09/05/04 19:46:20 bVnowgVA0
池田信夫 blog
社畜はいかにして生まれたか
長期雇用を求めたのは経営者だった。第一次大戦後の好況で賃金が
高騰したため、鐘紡の武藤山治などは「家族主義」をとなえ、医療や
年金などのfringe benefitを創設した。そのねらいは熟練工を企業内
に囲いこんで自由を奪い、労働市場の競争圧力を弱めることにあった。
こうした経営は「日本的経営」の元祖として賞賛されたが、武藤みず
から回顧録で述べているように「其動機は決して人道上からでも何
でもなかつた。矢張り算盤珠からである」。
賃金を引き上げるには、基本的には労働生産性を上げるしかない。
そのためには労働市場を競争的にして自然失業率を下げ、労働者が
会社を選ぶ外部オプションを広げることが長期的な解決策だ。
そういう改革が「ネオリベ」だとかいう下らない議論は、会社に
一生しばりつけられる「社畜」を理想化する固定観念にもとづいて
いるが、多くの調査結果が示すように、日本のサラリーマンの大部分
は自分の会社に強い不満を持っている。彼らは転職のオプションが
絶たれているために、会社にしがみついているにすぎない。
このような社畜状態を家族主義とか「人本主義」などという言葉で
美化する傾向は、財界から労働組合に至るまで共通だが、彼らの
既得権の外側にいるフリーターはそんな価値を信じていない。そして
グローバルな水平分業によって日本型の文脈的技能の価値は低下し、
ポータブルな専門的技能が重要になっている。時代は、大正期の
自由労働者の時代に戻りつつあるのかもしれない。