10/01/11 15:01:38 8zE0eBXK
大晦日に妻と僕はホテルのベッドに並んで紅白を見ていた。
二人で黙って画面を見ていると、画面に水樹奈々が映し出された。
「この人だあれ?」
妻はテレビに向かって呟いた。
その横で僕はあらゆる言葉を失っていた。水樹奈々がどうして紅白に出ているんだろう。
8年振りに水樹奈々の声を聴いたことで、僕の心の中の何かが音を立てて動いた。
「この人知ってる。昔シスタープリンセスの亜里亜の声を当ててた人だ」
妻は僕の顔を不思議そうに見た。
「それはなあに?」
僕は画面から目を離さずに語り始めた。
「シスタープリンセスは12人の妹たちと、たった一人の兄の物語なんだ。
亜里亜は12人の妹たちの中でもかなり幼い部類で、いつも兄のことを兄やって呼ぶんだ」
妻はよくわからないという顔をした。
「出演声優たちがユニットも組んでた。プリッツ。水樹奈々、桑谷夏子、小林由美子、望月久代。最高のメンバーだ」
「よくわからないけど、あなたはその人たちが好きだったのね?」
「そうだね」僕はあまりの懐かしさに涙が出そうになったが堪えた。「好きだったよ」
妻は首を振ってトイレに行ってしまった。
一人ベッドに残された僕は12人の妹たちの名前を一人ずつ呼んだ。
可憐、花穂、衛、咲耶、雛子、鞠絵、白雪、春歌、千影、鈴凛、四葉、そして亜里亜。
世の中のどれだけの人間がシスタープリンセスの妹たちの名前を一人残らず言えるだろう。
僕は決心した。いつか街に帰った時に、押入れから僕のシスプリコレクションを持ち帰ろう。
そして2chのシスプリスレで妹たちについて語り合うのだ。
やれやれ、僕は26歳の妻帯者にしてオタクの世界に戻ろうとしていた。