落ち着いてLRS小説を投下するスレ8at EVA
落ち着いてLRS小説を投下するスレ8 - 暇つぶし2ch100:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/12/15 22:53:59
すげえ良い内容だ乙

101:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/12/15 23:41:53
と、糖分が足りない…

102:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/12/16 13:24:26
やっと読めたー乙です!
あと一話で終わるのかぁ…(´・ω・`)

103:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/12/16 14:12:10
おおおおおおおお乙です!!!!!
こんなすげえ話が読めて幸せすぐる

しかし…

リツコォオオオオオオやーめーてー

あと一話って!?

104:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/12/16 14:30:07
>>103
最後は長いから分割するって言ってたよ。つい最近

105:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/12/18 15:03:31
>>104
あ そうだったな
ありがとう

それにしてもあと2回で終了か・・・うう

106:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/12/18 22:32:23
この黒レイがみんなに反感買ってた去年から
俺はタダモノではないと思っていたぜ…

なんてなー

最終話楽しみにまっています作者様

107:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/12/18 22:33:44
あれ…去年って何

108:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/12/19 22:22:55
これだけのものを自サイトではなくここで公開してくれる神に感謝だよ

109:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/12/19 23:18:10
乙です。律子の復讐が怖すぎる。死にかけていたのを無理やり生き返らせてまでしたい復讐とはいったい何なのか。
引きが強くていいですね

110:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/12/26 22:32:48
まだかなまだかな

111:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/12/29 01:05:58
もうしばらくの辛抱だ

112:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/12/31 14:44:39
投下マダー? 今年が終わっちゃうよー(泣)

113:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/12/31 15:17:27
まさかのお年玉!?

114: ◆IE6Fz3VBJU
09/12/31 15:24:54
いや……その……

115:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/12/31 15:28:40
いいっすよ。気長に待ってますから。

116:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/12/31 18:35:49
あせるこたぁない
単行本に比べたら全然早いくらいw
いつまででも待てるからがんばってね~

117:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/12/31 19:04:19
>>116

そうそう。世の中には三州公の突撃の結末を十年以上も明かさない佐藤大輔という作家もいることだしね

118:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/12/31 19:31:13
レス数が伸びてるから投下キタ━━(゜∀゜)━━!!とwktkした俺orz

119:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/01/04 07:31:55
お年玉投下もなかったかorz

120:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/01/07 11:52:41
投下待ち(´・ω・`)

121:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/01/09 19:34:25
そんなに急かさなくったって

122: ◆IE6Fz3VBJU
10/01/10 01:19:56
>>92

16.

―何だろう? 
シンジは不安げな面持ちで、カチカチと音を立てて数字が増えていく風変わりな階数表示盤を見つめていた。エレベーターの中は、どこか息が詰まるような感じがする。
つい先ほどリツコから電話があり、何でも用件はレイのことだという。何故僕なんですか、というシンジの問いかけに、リツコは、デリケートなことだから―と口を濁すだけだった。
それから―と、リツコはとっておきの秘密を告げるような口調で、誰にも言わないように、と付け加えた。
シンジには用件の内容は全く推測できなかったが、レイのことと聞いては行かないわけにはいかなかった。
「ようこそ、シンジ君」
ネルフ本部にあるリツコの私室は、持ち主の性格を表してか、整然としていた。おびただしい本が―ほとんどはシンジにはその内容すら類推できないような
専門書だった―きちんとラベリングされ、書架にずらりと並んでいる。
ミサトさんも少しは見習えばいいのに……と、シンジは頭の片隅で考える。もっとも整理整頓できるミサトは、もはやミサトではない気もしたが。
シンジは挨拶もそこそこに、本題に入った。
「いったいどうしたんですか、リツコさん。綾波のことだって言ってましたけど……」
「ここに来ることは誰にも言ってないわね?」リツコはシンジの質問に答えず、シンジに確認する。
「ええ……」シンジの顔に不安が徐々に浮かび上がってくる。
「そう」リツコは満足そうにうなずくと、机の引き出しから一枚の写真を取り出して立ち上がった。
「これを見て欲しいの」
「はい……」
シンジはリツコの顔から写真へと視線を移し―悲鳴を上げた。
「な……何ですか、これ!?」
写真にはエントリープラグ内のレイの姿が鮮明に映し出されていた。両脚は潰れていて、全身が血まみれの無残な姿がある。
「何って……この間の戦闘のあとのレイの写真よ」
シンジは写真から目を逸らそうとしたが、磁石のように吸い付いて離れない。

123: ◆IE6Fz3VBJU
10/01/10 01:23:02
「う、嘘だ……」
「なぜ?」
「だって……綾波は元気にしてる。参号機と戦ってから三週間も経ってないのに、こんなに酷い怪我が治るわけがない!」
「私が嘘をつく必要はあるかしら?」リツコは黒い眉を上品にしかめてみせた。言葉に詰まるシンジに、「これは本当のことなのよ、シンジ君。現実なの」
嘘だ、と再び呆然と呟くシンジ。突然吐き気を催したように腰を折り、口に手を当てた。
「シンジ君」
リツコはシンジに合わせて腰をかがめ、シンジの耳に囁いた。
「レイの秘密を知りたくない? いえ、違うわね。レイがこんな目に遭ったのはあなたの責任でもあるから、知る義務と責任があるわ」
シンジは限界まで目を見開いて、リツコの妖しく光る瞳を見つめた。

 □

呼び止められて振り向いたとき、レイは相も変わらぬ無表情だったが、リツコは以前とは違うものを見出していた。それはある種の穏やかさだった。
群雲のように湧き上がってきた嫌悪感をリツコは必死に抑える。
もう少し。もう少しで、この顔が絶望に歪むのを見られるのだ。
レイは、発音するために必要な最小限度分だけ口を動かした。「なに?」
リツコは腕時計に目を走らせた。「あなたさえ良ければ、今から一緒に来て欲しい場所があるのだけど」
「……何の用で?」
なぜ私が、という顔をするレイ。
「シンジ君のことで」
「碇君?」
レイの声にリツコでなくても分かるほどの感情がこもった。
「碇君の、どんなこと?」
「シンジ君が黒い球体から出てきたときのことを覚えてる?」
「ええ」
「それから本部まで侵入してきた使徒を迎撃するさいに、シンクロ率400%を超えたことも覚えてるわね」
「当たり前よ」
そんなに前のことではないのだから、忘れるわけがない。
「分析の結果、シンジ君があなたと同じということが判明したの」
「私と同じ!?」レイが目を大きく見開いて叫んだ。「どういうこと?」

124: ◆IE6Fz3VBJU
10/01/10 01:24:20
リツコは周囲を見渡すと、声をひそめた。「複雑な話なの。ここで立ち話をするわけにはいかないわ。何より、機密事項なのよ。……一緒に来てくれるわよね」
レイは少し躊躇ったが、結局はうなずいた。
リツコは内心ほくそえむ。こんなに簡単にいっていいのかと思うほど見事に引っかかってくれた。これもシンジのお陰だ。
「じゃあ、行きましょうか」リツコは、囁くように言った。

「どうしたの、レイ?」
エレベーターホールを出たところで突然立ち止まったレイを、リツコは、だだをこねる子供を見守る母親のような、少し困った笑顔を浮かべて振り返った。
レイは端正な白い顔を引き攣らせると、一歩後ずさった。
長い廊下の先にあるドアの向こうで、何かが待っていると本能的に分かったのだ。
何か、良くないものが。
「どうしたの? いったい」と、リツコは繰り返す。今度は笑いは浮かんでいない。目を細め、無表情になっていた。
レイはゆっくりと首を振った。「加持リョウジを病院に来させたのは、あなたね?」
「あら」リツコは目を丸くした。わざとらしい仕草だった。「よく分かったわね。正解よ」
「いったい、何が目的?」
「勿論、あなたのためよ。碇君に会いたいだろうと思って。私だと、立場上差し障りがあるから」
「嘘」
「嘘? なぜ私が嘘を?」心外な、という表情。これもわざとらしく、芝居がかっていた。
「あなたが私のために何かするわけがないもの」
リツコはレイの顔を穴の開くほど見つめると、急に笑い声を上げた。
「酷いわね。少しは他人を信じるものよ。……さ、もう行きましょう」
リツコはレイのほうに一歩進んだ。レイはかぶりを振った。「行きたくない」
ため息をつくと、「我儘は困るわ、レイ」
素早く手を伸ばすと、レイの左手首を掴んだ。
「放……せ」
レイは腕を引っ張り、びくともしないことが分かると、右手でリツコの身体を叩きはじめた。片手であり、また大人と子供ということもあって、何の効果もなかった。
「あらあら。そんなまどろっこしいことをしないでも、ATフィールドを展開したら済むんじゃないかしら?」
「そんなことをしたら、あなたが死ぬわ」
「別にいいわよ。やってご覧なさい」
「脅しと思ってるの?」

125: ◆IE6Fz3VBJU
10/01/10 01:26:09
「だからやってみなさい」
レイの頬が引き攣った。沈黙が分厚い壁のように二人の間に立ちはだかった。
「やっぱり、思った通りね。もうできないのね、レイ」リツコは唇の端を吊り上げる。「おめでとう、レイ。あなたは……人間になれたのよ。喜びなさい」
「何……言ってるの」
「まぁ、それは置いといて。どうしても行きたくないというなら、一つ教えて貰おうかしら」
「何を?」
「首を絞められる前に、あなたが母に言ったこと」
「……何も言ってないわ」
「言いたくないのならいいわ。シンジ君に話してしまうわよ? あなたが怪我したフリをして、シンジ君をエヴァに乗せたこと」
レイはねめつけるようにリツコを見る。
「好きにすれば?」平然と言い放つ。少なくとも、本人はそのつもりだった。
「本当にいいの?」と、リツコは、叱られてご飯なんかいらないとダダをこねる子供を諭すように優しく言う。
レイは黙りこんだ。シンジに謝ればいいだけの話だった。確かにバツが悪いが、取り返しのつかないようなことではないだろうと思う。何なら、リツコがばらす前にこちらから告白してしまえばいい。
「じゃあ、あなたがシンジ君に押し倒された場面を相田君に撮らせていたことは?」
予想外の言葉にレイは硬直した。「な、何で……」
「ふふ。実はね、あなたの部屋に盗聴器を仕掛けておいたのよ」恐るべき内容とは裏腹に、笑顔を浮かべて、「あなたは部屋に鍵もかけないし、こっそりコピーをとるのは楽なものだったわ」
レイはリツコの異常とも言える執念に絶句する。
「で、どうなの、レイ? 考え直してくれた? シンジ君、どう思うかしら。どうせあなたのことだから、あれをネタに言うことを聞かせようとするつもりだったんでしょう」
レイは一言もない。その通りだったからだ。
「さすがにこれは、ねぇ? シンジ君、あなたのこと―嫌いになっちゃうんじゃないかしら」
「……」
「さ、シンジ君に黙っていて欲しければ話しなさい」
レイは俯いて唇を噛みしめた。
リツコはレイの表情の変化を見逃さなかった。携帯を取り出して、「嫌ならいいのよ。今シンジ君に電話して教えるから」
「待って!」レイは白い顔をさらに白くして叫んだ。
「なぁに?」
「……やめて。言うから」
「やめてください、じゃないのかしら? 人に物事を頼むときは」

126: ◆IE6Fz3VBJU
10/01/10 01:27:30
レイは顔をゆがめる。「……やめて、下さい」
「よく出来ました」リツコはにっこり笑って、「それじゃあ言いなさい。あのとき、母に何と言ったの? 本当のことを言うのよ、レイ」
「……ばあさんは用済み」
「何ですって?」
「"所長がそう言ってるのよ、あなたの事。ばあさんはしつこいとか、ばあさんは用済みだとか"」
レイは目を閉じて、あのとき言った台詞を忠実に繰り返した。
「それ、本当に司令が言ったの?」リツコの顔はいつの間にか能面のように無表情になっていた。
「……」
「レイ!?」
リツコはレイの手首を握った手に力を込めた。くっ、とレイがうめき声を上げる。
「言いなさい。言わないとシンジ君に全てを話すわよ」
レイとリツコの視線が絡み合う。しかし、この勝負の決着はすでに着いていた。
「……でたらめよ。たまたま見ていたテレビドラマか何かの台詞を適当に変えて言っただけ。あのときはあなたの母と司令が付き合ってることも知らなかったし」
「そのでたらめで母さんを殺したのね」
「殺してないわ。あなたの母親は事故で死んだのよ」
「殺したも同然よ」
「だいたい、あの女が余計なコンプレックスを持っていたのが悪いのよ。そうじゃなければ……」
途中でレイは沈黙した。リツコがレイの頬を平手打ちしたからだった。
「それ以上何も言わないで。言うと殺すわよ。あなたじゃない、シンジ君を、ね。……さぁ、それじゃあ行きましょうか、レイ。楽しいパーティのはじまりよ」
「なっ。本当のことを言ったら行かないって……」
「あら。私はシンジ君にビデオのことを言わないって言っただけで、あの部屋に行くことは何も言ってないけど?」
「だ……騙したわね」
「あっはっは! あなたからそんな台詞を聞くなんてね。さ、もういいでしょう。パーティに相応しい特別ゲストも用意してるのよ。楽しみにしててね、レイ」
リツコはレイを引きずるようにして歩き出した。
レイはリツコの手に血が出るほど強く爪を立てて抵抗したが、リツコは全く意に介さなかった。
特別ゲスト。
レイの肌が粟立った。何が待ち構えているのか分からないが、レイの全身の細胞が、魂がこの先を拒否していた。

127: ◆IE6Fz3VBJU
10/01/10 01:31:44
「あ……あ……」
レイは生まれて初めての恐怖に遭遇していた。あまりの恐怖に言葉が出ず、ただ首を振って哀願するだけだ。
リツコはその表情をご馳走を目の前にした美食家のように見つめると、一見すると全く邪気のないような笑顔を浮かべた。
手を伸ばしてレイの顔を優しく撫でる。
「私はね、あなたのその顔が見たかったのよ。その顔さえ見られればよかったの。これで許してあげるから、もうおいたは無しよ」
レイの全身から力が抜けた。助かった、と思った。安堵のあまり膝を地面に着きそうだった。
「なんて、ね」
リツコはレイを引き寄せると、力いっぱい抱きしめて、愛しい我が子に子守唄を唄うような調子でそっと囁いた。
「冗・談・よ。あなたは、絶対に、許さない」
レイは、悲鳴をあげた。

「私はね、レイ」
「あなたが人間になるのをずっと待ってたのよ。この日が来ることをどんなに待ち焦がれたか、あなたには分からないでしょうね」
「多分、シンジ君に会う前のあなたなら、何の衝撃も受けなかったでしょう。だけど今は違う。あなたはシンジ君を知って人間になった」
「人間になったあなたが、あれを見てどんな風に思うか」
「いえ、違うわね。あれを見たシンジ君を見て、あなたがどう思うか、ね」
「楽しみだわ」
「私はこの日を何年も待ち続けてきたのよ」
「本当に、楽しみだわ、レイ」
「そう、何年も何年もね」
「これは報いよ」
「これは報いなのよ、レイ」
リツコはレイに向かってというよりも、独り言のように呟きながら廊下を歩いていく。
レイも、リツコに引きずられるように―いや、実際に引きずられていく。その顔から一切の表情が失われ、生気のなさはまるで人形のようだった。
すぐに扉の前まで来た。
「まずはあなたに見てもらわなければね」

128: ◆IE6Fz3VBJU
10/01/10 01:32:57

レイはリツコの足元にぺたんと座り込んで「それ」を待っていた。
それ―すなわち、破滅を。
巨大な獣がぱっくりと口を開けて、レイをその黒々とした洞の中に飲み込もうとしているのだ。
逃れる術はないことは、レイには分かっていた。
部屋の明かりは最低限度まで落とされている。傍から見ると、床に座り込んだレイの姿は暗闇に溶け、同化しているように見えるだろう。
リツコはずっと楽しげで、上機嫌だった。鼻歌すら歌っていた。
どれくらいの時間が経ったのか。レイには永遠にも思われたし、一瞬のようにも感じられた。
扉が開く、シュッという小さく擦れるような音は、レイにとって、世界の終わりを告げるラッパの音に等しかった。
そこにあらわれたのは―
当然、シンジだった。困惑した様子でおずおずと部屋に入ってくる。「リツコさん―?」
「あら。意外と早かったわね」時間通りと知りながらも、腕時計に目を走らせてリツコが言った。「もう少し気をもたせてよかったのに」
レイを見下ろしながら、ふふ、とリツコは含み笑いを洩らす。その笑みがシンジの後に続いて入ってきた人物を見て固まった。
「ここは一体……何なの?」
「ミサト……!?」リツコの驚きは、しかし、一瞬だった。「あなた、昨日夜勤だったでしょう? 寝不足はお肌に悪いわよ。お互い若くないんだから気をつけないと」
リツコのふざけた調子の台詞にも、ミサトは険しい顔つきを崩さなかった。
「俺もそう言ったんだがね」ひょっこり顔を出したのは加持だった。
「加持君!? そう……。シンジ君の様子に気がついたのはミサトじゃなくてあなただったのね」
加持は返答の代わりに肩をすくめた。
「私が夜勤のときを狙うなんてね。あなたらしいわ、リツコ。……で、あなたは何をしようとしているの?」
リツコは肩をすくめた。「まぁ、いいわ。せっかくの舞台だもの、観客が多いほうがやる気が出るわ。……私が何をするのか、ですって? これよ」
華やかな開会式の開幕を告げるように言うと、手に持ったリモコンのスイッチを入れた。
部屋の明かりがついた。

129: ◆IE6Fz3VBJU
10/01/10 01:35:45
「うっ!?」
「これは……!?」
三人は眩しさのあまり手をかざし―次の瞬間、それぞれの顔に驚愕を貼り付けていた。
水槽が部屋の周囲を半円状に取り囲んでいた。
そして、その中には―
「……綾……波……?」シンジが呆然と呟いた。
何人もの綾波レイが、おそらくはLCLと思われる液体の中に裸のままで浮かんでいた。
「人形?」と、本能的に違うと分かったものの、ミサトは掠れた声で訊いた。人形にしては生々し過ぎた。
「違うわ、ミサト。これは……レイのクローン。いえ、クローンという言い方はおかしいわね。別にレイのオリジナルがある訳じゃないのだから。
これは、レイのパーツ。そうとしか言いようがないわ。このレイが死んだらこの中のレイのどれかに意識が宿り、それがレイになるのよ」
このレイ―というリツコの言葉で、三人はリツコの足元に呆然と座り込むレイの姿にやっと気がついた。
「分かった? シンジ君。この子は人工的に作られた生き物なのよ」
「止めなさい、リツコ!」ミサトの鋭い声が飛ぶ。
「どうして? 私はシンジ君に約束したのよ。レイの秘密を教えるって」
「レイの秘密を教える……? 何でそんなことを……?」
リツコはため息をついた。
「親切心で……と言っても信じてもらえないでしょうね。……分かったわ。本当の目的は―復讐よ」
「復讐!?」
「そう。私の母は、レイに殺されたのよ。その復讐」
「何を言ってるの? あなたの母は八年前、交通事故で―」
「直接的な死因はね。間接的には、アルコールに溺れたからよ。そしてアルコールに溺れたのは、レイのせい」
「レイのせいですって?」
「そうよ。この子が母に酷いことをしたから」
「そんな……」ミサトは言葉を失った。「八年以上も前って……レイはまだ子供もいいところじゃない」
「子供かどうかは関係ないわ」リツコの顔が急に憎々しげなものに変わった。「それに、子供とか大人とか、そういう尺度では量れないのよ、この子は。なにせ人間ではないのだから」
リツコは何か言おうとするミサトを手で制して、「レイはリリスと、とある人物から造られたの」
「リリス?」
「第二の使徒」
「使徒!?」

130: ◆IE6Fz3VBJU
10/01/10 01:36:27
「そう。だけど、私たちの思惑とは違って、リリスの性質が強すぎた。コントロールがきかない存在になってしまったの。それはあなたもよく知ってることよね」
リツコはシンジの方を向く。「シンジ君?」
突然名前を呼ばれ、シンジはびくりと身を震わせる。
「あなたがネルフに招かれたのは、レイを抑えるためもあったのよ。結果、見事に―いえ、期待以上にレイは人間らしくなったわ。あなたには本当に感謝している」
どう答えていいか分からず、シンジは固まっている。
「あなたに会う前のレイだったら、出生の秘密を暴露しても鼻で笑うだけだったでしょうね。人並みになれたからこうやってショックを受けることができる。皮肉なものね」
「シンジ君を……利用したのね」
「その通りよ」
「何てことを―!」
「あら、あなたに私を責める道理があって? あなただって自分の復讐のためにシンジ君たちを利用してるんじゃないの? 復讐の道具じゃないと胸を張って言えるのかしら?」
ミサトは鋭い痛みに襲われたように顔をゆがませた。「それは……」
「いいや、そいつは違うな、りっちゃん」それまで黙っていた加持が口を挟んだ。「使徒と戦うことは止むを得ないことだ。それに少なくとも葛城はシンジ君たちの境遇に胸を痛めているよ。君はどうだい?」
リツコは降参するように両手を上げた。「そうね。私はあなたたちと違って、冷酷な人間だもの」
「それも違うな」加持は首を振った。「自分でそう思ってるだけさ」
「……分かったようなフリをするのは止めてくれる? あなたの悪い癖よ、加持君」リツコは内面の激情を無理に押さえつけているような、不自然なほど平坦な口調で言った。それから波立った自分の心を落ち着かせるように目を閉じ、
深呼吸をひとつする。目を開いたときにはリツコの心を波立たせたものは拭い去ったように消えていた。
「なぜシンジ君を呼んだのか、分かる、ミサト? それはシンジ君とレイには特別な関係があるからなの」
「特別な関係?」
「特別な関係と言えばね、母も私も、司令の愛人だったの」
軽い調子とは裏腹の内容に、その場の空気が凍りついた。
ミサトはシンジに素早く目を走らせた。「止めなさい、リツコ。事実かどうか知らないけど、そんなことを言う必要はないわ」





131: ◆IE6Fz3VBJU
10/01/10 01:37:15
「馬鹿な話よね。あの人の心には彼女がいつだっていたのに」リツコの唇が吊り上がった。「彼女って分かる、シンジ君?」
シンジは名指しされて、怯えるように一歩後ずさる。
「彼女というのは、さっき言った、レイの肉体のもとになったある人物のこと。つまり……」
「リツコ!」青ざめたミサトの叫び声も、リツコの囁くような声を止めることは出来なかった。
「碇ユイ。シンジ君の母親よ」
加持が素早く動いて、ふらりと倒れかかるシンジを支えた。
「本当は母の死が理由じゃないのかも知れない。あの人が私のほうを振り向いてくれないからなのかもね。いえ、もうどうだっていいわ。私はレイが憎い。理屈じゃないわ。憎くて憎くて仕方ないのよ」
リツコの目は炎を映しているように爛々と光り輝いていた。その目が下を向く。
「どう、レイ、分かった?」喉を仰け反らせて、狂ったようにリツコは笑った。「あなたなんかいくらでも代わりがいるのよ。でもね、レイ。あなたは絶対死なせないわよ。この光景を刻み付けなさい。心に焼き付けて一生、生きていくのよ」
「リツコ……」
ミサトは理解し、そして慄然とした。リツコの精神の暗さ、その深さに。
なぜリツコがことあるごとにレイ危険な任務を避けるような言動をとっていたのか。
最初の出撃のときからそうだった。リツコはなかなか出撃しようとしないレイを擁護した。
第五使徒戦のときもそうだ。より危険な防御役をシンジに、レイを砲撃手役に推薦したのはリツコだ。
参号機の実験でもレイを搭乗させるのにリツコは最後まで抵抗していた。
すべて、レイを死なせないようにとの意図だったのだ。
復讐のために。
「このバカ!」
ミサトはなおも笑い続けるリツコの元に歩み寄ると、頬を張り飛ばした。ぴしゃりという高い音が静まり返る部屋に響く。
「そう、私は馬鹿よ」打たれた方の頬に手をあて、リツコは俯いた。「どうしようもない馬鹿だわ」
それから、静かに涙を流しはじめた。
何か言おうと口を開いたミサトがよろめいた。突然跳ね上がるように立ち上がったレイとぶつかったのだ。レイはミサトに構わず、出口に向かって走り出した。
「レイ!」
その叫び声も、レイに追いつくことはなかった。そのまま長い廊下を駆け抜け、エレベーターホールに辿り着くとすぐに上ボタンを押した。

132: ◆IE6Fz3VBJU
10/01/10 01:40:58
幸いにも、ミサトたちが使ったままだったので、すぐに乗り込むことができた。
背中を壁に預けると、ずるずると床にへたり込む。
―見られた。
真っ白になった頭の中を、その想いだけが嵐のように渦巻いていた。
碇君にあれを。あの姿を。
私を。たくさんの私を。
恥ずかしいとか、みっともないとか、そういう感情を超え、ただ衝撃があった。
―知られてしまった。
ナオコが首を絞めるときに言った台詞が、唐突に蘇った。
……あんたなんか、いくらでも代わりはいるのよ。
いざ思い出してみると、なぜ忘れたのか不思議なほどはっきりと耳に残る言葉だった。
長年の疑問が解けた。なぜ、子供の言うことに本気で怒って殺そうとしたのか。
いくらでも代わりがいるからだ。あんなにいるんだから、一人二人殺したってどうってことはない。
レイは笑い出した。
自分でも止めることができない、ヒステリックな笑いがエレベータの中で反響する。
エレベーターを出て、自分の部屋にどうやって帰ったのか、記憶になかった。
気がつくと、バスルームで鏡を見つめていた。
赤い目をした綾波レイが鏡の向こうで冷笑を浮かべている。
そこで我慢ができなくなった。思い切り胃の中身をぶちまけていた。すべて吐いても吐き足らず、胃液まで吐き出した。苦痛のために目尻に涙がたまる。
饐えた匂いが立ちこめる中、喉から笛が鳴くような音を立てながら、蛇口をひねって汚物を始末する。
―とうとう見られたわね。碇君に。
鏡の中のレイがレイに向かって語りかける。
……あなた、知ってたわね。
―もちろん。あなたも知ってたでしょ?
……そう。私も知っていた。けど、忘れていた。いや、忘れさせられていた。
―あなたは、人間じゃない。
……私は、人間。
―人間にスペアはないわ。碇君にも葛城さんにも、セカンドパイロットにも代わりはいない。代わりはいるのはあなただけ。
……。

133: ◆IE6Fz3VBJU
10/01/10 01:44:17

レイは、こつん、と額を鏡に打ちつけた。
また、打ちつける。
こつん。
代わりがいるのは私だけ。
さらに、打ちつける。
人間じゃない。人間じゃない。私は人間じゃない。
こつん。
碇君に知られてしまった。私が人間ではないことを。
化け物だということを。
化け物だということを。
化け物。
化け物。
「ひっ」
レイは、叫び声を上げ、今度は思い切り打ちつけた。鈍い音とともに鏡が割れた。
額から血が流れ出て、レイの顔をまだらに染める。
赤い血。血? 人間じゃない化物の血。何故赤いの?
頭が割れるように痛かった。
胸がつぶれるように苦しかった。
「痛い……」
レイは呟いた。
「痛い……」
痛いのは傷ついた額ではなかった。痛いのは肉体ではなかった。
「痛い痛い痛い痛い」
痛くてたまらなかった。
苦しくてたまらなかった。
この痛みから、苦しみから逃れるにはどうしたらいいのか。
どうしたらいいのか。
下を見ると、鏡の破片に映る大量の顔がレイを見返していた。
心が決まった。
どうしたら―
レイは自然と破片を手にとっていた。その瞬間からレイの心を占めるものは、右手に握った鏡の破片と、自分の手首だけになった。

134: ◆IE6Fz3VBJU
10/01/10 01:47:16
「は……」
大きく息を吸った。
大きく息を吐いた。
破片を思い切り握り締めたせいで、手のひらが切れ、血が流れ出してきたが、痛みは感じなかった。これから自分がすることに比べたら、どうでもいいことだからだ。
大きく息を吸った。
大きく息を吐いた。
繰り返すうちに、呼吸は徐々に浅く、速くなっていく。
そしてその呼吸が止まると同時に、手首に押し当てた破片を思い切り―。
チャイムが鳴った。

綾波は肩を大きく波立たせながらドアのほうを見た。
破片を持った手が激しく震えている。
もう一度チャイムが鳴った。
「ひっ」
震えが激しいために、破片を落としてしまった。あわてて拾おうとするがうまく掴めない。
「誰……」
いや、分かっていた。訊くまでもないことだった。
がくがくと笑う膝を叱咤しつつ、幽鬼のように立ち上がる。
どうしよう。これからどうすればいいのだろう。
「綾波」シンジの声が聞こえてくる。「綾波。話をしよう」
いったん切れた気力は容易に取り戻せそうになかった。
特に、シンジの声を聞いてしまったあとでは。
話をする?
いったいどんな顔をして会えばいいのだろう。
このままやり過ごそうか……と考えたそのとき、ドアに鍵をかけてないことに気がついた。
「駄目!」
鍵をかけようとふらつく脚でバスルームから出ると、すでにドアが開きつつあるのが目に入った。
レイは悲鳴を上げて後ずさる。もう間に合わない。
「どうしたの、綾波!?」
悲鳴を耳にして飛び込むように入ってきたシンジだが、血に染まったレイの顔を見て立ちすくみ、息を呑んだ。「綾波! 怪我して……」
「どうして来たの?」レイの悲鳴にも似た問いかけの言葉がシンジのそれを遮る。
「どうしてって……綾波が心配だからだよ。それよりも、手当てしないと……」

135: ◆IE6Fz3VBJU
10/01/10 01:50:57
「嘘!」
レイはキッチンに放り出すようにして置いてあった包丁を手に取ると、シンジに刃先を向けた。
「こっ……来ないで!」
喉からひっ、ひっとしゃっくりのような音を立て、レイは包丁をシンジに向けたまま後ずさっていく。
「綾波……。その包丁……どうしたの?」
「……?」レイが何を言うのかと不審気な顔をする。少しだけ気持ちが落ち着いたが、そのことには気がついていない。「自分で……買ったのよ」
「そう。じゃあ、料理、作ってるんだね」
「……」
「食べたいな。綾波の手料理」シンジは言いながらじりじりと亀の歩みでレイに近づいていく。「包丁は……そういうことに使うものじゃないよ」
「来るな!」
シンジはぴたりと止まった。
「あなたも心の中で私を笑ってるんでしょう?」
「綾波……」
「人間じゃないって。私が人間じゃないから私の言うことを大人しく聞いてたんでしょう?」
「……」
「偉そうに言ってるけどあいつは人間じゃないって。何人でも代わりがいる化け物だって」
「……」
「化け物だって化け物だって化け物だって」
シンジは首を横に振って、レイを真正面から見つめた。長い時間をかけて結晶化した鉱物のような、澄んだ目線だった。
「そんな目で見ないで!」
レイはなおも後退しようとして、壁に突き当たったことを知った。
「綾波は人間だよ。そんなこと……言うまでもないよ」
「口だけの台詞を吐かないで。あなたの代わりがいる? いないわ。でも私の代わりはいる。これで人間と言えるの?」
「人間だよ」
「人間じゃないわ」
「じゃあ、いいよ。綾波はそう思っていればいい」
「!?」
「僕は勝手に綾波を人間だと思うから」
レイはまるで殴られたように仰け反り、喘いだ。「何それ……」
「本当だよ。僕は本当にそう思ってる。嘘だと思うなら―僕を殺してもいい」

136: ◆IE6Fz3VBJU
10/01/10 01:55:40
「出来ないと思ってるの?」
シンジは無言でレイを見る。
挑発―レイはそう、受け取った。
「馬鹿にして……!」
頭と、包丁を握り締めた手が真っ白になった。
そしてシンジに向かって突進する―とシンジは思うだろう。
矛先を自分に向けるつもりなのだ。
―その手には乗らない。
レイは高々と両手を振り上げ、切っ先を自分の胸に向けた。
「綾波っ!」
シンジの言葉とともに衝撃がレイを襲い、視界が天井から床に、左右にぶれた。
気がつくとレイは床に座り込んでいた。かすかな呻き声に目をやると、シンジが左手で右手を押さえている。右手からは血が流れていた。
「あ」レイは口を開けて言葉を発しようとしたが、それは形にならない。「ああ」
「うん。大丈夫。大した怪我じゃないから。ちょっと切っただけ。ほら」シンジが右手を見せると、手のひらをやや斜めに横断する形で傷がついていたが、
深くはなく、流れている血の量はそれほどでもなかった。「綾波の額のほうが心配だよ」
レイの全身から緊張が抜け出していった。
「い……碇君……」
レイは必死に口を動かす。
シンジに言う、大事な言葉。
今がそれを言う最後の機会だった。
しかし、やはりまだ何か大きな塊が胸につかえているようで、どうしても出てこない。
今、この一言を言わなければ、自分は多分壊れてしまうだろう。
壊れたくなかった。
レイの、血がまだらに絡みついた顔が大きく歪む。
「わ、わ、わた……わたし……」
極度の緊張から解放されたせいで、まるで雪山で遭難したみたいにガチガチと歯が鳴って言葉が出てこない。
「大丈夫だよ、綾波。さぁ、医務室へ行こう」シンジは立ち上がると、座り込むレイに促すように左手を差し出した。
「なぜ……」レイは、シンジを見上げる。
「え?」

137: ◆IE6Fz3VBJU
10/01/10 01:57:08
「なぜ、あなたは、私を……私のことを、そんなに……気にかけてくれるの?」
「それは……同じエヴァのパイロット同士だし……」シンジはそこまで言うと急に黙り込み、俯いた。すぐに顔を上げると、大きく息を吸い込んだ。両手をぎゅっと握り締めている。
「いや、それは違う。そんなことが理由じゃない。本当の理由は……僕は、綾波のことが、好きだから」
シンジは膝を床に着き、レイの手を取った。
それから、レイの目をまっすぐ見つめてもう一度言った。
「僕は綾波を、好きだから」
その瞬間、レイの胸につかえていた大きな塊は溶けて、消え去った。
「碇君……私も……」

私も、
私も、
私も―

大粒の涙がぽろぽろとレイの目から零れ落ちていった。
「私も、碇君のことが、好き」
たどたどしく言い終えると、シンジの胸に飛び込んで、子供のように声を上げて泣きじゃくりはじめた。
「大好き」

138: ◆IE6Fz3VBJU
10/01/10 01:59:27
Epilogue.

レイはATフィールドを反転させた。これでシンジがこれ以上侵蝕されるのは防げる。
―ありがとう、碇君。あなたに会えてよかった。
この間、あれだけ泣いたのに、また涙が零れ落ちてくる。
これが、最後の涙だった。
目を閉じ、決心すると、自爆装置に手をかけた。
「レイ、自爆する気!?」ミサトの叫び声が聞こえてくる。
そう。その通り。これから私は自爆するのだ。
レイは唇に血がにじむほど歯を食い縛った。死にたくはなかった。こんなことを思うは初めてだ。本当は死にたくない。
まだ、シンジと話したいことが山ほどあった。一緒に学校まで歩いていきたいし、料理も教えてもらいたい。
しかし、こうするしか方法はなかった。
シンジが死ぬよりはいい。それに―代わりはいるのだ。
「碇君、さよなら」
―次の私を、よろしくね。
シンジは叫んだ。「さよならなんて言うな、綾波! 絶対ダメだ!」 
「でも、これしかないの」
「そんなことないよ……なんとかなる。いや、僕がなんとかする。だから死んじゃダメだ、綾波!」
なんとかするって、一体どうするのだろう。絶望にレイは首を振る。
「綾波、君の代わりはいないんだから!」
その瞬間、天啓が雷光のようにレイの背骨を貫いた。
これは、何とかなることなのだ。
碇君と、私とで、きっと何とかするのだ。
根拠は何もないが、それは確信を超えて、自明のことのように思えた。
今日の次は必ず明日が来るように。
今日は雨でも、明日も明後日も雨でも、たとえ永遠に降り続くように思えても、晴れの日がいつかは来るように。
「……わかった。待ってるわ、碇君」
レイは手を元に戻して、モニターのシンジに向かって微笑んだ。

それは、綾波レイが生まれて初めて浮かべた、心からの―本当の、笑顔だった。

(了)

139: ◆IE6Fz3VBJU
10/01/10 02:05:26
ということで半年近く続いたこのFFもこれで完結と相成りました。
ところでこのFFを書くに当たって2つほどの明確なきっかけがありまして、1つ目は
スレリンク(eva板:27番) の

>リツコとシンジをつけた為に自分にはいくらでも替わりがいることを知ってしまって精神崩壊。
>お見舞い弁当(シンジ作)を食べて始めは嗚咽だったのが終いには号泣になって復活&デレ化か。

これを見たときに「何という自分好みのシチュエーション……。これは書くしかない」と、2ヶ月くらいかけてラストシーンと最初の部分を中心に1000行程度書いたものの、
全部で4000行以上は書かないといけないと分かって(実際は4800行ぐらいでした)、「長すぎ。そんなの完結できるわけがない」とやる気をなくし、
書きたいシーンを大雑把ではあるものの書いたという満足感もあり、そのままお蔵入りでした。
それを引っ張り出したのは、2つ目の理由、破を見てテンション上がったため+長いものを書く自信がついたためです。
それにしても、上のスレッドのレス書いた方が読んでてくれたりしたら面白いんですけど、まぁないかなー。

最後まで読んでいただき、感謝の念に堪えません。
お陰さまでというか、内容についてはほとんど後悔がありません。つたない部分、上手くいかなかった部分を含め、100%出し切ったと思います。
一つだけ、エピローグを本編に組み込んで、10年後加持と結婚して子供も出来たミサトのところに結婚式の招待状が届いて……というのをエピローグにしようか、
迷いに迷いました。上のエピローグだと、レイが助かるのか断定してないのがちょっと気になったというか。
まぁ蛇足に過ぎるかと思ったので削りましたが、今でも迷ってます。ってもう遅いけど。

正直こんなに読んでくれる人がいるなんて思いませんでした。(2、3人くらいかと思ってた)
みなさまの応援カキコがなかったら、とてもじゃないですけど終わりまで書けなかったでしょう。

それでは、またどこかで。

作者敬白

140:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/01/10 02:39:26
乙すぎて死ねる

141:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/01/10 05:59:31
UP A REI!(訳:レイがかわいいぜ!)


142:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/01/10 14:08:48
>>139
GJ!!ハラハラしつつすごい楽しませてもらいました

も一つのエピローグも見たかった…

143:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/01/10 14:12:07


144:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/01/10 15:06:53
終わってしまった…

145:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/01/10 16:16:59
半年間お疲れ様です
レイが生存するのかのあやふやな感じが好きだなあ
今年の目標は”なんとかんなる”で過ごしていこう

146:タン塩 ◆349p5oDd5g
10/01/10 18:13:48
素晴らしい作品を投下ありがとうございました。長いラストも一気に読んで
しまいました。実にいい。

ところで相談なのですが、この作品を『綾波レイの幸せ』に投稿しませんか?
管理人のtambさんが「2ちゃんに自分が直接書き込むのはまずいが、いい作品で
ぜひうちに欲しい」とおっしゃっていたので私が独断で書き込みました。もし
その気がありましたら一度綾幸のページからtambさんにメールしてみて下さいませ。
最後に住人の皆様、余計な書き込みをしたことをお許し下さい。

147:タン塩 ◆WA.gERG/No
10/01/10 18:16:34
トリップ間違えました。こちらでした。申し訳ない。

148:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/01/10 18:54:09
また読み返す日も来るから、どこかに置いてあると嬉しい
余計な書き込みとは思わない

149:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/01/10 20:30:51
タン塩さん久しぶりに見た

150:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/01/10 20:44:05
綾幸の皆さんには頑張って頂きたい

151:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/01/10 21:53:38
>>139
完結お疲れ様です。

とても楽しませてもらいました。ありがとうございました。

152:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/01/11 01:31:45
こんな素晴らしい話をありがとう
一人目のレイとか数あるLRS-SSの中でも新鮮すぎた
最初はどうなることかと思ったけどレイの心の変化がとても丁寧で
ラストシーンまで違和感なく読めた
感動した 泣いた 乙すぎて何言ったらいいのかわからない
遅くなんてないので気が向いたらエピローグも見せてくれ
ほんと乙でした

153:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/01/11 10:46:51
どうせならもう一つのエピローグを綾幸でやればいいんでね?
このスレの住人なら綾幸にも行ってるだろうし、綾幸へのお土産にもなるだろ。

154:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/01/11 23:19:49
乙でした!!!!
黒レイに押され気味のシンジが最後ものっそい漢前でよかった!
幸せになってくれるんだな?

155:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/01/16 05:02:39
乙でした~

156:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/01/19 16:06:22
hos

157:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/01/19 21:28:10
半年間お疲れ様でした。
とても面白かったです。
私は長いもの書けないから憧れるなぁ……。

158:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/01/19 23:06:16
短いのなら書けるんだね?じっくり話し合おうじゃないか

159:157
10/01/20 02:38:30
>>158
前スレでポカ波さん劇場っていうのを書いてましたので、大した話ではありませんがよろしかったらご覧下さいw
あまりの書き込み規制にこの度●を取得しましたので、書き上がったらそのうち投稿します。
……書き込み規制と年度末の忙しさに書き掛けのまま放置プレイしていたら脳内のネタが飛んでしまい、さっぱり指とシンジさんが動きませんが……。


160:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/01/21 12:22:43
シンレイ結婚生活5の初心者772ですけど、こっちにも別物書いても良いのかな?

161:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/01/22 02:12:10
反対する理由はない。存分にやりたまえ。

162:160
10/01/24 12:47:50
今書いてますので、第1話、今月中になんとか…

163:つなぎ
10/01/31 11:35:54
>>162さんが書き上げるまでの繋ぎに投下↓↓
※なお、私の発想と文章力の関係で所々不可解な描写があるので注意が必要です

164:つなぎ
10/01/31 11:48:41
>>163すいません、行が長過ぎて書き込めませんでした……orz

うう……修正してきます

お目汚しをしてしまってすいません

165:つなぎ
10/01/31 13:13:14
書き込めるかな?

1.

今夜は妙に明るい。午前2時を回ったというのに、月明かりで部屋は薄明かりが点いたように照らされていた。どういうわけか、虫も犬も猫も大人しい。静かな夜。
私は見慣れた白い天井を眺めていた。いや、私は天井など見ていなかった。少し大きめなスクリーンとして、脳内に残るあの日の映像をそこに投影していた。

ヤシマ作戦。私が碇君を守った日。碇君が私のために涙を流した日。それに戸惑う私に笑えば良いと碇君が教えてくれた日。

思えば、私は碇司令以外に笑顔を見せたことがなかった。そもそもネルフの職員とは必要最低限の業務会話ぐらいしかしていない。
勿論、碇君も例外ではなかった。同じ学校、クラス、パイロットであろうと、私は彼に必要以上に接触しようとしなかった。必要だから緊急招集を伝えに学校の屋上に
行ったし、ヤシマ作戦概要を伝えに病室まで足を運んだ。
碇君は積極的とまでは行かないが、どうにか私に接触しようとしていたように思える。教室ではチラチラ私の様子をうかがっていたし、ネルフで一緒になったときも
何かしら話しかけてきた。

どうして彼は私にかまうのだろう。私が同じパイロットだから?

何にせよ、私は人と上手に接する方法を知らない。いくら碇君が私に近付こうと試みても、彼が望む反応を返すことができない。
それにもかかわらず、彼は私に接触してくる。無愛想で事務的な反応しか返してこない私に。他のクラスメイトは二、三度私に話しかけると、その反応の薄さから
諦める者が大半だった。ネルフの中ではオペレーター三人はクラスメイトと同様で必要最低限の接触に留まり、赤木博士は研究や実験の話ばかりで、これも必要だから話
しているに過ぎない。葛城二佐は他に比べたら話かけてくる方だが、あの人は誰に対しても積極的な人だから私を受け入れる器量があるのだろう。

だけど、碇君と碇司令は違う。あの二人は社交的と言える性格とは思えない。不器用で人付きあい苦手な人間に見える。得意でもないのに、どうして私にかまったりするのだろう。

・・・・・・わからない・・・・・・

166:つなぎ
10/01/31 13:55:18
2.

小鳥がさえずっている声が聞こえる。仮説を立ててはその可能性を否定し、また新しい仮説を立てる行程を繰り返しているうちに、何時の間にか眠っていたようだ。
携帯電話を手に取り、時刻を確認すると午前7時になったばかりなのが分かった。睡眠時間が足りないのは明らかだったが、起きることにした。簡単にシャワーを浴び、
制服に着替えると、私は鞄の中を探った。手帳を探し当てると、開いて今日の予定を確認する。

今日は学校で授業を受けた後、ネルフ本部へ登庁。定期検診を受ける。確認が済むと私は手帳を閉じて鞄に仕舞い、アパートを出て駅へ向かった。
今日は朝日が随分眩しく感じる。睡眠不足のせいだろうか。目をこすり、瞬きをする。余計なことは考えずにさっさと眠るべきだったのだ。歩みを進めながら昨日の自分の
愚行を戒める。

今日は定期検診。そのことを考えると、少し気分が重くなった。あれは疲れる。そもそも何故、二人いるパイロットの内、私だけが頻繁に検査を受けなければならないのだろうか。
赤木博士は私が「特別だから」と言っていたけど、「特別」とはどういうことなのだろう。電車に揺られながら、回らない頭で考える。答えは出そうにない。

3.

授業は4限目に入った。根府川先生は例によってセカンドインパクトの講義を始める。生徒は惰眠を貪ったり、メールで他の生徒と雑談していたりして思い思いの時間を過ごしていた。
私はというと、窓から見える風景を眺めていた。別に他のクラスがやっているドッヂボールに興味があったわけではない。

碇君の視線を感じたのだ。

以前なら彼の視線に気を留めることなどしなかった。自分の容姿が人目を引くのは経験で分かっていたし、放っておけば相手も飽きて視線を逸らすことも知っていた。でも、あの日以来、
彼の視線が妙に気になる。他の人からの視線と違って、嫌な気はしない。でも、どうしてあげれば彼が喜んでくれるのか分からないから、いつも私は窓の外を見て気付かないフリをしていた。

今日もそれは変わらない。

167:つなぎ
10/01/31 14:26:12
4.

「レイ・・・・・・」
碇司令が私の目の前に立っていた。
「お前は大切な鍵だ」

私が鍵・・・・・・?よく分かりません。

「使徒を倒し、契約を満たすのだ。お前はそのためにスペアまで用意して生かされている」

その通り。私は契約を満たすために生まれ、使徒と戦うために生かされているのですもの・・・・・・。

戦えなくなったら私はどうなるのだろう・・・・・・怖い・・・・・・。

少なくともあの人は私は必要としなくなるだろう。私には存在理由が必要だ。

だって私には・・・・・・


・・・唐突に私は現実世界に引き戻された。筋肉の収縮による衝撃が私を目覚めさせたようだ。教卓に目をやると、根府川先生は既に居なかった。教室の掛け時計によると、
今は授業とホームルームの合間らしい。

あまり良い夢ではなかった。首筋に汗が浮かんでいる。私は肩の辺りで首を拭い、渇いた喉を潤そうと、廊下の冷水機に向かった。磨き上げられたスチール製のシンクに私
の顔が映る。

・・・・・・あなたには・・・・・・

シンクの中の私が何か言おうとしたので、私はペダルを踏んで水で流した。自分でも分かっていることなのに、はっきりと言葉にしてしまうのが怖い。
私は覚束ない足取りで自分の席へ戻り、ホームルームが始まるのを待った。


168:つなぎ
10/01/31 15:14:27
5.

ホームルームが終わり、クラスメイトは各々自分のグループに分かれて談笑を始めた。私は早々と荷物をまとめ、席を立った。元々、話をするような相手もいないし、
今日は用事がある。いつもより少し速いテンポで私は教室を横切り、廊下へ出た。

まだ放課後になったばかりのせいか、校庭の人通りはまばらだった。真面目な野球部は既に着替えを済ませ、ランニングを始めていた。疎開のせいで部員が3人に
なってしまったのに、彼らの情熱は一向に冷めない。あれでは試合はおろか、練習もままならないだろうに。

彼らのそんな姿を立ち止まって見ていると、背後から走ってくる足音が聞こえてきた。4人目の野球部員が現れたのだろうかと思って振り返ると、
走ってきたのは碇君だった。もう少し来るのを早くすれば野球部でもやっていけそうだ。

「碇君、野球部に入ってみたら・・・・・・」
私はふと、思ったことをそのまま口に出してしまった。
「野球部?えっと・・・・・・なんのこと?」
案の定、碇君は首を傾げた。
「いいの、何でもないから・・・・・・」
これ以上突き詰められると困る。中身などない発言だったのだから。
「そっか、それなら良いんだけど」
碇君は追及しないでくれた。やっぱり彼は優しい。

169:つなぎ
10/01/31 15:16:23
6.

「綾波、今日はもう帰るの?」
碇君が歩き始めた私にためらいがちに訊ねてきた。
「いいえ、本部に行かないと」
嫌な検査が私を待っている。
「そうなんだ」
私の答えを聞いた碇君は嬉しそうな顔をした。
「僕もミサトさんの着替えを届けに行くんだ」
「そう・・・・・・」
「うん、ミサトさん、最近忙しくて家に帰ってこれないんだ」
「そう・・・・・・」
「・・・・・・え~っと・・・・・・」

校門を出る前に私たちの会話は途切れてしまった。お互い無言のまま駅まで歩いた。碇君は気を揉んでいたようだったけど、私は心地好かった。碇君の隣は暖かくて
居心地が好い。そうか、こうすれば良かったのね。もっと前から知っていれば良かった。もっと素直に彼に接触すれば良かったのだ。常に理想的な対応をする必要
なんて無かった。失敗ばかりでも、とにかくぶつかっていけば良かったのだ。
私は今、素直にこのままもっと碇君と一緒に居たいと思える。

170:つなぎ
10/01/31 15:48:09
7.

ネルフ本部行きの電車には殆ど乗客が乗っていなかった。まあ、ネルフ職員以外が本部に行くことは緊急時を除いてあまり無いだろうし、夕方から出勤する人も多く
ないから当然と言える。私たちは手近な席に座り、電車が動き出すのを待った。

「ねえ、綾波。ミサトさんが昇格したの知ってる?」
電車が動き出すと、碇君は不意に話を振ってきた。
「葛城二佐が?」
「一佐になったんだって。きっとヤシマ作戦の功績が認められたんだね」
碇君は嬉しそうだ。まるで自分のことのように。
「碇君の、おかげね」
「そ、そんなことないよ・・・・・・」
碇君は顔を赤くした。
「綾波が・・・・・・守ってくれたから・・・・・・」
碇君は顔を赤くしたまま俯いた。
「それが、私の役目だったから」
「でも、綾波のおかげだよ。綾波が零号機で守ってくれたから僕らは生きてる」
碇君は顔を上げて私を見た。
「私はエヴァに乗って戦わなければならないから・・・・・・」
私は目を伏せた。エヴァに乗らないと私は存在価値を失ってしまう。

だって・・・・・・

「だって私は・・・・・・」
その先を言おうとして、私の思考は立ち止まった。

・・・・・・自分はエヴァに乗るしかないって、そんなこと言うなよ・・・・・・

蘇るあの日の碇君の言葉、涙、暖かさ。やっと思い出した。もうこんな考え方をしてはいけないのだ。エヴァに乗ること以外で私を規定する何か・・・・・・まだ
見つけてはいないけど、きっと見つける。碇君にも手伝ってもらおう。



171:つなぎ
10/01/31 15:56:42

「綾波?」
顔を上げると碇君が私を見つめていた。
「着いたよ」
何時の間にか電車はネルフ本部に着いていた。ドアが開くと、碇君が先に立った。私も後に続こうと、立ち上がろうとした。が、疲労のせいか私はバランスを崩した。
「綾波、大丈夫?」
とっさに私の手を取った碇君が心配そうに私の顔を覗き込む。
「ええ、大丈夫」

あなたがいるから

この手があるから

私はきっと大丈夫

その時、私は自然に笑えた気がした。





とりあえず着地 うわあ、えげつないくらいにレス連投してしまった・・・orz すいません・・・


172:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/01/31 18:11:35
投下乙
悪くない作品だから、言い訳などせず堂々とうpしたまえ

173:160
10/02/02 09:57:17
つなぎさんありがとう&乙です
感動したっ!

身内に不幸があって1週間家を空けてました
もうちょっと掛かりますのでよろしくおねがいします

174:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/02/03 10:28:33
エヴァ板良スレ保守党




175:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/02/03 12:21:35 WtdT5XOP
1~23番の二次創作小説SS(Side Story)のコミケや通販予定はないでしょうか?

1. 初恋ばれんたいん スペシャル
2. エーベルージュ
3. センチメンタルグラフティ2
4. ONE ~輝く季節へ~ 茜 小説版、ドラマCDに登場する茜と詩子の幼馴染 城島司のSS
茜 小説版、ドラマCDに登場する茜と詩子の幼馴染 城島司を主人公にして、
中学生時代の里村茜、柚木詩子、南条先生を攻略する OR 城島司ルート、城島司 帰還END(茜以外の
他のヒロインEND後なら大丈夫なのに。) SS
5. Canvas 百合奈・瑠璃子先輩のSS
6. ファーランド サーガ1、ファーランド サーガ2
7. MinDeaD BlooD ~支配者の為の狂死曲~
8. Dies irae
9. Phantom of Inferno
END.11 終わりなき悪夢(帰国end)後 玲二×美緒 SS
10. 銀色-完全版-、朱
『銀色』『朱』に連なる 現代を 背景で 輪廻転生した久世がが通ってる学園に
ラッテが転校生,石切が先生である 石切×久世 SS

176:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/02/03 12:22:22 WtdT5XOP
11. TYPE-MOON
(1) 逆行最強化断罪スーパー慎二がペルセウスを召還する SS
(2) 凛がイスカンダルを召還するSS
(3) 逆行最強化慎二 OR 四季が 秋葉,琥珀 OR 凛を断罪する SS
(4) 憑依最強化慎二 OR 四季が 秋葉,琥珀 OR 凛を断罪する SS
12. ゼロの使い魔
(1) 原作知識有 助演 憑依転生最強化SS
(ウェールズ、ワルド、ジョゼフ、ビダーシャル)
(2) 原作知識有 オリキャラ 憑依転生最強化 SS
(タバサ OR イザベラの 双子のお兄さん)
13. とある魔術の禁書目録
(1) 垣根 帝督が活躍する OR 垣根帝督×麦野沈利 SS
(2) 原作知識有 垣根帝督 憑依転生最強化 SS
(3)一方通行が上条当麻に敗北後もし垣根帝督がレベル6実験を受け継いだら IF SS
14. GS美神
(1) 逆行最強化断罪 横島×ダーク小竜姫のSS(非ハーレム 単独カップリング ルシオラ も除外)

177:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/02/03 12:23:46 WtdT5XOP
15. EVA
(1) 逆行断罪スーパーシンジ×2番レイ(貞本版+新劇場版)のSS
(2) 一人目のレイが死なないで生存そのまま成長した一人目のレイが登場する(二人目のレイは登場しない)
P.S
エヴァンゲリオンのLRSファンフィクションで、レイの性格は大体二つに分かれます。
1.白痴幼児タイプのレイ
LRSファンフィクションで大体のレイはこの性格のように思えます。
白痴美を取り越して白痴に近いレイであり、
他人に裸や下着姿を見せてはいけないという基本的な常識も知らず、
キスや性交等、性に関する知識も全然無いか、それともほとんどありません。
このタイプの場合、逆行物では、シンジがレイに常識や人間の感情等を一つ一つ教えていくという「レイ育成計画」になってしまいがちです。
このタイプは、アニメのレイに近いと言えるでしょう。
2.精神年齢が高く、大人っぽいレイ
1番の白痴幼児タイプとは違って、他人に裸や下着姿を見せてはいけないという
基本的な常識くらいはあり(見られたとしても恥ずかしく思ったりはしないが)、
キスや性交等、性に関する知識は理論的に知っており、自分の自我が確立している、
(命令には絶対服従だが)感情表現がより豊富です。
このタイプの場合、 コミックスのレイに近いと言えるでしょう。

178:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/02/03 12:24:42 WtdT5XOP
16. BlackCat
イヴ×リオンのSS
17. 鬼切丸
鬼切丸×鈴鹿のSS
18. MURDER PRINCESS
カイト×ファリスのSS
19. 式神の城
玖珂光太郎×結城小夜 OR 玖珂光太郎×城島月子のSS
20. 大竹たかし DELTACITY 全2巻
21. ヴァンパイア十字界
蓮火×花雪 OR 蓮火×ブリジット
22. 地獄少女
(1) 不合理な 地獄少女の被害者(e× 看護婦,1期の看護婦、2期の 拓真を助けに来てくれた若い刑事,秋恵) 家族・恋人が 地獄通信に 地獄少女と仲間たちの名前を書くSS
(2) 極楽浄土の天使 OR 退魔師が 地獄少女と仲間たちを断罪するSS
(3) 拓真の 地獄少年化SS
二籠の最終回で拓真が地獄少年になるのかと思ってたんですが・・
地獄少年 ジル : 所詮この世は弱肉強食。 強ければ生き弱ければ死ぬ。
拓真 : あの時誰も僕を守ってくれなかった。
守ってくれたのはジルさんが教えてくれた真実とただ一振りの超能力
・・・だから 正しいのはジルさんの方なんだ。
23. 真・女神転生CG戦記ダンテの門
ダンテ× ユーカのSS


179:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/02/16 19:14:47


180:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/02/25 19:34:50
しゅ

181:夏厨
10/02/27 06:32:04
>>160 です、遅くなりました
始まりがイタモノっぽいし、微妙に長くなりそうですがよろしくです

182:夏厨
10/02/27 06:37:16
「敵シールド、ジオフロントへ侵入!」
「第2射、急いで!」
「ヒューズ交換、再充填開始」
「銃身冷却開始」
「目標に再び高エネルギー反応!」
「マズいっ!」
「ああぁ!」
「シンジ君!」
「綾波!」
「盾がもたない!?」
「まだなの!?」
「後10秒っ」
「早く…、早く…、早くっ!!!」
「いよっしゃあっ!」

「ミサトさん、綾波が…」

-----【零章・喪失】-----

183:夏厨
10/02/27 06:39:32

熱に耐えきれずに融解した零号機が横たわっている。
無理矢理引き抜かれたエントリープラグは焼け焦げて拉げ、ハッチの隙間からLCLが漏れ出している。
「綾波っ!うああああああっ!」
初号機から転がり出るシンジ。
目の前の絶望的な光景に我を忘れ、零号機のエントリープラグにとりつく。
「ウゥ…ウゥゥ…」
ハッチの開閉レバーを握ると、猛烈な熱さがシンジの両腕を襲う。
それでも強引にプラグを抉じ開ける。
ハッチが開くと同時に溢れ出す煮え立ったLCL。

「綾波!大丈夫か!綾波!」
暗いプラグを覗き込むシンジ。
咽るような匂いの湯気に霞んで中がよく見えない。
「綾波…」
身動きひとつしない白いプラグスーツが横たわっている。
シンジは急いでプラグから彼女を引き摺り出そうとする。

後ろからヘリのエンジン音。
次々と降りてきた救護隊や保安部、諜報部の何人もの男達が、引き剥がすようにシンジをレイと零号機のエントリープラグから遠ざける。
「あぁぁぁ…」
声にならないシンジの嗚咽。
今、肩と腰を抱き寄せながら少しだけ触れたその綾波の身体は、もう綾波ではなくなっている事を告げていた。
「僕を守るなんて…」
「僕が死なないなんて…」
やっと吐き出した言葉は、シンジの慟哭。
「自分には他に何も無いなんて、そんなこと言うなよ…」
「別れ際にさよならなんて、悲しいこと言うなよ…」
そのまま気を失うシンジ。

184:夏厨
10/02/27 06:41:08

作業する男達の無線。
力のない声で指示を出すリツコ。
「赤木博士…」
「プラグは回収、関係部品は処分して。」
「了解、作業、急げ!」

「…レイ、…シンちゃん」
電波障害から復帰したモニターでその詳細を見ていたミサトがつぶやく。

「碇…」
「…」
静まり返った発令所の広い空間を、冬月コウゾウの声が微かに木霊した。


病室のベッドの上で意識を失って、もう7日間眠り続けるシンジ。
傍らの硬いパイプ椅子に座るミサトは苦悩していた。
自らが指揮した「ヤシマ作戦」は事実上成功。
多くの被害と犠牲の中、第5使徒を殲滅。
零号機・初号機とも大きく損壊はしているが、1週間もすれば80%以上は修復されるという。
「問題はファーストチルドレン…」
そう、シンジがここに眠り続けている理由も「綾波レイ」に依る処だ。
あれだけの戦いの後そんな事実を知らされたら、シンジでなくても精神に絶望的なダメージがないはずがない。
今、ファーストチルドレン・綾波レイは…。

185:夏厨
10/02/27 06:42:20

プシュッ
ミサトが思考のループに陥っている背後で病室のドアが開く。
「葛城一尉、赤木博士がお呼びです」
「あぁ、マヤちゃん、リツコ戻ったの?」
「はい、研究室までお越しくださいとのことです」
「そう…、マヤちゃん、またシンちゃんの事お願いしていい?」
「はい、博士からもそう言われて来ました」
「シンちゃんの容態は良好よ、問題は意識がいつ戻るかだけだから」
「わかりました、何かあったらすぐにお知らせします」
「悪いけどお願いね、なるべく早く戻るから」
「少しゆっくりしてください、一尉」
「ありがとう、寝てるからってシンちゃんを襲っちゃダメよ?」
「そんな…一尉…」
「冗談よ、ジョーダン、ヨロシクねん♪」
「は、はい…」
床に投げ出したままだったジャケットを無造作に着て、つとめて明るく振舞いながらミサトはシンジの病室を出ていった。
マヤは「ふぅっ」と溜息をついた後、シンジの身体を拭くために用意された小さめのたらいにお湯を作る為に給湯室に向かう。

シンジが倒れてからの一週間、マヤは冬月副司令の命でミサトと交代にシンジの世話をしていた。
栄養剤の投与で食事の心配はなく、糞便の処理などは看護師が行っている。
特別何かをしてあげる必要は何もないのだが、マヤの性格上何もしないという事に堪えられない。
それをミサトに相談すると、「横にいて、シンジ君が起きたら私に報告すればいいだけよ?でも…そうね、お風呂に入れてあげられないから身体でも拭いてあげてくれるかな?」と言われた。
当初当惑したが、元来律儀すぎるマヤは2日目にはそれを任務として過ごす事に矛盾は感じなくなっていた。
発令所に戻ると、シンジの世話を焼くその自分の姿を思い出して苦笑もするのだが。

186:夏厨
10/02/27 06:43:52

「今日もここで寝なくちゃダメかな?」
ミサトが出て行った今は、碇司令かリツコの指示が出ない限りマヤはシンジのそばを離れることが出来ない。
使徒の襲来の際はその限りではないだろうが。
固く絞ったタオルでシンジの華奢な身体をなぞる。
病衣の下の筋肉が昨日よりまた落ちてしまっている。

「こんなに細い身体であんなものに乗って…」
目の前の少年に使徒という得体の知れぬ敵の殲滅を任せなくてはならない自分達の許しを請うように、マヤは優しくシンジの身体をなぞる。
「シンジ君…このまま…目を覚まさないなんて事ないわよね…」
心の奥にある不安を口にしてみる。
「レイちゃんもICUから出られないみたいだし…、さあシンジ君綺麗になったわよ、早く目を覚ましてね」
言って自分の心のざわめきを感じる。
それはつかみどころのない不安。

病室の照明を落とすと、それはマヤの心を孤独にする。
疲労しているのはマヤも同じなのだろう。
自分の孤独を埋めるように横たわるシンジの手に優しく触れながら、マヤはいつの間にか眠りに落ちた。


つづく

187:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/02/27 14:55:59
投下キター
期待してます!

188:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/02/27 23:07:46
投下キター
ってまさかいきなり二人目お亡くなりですかorz
続きに期待。

189:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/02/28 22:18:02
規制すごくてなかなか書き込めなかったけどつなぎの方
超乙でした!!新劇っぽい雰囲気に身悶えた

それからぽか波さん!!超ファンです
がんばってください!

夏厨さん連載乙!

破の発売に向けてまた賑わっていくことに期待

190:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/01 03:37:29
テスト

191:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/04 14:11:27
規制解除かな?長かったー。皆さん乙です。

192:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/04 18:11:45
綾幸に投下来てるね

193: ◆IE6Fz3VBJU
10/03/05 02:20:58
えーお久しぶりです。
タン塩さんのお勧めの通り、「綾波レイの幸せ」に投稿することにしました。
つきましてはもう一つのエピローグと(まぁ大したことないんですが)、シンジ視点のコメディっぽい、いや「ぽい」というより完全コメディの後日談を付け加えました。
掲載されるのは来週頭ぐらいになるだろうとのことです。よろしければ見てやって下さい。
ではでは。


194:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/05 05:39:52
黒レイ楽しみだ
夏厨氏も引き続き頑張って頂きたい

195:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/05 09:32:27
まさかの黒波さんキターーーーーーーー

196:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/05 09:41:14
キタ━━(゜∀゜)━━!!

197:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/05 11:00:46
グレイきたのかwwwwwwグレイ待ってるよグレイwwwww

198:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/05 20:41:36 kY6Sdyho
乙です!

199:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/06 12:05:04
おお、いいね、ここもいいところだけど、ちゃんとしたサイト持ってるところにアップした方がss作家としては今後が良いと思います。
新作楽しみにして待ってます。

200:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/06 19:58:08
綾幸のぞいて来たが、分量が多いから来週頭は厳しいってさ

201:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/07 02:04:51
グレイ超乙!!!!!!
またグレイに会えてうれしい

夏厨氏もポカ波氏も楽しみにしてます

202:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/09 07:00:56
綾幸にグレイキター

203:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/10 17:46:29
綾幸でグレイ(一人目は笑わない)を最初から読み返したがやはりいいな。
最初の頃のドSなレイがどんどん可愛くなっていくのが無理なく読める。
おまけのラブコメは吹いたww

204:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/15 06:58:45
「一人目は笑わない」を通して読んだ。
ここに掲載された時より少し推敲されてる?
リアルタイムで読んだ時も良かったが、
まとめて読むと二度目でも結構緊張する。

205:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/15 18:38:18
通りすがりだが投下しておk? 短いが…

206:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/15 18:39:28
改めて読んでも最初の頃のレイのエグさはハンパないもんな

207:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/15 18:40:21
>>205
構わん、やりたまえ。

208:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/15 19:00:54
稚拙でもおk?

209:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/15 19:32:55
誰でも最初は素人さ

210:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/15 20:10:20
じゃぁ遠慮なく

211:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/15 20:15:17
真夏の常夏。気温が下がることのない日々。セカンドインパクトの名残は今も残り続けている証に、強い陽射しは照ること以外知らないかのようにその自身の存在を映し出している。
紅く染まりあげた海面にも惜し気もなく爛々と照りつける様は不思議と威風堂々しているようにも感じられた。

「こんなに暑いのに季節は12月か。本当にセカンドインパクト前は寒かったのかな……」

納得いかない、と愚痴を零しながら点々とアスファルトに黒い染みを残していく。流れ落ちる汗が邪魔で仕方ない。
ハンカチを出せばいい。確かにそうかもしれない。だが残念なことに、買い物袋で両手は塞がっている現実。今は為す術もなくただ歩いていくだけであった。

「にしても酷いよなアスカもミサトさんも。材料ぐらい買ってきてよ……いや無理か」

たとえ買ってきたとしても要らないものが沢山増えること間違いない。生活費を握ってる身としては不安が募るばかりだ。
きっとビールにお菓子などキリがない。下手をすれば新商品だからと言って、なんでもかんでも買う可能性もあるだろう。

「なんか損な役回りだなぁ……」

いまさら何を言ってるんだ、と苦笑いしながら兄のように慕ってる彼を思い出す。

「ホント、いまさらですね」

自分でも苦笑しながら角を曲がる。ふと先に、見慣れた蒼髪を見かけた気がした。

「綾波……?」

見慣れた制服姿、そして蒼髪に白磁器のような肌。間違いない綾波だ。


212:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/15 20:17:11
「綾波ー!」

「……碇くん」

振り向いた彼女は、目をパチクリさせながら何でもないように零す。

「どうしたのさ? こんなとこで会うなんて珍しいね」

普段外で見かけない分こんなことを漏らす。
ふと、日傘いらないのかなぁと考えてしまう。

「散歩」

「……へっ?」

「散歩してるの」

いきなりだったもので素っ頓狂な返事をしてしまった。恥ずかしいと顔に朱を差す頬を掻く。

「そ、そうなんだ。僕は買い物。重いのにアスカもミサトさんも手伝ってくれなくてさ」

213:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/15 20:17:52
ははは、と乾いた笑いをしながらつい愚痴を零す。
すると目の前に差し出された手。
目を白黒させついつい手を凝視してしまう。

「荷物……」

「……? 碇くん?」

なんのことかと合点するのに数秒を要した。

「あぁっ! もしかして持ってくれるの?」

コクンと頷く彼女。

「じゃぁ片方お願いできるかな?」

差し出す荷物、軽く触れた手にドキリとしながら荷物を渡す。
じわりと熱を持つかのように触れた部分が熱くなる。

「綾波、手が赤いけどやっぱり重かったかな?」

「そう……大丈夫だから」

イマイチ掴めない返事をしながら共に歩く。

暑さはかわらず、夏の面影を残したまま今年の冬が続いていく。騒がしく蝉もただ、いまはそれに身を任せていく。会話もなく、けど不快でない。ただ家に着くための帰路、一緒に歩いているだけ。

日常の一ページ。

アスファルトに二つの黒い染みを点々と跡を付けながら。

214:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/15 20:19:40
以上で終わりです。
ただ終わり方がイマイチなのは即興なのであしからず。

215:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/15 20:45:25
なかなかいい作品だから言い訳せずに堂々と投下したまえ

216:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/16 18:59:02
短編としてはかなり良かったと思うよ。二人の何気ない距離感とかが良く出てたと思う。
これからも書いてくれたらうれしいな。

217:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/26 05:32:03
ほす

218:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/04/05 17:36:05
ひたすら投下待ち

219:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/04/12 15:58:44
綾幸って掲示板にも短編投下来てるのな
気づかなかったわ

220:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/04/12 18:14:24
なんてもったいない…

221:夏厨
10/04/13 01:27:59
規制長いな、やっとイケそうかな?
もうちょっとで続きできますが、既に需要がないかも?
よろしければがんばります

222:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/04/13 02:19:40
>>221
見てるぞ、頑張れー!

223:名無しが死んでも代わりはいるもの
10/04/14 19:15:10
待ってる、頑張れ!!

224:夏厨
10/04/22 01:51:37
そろそろいきます
推敲してないし、まだ主役がマヤちゃんですがw
ちゃんとLRSにしますんで許してください

225:夏厨
10/04/22 01:53:41
(・・・この娘をここにもう一度戻しても司令を喜ばせるだけ)
(・・・私がここで全てを壊せばそれでお終い)
(・・・私に出来ることは何だろう、私は何をしているのだろう)

-----【壱話・人がつくりしもの】-----

「レイ、私がわかる?」
「赤木・・・博士・・・」
「さあ、そこにある服を着て、碇司令のところまで行くわよ」
「・・・はい」
リツコは目を覚ましたレイにそう言うと、手にしていたコーヒーカップをデスクの上に置いて立ち上がる。
既にレイを再生して3日目。
シンジが昏睡のまま戻らない事から、いつ来るとも知れない使徒の襲撃に備えて碇ゲンドウの指示は「とにかく急げ」と言うものだった。
(まだ早すぎるかもしれない、体力も・・・精神の構築もまだ・・・)
リツコの心に不安が過ぎるが、あの第三使徒の襲撃の際にもゲンドウは手負いのレイを出撃させようとした事を思えば当然の事なのだろう。

226:夏厨
10/04/22 01:55:14
古びたエレベーターの中、レイはリツコの後ろに朦朧と立っている。
見覚えのある光景、聞き覚えのある音。
「碇・・・くん・・・」
エレベーターの音にかき消され誰にも聞こえない声で、レイはそう呟いた。

「着いたわよ、早くいらっしゃい」
エレベーターが止まりドアが開くと、薄暗いロビーに脚をなげたリツコはそう言ってさらに真っ暗な廊下を進む。
「司令、ファーストチルドレンをお連れしました」
ゲンドウの執務室のドアの前に立ちリツコは言う。レイは無表情でその後ろにいた。
「入れ」
冷たい金属質の扉の奥から聞こえる声。同時にその扉が「プシュッ」と音を立てて開く。
「失礼します」
何歩か踏み出してゲンドウの姿を確かめるリツコ。
デスクに肘を突き両手を口の前で組む姿勢で、ゲンドウはこちらを睨みつけているように見える。
「何をしてるの、レイ?入りなさい」
入り口で立ち止まっているレイをリツコが急かす。レイはゆっくりとその部屋に入った。


227:夏厨
10/04/22 01:57:34
「司令、今のところファーストチルドレンは・・・」
言いかけたリツコを無視するように言動が眉を上げる。
「レイの状態に異常はないか?」
少し躊躇してからリツコは事務的に応える。
「…問題ありません」
眼鏡の奥のゲンドウの瞳が微笑むように見えたのはリツコの思い過ごしだろうか?


「そうか…、すぐに戻って現在のレイの記憶データを明日までに報告しろ」
「判りました」
「明日の旧東京の鉄くずの件は赤木博士は行かなくていい、葛城君に行かせろ、以上だ」
「はい」
リツコはゲンドウの安堵したような表情に少し苛立ちを覚え、あえて問いかける
「…司令」
「どうした」
「サードチルドレンの回復、思わしくないようですが」
「問題ない、使えなければ取り替えればいい、代わりの予定は繰り上げた、来るまでレイを戦闘待機できるようにしておけ」
「はい」
そんな言葉でゲンドウを動揺させる事など出来ない自分に苦笑するように、リツコは返事をして執務室から出る。

228:夏厨
10/04/22 01:58:54
「行くわよ、レイ」
「…」
何も言わずリツコの後を歩くレイ。
「赤木博士・・・」
思いの堰を切ったかのように、レイが問いかける。
「どうしたの、レイ?」
「…教えてください」
「…」
「サードチルドレンはどうなったのですか?」
「あなた、シンジ君に興味があるの?面白いわね、シンジ君は身体はもう大丈夫よ」
「何処にいるのですか?」
「今は眠っているわ、昏睡状態、いつ意識が戻るかは彼の気力次第ね」
「…」
「どうしたの?会いたいの?」
「…判りません」
「今は会わせるわけにはいかないわ」
「…」
暗い廊下での会話は、冷たく無意味に二人の足音にかき消されていった。

229:夏厨
10/04/22 02:01:40
早朝、シンジの病室。
似合わない軍帽をつけたミサトと、交代に来たマヤ。
「レイちゃん、無事だったんですね」
「…あの状態で、信じられないわね」
「でも良かったです、シンジ君が目覚めたらきっと喜ぶと思う」
「そうね、そうだといいわね」
「シンジ君があの時プラグから引き出したおかげですね」
「ほんと、そのせいでこんなになっちゃったんだけど…」

途切れる会話。
重い空気を切るようにミサトは襟を正す。
「じゃあマヤちゃん、今日は丸一日シンジ君の事任せるわよ?」
「葛城一尉、いつ戻られるのですか?」
「日付が変る前までには来るから、あんなところに長くいたってつまらないものね」
「お気をつけて、シンジ君の事は大丈夫ですから」
「ふふふ、すっかり板についたって感じね?いっそのことシンジ君の保護者の件、マヤちゃんに押し付けちゃおうかしら」
「そ、そんな事無理ですよっ!」
「いや~ね、冗談よ、んじゃちょっくら行って来ますか~♪」

230:夏厨
10/04/22 02:03:06
病室を出るミサト。廊下に誰かいる。

「レイ?何してるの?」
「…」
「シンジ君の事が心配で来たの?」
「…」
「もう、何か言いなさいよ、シンジ君なら今は面会謝絶よ?リツコか司令に許可を貰いなさい」
「…わかりました」
踵を返して去るレイ。

「何よあの子、でも心配するなんて気持ちがあの子にもあったんだわね」
独りごちるミサト。
「リツコを問いたださなきゃ、レイの事も、それになんだか知らないけど今日のお披露目だかもドタキャンするし」
不満げにしながらも、軍帽を直す仕草で旧東京へ向かうミサトだった。

231:夏厨
10/04/22 02:04:32
「レイ、あまり歩き回らないでちょうだい」
リツコの研究室。ミサトからの報告でレイがシンジの病室の前にいたことを知り少しイラつく。
「多少の記憶は残っているようね、でもそれはあなたの記憶じゃないの」
「・・・」
「あなたが今しなきゃいけないことはセカンドチルドレンが来る前にエヴァとのシンクロ率を上げておくことよ、サードチルドレンがあの状態なんだからセカンド一人で使徒と戦わせる訳にはいかないんだから」
「・・・」
レイが少し眉を顰めた気がした。
「どうしたの?何か言いたい事でもあるの?」
レイの様子がおかしい。
「サードチルドレン・・・碇君・・・初号機パイロット」
「?」
「・・・碇司令の息子」
レイの瞳から涙が溢れ出す。
「あなた、泣いてるの?」
「・・・わからない」

(どうしたのかしら?データとしての記憶以外この子には何もないはずなのに・・・)
「今日は送ってあげるわ、自分の部屋に戻りなさい」
「・・・はい」
リツコの研究室を出る二人だった。


つづく

232:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/04/22 07:49:58
otu

233:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/04/22 20:25:34
乙。
第五使徒でレイが死んじゃった分岐かな?シリアスっぽいのでこれからシンジがどうなるのかワクテカしてます。

234:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/04/29 22:56:28
ヾ(*'-'*)

235:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/04/30 18:12:14
わくわく

236:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/05/11 22:48:19


237:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/05/24 07:53:01


238:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/05/30 16:43:25
hosyu

239:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/06/01 22:14:04
エヴァ板良スレ保守党




240:夏厨
10/06/03 09:43:09
解除?

241:夏厨
10/06/03 09:44:21
じゃ、がんばってみる
月中旬には続きを…

242:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/06/03 15:17:47
待ってる

243:落ち着いて
10/06/06 06:52:16
LRS小説

244:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/06/07 17:49:15
まだ?

245:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/06/08 13:11:39
まだ上旬だろう

246:JUN
10/06/08 20:54:17
保守だと思ってください。綾幸のJUNです。

「綾波、綾波、起きてよ」
「ん……」
 レイが気だるい声を上げる。ころんと寝返りを打ち、また眠ろうとする。
「ちょっとちょっと綾波、起きなきゃ遅刻だよ」
「後五分……」
「綾波、もう九時なんだってば」
「え!?」
 急にレイが起き上がり、きょろきょろと辺りを見回す。
「何ですぐ起こしてくれなかったの……」
「起こしたよ。そのたびに綾波、あとちょっと、後五分ってさ」
「……いいわ、最初の講義は休む」
「綾波い……」
 ぽとんとベッドに横たわってしまったレイに、シンジは情けない声を上げた。
「揃って講義休んだら、またからかわれるよ」
「問題ないわ。あなたとの噂なら」
「綾波、大体眠りすぎだよ。いっつも僕の部屋に来るたび……」
「それは碇くんが悪いわ。いつまでも眠らせてくれないんだもの」
「い、いやその、だって綾波が悪いんじゃないか。裸の上にワイシャツだけで僕のベッドに潜り込むなんてさ、卑怯だよ。そんなの」
「だって、碇くんがパジャマを買ってくれないから」
「い、いやそれは」
「それに、裸シャツを可愛いって言ったのは碇くんだわ。“かわいいよ、綾波……”って」
「う……」
 言葉に詰まってしまったシンジに、レイはさらに続ける。
「私はいつも講義に遅刻するって言ってるのに、碇くんは毎回構わないって、最初の講義は休めばいいって」
 

247:JUN
10/06/08 20:54:58
 言うとすぐにシーツを被り、眠りにつこうとする。しかしシンジはつかつかとベッドに歩み寄り、
「……綾波、さっきから聞いてれば随分言いたいこと言ってくれたね」
 言ってレイに覆い被さる。
「え、ちょっと、碇くん……」
「大体綾波が誘惑するからいけないんだ。綾波がいつも、好きよ、なんてベッドの中で言うからだめなんだ。分かってるでしょ?」
「そ、それは―」
「自分のことを棚にあげるような悪い子には、お仕置きだよ」
「え、いかりく―んっ…………」
 シンジがレイの唇を奪う。甘く、深いキス。
「だめ、碇くん、二コマ目は、必修……」
「綾波がきちんと反省するまで、離さないよ……」
「もう、留年しても、知らないから……」
「なら、綾波も道連れだ。一緒に留年しよう」
「私はしないわ。大学へ―」
「だったら、綾波をその気にさせれば、いいんだね……?」
「え……ちょっとちょっと、いかりく、あ、だめ……」
 なおも抵抗の兆しを見せたレイに、シンジは耳元でとどめの一言を囁いた。

「愛してるよ」

「あ……」


「………………レイ」


 結局、講義には遅刻してしまった二人だった。


248:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/06/08 22:15:04
いきなりすぎて驚きより笑いが先にきた

249:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/06/08 22:36:35
この人の良さはゲロ甘だからいいじゃない

JUNさんと同い年で女やってる私にゃ直ぐ性的な方に飛んでくのはあんまり頂けないんだけどww

個人的にゲロ甘はたまに読むのとちょうどいい。乙でした~*^ω^*

250:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/06/08 23:20:47
乙です!

251:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/06/09 00:04:17
乙!
感謝感謝!

252:JUN
10/06/11 23:36:37
どもです
えと、もう一本。多分今まで書いた中じゃ最速です

「腕、組んでいい」
「いいよ」
 嬉しそうに微笑んで、レイはシンジの腕にしがみついた。
「今日は、どこに行きたい?」
「……デパート」
「了解」
 相変わらず制服のレイである。私服でも買うのだろうか。それなら自分に役目はないようなものだ。センスのよさそうな店員に任せ、自分はかわいいと言ってあげるだけでよい。それだけでもきっと彼女は喜んでくれる。

 デパートに入ると、レイはインフォメーションボードを確認して、ずんずんとシンジを引っ張るようにして歩いていく。
「綾波?婦人服売り場、そっちじゃないと思うんだけど」
「こっち」
「そう、なの?」
 言ううちにもレイは歩を進める。明らかに服ではない。周りにピンクや水色といった色彩が目立ち始め、女性客が増え、男性客がいなくなってきた。鈍いシンジも流石に危機感を覚え始めた。ここはどう考えても、男が来る場所ではない。
「あ、綾波……?」
「……何?」
「ここって、下着売り場だよね?」
「そう」
「僕が来る場所じゃないと思うんだけど……」
「問題ないわ」
 レイに無くともシンジにはある。周りの女性客の視線がそろそろ痛い。どんな想像をされているのか知らないが、よくないことだけは確かである。腕を組んだ男女が、しかも中学生が、二人で下着売り場へ。どう考えても絶望的な状況だった。
「その、綾波。僕、イアホン見てきちゃだめかな」
「駄目」
「いや、あの」
「碇くん」
「は、はい」
「選んで」
「はい?」
 

253:JUN
10/06/11 23:38:03
シンジは混乱の境地にあった。恋人に下着売り場に連れてこられ、選んで、である。
 荷が重過ぎる。シンジは思った。
「いや、僕、そういうセンスないし……」
 そういうセンスってどういうセンスだ、とシンジは自分の中に突っ込みを入れた。
「じゃあ、せめて色だけでも選んで」
 自分は神様に失礼なことでもしたのだろうか。何が気に食わなくてこんな試練を自分に。色を選ぶのも荷が重い。というか、どんな色だろうが、言えるはずが無い。
「そ、その……」
「選んで」
 言うレイからは覇気に近いものを感じる。そしてシンジの中での理性VS欲望も、いよいよ限界を迎えようとしていた。い、色くらいなら……
「え、じゃあ、そ、その……ぴ、ピンク……」
 顔が真っ赤になった。自分は何を言っているのだろう。お約束の自己嫌悪が舞い上がってくる。しかし目の前のレイはとても嬉しそうで、それだけでも得した気分にならなくも無い。
「分かった」
 言って奥へと駆けてゆく。シンジは安堵のため息をつき、素早くコーナーを出た、もとい、逃げた。

 シンジが音楽コーナーを物色していると、レイは帰ってきた。紙袋の中にはつまりモノが入っているのだろう。先ほどの自分の台詞を思い出し、シンジは少し紅くなって目をそらした。
「終わった?」
「終わった」
「じゃ、帰ろう」
「ええ」
 レイの含み笑いに、シンジは猛烈に嫌な予感がする。
「綾波。人に見せたりしないだろうね?」
「しないわ」
「なら、いいんだけど……」
 レイのことだ。油断してはいけない。シンジは心に刻んだ。

254:JUN
10/06/11 23:39:06
 次の日、いつものようにシンジはレイを迎えに行った。
「綾波、おはよう」
「おはよう、碇くん」
「綾波、数学の課題できた?分かんなくてさ……」
「教えてあげるわ。私の家で」
「あ、ありがと」
 ちゃっかり“家で”と言うあたりが綾波レイの綾波レイたる所以だろう。シンジもそこは理解している。
「腕、組んでいい?」
「いいよ」
 半ば苦笑しながら、シンジは言った。この問いに対して駄目、とシンジが言ったことは無いのに、レイはまるで初めてそれを頼むかのように訊いてくる。レイ曰く、『いいよって言ってくれると碇くんも私が好きなことがわかって嬉しい』のだそうだ。
 嬉しそうに微笑んでレイがその華奢な腕を抱き寄せると、シンジは軽くその頭を撫でた。
「ね、碇くん」
「ん?」
「私、昨日鮭のムニエル作ったの」
「へえ、うまくできた?」
「焦がしちゃったわ」
「綾波、まだ慣れてないからね。火加減とか。今度教えてあげるよ」
「うん、お願い。それでね、碇くん」
「うんうん」
「私今日、ぴんくのぱんつなの」

255:JUN
10/06/11 23:41:30
ごほっ、げほげほっ、ごふっ、ごほっ、げふっ

 ―死ぬかと思った
 
 シンジは荒い息を吐きながら思った。あまりに唐突である。読みが甘かった。

 我に返ったシンジは、慌てて辺りを見回した。洒落になっていない。誰かに見られでもしたら悶絶ものである。幸い辺りには誰もいないようで、シンジはほっと安堵の息を吐いた。
 レイは状況が飲み込めていないのか、きょとんとしている。シンジは眩暈がした。
「見て」
 見る?ではない。見て、である。シンジがまたも眩暈を覚えているうちにレイは早くもスカートをたくし上げ始めていた。

 眩いばかりに輝く白いふくらはぎ、扇情的を超えて神秘的ですらある脚線美を備えたふともも、そしてその根元にあるレースをあしらった薄い桃色の―――

「すとおおおおおお――――っぷ!」

 シンジは声の限りに絶叫した。レイの手が止まる。はだけかけたスカートはそのままに。
 見てない、見えてない。さっきのは幻影だ。僕の邪な妄想が生み出した幻だ。僕は何も見ていない。
 レイは膝上十センチほどのところまでスカートを捲り上げたまま固まっている。かなりイケナイ画である。
「あ、綾波。とりあえずその手を放そう。」
 ぱっ、とレイがスカートの裾を放した。シンジはほっと息を吐く。
「そ、その、なんだって?」
「ぱんつ」
 何を訊くの?とばかりにレイが言った。
「あのさ、綾波……」
「ぴんくのぱんつ。碇くんのリクエスト」

256:JUN
10/06/11 23:42:50
幸せと言うのだろうか、こういうのは。大好きな女の子が自分のリクエストした下着を穿いて来てくれるのは。
 ……違うよな、多分。
 シンジはそこまで割り切っていないのである。正直嬉しくないと言えば嘘になる。が、レイには人並みの恥じらいを持って欲しいのである。少なくとも朝っぱらから恋人に下着を見せようとしない程度には。
「あのさあ、綾波」
「……何」
 レイは上目遣いでシンジを見る。その表情は心なしか寂しそうで、どうにも勢いよく怒れない。
「年頃の女の子がさ、朝っぱら男の子にその、下着を見せるのはどうかと思うんだ。それに綾波、昨日見せないって言ってたよね?」
「言った。けど、恋人にはぱんつを見せるものだと聞いたわ」
「そういうのはさ、もうちょっと大人になってからなんだ。僕らにはまだ早いの、いい?」
「…………」
 レイは黙ってしまった。よし、勝った。こうして一つずつ一般常識を身につけてくれればいい。ゆっくりでいいのだから。巡り巡って彼女のためだ。
「それじゃ、行こう?」
 レイは頷かなかった。けれど、細い肩を抱き寄せて強引に歩き出す。
「……碇くん、見て、くれないの?」
 レイの声は震えを含んでいた。しかしシンジは答える。
「う、うん。ごめんね」
「……私は、見て欲しい。碇くんに」
「い、いや、綾波。あのね―」
「私、頑張って選んだのに……」

257:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/06/12 00:02:01
シンジの良心がぐらつき始めた。甘いと言わば言え。大好きな女の子が傷ついているのである。シンジにとって一番の懸案は、レイの心である。
「あ、あの、綾波……」
「……」
「ごめん、僕だって見たいのは山々なんだけど、心の準備がいるんだ。僕も恥ずかしくて……」
 自分が中学生ということを忘れそうになる。我ながら何を言っているのだろう。
「だから、その……二人きりの、誰もいないときに……ね?」
「本当?」
 れいがぱっと顔を上げる。真紅の双眸は煌々と輝いていて、期待の色が見て取れた。
「う、うん」
「かわいいって、言ってくれる?」
「も、もちろんだよ」
「嬉しい……」
 目尻に涙を浮かべて、レイはシンジの腕に頬擦りした。結局折れてしまった自分を情けなく思いながら、シンジはまた歩き出した。
 ―苦労が多いな……
 けれど、仕方ない。恋愛感情は本人の意志ではないのだ。自制心をきちんと固めて、覚悟を決めよう。

 ―綾波の下着、どんなのかな……

 少年の淡い期待はもう少しだけ、お預けである。

                  FIN


258:夏厨
10/06/12 02:18:33
>>231

-----【弐話・帰還】-----

シンジの病室。
マヤがシンジの背中を濡れたタオルで拭いている。
「シンジ君、か・・・本当に保護者になっちゃおうかな・・・」
独り言を言って自分に照れ笑いするマヤだった。

「早く元に戻れればいいのにね、でも元に戻ればまたエヴァに乗らなきゃならないんだもんね」
発令所で何度も聞いたシンジの悲鳴や絶叫を思い出し顔を顰める。
「このまま眠ってても誰も責めないよ」
呟いたマヤの頬に涙が落ちる。

「・・・ぅぅ」
「?」
マヤの涙に急かされたかのように、シンジの様子が変わる。
「・・・ぅ、ぁぁ」
「シンジ君?」
呼びかけるマヤ。
「気がついたのね?シンジ君、シンジ君っ」
急ぎナースコールを押し(病室はモニターされているのでその必要などないのだが)、シンジに呼びかける。
「シンジ君っ!」
「ぅぅ・・・ぅぅ・・・」
思わず抱きかかえて呼びかけるマヤ。

259:夏厨
10/06/12 02:19:40
医師や看護師が駆けつけ、シンジの容態を確認する。
いくつかの投薬を行い、計器の動向を看護師がメモに書き込む頃にはシンジの瞼が開いた。
「碇シンジ君、わかるかね?」
医師が問いかける。
「・・・はい、ここは・・・」
か細い声で応えるシンジ。
そのやり取りをつっ立ったまま見ていたマヤが嗚咽する。
「ぇっ・・・よかった・・・シンジ君・・・よかった」
横でマヤの肩を押さえていた看護師が呟く。
「伊吹二尉のおかげですよ、本当におつかれさまでした」
「ぅっ、ぅっ、ありがとうございます」
「さ、碇さんに声を掛けてあげてください」
「は、はい・・・シンジ君・・・おはよう・・・」
少し場違いな言葉に、その場にいる医師や看護師は優しく微笑んだ。


260:夏厨
10/06/12 02:20:58
一応の処置が終わり、病室にはマヤと、計器と点滴に繋がれたシンジ。
「マヤ・・・さん・・・僕は・・・」
「もう大丈夫よ、安心して」
「ここは・・・病院・・・」
「そう、あれから何日も経ったの、ずっと眠ってたのよ」
「マヤさん・・・」
「まだあまり喋らない方がいいわ、ゆっくり休んでね」
「・・・ありがとうございます」
「なっ・・・えっ・・・あっ・・・」
シンジの優しい瞳と言葉に取り乱すマヤ。慌てて言葉を返す。
「あ、あ、レイちゃんも無事だったのよ?」
「?」
一瞬表情が曇るシンジ。
「あの時シンジ君が早く助け出してくれたから、レイちゃんはもう元気になったのよ?」
「綾波・・・?綾波が?」
「うん、今先輩がケアしてる、もう心配ないわ」

261:夏厨
10/06/12 02:21:48
「・・・」
「ご、ごめんね、まだ混乱してるよね、もう独りで心配ないって先生が言ってたからお薬をもらって休んでね」
「マヤさん・・・」
「か、葛城一尉も夜には戻るから・・・きっと大喜びよ」
シンジの琴線に触れてしまったのが怖くなり、言葉を失い話題を変えるマヤ。
「一尉が戻るまで独りで大丈夫よね?私は先輩に報告しなくちゃだから・・・」
「は、はい、もう大丈夫です、お仕事忙しいのにすみません」

ベッドサイドのパイプ椅子を立つマヤ。名残惜しくなり、瞳に涙をウルウル滲ませて呟く。
「じゃ、行くわね、何かあったらナースコール、ね?」
「はい・・・ありがとうございます、マヤさん」
「・・・シンジ君・・・本当に良かったね」
「マヤさん・・・」
「また後で来るからね、おやすみなさい」
「おやすみなさい」
「・・・握手」
一方的にシンジの手を取るマヤ。
「じゃ、本当におやすみなさい」
弱々しくその手を握り返すシンジ。
「はい、おやすみなさい」
「また目を覚まさないなんて絶対ナシだからね?」
「だ、大丈夫ですよ」
「えへへ、冗談よ」
「はい」
「えっと、それじゃ・・・」

262:夏厨
10/06/12 02:23:00
「あなたたち何してるの?」
突然病室に響くリツコの尖った声。その後ろにレイ。
「せ、先輩っ!レイちゃん!」
少しニヤリとリツコが微笑む。
「報告が遅いから『怪しい』と思って来てみたら・・・」
「あ、や、違うんです、シンジ君に少し眠ってもらおうと思って睡眠薬を・・・」
「ま、いいわ、カエデ達に職場を取られたくなかったら早く戻りなさい」
「は、はいっ!申し訳ありませんっ!」
慌ててその場を逃げ出そうとするマヤ。そこにリツコが追い討ちを掛ける。
「マヤ、シンジ君が気に入ったの?」
「せ、先輩っ!違います、え、そういうんじゃなくて、」
「保護者の事、何か言ってたわよね?モニターで確認したわ」
「せ・・・」
「それと、今最初の『また後で来るからね、おやすみなさい』からシンジ君の手を握って私が来るまで7分22秒」
「い、いつから見てたんですか・・・」
「ずっとよ」
「ずっとって・・・先輩・・・」
そこにレイが口を挟む。
「たぶん・・・碇君が私を助けてくれたという話題の時から『ずっと』です」
「れ、レイちゃんまで・・・ひどい・・・」

病室から逃げ出すマヤ。さっきとは別の意味の涙が彼女の頬を濡らしてゆくのを三人ははっきりと目撃する。
「無様ね、でもおもしろいわ」
新しい遊びを覚えた子供のように、リツコの瞳が一段と怪しく光る。

263:夏厨
10/06/12 02:23:59
「リ、リツコさん・・・」
その様子を固唾を呑んでその冴えないコントを見守っていたシンジがようやく口を開く。
「あら、シンジ君、良かったわね、目が覚めて」
「は、はい・・・」
「早速だけど司令がお呼びよ、と言っても目が覚めたばかりで筋力が戻ってるとは思えないからこの車椅子に乗りなさい」
「え?…あ…リツコさん、よくわからないんですけど」
シンジの目線はレイの周りで泳ぐ。
そののあやふやさに眉を顰めながらリツコが返す。
「何の事?司令がお呼びだと言う事が?」
「いえ………いや、いいです」
シンジは何か腑に落ちない表情で俯く。
「変な子ね、まぁいいわ、レイ、車椅子にシンジを乗せてあげて」
「はい」
レイが少し上気した表情でシンジに近づく。
「ちょっ、いいよ綾波、自分で出来るから」
あからさまにレイを拒否するシンジ。というより少し怯えているのだろうか。
「・・・命令だから」
半ば強引にシンジの肩を抱えて、そのレイの紅い瞳が少し曇る。
「あ、ありがと・・・」
レイを盗み見ながら、けれどもレイと目をあわせようとしないシンジだった。

264:夏厨
10/06/12 02:26:09
「レイが自分でシンジくんを運ぶって付いてきたのよ」
リツコがシンジとレイの少し前を歩きながら言う。
「レイが誰かに興味を持つなんてね、そんな事今まであったからかしら?」
「………そうですか」
それ以上シンジはどう答えていいか判らず無言になる。
ふと、レイの表情は見えないが、シンジには車椅子のスピードが少し上がったように感じられた。

「さあ、着いたわ」
ゲンドウの執務室のドアが開き、3人はおずおずと部屋に入る。
「と、父さん・・・」
声にならないシンジの呟き。
「赤木博士、ご苦労だったね、だが綾波レイを呼んだ覚えはないぞ」
ゲンドウの横に立っている冬月が言う。
「副司令、申し訳ありません、シンジくんが歩けないので補助のために一緒にお連れしました、レイ、帰っていいわ」
冷静にリツコが促す。
「…はい」
聴こえないくらい小さな声でレイが応える。
「君もまだ万全と言える状態ではない、早く部屋に戻って体調を整えなさい」
冬月が追い打つように続けた。

レイは俯いたまま今来たドアに向かって歩き出す。
「あ…綾波?」
シンジが声を掛ける。
レイが立ち止まる。
「あの…綾波、送ってくれてありがとう」
レイの肩が揺れ、今にも振り返りそうな仕草。
「レイ、早く行け、休養も大切な仕事だ」
ゲンドウの冷たい声がその空気を遮り、レイは無言のまま執務室を出た。
刹那、リツコの眉が動いた気がするが、レイが出たドアが閉まるまで誰も声を発することはなかった。

265:夏厨
10/06/12 02:27:01
「赤木博士、シンジの状態はどうだ?」
「いくらかの筋力の低下と血圧が不安定なのを除けば何の問題もないと医療チームから報告が出ています」
「エヴァに乗れるまでどのくらい掛かるか?」
「今日一晩安静にした後、一週間のリハビリと少量の安定剤投与で元通りになると思われます」
「精神汚染や記憶障害の報告はあるか?」
「現在経過観察中です」
「二日後にセカンドチルドレンが着任予定だ、それまではレイを戦闘配備できるように、セカンド到着後はシンジが回復するまで2名を常時待機できるようにしておいてくれ」
「承知しました」

暫しの沈黙。

「シンジ」
ゲンドウがシンジの名を呼んだ。
「ぇ、…」
蚊の鳴くようなシンジの声。
「ヤシマ作戦から倒れるまでの事は覚えているのか?」
思いがけずゲンドウの質問。慌ててシンジが答える。
「と…あ、綾波をエントリープラグから出すまでは覚えて…」
その時の手の感触と光景がぶり返して言葉を切るシンジ。
「…そうか」
「と、父さん・・・綾波は・・・」
嫌な時間を断ち切るためにシンジがゲンドウに問い返そうとする。
「シンジ、ご苦労だったな」
「え!?と、父さん?」

266:夏厨
10/06/12 02:28:32
考えもしなかったゲンドウの一言にシンジは何も言えなくなり、だがネルフに来て初めて心が満たされるようで嬉しくなった。
リツコに目を向けると、無表情だがゆっくり頷いてくれた。
「父さん…」
「シンジ、司令と呼べ」
「あ、ご、すいません…」
せっかく膨らんだ風船が一気に萎んだような気分だった、が、それでもシンジの心に明るさが差し込んでいるようだ。

一拍の無言の時、その後ゲンドウが続ける。

「シンジ、これから赤木博士がお前に大切な話をする」

さっきまでの空気が一変するのを感じて、シンジは息を呑むのさえ忘れて唇を噛んだ。



つづく

267:夏厨
10/06/12 02:29:16
JUNさん乙です

268:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/06/12 10:46:35
2人とも乙です!

個人的な意見だけどもJUNさんは毎回律儀に『綾幸のJUNです』って言わないでいいんじゃない?

どんな人が書いたか初めからしってると偏見が生まれそうだから^^;
本当に個人的な意見スマソ
作品は好きだよ

269:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/06/16 08:16:09
>>268
同意
このスレには名の知れた作家さんも投稿してるけど、皆匿名だよね


270:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/06/16 15:03:56
ていうか「綾幸の」って自ら名乗って良いのは普通tambさんだけだと思う。共同管理者でもなんでもないんだから

名乗った上で投下するかどうかは他の人がどうあれ一職人さんの自由だと思うけど
ただ「○○の」と名乗りたいならせめて自分のサイトを持たれてはどうか

271:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/06/16 17:40:40
すみません、次から気をつけます。
また何かしら投下はさせてもらうと思いますが、その時は匿名でやらせていただきたいと思います。

272:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/06/16 20:07:58
しかしJUN氏は綾幸組組員と言えるのでは。

まあ組長tamb氏の許可がないと組の看板は晒せないかな。

273:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/06/16 21:11:23
JUNさんがちゃんと書きたいと思ってる職人さんなのはわかる
でもここでは知られたサイトだけに綾幸ブランドの先入観なく勝負してほしいとは思うかな

274:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/06/19 08:03:30
JUNさんはそれなりの実力をおもちだから、
まあサイトの名を汚すことはないだろうけど
他人様のサイトの看板を掲げるのはいかがなものかと思う。

JUNさんの作品は好きですので、投稿は楽しみにしています。

275:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/06/19 17:13:56
まあ次は匿名でって言ってるからこれに懲りずに次の投下があることを期待したい

JUNさんも夏厨さんもGJ!

276:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/06/19 17:16:47
夏厨さん投稿乙です
続きを早くupしてください。
続きが気になって眠れんw

277:夏厨
10/06/20 09:21:01
続きは惣流さん登場バージョンで書いてたんですが、破を見て手直し中です
待っていてくれる人がいて嬉しいです

278:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/06/23 20:38:01
1レスだけ投下してみます。
--
「え、あ、あれ……!」
 慌ててシンジは跳ね起きる。
気がつくと、レイの膝枕で寝ていたことに気がついたからだ。

とりあえず、シンジは謝る。
「あ、その、ごめんね」
「なにが?」
「あ、ああ……その」

(ううう、ウトウトして綾波の肩に寄りかかりそうになったのは覚えてるけど)
 シンジは悶々と考える。そして、その相手の方をチラリ。
何事かに動じた様子もなく、ジッと前方を見据える綾波レイ。

(僕なら膝枕ぐらいオッケー? いや……たぶんどうでもいいんだろうな。はは……)
 結局、ネガティブに片付けてしまい、立ち上がる。
さて、接続試験はまだかな? もう待ちくたびれてしまった。

「……クスクス」
 誰かが少し離れたところで笑っている。それは携帯電話片手の葛城ミサト。
「ね、ね、見て? シンちゃん……レイってば」
 と、シンジに携帯の画面を見せようとしたその瞬間。

 (がばっ)

 と、レイの両手が覆い被さる。あまりの素早さに、シンジには訳がわからない。
「わーった、わーった。そんなに怒んないでよ、レイ」
と、取りなすミサト。そして、閉じられた携帯に写っていたものは?
 それは、携帯のカメラで隠し撮りしたものだろう。
なんとなく頬を染めながら、居眠るシンジの髪をなでるレイの姿が…… (完

279:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/06/24 05:17:15
イイヨーイイヨー

280:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/06/26 07:54:48
短いけど凄くイイ!
またお願いします!

281:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/06/26 13:06:21
>>278
1レス以内なのにこんなに萌えられるとは…凄くいい!ありがとう

282:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/06/26 23:21:58
ありがとです。では、調子に乗って。
---
ついっ……と、シンジは机に指を滑らせる。
そこは綾波レイの机。彼は何かを見つけて、指で摘み上げた。
それは綾波レイから抜け落ちた、1本の髪の毛。

シンジは思わず声を漏らす。
「へえ……根本まで青いんだ」
「バカッ」
と、絞り声で咎めたのはアスカ。
(このバカシンジ、本人が気にしてたらどうするのよ!)
「え、そういうものなの? ねえ、綾波。これ貰って良いかな?」

ギクリ、と振り返るレイ。
「い、いいけど」
「本当? ありがと。うわあ……」
と、シンジは無邪気な様子で、窓の光で透かして青い髪にみとれている。

「綺麗だね。ね、アスカ?」
「知らないわよ」
「ねえねえ、なんか上手く保存する方法って知らないかな? 水晶に納めるとか」
「……北欧に行って、ドワーフでも訪ねてきたら?」
そんな二人を尻目に、そっとレイは教室を出る。

いや、レイは確かに気にしていた。
散らかった自室の、散らかった洗面台に置いてあった物。
それを手にしてジッと眺める。それは、髪染めのセットだった。
日本人らしい黒髪があなたのものに―。

そして、それをゴトンとゴミ箱に投げ捨てる。
つまらない自分の悩みが、ゆるやかに溶けていくのを感じながら。 (完

283:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/06/27 12:33:19
また書いてくれてありがとう
シンジの何気ない言葉にレイが救われているんですね!

284:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/06/27 12:48:09


285:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/07/06 07:53:58


286:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/07/06 09:24:00
楽しみでげす

287:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/07/07 19:30:07
FanFiction.NetでエヴァFFを漁っててけっこう衝撃的なLRS小説を見つけたので
紹介を兼ねて適当に日本語訳してぶん投げてみるよ
一度しかやらないから今回だけ大目にみてね

もとの作品
URLリンク(www.fanfiction.net)

288:Impulse
10/07/07 19:31:12
衝動
By Random1377

シンジにとって、その瞬間は時が止まったように思えた。レイの赤い瞳が静かに見返して
くる。彼女の上に乗って見下ろしているシンジの瞳を。―なんだこれなんだこれなんだ
これ。なんなんだ。―シンジの思考はぐるぐると空転し、そして突然ある衝動が襲って
くる。シンジはレイの体に覆いかぶさって、その唇にキスをした。レイのまぶたが少しだ
け開いたが、抵抗はしなかった。―綾波の唇、すごくやわらかいや―シンジは考える
、―綾波のからだも。―そこではっと目を見開き、飛び起きる。ようやく左手がレイ
の胸を触りっぱなしなことに気がついたのだ。後ずさりをはじめるシンジ。レイは立ち上
がり、そんなシンジを物珍しそうに見る。「なぜ……」「ごめん!ほ、ほんとうに、ごめ
んなさい!じ、自分でも何考えてたのかわかんないよ、ぼ、僕は……」「なぜ、途中でや
めるの?」先にレイのほうが言い終えた。シンジの後ずさりが止まる。ぽかんと口を開け
る。「…今、何て言ったの?」レイは冷静沈着にシンジに歩み寄り、平手打ちを浴びせる
。「ねえ、何でこんなこと……」レイは自分の唇をシンジの唇に押し付けて黙らせた。「
…………違うわ、さっきのとはぜんぜん違う感じがする。二度目のほうが、間違いなく楽
しい」シンジはただ突っ立ってレイを見つめている。「何か問題があるの、碇くん?」レ
イは首をかしげる。

289:Impulse
10/07/07 19:32:38
「ななななななにか?」考えがうまくまとまらない。というよりレイが未だに目の前で素
っ裸な時点でもうどうしようもない。科学の実験かなんかみたいな目で見られてるし。「
興味深い状況だわ、碇くん。交尾の手順は教科書で読んだことがある(必修科目だからね
ぇ、読者のみんな)。だけどわたしはキスをしたことがいままでなかった。もう一度やっ
てもらえないかしら」目を見開きすぎて目玉を落っことすことが仮にありうるとしたら、
とっくにシンジの両目は床の上に転がってるだろう。「なななな何て言ったの?」レイは
どこまでもどこまでも落ち着き払っているようだ。「聴力に問題があるのかしら、碇くん
。あなたはもう一度聴覚検査を受けなおしたほうがいいと思う。『もう一度やってもらえ
ないかしら』、そう言ったの。さっきやったみたいに、もう一度、わたしにキスするよう
に。そういう意味で言ったのよ」

290:Impulse
10/07/07 19:36:07
シンジが真っ先に思いついたのは逃げ出すことだった―はるか遠くへ―決して後ろを
振り向かず。だがしかし今のシンジは、後方には壁を背負い前方にはとってもナイスプロ
ポーションな裸体が立ち塞がっているという状況下にある。この選択肢は取れない、従っ
て次善の案を採用する。つまり説得によって道を切り開くのだ。「ねえ、綾波。まさか本
気でもう一度キスしてって言ってるんじゃないよね……よ、要するにさ、さっきのことは
謝るから……んで、えっと、えーと……」「碇くん、わたしは間違いなくもう一度キスし
てって言ったの。わたしはとてもとても気持ちがよかった。あと、怒らせても怪我させて
もないのに謝る必要はないと思う。わたしは怒ってもいないし、怪我もしてない」片眉を
つりあげたレイの顔はなんだかちょっと不吉な雰囲気を漂わせている。「それに私のほう
が階級は上。碇くん、あなたはキスしろって命令されるほうがいいの?」


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