール中尉、。
撃墜は確認されていない」彼女はパルを振り仰ぐ。「―日没までの時間は?」「約一時間です!」「捜索されるおつもりですか!?」
ナタルが心外そうに声を上げる。「ここはザフトの勢力圏ですよ!」彼女の反論をまるきり無視し、マリューはつづける。
「上空からはもう辛いわね。―簡単な整備と補給が済んだら、“ストライク”に海中から探してもらうしかないわ」「艦長!」
声を荒げるナタルを、振り返ってきつく睨みつけ、マリューはぴしりと言った。「報告にでも記録にでも、好きに書きなさい!」さしものナタルも、
これには鼻白んだ顔で黙る。マリューはあっさりと前へ向きなおった。今更失点が増える事など気にもならない。自分の判断を問われるなら、
これまで散々ミスを犯してきたと思う。評価はアラスカにたどり着いた時、上官が勝手に下してくれるだろう―もしたどり着けたら、だが。
しかしあの少女は民間人であるにもかかわらず、艦を守るため自発的に“スカイグラスパー”に乗ってくれたのだ。ややけんかっ早いところがあり、
向こう見ずではあるが、その思いは純粋で潔い少女だ。そんな彼女を、機体の捜索もせずに見捨てる事などできるはずがない。
ナタルから見れば、むしろ自軍の兵士でもないものの捜索など時間の無駄だという事かもしれないが。