09/10/09 23:50:56
楽しい夕食も終わって、僕は残りもののデザートを齧りつつコーヒータイム。
アスカは音程外れの鼻歌を歌いながら洗い物をしている。
何だか新婚ホヤホヤみたいだ。
よく結婚すると荒んでた人間も丸くなるって言うけど本当かもしれないね。
今なら救いようの無い話が10年後にハッピーエンドでリメイクされたって言われても信じるよ。
「どうしたのシンジ? ボーっとして」
いつの間にか近くにいたアスカがデザート皿から最後のチェリーを摘んで口に運んだ。
ちょっとした仕草が妙に艶かしく見える。アスカって口紅してたっけ?
「ちょっと感動してただけ。だってあのアスカが―」
そこでふと気付いた。『あのアスカ』だって?
そうだ。僕は何をやっているんだ。
目の前にいるのは素直で明るくて優しくて僕を慕ってくれるアスカ。
だけど今のアスカは本当のアスカじゃない。
僕はそれを誰よりも知っているはずなのに。
「ねぇ…あのアスカが、なに?」
「ごめん。何でもない…何でもないよ」
「そう…変なシンジ」
アスカは少し残念そうに笑うと空になったデザート皿を持って戻っていく。
少し手を伸ばせば抱きしめられるくらい近くにいるアスカが限りなく遠くにいるように思えた。
それは多分間違いじゃない。
<<つづく?>>