09/11/09 23:15:52
「で、どうすんのこれから。あたしもう会場に入るのはご免蒙るわよ」
「私も嫌だな……ま、二人は先に来たときの車で帰っていいわよ。後は私が何とか
しとくから」
「その『何とか』だけどさ、このお礼は三倍返しじゃ済ませて欲しくは無いわね」
「何も知らない民間人巻き込んでこんな茶番仕込んだんだから、勿論タダじゃ
終わらせないわよー」
「おぉー、期待してるわよ作戦部長」
「まっかせなさいな。そんなわけでシンちゃんも心配しないで今後は……」
「もうやめて下さいよ!」
屯している集団の幾つかがシンジの叫びに振り向いた。
ミサトとアスカはシンジの表情に我に返って、ばつが悪そうに目線を反らす。
誰も何も言い出せずに数瞬が過ぎて、最初に行動に出たのはミサトだった。
「じゃ、後は任せて……」
そう言い置くと、行きたくないと言っていた会場内にそそくさと消えていった。
『ミ・サ・トぉ……逃げたなぁ!』
取り残されたアスカは必然的にシンジと対峙することになる。
とはいえシンジの気持ちを上手く汲み取る手段なんて、アスカには全然と言って
いいほど持ち合わせていない。その上後ろめたい思いが足を引っ張った。
いつものような強気な出任せでも言おうとした気力は、シンジの責め立てる視線
に消され、それでも尚対応を考えているうちに、慣れない髪型がやたら気になって
むずむずしてきた。
『ええい!もうなるようになれ!』
そう思って無造作にカチューシャと髪留めを抜いて頭の重心を低くする。
「あ……」
予想の範囲外のアスカの反応にシンジが戸惑っている隙に、アスカはさもあたり
前のようにつかつかと車へ向けて歩き出した。
立ち尽くすシンジにアスカは面倒くさそうに声をかける。
「何してんの、早く行くわよ……」