08/07/31 11:14:50 RFHG/UTz
隣に座っている彼女は、熱心に被災地のテレビを見ていた。
地震によって命を失ってしまった人の親族には、多くのマイクが向けられていた。
レポーターたちはイベント会場に無料で入って来た中学生のように見えた。
まるで猿だ、と僕はつぶやいてみた。
「ああいう人たちって、そのうち誰にも相手にされなくなっちゃうと思うの」
僕は彼女の耳にそっと触れた。それは小さく、とてもすてきな形をしていた。
さっき出来たばかりの新しい耳のようだった。
「十月の終わりの桜の木みたいに?」
彼女は肩をすぼめた。
「そうね、十月の終わりの桜の木のように」