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立ち読み部分をOCRソフトで起こしてみました。
読み取りミスはざっと訂正してみましたが、間違いがあったらごめんなさい。
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第一章 ルポフニャからボーランドへ
一九四五年一月だった。僕たちが乗った列車には屋根がなく、東ヨーロッパの
冬に特有の厳しい寒さ、風、そして雪をしのぐことはできなかった。そのとき僕
たちはポーランドにあるアウンユビッツからドイツのザクセンハウゼン強制収容
所に向かうためにチェコスロバキアを通過していた。列車が線路の上にかかった
橋に近づくと、橋の上の人々が手を振っているのが見え、そして、突然パンがい
くつも降ってきた。それから次の橋やその次の橋でもパンが落ちてきた。アウシュ
ビッツから三日間強制的に歩かされたあとにこの列車に乗って以来、僕は雪以外
のものは何も食べていなかった。僕たちはやがてやって来るソ連の軍隊よりもほ
んの数日先に移動していたのだ。たぶん、このパンが僕の、そして一緒にいたた
くさんの人々の命を救ってくれた。「アウシュビッツ死の行進」として知られる
ようになった移動の中で。