10/02/05 22:26:06 lF+8wppN
ユカタン半島、プラヤ・デル・カルメン北西部に「カシュカの森」と呼ばれる小さな森林がある。
そこは昔、「カシュカ」と呼ばれる小悪魔妖精に村民が苦しめられたという。
狩猟に出かけた男たちが、森の中で「カシュカ」に出会うと、一瞬にして灰にされてしまうからだ。
村民たちが長年の間「カシュカ」に対抗する手段を考えた結果、
どうやら、「カシュカ」の魔力は子供にはイマイチ通用しないということが判明した。
それによって、狩猟に出かける時には、子供たちを先頭に置いて行く方法が編み出された。
先頭を行く子どもたちが「カシュカ」を見つけると、急いで戻って大人たちに知らせるのだ。
ところがある日、先頭に行かせた子どもたちが中々戻ってこない日があった。
心配した大人たちが探しに行くと、どうやら子どもたちが輪になって踊っているように見えた。
今までに見たことがないほどの子どもたちの弾けるような笑顔。
その中心にいたのは、「カシュカ」だった。
「あ。カシュカだ」
その光景を見た大人たちは瞬時に灰になった。
それから再び長い月日を経て、村民たちは「カシュカ」対策に頭を捻った。
そこから導き出された答えは「カシュカの魔力を無効にするのは『笑顔』だ」というものだった。
勇気のある大人たちが、再び「カシュカの森」に入っていった…。
現地言で「スキッス!(我は恐れず)」という言葉を胸に抱いて…。
それ以来、何故か村の男たちは特に用もないのに「ちょっとパトロールしてくるわ」などと言って
ニヤニヤしながら頻繁に「カシュカの森」に訪れるようになった。
夜な夜な繰り広げられる「カシュカ」のダンスパフォーマンスの虜になってしまったのだ。
その宴は何年も何年も続いたという。
ところがある晩に、感極まった男たちがキモチワリュイ笑顔全開で「スキッス!スキッス!」と
踊り狂っている場面を見た「カシュカ」は、急に顔をクニュッとゆがめると、涙を流してその場から消えてしまった。
その涙を最後に、「カシュカ」を見るものはいなくなったと言う。
それ以来、「カシュカの森」は、四季を通じて花が咲き乱れる森林になった。
それはまるで「カシュカ」が思い描いていた「夢」が咲き乱れるようにみえると言う。