09/10/17 17:21:59
〔君と一緒に〕
ある土曜日の夕方
「ねぇ、アスカ。明日どこか行かない?」
「ん、…ん? え! シンジと?」
僕は洗濯物を畳みながらアスカに聞く。テレビを見ていたアスカが驚いた表情で僕を見る。
まぁ僕はアスカに誘われることはあっても、誘うことはしないからね。
僕がそんなことを初めて言うものだから、アスカは僕のことをじっと見ている。
なんかアスカの口元が少し上がるのが見えたのは気のせいか。
笑っているのかバカにしているのか、それとも嬉しいのかどっちだろう。
「シンジが誘ってくれるなんて、…明日は嵐ね」
あぁ、これは完全にバカにしている。そんなことを言いながらでもアスカは微笑んでいた。
はぁ、それじゃ明日は嵐でも起こそうかな。
「どこに連れていってくれるの? 動物園? 遊園地? それとも映画でも見るの?」
あぁ、やばい、期待しているよ。声が弾んでいるよ。
ついでにアスカの目が輝いて見えるのは気のせいかな。
「いやぁ、…動物園も遊園地も行かないけど…それに映画も見ないから…」
と、言ったとたん残念そうなアスカの顔が見えた。あわわ。
「……何処に行くの?」
明らかに残念そうな口調でアスカが聞いた。うぅ、本当にごめんよ。
「近所にカフェレストランがオープンしたんだけど…行く?」
「一人で行けばいいじゃない!」
即答ですね明らかに怒っていますよ。ひぃぃ、睨んでいるよ。
「ぼ、僕が好きなもの奢るから一緒に行こうよ!」
アスカはゆっくりと振り返り僕を見る。なんか石にされそうだ。
「本当に奢ってくれるの? シンジもし嘘だったら…」
「その先を言わなくても分かっているから。ちょっと落ち着いてアスカ」
僕は迫り来る壁を押すような体勢で両手を突き出し、アスカの怒りを静めた。
目が怖いな、なんか拳まで握っていますけど。
「明日は楽しみにしていてよ…」「…楽しみね」
たぶん明日は僕の命日になるかもしれないな。