09/10/19 22:46:59
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「って、言った筈なのにな、」
「良いじゃない!、ひとりで帰っても、つまんないのよ。」
教室の片隅の、一つの机で向かい合っているシンジとアスカは、そんな他愛もない問答を幾つか繰り返す。
頬を若干膨らませたアスカが頬杖をついた。不意に広げた学級日誌に影が出来る。
シンジがそれに気付き、おもむろに顔を上げると、非常に近い距離にアスカが居て、それからまた、ぱっ、と羞恥故に顔を逸らした。
暫時、沈黙が二人を包んだ。しかし、そんな静寂も何故か心地良いものだとシンジは思い立った。
彼が紙上を滑らせているシャープペンシルの、ひそやかに擦れ合う音以外に、漸く人の声音が教室に反響する。
「…シンジ、さ、」
「ん、」
常に勝気なアスカには珍しく、やけに弱々しく掠れた声で、
「好きな人、…居るの?」