09/10/07 12:10:35
過去スレ2
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3:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/07 12:21:13
おおお、乙です!
4:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/07 12:25:40
>>1
乙!
5:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/07 14:06:14
>>1乙
6:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/07 15:39:44
高嶺姉貴が >>2getだ!
_ _,. へ_/| / ヽ j | ヽ _____
``<_三三ミニァ 〉 〈 | r'´∠ -─┴ '´
\ `ヽ、_」 , - ─‐-- ─- 、 r<_/
\ 、 \ _ムィ 一/⌒ヽ、ー‐- `ヽ、」 /´ /
ハ  ̄/ / \∠ /
/ 厂 ̄7/ | 、 マ辷 ´
/ // / | ! \ ト、\
/ // j / / //| | | ヽ | \
j // | | | ||i! / j ||| || ! ヽ
i| / | | | | | iト、 // //||| |!|| | !
|レ|! ヽ | 「 T十r-ト、 〃 /i/ |/|/!/| |il | | |
| || ヽ | r〒テヾ、!ト、 /フー十|十!「|ij | ,イ |
| i! | ヽソ トィン:} ヽソ ===ミ、/!_|/ノ | >>1
| i! ヽ _|ハ┴''┴ 、 /├ ' | あんたイカぁ?
ト|| , -─‐|ハ rv─‐ァ /|├-─- 、 !
i |/ | || ト、 ヽ / /{| | \ |
|| ! |!┤ \ 、__ノ / j ハ \|
トiハ /ハヘ | ` ‐-‐ ´ 〃 | | j
! |! / トト! ! \ / /|_j.」 i /
| | __ `フ┬‐く \ / / | , |/
!| !イ`ヽ / | \ / | / \ レ /
|| || レ′ ` ー--‐ '´ V `y /
ハ| || ィ′ 、 `ー一 / | //
∧ ||j! | ヽ / | / /
! | ll | | , / /
7:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/07 17:02:10
乙!
8:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/07 17:30:07
乙です
9:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/07 23:47:43
>>1乙です
いきなりですが投下します。
・かなり長いです
・直接的な表現はあまりありません
・直球LASが好きな人には向かないかも
NGワードは
maTsuでお願いします
10:maTsu
09/10/07 23:48:47
8月、扇風機の風を受けながら、テレビを見ていた。
たいして興味のない、バラエティ番組。
隣には、アスカが座っている。テーブルに頬杖をつき、不機嫌そうな顔をしながらテレビを見ている。
テーブルの上には、空になったアイスクリームのカップが2つ、置かれていた。
「シンジ、チャンネル変えてよ、つまんないわ。」
「ん」
そばにあったテレビのリモコンに手を伸ばし、適当にチャンネルを変えた。
ニュース、何かのドラマ、別のバラエティ番組と変えていき、再度ニュースが画面に映った。
行楽地のことを報道しているらしく、川で子供たちが楽しそうに泳いでいる。
ふとアスカの方を見ると、なにやらムッとした表情をしていた。
「あ~ぁ、楽しそうねぇ。」
「・・うん。」
僕とアスカには夏休みがない。いや、エヴァのパイロットには夏休みがもらえないと言った方が正しいだろうか。
学校はもちろん休みなのだが、ちょくちょくネルフに召集されるため、とてもじゃないが休暇気分を味わうことができない。
アスカの機嫌が悪いのも、その辺が原因らしい。
11:maTsu
09/10/07 23:50:41
「修学旅行もダメ、遠出もダメ、ほんとストレス溜まるわ。なにが夏休みよ。」
「まぁ、しょうがないよ。いつ使徒が現れるか分かんないし。」
アスカは僕をジロリと睨み、
「あんたってほんとつまんない男ね」と言った。
一つ溜息をはさんで、
「ヒカリは家族で旅行に行ってるし、加持さんはドイツだし、かといって遠出もできないし。」
僕は苦笑いしながら、ゆっくりと立った。
「そろそろ食器洗わないと。」
「アタシは手伝わないわよ。」
「はいはい。」
12:maTsu
09/10/07 23:52:48
エプロンを着けて、蛇口をひねる。
勢いよく水が流れ出し、食器を洗う。
しばらく続けて、ふととなりの部屋を見てみると、アスカはまだテレビを見ていた。
何気なしに言ってみた。
「じゃあさ、アスカ。」
「・・・何?」
「どこか行こうか。僕でよければ付き合うよ。」
アスカはキョトンとした表情をした後、
「・・・泳ぎに行きたい。」
「それは無理だよ。遠出はダメなんだって。」
「・・じゃあ、いいわ。」
そう言うと、アスカはテレビのリモコンを手に取りチャンネルを変えた。
まぁ、断られるだろうとは思っていたので特に何も思わなかった。
気を取り直して食器を洗い始めた。
13:maTsu
09/10/07 23:56:09
次の日の朝、いつものように朝食の用意をしていると、寝ぼけ眼のアスカが台所にやってきた。
ミサトさんはすでに出勤しているので、テーブルには二人分の朝食が置いてある。
アスカは椅子に座り、眠そうな目をこすっている。
「おはよ。」
「・・・・。」
返事がない。まあ、これもよくあることだ。
いちいち気にしてたらきりがない。
二人で朝食をとり、食器の後片付けをしていると、
「シンジ」
と、後ろから声が聞こえた。
振り向くと、顔を洗って着替えたアスカがテーブルに腰かけている。
「どうかした?」
「昨日アタシに付き合うって言ったわよね?」
「言ったけど・・・(断ったんじゃ・・)。」
「なら」
ひとつ間を置いて言った。
「出かけましょ。」
14:maTsu
09/10/07 23:58:18
家事を一通りすまして、着替えを済ました。
アスカは椅子に座って待っている。
「じゃあ、行こうか」
玄関でしゃがんで靴を履いていると、そばにペンペンがやって来た。
シンジとアスカの顔を交互に見ている。
家に一匹置いていくのは悪い気がしたが、「ごめんね、行ってくるよ」と言って
ドアを閉めてカギをかけた。
階段を下りて、マンションから出たところで、気がついた。
アスカが珍しく帽子をかぶっている。
淡い黄色の、麦わら帽子のような形をした帽子。
ファッションには疎い方なので、名前は分からないが。
アスカが着ている黄色のワンピースと、とても合っていると感じた。
「その帽子かわいいね。似合ってるよ、すごく。」
アスカは「えっ」と小さく呟き、少し俯きながら
「遅い。ほんと鈍いんだから」と言った。
外は太陽がとても眩しく、遠くでセミが鳴いている。
それに、とても暑い。
15:maTsu
09/10/07 23:59:58
「ところで、どこに行くの?」
「水族館」
「水族館?」
と、聞き返した。
アスカは少し恥ずかしそうな顔をして、
「・・・何か?」
「い、いや別に」
「ただ興味があるだけよ。」
僕は苦笑いをして、軽くうなずいた。
そんなやりとりをしながら(時には肩を小突かれながら)、駅へと向かった。
駅に着くころには、二人ともかなりの量の汗をかいていた。
切符を買い、ホームに行くとすぐに電車が来た。
ドアが開き、ふぅとひとつ息をつき席に座った。
アスカも隣に座った。一人分の隙間は空いているが。
16:maTsu
09/10/08 00:04:18
「アンタ、ハンカチも持ってないの?」
手で自分の顔を扇いでいると、アスカが言ってきた。
「持ってくればよかったね」
「ホントに」
そういうと、アスカはすぐそばまで来てハンカチで顔を拭いてくれた。
「アンタってダメなヤツね。ファーストの方がまだマシだわ。」
正直少し恥ずかしかった。が、悪い気もしなかった。むしろ、嬉しかった。
目線を正面に向けると、40代くらいの中年の男性がこっちを見ている。
男性もこちらが見ていることに気付いたのか、目線をそらした。
アスカもそれに気付き、すぐに元の場所に戻った。
気のせいか、少し顔が赤いみたいだった。僕も人のことは言えないが。
2つ目の駅に着いたところで、電車から降りた。
切符を改札機に通し、駅から出る。
17:maTsu
09/10/08 00:05:27
アスカが隣に来て、
「たしかあっちだったはず」と言った。
「調べてきたんだ?」
「まぁ、アンタはあてにならないから」
「それはそうかもしんないけどさ」
アスカはふふっ、と軽く笑うと体の向きを変え歩きだした。
僕は「待ってよ」と言いアスカの隣に行った。
「セミの鳴き声がしないね。」
「ここら辺は木がないからでしょ。」
そういえば、と思い周りを見渡したが、たしかに木が見当たらない。
舗装された道路の両脇に、コンクリートの無機質な建物が並んでるだけだった。
「ホントだ。」
「バカ。」
そうこうしているうちに、目的の場所が見えてきた。
こんな近くにあったんだ、と思い少し驚いた。
赤茶色いレンガで造られた、わりと古そうな建物。
18:maTsu
09/10/08 00:07:35
入口上の看板には『ようこそ!アサカ水族館へ』と書いてあった。
夏休みということもあり、家族連れやカップルなどがわりと来ているみたいだ。
「ほら」
アスカは僕のシャツの袖を引っ張り、受付の方へ早足で歩いていく。
少し並んで、チケットを買った。
受付は4,50代の年配の女性がやっていて、チケットを渡す際、ニコッと笑い
「あら、デート?いいわね~。」と言った。
「・・・・え?」
アスカは僕の顔を見て、
「まさかぁ~(僕の胸をこずく)え~と、そう、社会見学なんですよ」と言い返した。
「ふふ、そうなの?まあ楽しんでらっしゃい。」
「はい」
19:maTsu
09/10/08 00:09:24
係員にチケットを渡し、短い通路を抜けると、大きな水槽がたくさんある場所に出た。
部屋は少し暗いが、魚の入った水槽が青く幻想的な光を放っている。
「わぁ・・・」
アスカは若干興奮気味に、そばにあった水槽の前まで走って行った。
水槽に両手を置き、一生懸命魚を見ている。
「ほらほら。シンジも見てみなよ!」
「う、うん」
いつもと違うアスカに少し驚いたものの、ゆっくりとアスカの隣に歩いて行った。
目の前の巨大な水槽の中では、何かの群れが竜巻のような陣形で泳いでいた。とてつもない数だ。
水槽を右に左に行ったり来たりするその物体に、しばらく目を奪われてしまった。
ふと周りを見ると、いつの間にかかなりの人が集まっていた。
同時に、そばに魚の説明文があることに気づいて、読んでみた。
『ダツ目 サンマ科』と書いてあり、下に長々と紹介文が書いてある。
「アスカ」
・・・気付かない。
「アスカ」
「・・・え?」
「これ、サンマなんだって。」
「そうなの?」
20:maTsu
09/10/08 00:11:17
「外敵から身を守ったりするためにこうなるらしいよ。」
再び水槽に目を向けるアスカ。
「すごい。」
「うん。」
しばらく二人で水槽の中を見つめる。
「じゃあ、ほかも見て回ろうか。」
「うえぇ、気持ち悪い」
「なに、なにこれ?どうなってんの?」
「うわあ、光ってる。」
魚を見ていると、アスカは様々なリアクションを見せた。
いつもと違うというか、なんというか可愛かった。
アスカも普通の女の子なんだな、と今更ながら思った。
「シンジ、ほら、たそがれてないでアンタも見てみなさいよ。」
アスカは僕の右手をつかみ、水槽の前に強引に連れてきた。
目の前の水槽には多くの種類の魚が泳いでいる。
サメに海ガメ、先ほどのサンマまで泳いでいる。
21:maTsu
09/10/08 00:13:14
「・・すごいな・・」
しばらくそれを眺めていると、アスカが急に僕の手を振りほどいた。
隣を見ると、アスカは少し赤い顔をして下を向いている。
どうやら正気に(というのも変だが)戻ったらしい。
僕はふふっ、と笑い、「あそこに座るところがあるよ。休憩しようか」と言った。
アスカは「・・そうね」と小さな声で返事をした。
アスカが椅子に座ったのを確認し、僕はそばにあった自販機まで歩いて行った。
適当に缶ジュースを二人分購入し、アスカの隣に座った。
アスカは帽子をとり、座りながら脚を伸ばしている。
「はい」
ジュースを手渡す。
「ありがと」
缶を開け、ジュースを飲む。
22:maTsu
09/10/08 00:14:47
ふう、と一息ついてアスカに聞いてみた。
「アスカは水族館初めて?」
こっちを見て、少し考え込むアスカ。
「初めて・・うーん、初めてかな」
「そうなんだ」
「うん」
―しばしの沈黙―
少し悩んだが、思い切ってみることにした。
「行こうか。」
立ち上がり、アスカに手を伸ばした。
アスカはえっ、とした表情をしたが「・・・うん」と言って僕の手を握った。
帽子をかぶり、立ち上がるアスカ。
まさか応じてくれるとは思わなかったので、少しとまどいはしたものの、
平静を装って歩くことにした。
23:maTsu
09/10/08 00:16:02
とりあえず一通り見て回り(ショーもあったみたいだがかなり並んでたのでやめた)、外に出ることにした。
とりあえず、まだ手をつないでいる。
頭がうまく働いてないみたいで、何を見たかよく覚えていない。
アスカを意識してるんだな、ということは自分でも分かった。
『出口』と書かれた通路を見つけ、歩いて行った。
立っていた係員に「ありがとうございましたー」と言われ、軽く会釈をした。
外の景色が見えてきたところで、アスカが手を離した。
「・・・誰かに見られるかも」
僕はうん、と頷きアスカに歩調を合わせた。
日はすでに傾きかけていた。
どうやら思っていたよりも長く水族館にいたみたいだ。
24:maTsu
09/10/08 00:17:36
「どうだった?初めての水族館。」
「・・・思ってたよりも良かった。」
「そっか。ずいぶん興奮してたみたいだしね。」
こっちを見るアスカ。
「こ、興奮なんて!」
「アンタだって水槽の前でたそがれてたじゃない!」
「ゴ、ゴメン」
こんな他愛のないおしゃべりをしながら、しばらく歩いた。
駅に着き、切符を買ってホームに向かう。
まだ電車は来ないようなので、椅子に座った。
アスカも隣に座る。もちろん、少し間隔は空いているが。
だけど気のせいか、行きの電車よりもアスカとの距離が縮まったような気がした。
「シンジはさあ」
アスカが口を開いた。
「え?」
「・・・なんでもない。」
なんだろう、とは思ったがすぐに電車が来たので乗ることにした。
25:maTsu
09/10/08 00:18:46
「・・・・」
電車の中では、お互い口を開かなかった。
だが、気まずい、といった雰囲気ではなかった。
2つ目の駅に着き、改札を通る。空はまだ、若干明るい。
「ミサトさん帰ってるかなぁ」
「さあね」
「帰ろうか。」
「・・・(頷く)」
二人並んで歩く。アスカは、なぜかあまりしゃべろうとしない。
(なんかまずいことしちゃったかな)
と思いつつ、歩調を合わせる。
しばらく歩き、コンビニの前を通過した。
するとアスカが立ち止まり、
「・・アイス買わない?さっきジュースおごってもらったからおごるわ。」と言った。
「い、いいよ。悪いから。」
「いいから」
26:maTsu
09/10/08 00:20:22
シャツの袖を強引に引っ張り、コンビニに入ってく。
そこで(アスカが)アイスを選び、購入した。
「ありがとうございましたー」
そして、外に出る。
「マンションの裏の公園で食べましょ。」
「家で食べないの?」
「たまにはいいじゃない。」
しばらく考えて、
「そうだね。」と答えた。
少し歩くと、マンションが見えてきた。
公園の入口まで歩き、入る。
空はもう暗く、セミの鳴き声ももう聞こえない。
自分たち以外には誰もいなく、リーンリーンという虫の鳴き声しか聞こえなかった。
ベンチにアスカが腰掛け、帽子をとる。隣に、自分も座る。
27:maTsu
09/10/08 00:21:31
アスカはガサガサとコンビニの袋を漁り、アイスを1つ出した。
「ほら」
と、手渡される。
「ありがと。」
アイスを受け取り、ゆっくりとフタを開けた。
隣でアスカも同じ作業をしている。
スプーンの袋を開け、一口食べた。ほのかなバニラの味が、口いっぱいに広がった。
「ミサト、もう帰ってるみたいね。」
アスカが言った。
マンションの方を見ると、たしかに一室だけ明かりがついている。
「ホントだ。」
「帰ったら文句言われるかもね。夜ごはんはまだ!?って」
「はは、たしかに」
―数分の沈黙―
28:maTsu
09/10/08 00:22:56
少し気まずい。アイスも、ほとんど残っていない。
「あ、あのさ―」
「シンジは」
そろそろ帰ろうか、と言いかけたがアスカが割り込んで言った。
「え?」
「・・・」
アスカはアイスを握りしめて俯いている。
「そ、その・・」
なにか言いたいんだな、ということだけは分かった。
「・・・・(アスカ?)」
「・・・ファーストのこと好きなの?」
「・・・え?」
一瞬質問の意味が分からず、動きが止まった。
しばらくして状況を把握した途端、自分の顔が紅潮していくのが分かった。
「そそそそんなこと・・・」
アスカが僕の顔をジッと見ている。
29:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/08 00:23:32
支援
30:maTsu
09/10/08 00:24:24
予想外の質問だった。
「好きというか・・」
「嫌いじゃないんでしょ?」
「ま、まぁ・・」
「そう」
再び下を向くアスカ。
僕は一つ息を吐き、気持ちを落ち着けようとした。
「じゃあさ」
アスカが言った。
「・・アタシは?」
僕はえっ、と小さく呟き、アスカの顔を見た。
「え、えっと・・・」
―数秒間の沈黙―
31:maTsu
09/10/08 00:25:42
なんと言えばいいのか分からず、頭が少しパニックを起こしていた。
まさかアスカにこんなことを聞かれるとは・・・考えてもなかった。
「・・・・」
何も言えない。
「なんてね」
アスカが言った。
「冗談よ。オドオドしちゃって、ホントバカなんだから」
と言って、立ち上がる。
(しまった)と思い、立ち上がったアスカの右腕を掴む。
「えっ」
正直、自分でも驚いた。無意識に掴んでしまった。
「シンジ?」
「あ、あのさ」
声が少し裏返ってしまったのが自分でも分かった。
32:maTsu
09/10/08 00:27:23
「アスカのことは」
―アスカが僕の顔を見る。
「・・すごく大切だよ」
「・・大切?」
―頷く。
「好きとか嫌いじゃなくて?」
アスカが尋ねる。
「うん、なんて言えばいいのかな」
ほんの少し考えて、言った。
「アスカのことは、好きとか嫌いとかじゃないんだ。」
「・・?」
「もちろん、嫌いじゃないよ。なんていうか、大切な女の子」
アスカは僕の顔をジッと見ている。
「いなくなったら悲しいし、嫌われたら辛いしね」
33:maTsu
09/10/08 00:29:06
「それって」
アスカが言った。
「好きってことじゃない?」
・・・そう言われるとそうかも、と思った。
「ふう」
アスカはそう言って、僕のおでこにデコピンをした。
「何を言うかと思ったら」
下を向き、「・・ゴメン」と言った。
ふふっ、と笑い、「じゃあ、帰りますか」とアスカが言った。
公園からマンションまでの短い道を、二人並んで歩く。
アスカは両手を腰の後ろに回し、帽子を持って歩いている。
マンションの入口まで行き、通路の電気をつけてエレベーターに乗った。
「そうそう、今日二人で出掛けたことは誰にも言わないでよ。」
と、アスカが言った。
わかってる、と返した。
34:maTsu
09/10/08 00:31:07
エレベーターを降りて、部屋の前まで歩く。
玄関のドアを開けると、おっかえりーとミサトさんの声。
靴を脱ぎ、家に入ると、肩にタオルをかけて椅子に座っているミサトさんがいた。
どうやら風呂上がりらしく、いつものようにゆるゆるの無防備なシャツを着ている。
「シンちゃん、私お腹空いちゃったわ~。」
僕はふふっ、と笑い、「すぐ作ります」と言った。
アスカは「先にお風呂入る」と言い、部屋に戻って行った。
エプロンを着けていると、
「デートはうまくいったの?」とミサトさんに言われた。
デートじゃないですよ、などと言っているとアスカがパジャマを持って部屋から出てきた。
そして、風呂に向かうアスカ。
ミサトさんと僕はそんなアスカを目で追っている。
「で、どこに行ってたのよ」
「水族館です」
「あらいいわね、お年頃のデートって感じ」
「だからデートじゃ・・」
すると、風呂場からかすかに鼻歌が聞こえてきた。
風呂場の方を見るミサトさん。そして僕の方を見る。
「うまくやったみたいね」
僕は少し笑って、「は、はぁ」と言った。 (END)
35:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/08 00:35:32
乙
GJ
36:maTsu
09/10/08 00:35:47
以上です。
改めて読んでみると、下手だなぁと痛感しました。
読んでくれた人ありがとうm(_ _)m
37:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/08 00:36:24
リアルタイムGJ!
ほのぼのしてて良かったよー
ちなみに新劇?旧劇?
38:maTsu
09/10/08 00:39:49
>>37
正直どっちを意識してっていうのはなかったです。
読み人次第ですね
39:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/08 00:42:12
>>38
なるほど。水族館シーンはどちらともとれるなぁと思ったんだけど、まあ旧劇と思っときます。
よく見たらレイのことファーストって呼んでるしね。
40:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/08 02:45:41
乙です。
ラストがなんつーか自然な感じでよかった……。
41:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/08 04:09:13 NY2s41KY
久々に上手い人が来たな...
想像しやすい文章です
42:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/08 04:36:54
こんな素敵な文章を投下する職人さんがいたとは…スレッド上げて下さった方に感謝です!ちょっと読破して来ます!
前スレの猫シンジさんのSSもまだ少し目を通しただけなのでこれから読むのが楽しみで仕方がないです^ω^
43:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/08 04:41:22
GJ。シンジが原作のシンジらしくて良かったです
44:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/08 05:28:49
>>38
新劇なら水族館はないし、サンマは知らんだろw
45:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/08 08:48:02
GJ
ほのぼのしててよかったけど、
>「・・・(頷く)」の部分だけ台本みたいで違和感だったw
46:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/08 14:57:25
>>45
前スレの猫シンジさんの面白いよ!
47:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/08 16:45:14
>>46
台本みたいで?
48:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/08 17:20:16
GJ
キャラがあまり壊れずに、仕上がっていてよかた
49:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/08 17:48:33
>>47
ん?猫シンジさんのは前スレのだよ?
(´・ω・`)
このスレッドの作品も好きだけど…
50:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/08 19:24:55
maTsu さん!
あんた最高や。
こんないい作品が続けばいいのにな・・・。
51:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/08 22:42:02
おもしろいが小説らしいとは思えんなw
でもまぁ乙
52:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/08 23:14:39
>>51
まぁ細かいことは(ry
小説らしくてもつまんないよりは全然おkでしょ
53:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/09 16:35:59
十日町
54:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/09 18:51:00
普通に面白かったよ。これからも頑張って下さい
55:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/09 19:37:18
稲荷町
56:いときお
09/10/09 23:35:18
投下いきます。
イタモノ要素ありの注意は自己責任でお願います。
NGワードは”いときお”で
57:いときお
09/10/09 23:36:08
昨夜、アスカと喧嘩をしたんだ。
発端は些細なことで最近野菜の食べ残しが目立つことについて。
段々と口論がエスカレートして売り言葉に買い言葉さ。
それでつい言っちゃったんだ『どうせ食べるだけのくせに』って。
さすがに怒ったのか高速二連装平手打ちがびびびんびんとエンドレスワルツ。
頬を真っ赤に染めたアスカは『顔も見たくない』と部屋に篭ってしまった。
ここまでは良くある風景だよね。
今朝も僕の用意した朝食に手もつけず、アスカは黙って出て行った。
お腹が減ったら帰ってくると思ったけれど、お昼になっても連絡一つよこさない。
仕方なく朝食の残り物で済ませようと思った時に電話が鳴ったんだ。
内容は―アスカが交通事故に遭ったって。
大急ぎでネルフの特別研究病棟へ駆けつけた。顔馴染みの天井があるところだ。
アスカの運び込まれた病室を覗くと既にミサトさんやリツコさんと楽しげに話している。
なんだよ元気じゃないか。
心底ホッとして無事を喜ぶと同時に喧嘩中だったことを思い出した。
こんな時に僕は何を考えているんだろう。ちっちゃい男だ。
僕に気が付いたミサトさんが何かを促すとアスカが笑顔で手を振った。
「アスカ。彼がさっき説明したサードチルドレン、碇シンジ君よ」
病室に入る僕を指差しながらリンゴを丸齧りしていたミサトさんがアスカに言う。
誰に向けているんですか、その無意味な説明的なセリフは。
「そう。あなたがシンジね。初めまして惣流・アスカ・ラングレーです。よろしく」
何故か頬を染めながら自己紹介するアスカ。こちらこそコンゴトモヨロシク、って何の冗談?
「もう分かると思うけど、どうもアスカってば記憶喪失らしいのよ。困っちゃうわね」
ミサトさんは笑いながら口に放り込んだリンゴの芯をシャクシャクと噛み砕いた。
そんな馬鹿な。ネタ切れしたラブコメ漫画じゃあるまいし。
「事実よ、受け入れなさい」
バナナの皮を剥きながら真剣な顔で言われたって困るよミサトさん。
58:いときお
09/10/09 23:37:40
リツコさんの解説によると外傷は軽度の頭部打撲、いわゆる『たんこぶ』一箇所のみ。
買物の帰り道、暴走するスクーターに撥ねられて車田落ちしたらしい。
どうみても横からの衝撃なのに真上に天高く吹っ飛んだ挙句、頭から落ちるというアレだ。
よく無事だったねアスカ。
「ヘッドセットが無ければ即死だったわ」
そういう問題なんだろうか? さすが赤い人は格が違った。
なお轢き逃げ犯はネルフ諜報部が総力を結集して捜索中。
目撃者である黄色いベスパのお姉さんから有力な情報を得たそうで確保は時間の問題らしい。
「これ現場に落ちていたそうです。一応シンジ君に渡しておきますね」
とマヤさんに壊れたDSとイヤホンと箱を渡された。
どうやら歩きながらDQ9をやってたらしい。
自分だけは事故に遭わないなんて考えてるからこんなことになるんだよ。
さようなら僕のDS、僕の冒険の書、僕のラブプラス。
箱の方は駅前にある美味しいと評判のケーキ屋さんのだ。
開けてみるとグチャグチャにクリームとカステラの中に大きなイチゴが二つ混ざっていた。
様々な検査結果を確認したリツコさんがため息をついた。
記憶喪失を除いた健康状態は見れば見るほど問題無いらしい。
ただシンクロ率が大幅に落ちてしまって弐号機が起動できるかも妖しいそうだ。
「二人とも今日はもう帰って良いわよ。事故に気をつけてね。ミサトは居残りよ」
普通に生活した方が記憶も回復しやすいということで入院せず帰宅することになった。
ミサトさんが居残りなのは一時離脱イベントに関する作戦シフト変更のためらしい。
このままではEVA一斉射撃もユニゾン攻撃も使えず戦力は激減だ。
だからリツコさんも科学的に記憶喪失の治療法を研究するそうだ。
期待していいんだろうか。
「同じくらいの衝撃を与えてみると直るって聞くけど、どうかしら?(キリッ」
僕たちは無言で病室を出た。
59:いときお
09/10/09 23:38:26
【いときお ~いともたやすく行われる記憶喪失~】
外に出ると夕暮れで、ちょうどビルの谷間に日が沈むところ。
見慣れているはずの光景に『凄い』と目を輝かせているアスカがとても可愛くて、少し悲しい。
「さあ帰りましょ」
アスカがそう言って僕の手を握った。
殴られる以外でアスカに触れるのはいつ以来だろうか。
自分以外の体温を少なからず意識してしまう。
急なことで戸惑っている僕にアスカは首をかしげた。
「どうしたのシンジ? あなたが案内してくれないと帰れないじゃない」
そっか。そうだよね。
普段はアスカが前を歩くことが多いから僕は無意識にそれを待っていたみたいだ。
今は僕が前を歩かないといけない。
気が付くと背筋がピシッと伸びていた。
しっかり胸を張らなきゃいけない。何故かそう思った。
真っ直ぐ帰る予定だったけどスーパーマーケットに寄り道。
今日の夕食はハンバーグにしようと思ったからだ。
別に少しでも長く手を繋いでいたいから遠回りしたわけじゃないよ。
アスカの好きな物を作れば記憶回復に繋がるかもって思ったんだ。本当だよ。
「ええと、これで何を作るの?」
「ハンバーグだよ。アスカの大好きな」
「そっか。ハンバーグかぁ……」
僕に言われるまま食料品を買物カゴへ入れていたアスカが悲しい顔をした。
やはり材料を見ても何を作るかも思い出せないのだろう。
「駄目ね。ごめんなさい。私、作り方を思い出せない」
それは仕方ないさ。作ったことないんだから。
60:いときお
09/10/09 23:45:33
「ぃよう、お二人さん。相変わらず夫婦揃って仲がえぇなぁ」
店で偶然出会ったトウジがいつものように僕たちを冷やかした。
買物カゴには米に牛乳、ジャガイモにと何だか重そうな物ばかり入っている。
料理や洗濯は男の仕事じゃないと嫌うけど、力仕事なんかは積極的に手伝ってるみたいだね。
「か、からかわないでよ」
僕は咄嗟に握っていた手を離そうとしたけどアスカは満更でもない様子で握っていた。
少し照れた様子で半歩僕に近づいたような気がする。
それを見たトウジは何かを察した表情で爽やかに去っていった。
トウジのくせに物分りが良すぎる。さては洞木さんと何かあったに違いない。
「夫婦だってさ~」
普段なら顔を真っ赤にして反論するはずのアスカが嬉しそうに頬を染めていた。
本当に記憶が無いんだなと実感する。無いだけなら良かった。
「まだ婚約もしてないのにね~」
そう言ってアスカが腕を絡めて寄り添った。
胸の柔らかい感触が腕に―ってもしもしアスカさん、一体何のお話ですか?
「赤木博士とミサトさんが『いつでもラブラブの恋人同士で現在同棲中』だって……」
そう言いながら頬を染めて『いやん、恥ずかしい』と言わんばかりに両手で顔を覆った。
どんな大ボラ吹き込んだんだよあの二人。
嬉しいけどこんな状況じゃ素直に喜べないよ!
嘘です。大嘘です。恋人ですらないから信用しないように。
「そうね。『面と向かって恋人だって言うと照れて否定しちゃうから注意』って言われたっけ」
腐っても作戦部部長、常に二手三手先を読みやがる。
他に何て吹き込まれたか全部教えなさい。僕のためじゃなくてアスカのために。
「えーと……色々? シンジがエッチな本をどこに隠してるか、とか」
順番が変わっていたから変だと思ってたんだけどミサトさんか。
「そのくらい普通らしいから私は気にしないわよ。どんな子が好みかは少し気になるけどね」
にこやかな笑顔の下から物凄いプレッシャーだ。アスカがオーラで大きく見えるや。
帰ったら即処分しよう。
61:いときお
09/10/09 23:50:00
玄関に着くと僕は一歩先に入り、アスカの『ただいま』に『おかえり』を返した。
物珍しげに見回すアスカに部屋割りの説明をして夕飯の支度に取り掛かる。
一応ミサトさんの分も作っておくか。
余ってもハンバーグならアスカが食べるしね。
手早く準備して作業開始―と思ったら直ぐ後にアスカが立っていた。
直ぐ出来るから大人しくTVでも見て待っててね。
「あのね…その…私にも何か手伝えること…ない?」
モジモジしながら上目遣いで言わないで。想像してたより破壊力が高い。
なんでも実際に料理をすれば作り方を思い出せるような気がするらしい。
気がするだけだね。残念だけど。
「じゃあ一緒に作ろうか。一から作り方を教えてあげるよ」
大発見。アスカってエプロンが凄く似合うや。
手取り足取り丁寧に教えた甲斐もあって普段の倍以上の時間が掛ったけど完成だ。
「ウルトラ上手に焼けましたー!」
と元気な掛け声の割には少しコゲてるのは御愛嬌。
ほとんど全部アスカが作ったのに立派にハンバーグの形をしているのは凄い。
デザートに用意した見舞い物のスイカとチェリーのおかげかな。
「はいシンジ。あーん……」
アスカがハンバーグを刺したフォークを僕の口の前へと差し出した。
えーと食べろって? 少し恥ずかしいけどミサトさんもいないし、あーん。
「美味しい?」
「うん。凄く美味しい」
「……////」
自分の料理を褒められて喜ぶアスカはとても可愛かった。
僕も外食以外の料理を食べるのは久しぶりで嬉しかったよ。
しかも女の子に手料理を食べさせて貰うなんてさ。
都市伝説やゲームの中だけじゃなかったんだね。ラブラブは本当にあったんだ。
62:いときお
09/10/09 23:50:56
楽しい夕食も終わって、僕は残りもののデザートを齧りつつコーヒータイム。
アスカは音程外れの鼻歌を歌いながら洗い物をしている。
何だか新婚ホヤホヤみたいだ。
よく結婚すると荒んでた人間も丸くなるって言うけど本当かもしれないね。
今なら救いようの無い話が10年後にハッピーエンドでリメイクされたって言われても信じるよ。
「どうしたのシンジ? ボーっとして」
いつの間にか近くにいたアスカがデザート皿から最後のチェリーを摘んで口に運んだ。
ちょっとした仕草が妙に艶かしく見える。アスカって口紅してたっけ?
「ちょっと感動してただけ。だってあのアスカが―」
そこでふと気付いた。『あのアスカ』だって?
そうだ。僕は何をやっているんだ。
目の前にいるのは素直で明るくて優しくて僕を慕ってくれるアスカ。
だけど今のアスカは本当のアスカじゃない。
僕はそれを誰よりも知っているはずなのに。
「ねぇ…あのアスカが、なに?」
「ごめん。何でもない…何でもないよ」
「そう…変なシンジ」
アスカは少し残念そうに笑うと空になったデザート皿を持って戻っていく。
少し手を伸ばせば抱きしめられるくらい近くにいるアスカが限りなく遠くにいるように思えた。
それは多分間違いじゃない。
<<つづく?>>
63:いときお
09/10/09 23:51:58
記憶喪失でツンデレならぬ素直デレ化したアスカさん。
ほとんどオリキャラなんでイタモノ扱いで。
タイトルに深い意味は無く普通の記憶喪失バカップルネタです。
64:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/09 23:56:01
とりあえず乙です。
なかなか・・・うひひ・・・。
大好きだ。
65:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/10 00:06:26
Remembranceみたいなことになるヨカンがしてちょっと怖い。
66:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/10 00:23:00
記憶と共に
人 格 崩 壊
67:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/10 01:25:35
タイトルは大統領のスタンドみたいだなw パロディが過激に詰め込まれてて大丈夫かと
不安になったが、とりあえず期待
68:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/10 01:54:29
まぁ、自分好みの女になったのに、それは本来の彼女ではない、
ってのは過去の創作で何万回も使われた手法で、LASでもよく見る。
既出のRemenbaranceとかな。
出オチに近いから、描写を工夫しないと苦しい。
69:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/10 04:37:05
なんでこのスレの読者ってこんな偉そうなんだw
70:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/10 06:46:19
本人も出オチのつもりなんだろうな。
事故の経緯を考えてもシリアスにはなりそうにないw
71:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/10 07:45:47
>>69
本当に何様だって感じだ
話が途中で終わったり作者が減るの嫌だから
不満がある人は黙っててほしい
72:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/10 07:47:52
イタモノ系はいつもこうなるよな
73:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/10 08:30:05
何も感想がつかないでスルーされるよりはいいんじゃない?
74:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/10 08:38:43
ここは選ばれた人だけが住める場所。
作家が減るのは仕方なし。
75:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/10 09:16:41
if「僕も選ばれし者ですよね」
76:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/10 09:18:02
あ、久しぶり
77:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/10 10:00:56
選ばれてない!
消えろ!
78:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/10 10:58:02
ネタらしき部分の元ネタが全然分らんから詰まらん
79:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/10 12:42:18
不満だから愚痴を言ってるとかじゃなくて、単に技量が劣ってそうだから指導してるだけだと思うんだが。
上から目線がイヤなのか? それなら切磋琢磨と読み替えとけ。
このスレにはFF書きが多いようだから、稀にありがたい指摘も受けられる。
そういうのを排除したらそれこそもったいない。
投下する側にはそういうものを期待している者もいることを忘れないでくれ。
80:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/10 12:52:14
おれはifはすきだぞ
むしろ期待の新星だと信じてる
81:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/10 13:48:34
笑えない冗談だな
82:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/10 14:29:15
俺的には今回の人格崩壊は許容範囲内だったな。
むしろこれでイタモノかってくらい。
今後もネタ系路線なら超設定やスパシンでも大歓迎。
記憶喪失なんて定番ネタだし変に凝った展開にするよりは気楽に進めて欲しいと思う。
83:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/10 16:01:42
>>63
乙っ!イタモノではないなw
是非この明るい路線で続けて欲しいな
続きまっとるよ~
84:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/10 16:07:01
>>72
今回のこれは、イタモノとは言わんだろ
85:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/10 16:26:06
>>79
うぜぇw
86:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/10 20:49:52
自分で書かないクレクレ読者が一人前にうぜぇとか言ってんじゃねぇよ。
87:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/10 21:21:52
>>74は選ばれた住人なのか?
やけに偉そうだがw
88:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/10 21:52:24
74ですが
おいらは橋の下の人間でゲス。
まぁ、見ていてそう思っただけです。
89:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/11 01:24:42
みんな落ち着こうぜ
おとなしく投下を待つのが一番良いと思うんだぜ
90:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/11 09:24:42
いときおGJです!
どう展開していくのか楽しみです
91:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/11 09:35:08
日記来てたな
92:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/11 13:23:51
指導してるとか・・・
頼んでねぇよ
93:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/11 20:31:51
この静けさは投下町によるものなんだろうか?
94:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/11 21:05:21
職人町
95:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/11 21:42:15
自分の作品を投下するより、他の人の作品を見ているほうが楽しいな。
そう思うのは私だけでしょうか
96:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/12 16:34:02
>>95
なら職人を応援すれば良いと思うよ
97:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/12 16:35:49
稲荷町
98:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/12 18:05:44
>>96
そうします。
今は充電中で小説を読んでますんで…
99:マリン@marine
09/10/12 21:57:27
何気ない日常
今日も2人はいつものように、学校が終わったらネルフに行き、シンクロテストをし、帰る途中に買い物をして夕日を背に自宅へと向かっていた。
「今日も疲れたね」
「そうね。いつもシンクロテストばっかで嫌になっちゃうわよ。たまには休みが欲しいわ」
「ははっ」
そんな雑談をしているうちに2人は自宅のマンションについた。
ところが、いつもなら2人は自宅までエレベーターを使うのだが、今日は定期点検で使えないらしい。
「なんなのよこれ!」
「アスカ落ちついて!」
地団駄を踏んで若干暴れ気味のアスカを、なんとかシンジがなだめて、2人は階段で行くことにした。
100:マリン@marine
09/10/12 21:59:22
しかし、何も持っていないアスカと比べ、カバンと買い物袋を持っているシンジは、階をあがるごとにキツくなっていく。
いや、この場合は持たされている、という表現の方があっているのかもしれない。
「はぁー疲れたよアスカ」
階段の途中でシンジは嘆く。
「もう少し頑張りなさいよ!男の子だったら」
「はぁ…」
「ほら早く!」
疲れているシンジをお構いなしと言わんばかりに、アスカは一段ぬかしでどんどん進んでいく。
シンジは疲れながらもなんとかアスカについて行く。
そして自宅まであと2階という所まで登ってきたとき、アスカは階段でつまずいて転んでしまった。
心配になったシンジは急いでアスカのもとへ駆け寄る。
101:マリン@marine
09/10/12 22:01:36
「…っつー!痛っ…」
「アスカ大丈夫?」
「だ、大丈夫よ!」
「あ、膝から血が出てる!無理しちゃダメだよ!」
「これくらいどうってことないわよ!うっ…」
アスカの膝にズキっと痛みが走った。
「ほらやっぱりダメだってば!…よいしょっと」
そういうとシンジはアスカに背を向けてしゃがんだ。いわゆる、おんぶのポーズをとっている。
「ほら、アスカ!早く帰って消毒しよう!」
「な…ちょ、ちょっと!アタシをおんぶするってこと!?」
「そうだけど…」
「は、恥ずかしいわよ!」
「誰も見てないから大丈夫だって!さ、ほら」
102:マリン@marine
09/10/12 22:04:08
シンジはいつもの優しい顔でアスカを見ていたが、その先にあるシンジの心配している眼差しを受け取ったアスカは、
なぜかこの時ばかりはプライド云々を捨て、シンジに甘えてみる選択をした。
「じゃあ…頼んだわよ」
「あ、ごめん買い物袋だけは持ってね…よいしょっと」
「しょうがないわね!」
そういうとシンジはアスカをおんぶした。
この時のアスカの顔はシンジには見えないが、真っ赤に染まっている。その原因は夕陽の影響だけではないだろう。
そして、アスカはシンジの背中に、優しい温もりを感じた。
103:マリン@marine
09/10/12 22:06:11
(一応…男の子なんだもんね。でも…この感じ…落ち着くなぁ…ずっとこうしていたいかも…)
そう思うと、アスカはシンジを背中越しにぎゅっと抱きしめた。
一方の鈍感なシンジは、それに気づいているのかは定かではない。
程なくして2人は自宅についた。アスカにとってはとても短く、名残惜しい時間だったのは言うまでもない。
自宅の鍵を開け、シンジはアスカをリビングのソファーに座らせると、急いで救急箱を取りに行き、アスカに応急処置を施した。
104:マリン@marine
09/10/12 22:07:44
処置をしてもらったアスカは珍しくシンジにお礼を言った。
「ありがと。シンジ」
「ど、どういたしまして」
シンジは驚いたような顔をしていたが、2人は目が合うとにっこりと微笑んだ。
その後、アスカがわざと転んで、シンジにおんぶをねだるようになったのはまた別の話である。
105:マリン@marine
09/10/12 22:12:37
相変わらずヘタクソですみません。
今回は甘々というか、ほのぼのというか…
やっぱりこういうものの方が書きやすいですねw
ではでは今回はこの辺で…
あ、LAS日記も色々書いたのでよろしくお願いします。
106:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/12 22:13:36
いいな本当に
何気ない日常だ。
……。
107:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/12 23:24:21
投下GJ
こういうさり気ない積み重ねがあってこそなんだよな。
108:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/13 10:57:32
こういう日常がたまらんなぁ
109:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/14 14:10:17
投下町
110:いときお
09/10/14 20:56:46
>>62の続き
夕飯の洗い物を終えたアスカはお風呂タイムへ。
記憶を失っているのに普段と変わらない入浴時間だ。身体に染み付いた習慣だろう。
念のためシャワーとかお風呂の入り方は分かるかと尋ねると
『大丈夫……でも一人で入れないって言ったらシンジが入れてくれるの?』
と返されてしまった。無理です。ごめんなさい。
手持ち無沙汰で新聞を開くとアイドルタレントの記事が目に入った。
アスカは毎週このアイドルが出演している人気ドラマを欠かさず見ていたっけ。
よく覚えていないけど『ナントカ育成計画』。
いつもアスカがお風呂から出てくる頃に放送してるはずだ。
録画くらいしといてやるか。記憶が戻った時に怒られたくないしね。
TVをつけると僕が好きな『ガイ英伝』が始まるところだった。
そういえば本放送はこの時間だったんだんだね。
毎回ケンスケから録画したのを借りていたから忘れていたよ。
普段は洗い物やらミサトさんが占領してたりやらでTVなんて見れないもんな。
そんなことを考えながら予約録画もセット完了。
でも折角のガイ英伝だけど見たい気にならないのは何故だろう。
「きゃあああああああああ!!」
風呂場から絹を裂くようなアスカの悲鳴。
使い方間違えてシャワーから水でも被ったのかな。
心配して脱衣所へ近づいた僕に大慌てで飛び出したアスカが抱きついてきた。
「シ、シ、シンジ、なんか得体の知れない生き物が入ってる……」
震えながら風呂場を指差し涙目で訴えている。
恐る恐る視線を指の先へ向けると、タオルを頭に乗せたペンペンが悠々と姿を現した。
なるほど。謎は全て解けた。
111:いときお
09/10/14 20:57:43
「ああ、ペンギンていう鳥の仲間だよ。名前はペンペンって……」
「ギャワッ!!」
「ひぃっ!」
挨拶をしてテクテクと冷蔵庫に向かうペンペン。
驚いたアスカは僕の後ろに隠れてしまった。
そんな微笑ましいアスカを見ると目に飛び込んできたのは眩しい白い肌。
お風呂に入る間際だったらしく素っ裸だ。
ごくりと思わず唾を飲み込むのと同時にアスカと目が合った。
ようやく自分の格好に気がついたらしく、その顔が段階的に朱に染まっていく。
「ご、ごめん……」
反射的に顔を反らしながらも僕は飛んでくる理不尽な攻撃に備えた。
しかしアスカは可愛らしい悲鳴と共に脱衣所へ逃げ込むと顔だけを覗かせ
「シンジの……エッチ……」と言い残してカーテンを閉めた。
可愛いなぁ。いつもなら記憶を失うまで殴ってくるのに
でも今のは僕のせいじゃないぞ。ペンペンのせいだ。ペンペンが悪いんだよ。ペンペンGJ。
気を取り直して明日からのことを真剣に考えよう。
記憶喪失を直すアイディアはリツコさん頼みだ。任せて大丈夫なんだろうか?
それにしてもアスカの肌、綺麗だったな………
記憶が戻るまでは学校を休んでネルフへ通うことに決まっている。
それは僕も一緒だ。今のアスカを一人で出歩かせるわけにもいかないからね。
アスカの足はスラッとしてて腰の当たりキュッとスタイル良くて……………………
普段通りに生活すればいいって言うけど本当に効果あるかな?
そういえば今夜は二人っきり………………………………………………
駄目だ駄目だ駄目だ。さっきから全然集中できてないじゃないか。
『ガイナの歴史がまた1ページ……』
気がついたら番組も終わってる時間だし。
112:いときお
09/10/14 21:01:23
「シンジ、お風呂空いたよ」
「……………」
「聞いてる?」
「あ、ああ。そうだね……」
湯上りのアスカを見てさっきの裸が重なるとかナニ考えてるんだ。
緊張を悟られないよう僕は急いで風呂場へと逃げ込んだ。
むむむ、お風呂の湯温が高いからか膨張しちゃってるし。
冷静になろう冷静に。深呼吸を一回二回。父さんの物真似でもして落ち着け。
「問題ない。全て計画通りだ」
似てないなぁ。でも少し落ち着いた。
計画とか故意じゃなくて事故なんだから仕方ないよね。
触れない方向で行こう。そうしよう。
たっぷり茹って風呂を出るとアスカはあのTVドラマを真剣に見ていた。
冴えない主人公を様々なヒロインが取り合うという実に主人公に都合のいいドラマだ。
それが何でこんなに人気があるのかさっぱり分からない。
当のアスカも毎週見終わる度に愚痴をこぼしていたしね。
見ててイライラするとか押しが足りないとか色々。
それはさて置き、あんなアクシデントがあって気まずかったから助かるよ。
ああいう時は殴られた方がお互いに気楽だしね。
何だか昨日叩かれた頬が懐かしいや。そっちの趣味はないはずなんだけど。
とにかくドラマが終わったら内容について当たり障りの無い会話でもして誤魔化そう。
そう思った僕はアスカから離れて座った。
113:いときお
09/10/14 21:05:55
お気楽なドラマだと思ったら考えが甘かったようだ。
『ケガしたとこちょっと見せてごらんなさいよ』
『あ……もう大丈夫だよ。ほとんど治ってるから……』
普段はドタバタでオチが着くくせに今回は思いきりラブシーンに突入してる。
何かこうモヤモヤして別の意味で余計に気まずい。
チラリとアスカを見ると視線はTVに釘付けだ。
記憶は無くても好みは同じなんだろうか。
それとも女の子はみんなこういう番組が好きなんだろうか。
あ、キスシーンだ/// よく分からないけど直視できない。
家族で見てたら気まずさはこんなもんじゃないんだろうな。
ラブシーンとかベッドシーンとかオナニーシーンとか反応に困るよ。
チャンネルを変えるわけにもいかないし、急にどくのも意識してるようで変だし。
とにかくこんなのどう話題にすればいいんだ。
気恥ずかしくてまともな感想なんて語れやしない。
普段アスカが愚痴しか言わなかった気持ちが少し分かるよ。
「…………」
アスカはドラマ本編が終了してCMに入ってもポヤーンとした表情でTVを見ていた。
「あ、えーと、あの、その……」
「時間も遅いし、今日はもう休もうか。色々とあってアスカも疲れたろ。おやすみ」
「そ、そうね。おやすみシンジ」
よし、少し強引だけど乗り切った。
アスカが自室に入ったのを確認して、僕も部屋に戻る。
やれやれ今日はとんでもない一日だったよ。
素直で大人しいアスカなのに普段の三倍くらい疲れた気がする。
明日もまた色々なことがあるんだろうな。
僕はアスカが怪我しなかったことを神様に感謝しつつ眠りについた。
114:いときお
09/10/14 21:13:40
翌日。予定通り僕たちはネルフで戦闘訓練を受けた。
アスカは以前の成績には遠く及ばないものの普段の8割近い得点を叩き出している。
ろくな操縦説明も受けていないというのにだ。凄いよアスカ。
天才と呼ばれる理由が良く分かった。
僕とは生まれ持ったセンスが違うのだろう。
無邪気に喜ぶアスカにミサトさんが笑顔で判定結果を伝えた。
「足手まといにしかならないわね。当分の間、弐号機は無いものとして作戦を立案します」
ミサトさんの評価は厳しかった。
今のアスカの操縦は反射行動、つまり体が勝手に反応する動きに頼りきっている。
それは今までのアスカが体に染み込ませた記憶だそうだ。
生まれ持ったセンスなどではなく、数え切れない程の努力の末に培った技術だ。
だから射撃でも格闘でも条件が揃えば無意識に最適な行動を取る。取ってしまう。
しかしそれ以外の動き、判断力は素人同然。昔の僕と大差ないらしい。
要するに自分の頭で考えなきゃいけない部分で落第点って事だ。
「頑張ったのに……シンジは褒めてくれたのに……」
「努力は認めるわ。でも不安定なまま戦場に出すわけには行かないの。理解できるわね」
「はーい……」
アスカがショボーンと両手の人差し指を付き合わせながら返事をした。
酷いよミサトさん。
記憶が無いのに何も教えなかったら出来るわけ無いじゃないか。
「教えてどうするの。アスカは自分で思い出さなきゃいけないのよ」
言われてみればその通りだ。
アスカなら直ぐに覚え直すだろう。でもそれじゃ意味が無いんだ。
冷たいようだけど正論、ミサトさん真面目に考えてくれていたのか。
てっきり説明するのが面倒で省いただけかと思ったのに。
疑ってごめんなさい。
「後はリツコのところでカウンセリングだけね。それが終わったら今日は帰っていいから」
115:いときお
09/10/14 21:26:46
僕たちはプラグスーツから私服に着替えてリツコさんの研究室へと向った。
あれ? 指定されたはずの研究室の中は真っ暗で奥が見えない。
部屋を間違えたかな?
「一人づつ、ゆっくり奥へ入ってください。まずはアスカから」
中からマヤさんの声が聞こえた。こんな暗闇で何のカウンセリングだろうか。
五円玉に糸を通した物とか水晶玉とか妖しげな物を用意していそうだ。
ドアの外で待つこと2分足らず。
「ぃいやああああああああああぁぁぁぁぁっ!!!!」
アスカの悲鳴に僕は研究室へ飛び込んだ。
部屋の中は明るく、中央ではアスカがペタンと脱力して座り込んでいる。
しかも震えながら大粒の涙を目に一杯貯めて今にも泣きそうじゃないか。
一体何をしたんだよリツコさん!
「ショック療法は効果なし、ですね」
冷静にメモを取るマヤさんの傍らには妙な大きい人形と懐中電灯が転がっていた。
白いノッペリした肌、髪も目も耳もなく大きな口に白い歯。
目の無いウナギのようなノッペラ坊のような不気味な人形だ。
なるほど。これを暗闇で下からのアングルで照らしたわけだ。
そりゃアスカでも悲鳴を上げるよ。僕なら腰を抜かすね。多分。
「やはりノッペラ坊ではなく一つ目小僧にするべきだったかしら」
「いえ、ここは流行のぬらりひょんか古風に錯乱坊で行くべきだったかと」
この状況で一番ビックリ効果が大きいのは父さんの顔かなと思いつつアスカに駆け寄る。
「大丈夫アスカ? 帰ろうよ。もう終わったみたいだし」
「…………」
そう手を差し伸べたけどアスカは情けない顔でぷるぷると小刻みに首を横に振った。
どうしたの? 驚きすぎて腰を抜かしたとか?
ちょっと照れくさいけどおんぶしようか?
「ああ、なるほど。マヤ、シンジくんを」
「はい先輩。シンジくんは休憩所で30分ほど待機してください」
突然マヤさんが僕を回れ右させると部屋の外へと追い出した。何だってんだよもう。
116:いときお
09/10/14 21:32:11
休憩所の自販機コーナーではミサトさんがカップ麺にUCCホットコーヒーを注いでいた。
うぷっ。どんな育ち方をすればこんな味覚になるんだろうか?
「美味しいわよ。一口食べる?」
お断りします。大体なんでそう能天気なんですか。
記憶が無いからってアスカに僕が恋人だとか適当なデマを吹き込んだりして。
「別にいいじゃない。キスするような仲なんでしょ」
「ななななんで知ってるんですか!」
家の中まで監視してるなんて酷いよ。いくらなんでもプライバシーの侵害だ。
「ネルフ中が知ってるわよ。副司令が『また恥をかかせおって』って寝込んだじゃない」
ユニゾン特訓の方か。驚ろかせないでよ。
未遂だって言ってるのに誰も信用してくれないんだよな。しときゃ良かった。
「今のアスカは凄く不安定なの。絶対的に頼れる人がいなかったら不安で潰れちゃうわ」
それで僕ですか。それはいいとして勝手な設定を増やさないでください。
「役得だと思いなさい。実際問題、適当な奴にフラフラ傾いたりしたら困るのよ」
今のアスカは良くも悪くも影響を受けやすいから注意が必要らしい。
一人で外出して加持さんみたいな人に目を付けられたら最悪だとミサトさんは力説する。
それでとりあえず僕にガッチリ押し付けておけば間違いないだろうという結論らしい。
僕が間違いを起こしたらどうするんだよ。
「大丈夫。アスカを襲うような甲斐性は絶対無いと信じているから」
真面目な顔で言わないで下さい。僕だってね―
「襲うの? しちゃうの? ヤッちゃうの? 避妊だけは必ずしなさいよ」
襲いません。しません。ヤりません。ごめんなさい許してください。
「でもまぁ、自分好みのアスカに育てられるて素敵じゃない? プリンセスメーカーって感じで」
若いんで何を言っているのか分かりませんが最高傑作は2だと思います。
でももしもアスカがエヴァと出会わなかったら性格が違っていた可能性は十分にある。
僕だって父さんと母さんがいて平和に暮らしていたら、今とは違う人間に育っていただろう。
今のアスカは、アスカの辿るはずだった可能性の一つなんだろうか。
117:いときお
09/10/14 21:37:14
休憩所で暇を潰すこと40分。
研究室まで迎えにいくとアスカは何故かさっきとは違う服を着ていた。
「お待たせシンジ。帰ろっか」
くんくん、いつもと違うシャンプーのような香水のような匂いもする。
一体どんなカウンセリングをしたんだろう。アロマテラピー?
「ほ、ほら早く帰ろ……///」
アスカが強引に僕の手を引っ張った。
僕のカウンセリングがまだですと言うと最初から予定にないとマヤさんに笑顔で返された。
酷いなぁ。僕だって精神的に病む時は病むんだぞ。胃に穴くらい簡単に開くんだぞ。
帰り道。今日もちょっと寄り道して駅前のケーキ屋さんへ。
ネルフでも美味しいと評判のお店だ。ついでに高いことでも評判のお店。
何度かケーキを食べたことはあるけど来るのは初めてだ。
ショーケースに並ぶ色取り取りのケーキが華やかで目移りしてしまう。
「えーと……コアイチゴショート」
散々時間をかけてアスカが選んだのはオーソドックスなイチゴのショートケーキだ。
柔らかそうなクリームの上に大きなイチゴが一つ乗っている。
昨日、事故に遭った時に持っていたケーキも多分これだろう。
「じゃあそれを二つお願いします」
「畏まりました。店内でお召し上がりですか?」
ここは店内にカフェが併設されており、この場でケーキを楽しめるという寸法だ。
折角だから食べていくことにした。
「すっごく美味しい……私こんなに美味しいケーキを食べたの生まれて初めて」
何も思い出せないか。好きなケーキでも食べればと思ったけど効果は無いみたいだ。
「ごめんなさい……私、頑張って思い出すから!」
思い出そうと意識しないで自然に思い出せたらでいいよ。
ケーキが美味しくなくなっちゃうからね。
118:いときお
09/10/14 21:43:04
「シンジ。私たちって、いつもこうやってデートしてたの?」
デート? そういえばデートらしいことなんてアスカとしたことなかったな。
アスカに限らず女の子とデートなんてしたことないけどさ。
「恋人だったのに? へー、そうなんだ。デートしたことなかったんだ。ふふふ……」
笑わなくてもいいだろ。その代わりに家では毎日一緒に食事してるじゃないか。
掃除も洗濯も―止めよう、何だか言ってって虚しくなってきた。
「じゃあこれってシンジの初デートになるのね。そして私だけの新しい記憶に」
これがデートと呼べるか分からないし、今の記憶がどうなるかも分からないよ。
でも何だか妙に嬉しそうだからいいか。
「ねぇ。あのバルディエルパフェってのを食べると何か思い出しそうな気がするんだけど」
いい加減にしなさい。大きすぎて食べきれないだろ、あんなの。
結局バルディエルパフェを完食して帰宅。
チョコアイスをベースにしたパフェが苺ソースで真っ赤に変わっていくのはアスカ好みかも。
途中でアスカがギブアップしたので1/3ほど僕が食べることになったけどね。
苦しかったけど残さず美味しく戴きました。
仕返しに今日の夕食にはわざとアスカの嫌いな野菜を大目にしてみた。
残したら一昨日と同じ口喧嘩を再現してみようと思ったんだけど作戦失敗。
アスカは苦いと言いながらも頑張って全部食べ切ってしまった。
ま、これはこれでいいか。
結局、今日の収穫は今のアスカに戦闘は無理ということが分かっただけだった。
頼りにしていたリツコさんの治療方法があの調子じゃアスカの記憶が戻るか少し不安だよ。
当のアスカは本を片手に食後の時間をゆったりと過ごしている。
読んでいるのは何々『初めての家庭料理』か。どこから持ってきたんだろうね。
本当に別人みたいにおしとやかだ。
119:いときお
09/10/14 21:50:38
特に何事も無く就寝時間。でも今日は何だか眠れない。
意識してなかったけど初めてアスカとデートっぽいことしたんだな。
アスカも楽しそうだったし僕も楽しかった。思い出してたら凄いドキドキしてきた。遅いよ僕。
普段のアスカも誘ったらOKしてくれるかな。きっと断られちゃうんだろうな。
いやその前に昨夜のペンペン事件で半殺しか。ああ、あの裸が目に焼きついてる。
そんな事を長々と考えながらウトウトしていると微かなノックと共に扉が開く音がした。
目覚まし時計をチラリと見ると0時を過ぎている。
「ね、ねぇシンジ……もう寝ちゃった?」
アスカの声が聞こえた。変なことを妄想しすぎて寝ぼけてるのかな。
それとも僕はとっくに熟睡して夢の世界にいるのかな。
「あ、あのね。実はその、私……我慢……出来なくて……」
アスカが顔を赤らめて内股でモジモジしている。夢だね夢。
こんな都合のいい展開があるわけない。あるとしたらエッチな漫画の中くらいだ。
でも夢なら別に遠慮しなくてもいいのかな。僕の中にちょっぴり変な気持ちが芽生えた。
ゆっくり身体を起こして両頬を叩く。あれれ、痛い……ってことは夢じゃない?
いや。まさか。そんな。でも扉のところから息を荒げたアスカが僕を見つめてるし。
そういえばミサトさんが今のアスカは影響を受けやすいって言ってた。
昨日ドラマのラブシーンとかを見せちゃったせいだろうか。
心臓が爆発しそうなくらい鼓動が激しくなった。
僕は胸の昂りを必死で抑えつつもアスカの手を取ると優しくエスコートする。
十mも離れていないトイレまで。昼間のノッペラ坊が夢に出たようで恐くて仕方なかったらしい。
可愛いというか子供みたいだ。ベッドまで送って寝かし付けながら改めて思う。
やっぱり僕が今のアスカを守らなちゃいけないんだ。
余程恐かったのか強く握られてた手にはまだアスカの体温が残っている。
僕もトイレを済ませてから寝ることにしよう。ふぅ……やっと寝れそうだ。
<<つづく>>
120:いときお
09/10/14 21:52:04
ノッペラ坊は量産型、パフェは3号機……
外面は真面目ですが中身は煩悩に振り回されているシンジくんです。
121:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/14 22:40:34
GJ!!
どのタイミングで記憶が戻るのか、今から楽しみです
122:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/14 23:32:00
どうなるの?
とりあえずGJです
盛り上がってきた感じでしょうか?
123:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/14 23:49:26
こういうのは非日常を描くのは簡単だが、日常に収束させるのは技術がいるんだよな。
124:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/15 00:24:16
GJよかったー
ちょいちょい出てくるエヴァネタにニヤニヤしてしまうw
125:maTsu
09/10/15 00:31:55
投下します。
・長い。無駄に長いです。
・直接的な表現はあまりありません。
・直球LASが好きな人にはあまり向かないかも
ぶっちゃけ、前作の方が上手くいった感があります
心の広い人、寛容な人呼んでくれたら嬉しいです。
NGワードは
maTsu
でお願いします。
126:maTsu
09/10/15 00:33:44
「シンちゃん」
朝食後、食器の後片付けをしていると、ミサトさんが話しかけてきた。
「悪いけど、ひとつお願いしたいことがあるの。」
「何ですか?」
タオルで手を拭きながら答える。
「今日学校に行ったらさ、レイにリツコのところに行くよう言っといてくれない?」
「リツコさんのところですか?」
「うん、研究室にね。何の用か知らないけど、言えば分かるって言ってたわ。」
なんだろう、とは思ったが特に断る理由もなかったので
「はい、分かりました」と答えた。
エプロンをとり、カバンを手に取ったところで、
「シンジ!遅い!」
と、玄関からアスカの怒鳴り声が聞こえた。
「ゴメン、すぐ行くよ」
カバンを肩にかけ、玄関へ向かう。
「いってらっしゃい。んじゃ、よろしくね。」
「はい」
振り返って返事をした。
「シンジ!」
「ゴメン」
靴を履き、玄関を出る。
不機嫌そうな顔をしたアスカが、腕を組んで立っていた。
127:maTsu
09/10/15 00:34:54
学校に着き、靴を履きかえる。
アスカの後を追い、階段を上る。
アスカが教室のドアを開け、入る。続いて、自分も入る。
「おぉ、今日も二人仲良く登校かぁ」
ケンスケの席のそばにいたトウジがいつものように絡んできた。
「どういう意味よ」
いつものようにアスカが返す。
僕は苦笑いをしながら、自分の席に着く。
(毎日毎日、よく飽きないよなぁ)
アスカとトウジのやりとりを横目に、ひとつ息をついた。
128:maTsu
09/10/15 00:35:46
僕はカバンを開け、S-DATを取り出した。
イヤホンを耳に着け、電源を入れる。
聴き慣れた曲が流れ出したとき、右耳からイヤホンが剥ぎとられた。
「シンジ!」
視線を右に移すと、アスカが訝しげな顔をして立っていた。
「アンタも黙ってないで何か言ってやりなさいよ!」
「・・そんなこと言われても」
トウジの顔を見る。
「こういうんを夫婦ゲンカいうんやろうなぁ」
トウジがまた悪態をつく。
「だから!」
アスカが机を両手でバンッと叩いた。
「鈴原!」
アスカのそばにいた洞木さんが突然大声を出した。
トウジは小さくゲッ、と言い、顔を引きつらせている。
洞木さんはトウジのもとへつかつかと歩いて行き、いつものように説教をし始めた。
アスカはふふん、と小さく笑って自分の席に戻って行った。
129:maTsu
09/10/15 00:36:49
そういえば、と思い窓際に目を向けてみる。
窓際の後ろから2番目。綾波の席。
だが、誰も座っていない。
カバンも掛けられていないので、まだ来ていないようだった。
(・・休み?)
綾波が休みの場合はどうすればいいんだろう、などと考えているとチャイムが鳴り始めた。
自分の席に戻るクラスメイト達。
しばらくすると教室のドアが開き、担任の教師が入って来た。
そして、ホームルームが始まった。
ホームルームが終わり、1時間目の授業が始まっても、綾波は来なかった。
また少し振り返り、綾波の席を見る。
(・・ネルフに行ってるのかな)
しばらく眺めていると、「・・碇君?」と前から声が聞こえてきた。
正面を向くと、先生がこっちを見ていた。
クラスメイト達の視線が、一斉に自分に向けられている。
「どうかした?」
「・・なんでもないです、すいません。」
周りからは、クスクスと笑い声が聞こえてきた。
僕は自分の顔が赤くなっていくのを感じ、下を向いた。
130:maTsu
09/10/15 00:37:42
結局、その日綾波は学校に来なかった。
そして、放課後。
カバンを机の上に置き、帰る支度をしていた。
「早く帰りましょ」
ふと顔をあげると、帰り支度をすませたアスカが立っている。
僕は少し考えて、言った。
「ゴメンアスカ、今日は帰りに寄らないといけないところがあるんだ。」
寄る場所というのは、もちろん綾波の家のことだ。
「・・ふうん」
ゴメン、と言う。
すこし間を空けて、言った。
「・・ついて行ってあげてもいいけど」
僕はえっ、と小さく言い、
「あ、あのさ、ホント大した用事じゃないから」
ムッとした表情をするアスカ。
「すぐに僕も帰るよ」
アスカは僕の顔をじっと見ている。
「ふぅ」と息をつき、分かったわ、と言った。
そして、アスカは一足先に教室から出て行った。
131:maTsu
09/10/15 00:38:56
靴を履き替えて、校門を出る。
学校から綾波の家までは20分ほどの距離があるため、少し早足で歩く。
時計を見ると、3時半を回っていた。
(ネルフに行ってたんだったら、リツコさんやミサトさんに直接聞いてるかもなぁ)
そんなことを考えながら、歩く。
下校時間ということもあり、同じ制服を着た生徒もちらほらと見かけた。
しばらく歩いていると、古いマンションが立ち並ぶ団地が見えてきた。
マンションを見上げ、屋上近くに書いてある数字を見る。
(えっと、4棟だったよな・・)
マンション横の歩道を少し歩く。
『4』と書かれたマンションを見つけ、入った。
綾波の部屋は、402号室。
エレベーターが無いので、3階分階段を上った。
そして、部屋の前に行く。
ドアの上の表札には、
『402 綾波』
と書いてある。
132:maTsu
09/10/15 00:39:50
女の子の家、いや、他人の家のドアをノックするのは少し勇気がいる。
ほかの人はどうか知らないが、少なくとも自分にとっては。
(綾波の部屋の呼び鈴が壊れているのはもちろん知っていた)
「ふぅ」
ひとつ息をはき、ドアを叩く。
・・反応がない。
もう一回ドアを叩いた。
がちゃっ、とカギを開ける音がして、ドアが開いた。
そして、綾波が出てきた。
右手でドアノブを持ったまま、左手で目をこすっている。
「・・なに?」
僕は半歩後ろに下がって、
「・・ゴメン、寝てた?」と言った。
「・・明け方まで本部にいたから」
「そうなんだ。・・ゴメンね」
「何の用?」
133:maTsu
09/10/15 00:40:59
そうだ、と思い綾波に事情を説明した。
綾波は小さくあぁ、と言って頷いた。
「もしかして、もう行ったとか?」
「ええ」
僕はやっぱり、と言って苦笑いをした。
綾波は表情を変えずに、ジッと僕の顔を見ている。
「ゴメン、それだけなんだ。寝てるとこ悪かったね。」
じゃあ、と言ったところで綾波が言った。
「帰るの?」
「え?」
「・・・少し、上がって行けば?」
僕は再びえっ、と小さく言った。
少し考えて、
「・・うん、じゃあお邪魔しようかな」と言った。
134:maTsu
09/10/15 00:41:56
靴を脱ぎ、綾波の後について部屋に入って行く。
「・・座ってて」
綾波が言った。
部屋にひとつだけあった椅子に座り、横にカバンを置く。
そして、辺りを見渡した。
(相変わらず殺風景な部屋だなぁ)
部屋にはベッドやチェスト、小さな冷蔵庫があるだけで、目を引くものはほとんど無かった。
普段なにしてるのかな、などと思いながら台所に立っている綾波に目をやった。
綾波は、僕が前に来た時に教えたやり方で紅茶を淹れている。
しばらくして、2つのティーカップを持ってこちらにやって来た。
そして、ベッドに腰掛け、
「はい」
と、カップを1つを渡された。
135:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/15 00:49:55
携帯から失礼します
maTsuです
まだ途中なんですが、書き込みすぎで規制されてしまったので少しお待ちください
スイマセン(__)
136:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/15 00:52:26
続き待ってます!
137:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/15 01:03:43
早くお願いします!
138:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/15 01:08:02
んふぅん
139:maTsu
09/10/15 14:58:31
maTsuです
続き投下します。
140:maTsu
09/10/15 15:07:04
濃い茶色をした紅茶が、湯気を放っている。
「ありがとう」
そして紅茶を一口飲む。
気持ちが落ち着いたところで、聞いてみた。
「ところで、朝までネルフで何をやってたの?」
綾波はカップを持った手を膝の上に置き、
「シンクロテストとか、色々」と言った。
僕はそうなんだ、と言い、再び紅茶を口に含んだ。
「赤木博士のところには今朝行ったの」
「へぇ、それじゃあ僕が伝えに来ることなかったね」
綾波はふふ、と笑いながら紅茶を飲んだ。
しばらく話しこんで、時計を見てみると5時を少し回っていた。
「そろそろ帰らないと」
と言って、ゆっくり立ち上がる。
そう、と言い綾波も立ち上がった。
カバンを肩にかけて、玄関に向かう。
靴を履いて、玄関を出た。
綾波も、玄関まで来てくれている。
141:maTsu
09/10/15 15:15:43
「上がりこんじゃってゴメンね」
「いいの」
僕はじゃあ、と言って綾波の部屋を後にした。
階段を下りて、マンションから出る。
太陽はすでに傾きかけていた。
そして、家路につく。
夕食の食材を買うため、途中でスーパーマーケットに立ち寄った。
自宅に着くころには外は薄暗くなっていた。
ドアを開けて、部屋に入る。
おかえり、とミサトさん。
リビングで座りながらテレビを見ていた。
もちろん、テーブルの上にはビールの缶が置いてある。
僕は買い物袋をテーブルの上に置き、遅くなってすいません、と言った。
そして、台所で手を洗いながら聞いてみた。
「アスカは?」
「部屋にいるわよ」
僕はへぇ、と言って買ってきた野菜を袋から出した。
「シンちゃん、私お腹ペコペコだわ~」とミサトが言った。
「すぐに作ります」
鍋に水を入れて、コンロの火を点けた。
142:maTsu
09/10/15 15:27:05
夕食をすませ、食器を洗う。
最後の1枚を洗い終えて、タオルで手を拭いた。
夕食の後、ミサトさんはすぐに自分の部屋に戻って寝てしまった。
よほど疲れてたようだ。
アスカはリビングで寝っ転がって本を読んでいる。
(・・風呂に入るか)
そう思い、僕は自分の部屋に戻った。
着替えを持って、風呂場に向かう。
「お風呂?」
リビングでアスカが声をかけてきた。
「うん」
アスカはふーん、と言って再び視線を本に戻した。
なんだろう、とは思ったがとりあえず風呂場に向かうことにした。
143:maTsu
09/10/15 15:35:21
体を洗い、湯船に入る。
ゆっくりと腰を下ろし、ふぅ、と息をついた。
「・・・・」
天井を見上げる。
視線の先では、電球が1つ、鈍い光を放っていた。
しばらくボーっとしていると、風呂の外側から物音がした。
「シンジ?」
僕はぎょっとして、風呂の扉の方を見る。
扉のガラスの向こう(もちろん中は見えないようになってるが)、アスカのシルエットがわずかに見えた。
「ア、アスカ?」
さすがに戸惑う。
少し間が空いて、
「・・・あのさ」とアスカが言った。
「え?」
「・・今日の放課後、どこに行ってたの?」
「放課後?」
「うん」
僕はあぁ、と思った。
そして少し考えて、言った。
「・・トウジ達とゲームセンターで遊んでたんだ」
144:maTsu
09/10/15 15:50:14
正直に綾波の家に行ってたと言えば、アスカのことだ、きっと良く思わないだろう
それに、色々と悪態をつかれるのは目に見えていた
ただ、そう思って僕は嘘をついた。
本当に、他意はなかった。
「・・そう」
アスカは小さくそう呟くと、リビングの方へ戻って行った。
(アスカ?)
どうしたのかな、と思い、風呂からあがることにした。
体をタオルで拭いて、パジャマを着る。
仕切り扉を開いて、洗面所から出た。
しかし、アスカの姿は見えなかった。
どうやら部屋に戻って行ったらしい。
「ふぅ」
僕は、ゆっくりと椅子に座った。
145:maTsu
09/10/15 15:59:24
次の日の朝。
ピピピッとアラームが鳴り、目を覚ます。
「・・う・・」
枕元に手を伸ばし、目覚ましのスイッチを押した。
ゆっくりと体を起こし、しばらくボーッとする。
小さくあくびをしながら、ベッドから出た。
のそのそと部屋から出ると、ミサトさんがいた。
台所の椅子に座り、テレビを見ている。
「おはよ」
「・・おはようございます」
いつものように、朝食の準備に取りかかる。
エプロンを着けて、手を洗う。
ミサトさんはテーブルに頬杖をつき、テレビをボーッと見ていた。
「アスカは?まだ寝てるんですか?」
「あぁ、アスカならもう出たわよ。」
僕は手を止めて、えっ、と言った。
「やらないといけない宿題があるんだってさ。朝ご飯はいらないって言ってたわよ。」
「宿題?」
そんなのあったかな、などと考えつつ、調理を進めた。
146:maTsu
09/10/15 16:02:26
朝食をすまして、食器を洗っていると、
「あ、そうそう」とミサトさんが言った。
「昨日はありがとね、レイのところにわざわざ行ってくれたんでしょう?」
「えっ、知ってたんですか?」
「そうじゃないけど。昨日の朝、本部に行ったらレイがいたから。」
それに、とミサトさんが言った。
「帰りが遅かったしね。」
「あんまり意味なかったですけど」
と、苦笑いしながら返した。
ミサトさんはふふっ、と笑いながら
「ありがとう」と言った。
そして一通り家事をすました後、支度をして家を出た。
147:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/15 16:15:27
支援サゲ
148:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/15 16:20:55
四円
149:maTsu
09/10/15 16:30:59
学校に着き、靴を履き替える。
階段を上がり、教室に向かう。
ドアを開けて、教室に入ると、トウジとケンスケが近くに来た。
「なんや、どうしたんや、碇」と、トウジが言った。
僕はなんのことか分からず、は?と返した。
トウジは右手の親指で、自分の斜め後ろを指す。
その方向に目をやると、アスカがいた。
アスカは、洞木さんと楽しそうに話している。
「一緒に来ないなんてめずらしいなって言いたいんだよ」
と、ケンスケが言う。
「はあ」
「ケンカでもしたんか?」
「そんなことしてないよ」
「・・じゃあ、どっちかが浮気したとか?」
僕は二人の顔を見て、
「・・どういう意味だよ」と言った。
興味津々な2人を押しのけて、自分の席に着く。
「はぁ」
そして、ひとつ息をついた。
150:maTsu
09/10/15 16:38:54
アスカを見ると、相変わらず洞木さんと談笑している。
しばらくすると、綾波が教室に入って来た。
「・・おはよ」
綾波は僕の席の前を通る際、小さな声でそう呟いた。
「あ、おはよう」
綾波は特に返事もせず、自分の席に着いた。
その後すぐにチャイムが鳴り、先生が教室にやって来た。
その日は特にアスカと話す機会もなく、最後の授業も終わった。
放課後、帰る支度をすまし、辺りを見渡すがアスカの姿が見えない。
(・・いつもなら急かしにくるのにな)
変だな、とは思ったが、その日はトウジ達と帰ることにした。
151:maTsu
09/10/15 16:47:23
この日もスーパーマーケットに立ち寄り、食材を買って帰った。
トウジ達も各々好きなお菓子を買っていたようだ。
マンションに着き、トウジ達と別れた。
部屋の前まで行き、ドアノブを握って、回す。
しかし、途中までしか回らない。
カギがかかっているようだ。
カバンからカギを取り出し、そして開けた。
靴を脱いで、部屋に入る。
・・誰もいない。
買い物袋をテーブルの上に置いて、電気を点ける。
(アスカ、どこかに寄ってるのかな)
水道の蛇口をひねる。
水の流れる音だけが、部屋の中に響いていた。
152:maTsu
09/10/15 16:53:45
しばらくして、玄関のドアを開ける音が聞こえた。
先に帰って来たのは、アスカ。
「おかえり」
「・・ただいま」
「遅かったね、どっか行ってたの?」
「・・・」
何も言わない。
そして、そのまま部屋に行ってしまった。
(・・なにかあったのかな)
少し心配になり、聞いてみることにした。
タオルで手を拭き、アスカの部屋の前に行く。
数回ノックした後、聞いてみた。
「・・アスカ?」
少し間を置いて、何、と小さく返事が返ってきた。
「何かあったの?」
「・・・」
返事がない。
もう一回ノックする。
「・・なんでもない」
「・・え?」
「・・なんでもないから」
そう言うと、もう返事が返ってこなくなった。
153:maTsu
09/10/15 17:03:04
ミサトさんが帰って来た後、3人で夕食を食べた。
食事の間も、アスカはあまり口を開こうとしなかった。
食事の後、いつものように食器洗いに取りかかる。
夕食後、アスカはすぐに風呂に入ってしまった。
ミサトさんは、リビングでビールを飲みながらテレビを見ている。
「ミサトさん」
「・・ん?」
振り返ってこっちを見る。
「・・あんまり飲みすぎたら体に悪いですよ。」
「もージジくさいこと言ってんじゃないの。こんくらいじゃ飲んだうちにも入らないわよ。」
「・・はぁ」
視線を食器に戻す。
「そういえばさ」
「え?」
再び食器を洗う手を止める。
ミサトさんが、風呂場の方に目を向ける。
「なんかあったの?」
少し間を置いて、答えた。
「よくわかんないんですけど、何かあったんだと思います」
「・・ふーん」
ビールを一口飲んで、言った。
「まぁ、仲良くしなさいよ」
僕は苦笑いをして、わかりました、と答えた。
154:maTsu
09/10/15 17:08:11
次の日の朝。
目を覚まして自分の部屋から出ると、やはりアスカの姿はなかった。
靴もないので、どうやら今日も先に学校に出かけたらしい。
ミサトさんは、まだ起きていないようだった。
とりあえず軽く朝食を摂り、ミサトさんの分も用意した。
学校に行く準備をして、家を出る。
「ふぅ」
(・・ホントにアスカどうしたのかな)
そんなことを考えながら、学校へ向かった。
学校に着き、教室に入る。
席に座ると、洞木さんが近くにやって来た。
「碇君。」
「?」
洞木さんの顔を見る。
「・・あのね」
チラッと後ろを振り返る洞木さん。
何かを言いたいんだな、ということだけはなんとなく分かった。
「・・・」
「・・ゴメン、なんでもない」
そういうと、洞木さんは教室の後ろの方に歩いて行った。
155:maTsu
09/10/15 17:14:33
しばらくして、今度はトウジ達がそばに来た。
「おい、なんやさっきの、碇。」
僕の首に腕をかけてくるトウジ。
「え?」
「さっき委員長と話してたやろ。」
僕はあぁ、と思って頷いた。
「なんの話や?」
そばで、ケンスケがにやにやしている。
「なんでもないよ」
「他の人には言えん話か?」
首にかけた腕の力が少し強くなった。
「勘弁してやれよ。」
ケンスケが言った。
「悪いな、碇。ヤキモチ焼いてるみたいなんだ、トウジ。」
「コラ!勘違いすんな!」
「まぁまぁ」
そう言うと、ケンスケはトウジが着ているジャージの首元を掴んで、自分の席の方へ引っ張って行った。
156:maTsu
09/10/15 17:30:06
そういえば、と思い教室を見渡す。
アスカは、教室の後ろの方で洞木さんと話していた。
こうして見る限りでは、いつものアスカだ。
(・・わけがわかんないや)
少しの間考え込んでいると、チャイムが鳴り始めた。
先生が教室に入ってきて、ホームルームが始まった。
4時間目の授業が終わり、休憩時間。
トウジ達は購買に行ったようだ。
後ろを振り返り、アスカの方に目を向ける。
アスカはカバンを机の上に置いて、何かを探しているようだった。
隣には、洞木さんが座っていた。
(・・昼食、買って来たのかな?)
157:maTsu
09/10/15 17:35:12
アスカに、声をかけてみることにした。
席を立ち、近くに行く。
「アスカ」
パンの袋を開けかけていたアスカが、ぎょっとした表情でこちらを見る。
「・・なに」
「・・パン、買って来たの?」
「・・・」
下を向くアスカ。
「・・アスカ?」
「・・・いいでしょ」
「え?」
「別にどうだっていいでしょ!!」
アスカはそう言うと、がたんと立ち上がって教室から出て行った。
「え・・・・」
何も言えず、ただアスカが出て行ったドアの方を見つめていた。
教室にいた生徒の視線が、僕に向けられていた。
158:maTsu
09/10/15 17:41:39
「碇君」
「・・・」
「碇君!」
はっ、として後ろを振り向く。
洞木さんがなにやら泣きそうな顔で立っていた。
「・・追いかけて」
「・・え」
「アスカを追いかけてあげて!はやく!」
「う、うん」
そう言って、僕はドアの方に走り出した。
「多分屋上にいると思う!」
後ろで、洞木さんが言ってるのが聞こえた。
159:maTsu
09/10/15 17:44:18
階段を、1段飛ばしで上る。
屋上に着くころには、息が切れていた。
扉を開けて、屋上に出る。
するとすぐに、アスカが目に入った。
アスカは、手すりに肘をかけて向こうを向いていた。
息を整えて、言った。
「アスカ」
反応がない。
「・・アスカ」
もう一度言った。
少し間を開けて、
「・・・何よ」とアスカが言った。
「ホントにどうしたの?」
アスカはゆっくりとこちらを向いた。
160:maTsu
09/10/15 17:50:03
「・・・かんないの?」
「え?」
「ホントに分かんないのって言ってるの」
―しばしの沈黙―
「・・・」
考えてみても、やはり答えは見つからなかった。
ただ、自分が悪い、ということだけは自覚した。
アスカは僕の顔をじっと見ている。
ひとつ溜息をつき、アスカが言った。
「・・もう、いいわ」
そして、僕の後ろの扉に向かって歩き出した。
「アスカ」
僕は、アスカの腕を掴んだ。
アスカは、こちらを見ない。
「ゴメン、僕が悪かったんなら謝るよ。ホントにゴメン。」
161:maTsu
09/10/15 17:52:39
続けて、言った。
「僕、アスカに何かしちゃったかな。」
僕の顔をジロッと見るアスカ。
「嘘」
僕はえっ、と小さく言った。
「嘘ついたじゃない!」
「・・嘘?」
「・・鈴原達と遊んでなんかなかったんでしょう!?」
僕はすぐに状況を理解した。
おととい、綾波の家に行った時の―
「・・レイの家に行ったことは別にいいわ」
少し間が空く。
「・・知ってたの?」
再び僕の顔を睨む。
「・・ミサトから聞いたの」
僕は下を向き、
ゴメン、と言った。
162:maTsu
09/10/15 18:00:03
「何で嘘ついてレイの家に行ったのよ」
「い、いや、ホント深い意味はないんだよ」
「・・次嘘ついたら殺すわよ」
腕を組むアスカ。
「ホ、ホントだって」
「・・レイの家で何をしてたの?」
「何って・・」
「正直に言いなさいよ」
「・・頼まれた伝言を伝えに行って」
アスカはまだ僕の顔を見ている。
「少し紅茶を飲んで、話しただけ」
「それから?」
「い、いやホントにそれだけ」
「次嘘ついたら・・・」
「ホントにホント、絶対」
163:maTsu
09/10/15 18:03:33
―少し沈黙―
「・・・」
「あのさ・・ホントにゴメン」
「・・許さない」
「え?」
僕の腕を振りほどくアスカ。
「謝ったからって許されると思ったら、大間違い」
―何も言えない。
悪いのは、完全に僕だ。
164:maTsu
09/10/15 18:07:07
アスカは、階段に向かってゆっくりと歩き出した。
そんなアスカをじっと見ている僕。
「―なんでもするよ」
思わず、口をついて出た。
小学生みたいな謝罪の言葉だ。
だが、アスカの動きは止まった。
振り返るアスカ。
にやっと笑って、言った。
「・・なんでも?」
正直しまった、と思ったが、もう後には引けなかった。
次に嘘をついたら殺されるのだから。
「やるよ」
アスカはふふっ、と笑い、
「言ったわね」と言った。
165:maTsu
09/10/15 18:15:09
アスカの命令は、午後の授業をサボって遊びに行くことだった。
言うまでもなく、、僕も道連れらしい。
後になって怒られることは目に見えていたが、断れるわけがなかった。
教室に自分とアスカのカバンを取りに行き、階段を下りる。
途中、先生に見つからないように警戒しながら。
下駄箱に着くと、アスカが腕を組んで待っていた。
「遅い」
「・・ゴメン」
「あ、アタシの荷物はそのまま持っててね」
「え」
「・・なにか文句でも?」
僕の顔をジロリと睨むアスカ。
「・・いえ」
周りの目を気にしながら、校門を出る。
「あー昼間っから堂々と学校を抜けるのってなんかいいわー」
両手を伸ばしてアスカが言った。
166:maTsu
09/10/15 18:18:37
「シンジ」
え、と言ってアスカの顔を見る。
「嫌なの?」
「い、いやそんなことないよ」
アスカはニコッと笑い、言った。
「んじゃ、明日も明後日もその次も。」
―げっ、と思ったが・・何も言えない。
「あ、し明後日は土曜日だから、月曜日もね」
(・・ミサトさんにも怒られるだろうなあ)
「とりあえずゲーセンでしょ、服も見たいし、あとハンバーガーも食べたいわ。」
楽しそうなアスカを横目に、ひとつ溜息をつく。
結局、その日家に帰ったのは夕方の6時過ぎだった。
商店街や大型百貨店を連れまわされ、クタクタになっていた。
アスカの機嫌もどうやら直ったらしい。
ただ、今月支給されたお金はほとんど消えてしまったが。
167:maTsu
09/10/15 18:23:53
「シンジ」
リビングで戦利品(もちろん買わされたもの)を眺めていたアスカが、言った。
「え?」
水道の蛇口をひねり、アスカの方を見る。
「今回はこれくらいで許してあげるけど」
ゆっくりと僕の顔を見るアスカ。
「・・・今度嘘ついたら、ホントに殺すから」
「わかってるよ」
「はい?」
「・・わかりました」
アスカはにやっと笑い、よし、と言った。 (END)
168:maTsu
09/10/15 18:29:07
以上です。
駄文長文スイマセン(_ _)
つーかいま読み返してみると完全に育成展開ですねコレ・・orz
ホントパクったわけじゃないんですゴメンナサイ
デキに納得はしてません、正直
169:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/15 19:26:22
乙!
GJ
170:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/15 20:02:31
maTsuさん
良かったです
171:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/16 00:16:58
何もない話をgdgd書いてるだけだなww
172:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/16 00:27:09
GJ!
次の投下も楽しみにしています。
>>171
その何でもない話が好きな人もいるわけでな。
173:いときお
09/10/16 00:27:48
投下いきます。
記憶喪失系でイタモノ要素ありのため自己責任で注意願います。
NGワードは”いときお”で
174:いときお
09/10/16 00:31:48
アスカが記憶なくしてから早三日目。
ネルフでは『アスカのアスカによるアスカのためのサルベージ計画』が発動していた。
ふざけた実験をしていたリツコさんだが一応まともな研究も進めていたらしい。
概要はアスカ自身に自分の記憶をサルベージさせるというものだ。
「MAGIによる今実験の推定成功率は99.9999%です」
マヤさんの報告を受けてリツコさんは誇らしげな顔をしている。
しかしMAGIの出す確率は当てに出来ないというのが暗黙の了解だ。
楽観視は出来ない。むしろ不安だ。
「準備完了、最終確認に入ります」
実験用プラグ内のアスカはメンタル値バイタル値ともに正常。
ここから少しづつプラグ深度を下げて精神状態を刺激していくそうだ。
アスカ本人は『必ず元の記憶を取り戻してくるから!』と意気込んでいたけど心配だ。
「対象のバイタル値オールグリーン」
「ハーモニクス及びセルフ心理グラフ、安定しています。問題ありません」
「アスカ、気分はどう?」
「何だかフワフワしてる感じ……」
「これから意識は表層から深層、精神の世界へと潜っていくわ。少し苦しいけど落ち着いてね」
イメージ的には深層意識の中で眠っている記憶を起こして表層まで連れ戻す救助作業らしい。
セルフサイコダイバー式と名付けられたけれど何のことやら。
「実験を開始して」
「A10神経接続開始。ハーモニクスレベルはプラス10刻みで順次」
「結果はアスカのみぞ知る、かしらね」
後ではミサトさん達がリツコさんが『ありえないわ!』と言うかどうかで賭けをしている。
オッズは8:2で言う方が優勢。
何だよマヤさんまで言う方に賭けているじゃないか。
本当に大丈夫なのかこの実験。
175:いときお
09/10/16 00:35:14
「対象の神経パルスに異常発生。」
「まだよ。プラグ深度をあと1.5下げて」
『うぐぅ……あぁ……』
プラグの中からアスカの苦しげな呻き声が聞こえてきた。
今アスカの意識は自分の精神世界を一人ぼっちで探索しているはずだ。
外部からはどうなっているかも分からず見守るしか出来ないのが本当に辛い。
「対象の心理グラフに変調発生。精神汚染が発生します」
『嫌っ! イヤッ! いやっ! イヤぁあああああ!!!』
「問題ないわ。もう2.0下げて固定、心理グラフの安定を待ってから更に1.0……」
「も、問題ないってどういうことですか!? アスカ大丈夫!? アスカーッ!」
「シンジくん落ち着いて。大丈夫だから」
普段のエヴァや使徒からの精神汚染とは違って今回はアスカ自身による精神汚染。
つまり今の記憶が元の記憶に塗り替えられ、入れ替わるという意味らしい。
『ぁあああああ―!!!』
それでもアスカの悲痛な叫びは止まず、そして絶叫に変わろうとしていた。
こんな酷い事をするなんて聞いてないよ。
「精神防壁に拒絶反応発生! 精神汚染が深層へ転移します!」
「神経パルスに負荷増大!」
「そんな! アスカ同士で拒絶反応が起こるなんてありえないわ!」
スタッフの大多数が予想した通り、リツコさんの想定外のことが起こったらしい。
「心理グラフ限界! このままでは精神回路がズタズタになります!」
「実験中止! すみやかにプラグ深度を初期値へ。それから……」
こうして第一次サルベージ計画は失敗に終わった。
176:いときお
09/10/16 00:36:04
「気分はどう? もう気持ち悪くない?」
自室のベッドで横になったアスカの濡れタオルを交換する。
実験の後アスカは体調不調を訴えて寝込んでしまった。
リツコさんによると知恵熱が酷くなったようなものらしい。
薬を飲んで十分に栄養を取って休めば直ぐに良くなるそうだ。
「苦しかったら無理しないで何でも言ってよ」
実験用プラグから救出された時、アスカは酷い状態だった。
目は見開いたまま意識は無くて、荒い呼吸でうわ言のように僕の名を呼んでいたんだ。
「アスカ! 返事をしてアスカ!」
僕は抱き上げて頬を軽く叩きながら呼びかけた。
しばらくすると瞳の焦点が合ってきて大粒の涙が溜まっていた。
「……シンジ?」
「良かった無事なんだね!」
意識が戻ったアスカを抱きしめると力なく抵抗されたよ。
でも無事だったのが嬉しくてぎゅーっと抱きしめちゃったんだ。
アスカが僕の胸で激しく胃の中身をぶちまけたのはその数秒後。
今朝、僕が作ったベーコンエッグはスクランブルエッグになっていた。
ゆっくり眠って早く良くなって欲しいと切に願う。
痛々しいアスカはあまり見ていたくない。
「ごめんなさい。記憶、取り戻せなかった……折角のチャンスだったのに」
アスカが顔を背けてポツリと言った。
額に乗せたタオルが枕の上に落ちる。泣いているのかもしれない。
177:いときお
09/10/16 00:39:02
「アスカが気にすることないよ」
「違うの。見つけたのよ。本当の私を。だけど恐かった……」
「恐かった?」
「私の中に世界があって、そこにもう一人の私がいたの……」
アスカの話は抽象的で分かりにくかった。
深層意識の中にはもう一つの世界があって、本当のアスカがいたらしい。
誰もいない世界に一人きりで。
そして交代するように深層意識へ飲み込まれそうになり、恐くなって逃げ出したらしい。
幻覚でも見たのだろうか?
それともそこで交代していたら今頃は元のアスカに戻っていたのだろうか?
「ねえシンジ。記憶が戻ったら私はどうなると思う?」
「どうなるって、記憶を失う前のアスカに戻るんじゃないのかな」
僕は前に欠番の使徒に記憶を奪われた時のことをアスカに伝えた。
戻った時には記憶の無い時の事を何も覚えていなかったこと。
その間にバカな事もしたらしくてアスカに散々その事でからかわれたことも。
「今度は僕がアスカに教えてあげるよ。少しくらい脚色するかもしれないけどね」
「その時の……記憶を失っていた時のシンジはどこへ行ったの?」
「えっ!?」
「いなくなっちゃったの?」
「分からない。でも僕は僕だよ。記憶があってもなくてもね」
そう曖昧に答えたけれど実際のところ深く考えたことなんてない。
記憶を失っていた間の僕はどこへ行ってしまったんだろう。
別の人格として消えてしまったのだろうか。
それとも寝ぼけた時のように元々僕の無意識の一面だったのだろうか。
「色々あって疲れているんだよ。今日はもうお休み」
「お休み……シンジ。手、握ってて。私が眠るまでで良いから」
僕は夜が明けるまでアスカの手を握っていた。
178:いときお
09/10/16 00:40:46
翌日。目が覚めると背中に毛布がかけられていた。
あの後アスカの部屋で眠ってしまったらしい。
「あれ……アスカ?」
部屋の中にアスカの姿はなかった。
その代わり部屋の外から美味しそうな匂いが漂ってきている。
この匂い……朝からカレーか。
案の定、台所ではアスカが孤軍奮闘していた。
ちょこちょことテーブルに置いた料理の本を見ながら調理を進めているようだ。
「おっはよー、シンジ!」
「おはようアスカ。もう起きて大丈夫なの?」
「もっちろん! すぐに出来るから楽しみに待っててね!」
やけに高いテンションで返されたけど本当に大丈夫なんだろうか。
何だか空元気に見えなくもない。
調理を手伝おうとすると『一人で出来るから』と追い払われてしまった。
元気になったのは嬉しいけど少し寂しい。
もしもアスカが家事全般をするようになったら僕の取り柄が無くなってしまうかも知れない。
「あれ……? アスカ、この本どこにあったの?」
ふとテーブルに置かれた本が目に留まった。
パラパラと捲るとページに色々と書き込みやメモがしてある。
意外と勉強熱心なんだなと思わず笑みがこぼれた。
「私の部屋に決まってるじゃない。ちゃんとカレーのページ開いといてよ」
メモはドイツ語で書かれているので内容は分からない。
だけど大き目の余白には適当な感じの似顔絵と一緒に『←バカシンジ』と書かれていた。
こんなのを書くのは世界に一人しかいないよね。
やけに乱暴な字の書き込みが多いと思ったよ。
179:いときお
09/10/16 00:43:08
「どうしたの? 何かニヤニヤしちゃって」
「別に。美味しそうだな、って思っただけだよ」
このカレーは今のアスカとそして本当のアスカの合作のような物なんだろう。
いつか僕に作ってくれるつもりだったんだろうか
そう思うと一層美味しそうに思えてきた。
あの晩『食べるだけ』なんて言ってしまってゴメンと早く謝りたいよ。
鍋の蓋を外すとスパイスの香りが起き抜けの食欲を刺激した。
「ぺろっ、んー美味しい。特製カレー完成!」
味見をしたアスカがクルリと振り向いて得意気なVサインを出した。
その満面の笑顔に思わず拍手をしてしまう。
お皿を用意しようとして僕は一つだけ疑問に思っていたことを聞いてみた。
「ところでアスカ。御飯は?」
「あ…………」
少し遅い朝食は少し早い昼食になった。
<<つづく?>>
180:いときお
09/10/16 00:45:12
前回、投下宣言とイタモノ注意を忘れました。すみません。
おそらく今後も非日常的展開を繰り返しながら進むと思います。
セルフサイコダイバー式サルベージ:
今のアスカの精神が元アスカに精神汚染される分には問題ないだろうという超理論。
181:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/16 03:30:36
乙!
ちょっと話が進んできたね
ありえないはワロタw
切ない感じになってくるのかな・・・続き楽しみに待ってる!
182:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/16 06:19:26
>僕は前に欠番の使徒に記憶を奪われた時のことをアスカに伝えた。
なんだこりゃ?
183:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/16 07:17:35
>>182
セガサターンのゲーム版ネタだろうな。
記憶喪失になったシンジが主人公だった。
184:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/16 07:29:47
サターンのネタが分からない人がいるなんて…
185:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/16 07:47:04
>>182
初期のゲームで欠番の使徒ってのに記憶を奪われて記憶喪失になる話がある。
ネルフ側はシンクロ率は高いままだし戦闘訓練も普通だから問題なしと放置(酷いなw)。
アスカに世話を任せてたら適当なウソばかり教えられて・・・って感じだった。
お調子者でクラスの人気者だったとかアスカの下僕だったとか色々。
「何で洞木さんはあんなに僕のことを心配するのかな?」
「それは当然・・・恋人だからよ。そんなのも忘れちゃったの?(にやにや)」
この後ルート次第では委員長とキスシーンまでいってアスカがキレるとか。
ネタがネタだけに使うとは思ったがちょっと説明不足だったと思う。
186:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/16 08:27:11
平日の朝っぱらから大勢いることにワロタ
結構住人多いのかね?
>>180
投下乙
マヤくらいは言わない方に賭けてやれよw
消える云々は別人格だと自覚したって感じなのかな?
何となく内向的なアスカスレのアスカに見えてこれはこれで萌える。
187:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/16 12:08:59
段々残念な出来になっている気がする
188:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/16 18:02:28
いときおさん
乙です
どうなるの?
189:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/16 18:14:57
>>187
気に入らないなら黙ってNGにすりゃいいだろ
190:何でもない普通の日
09/10/16 20:23:20
こんばんは。投下させていただこうと思います。
タイトルは「何でもない普通の日」です。
191:何でもない普通の日
09/10/16 20:24:06
キッチンでコーヒーを淹れて、ソファーの前のテーブルまで運ぶ。部屋には僕一人だった。
ソファーに深々と腰を下ろし、ため息をついてしまうのは年のせいだろうかと、
しみじみと、何処かくすぐったいものを感じながらコーヒーを啜る。苦い。
しかし何故この苦味で僕は、こんなにも落ち着いた気分になるのだろうかと考えながら、
まぁそれは好きだからだろうな、と当たり前のことを思う。好きなんだから仕方ない。
ふと、窓の外を見ると、さっきまで暮れてゆく太陽の光が跋扈していた夕空に、滲み出した藍色が混ざり始めていた。
夕方と夜の間、僕はこの時間が一番好きかも知れない。
アスカを待っているこの時間が、でも今日はやっぱり平常心ではいられないな、と思った。
研究所から勤めを終えて玄関を開けると、部屋はカレーの匂いで満ちていた。
こんな普段通りの日常に喜びを感じてしまう私は、おかしいのだろうかとアスカは思った。
「おかえりー」シンジの声が聞こえる。
「ただいまー」こんなやり取りで涙の出そうになる私は、絶対におかしい。
でも、嫌だとは全然思わないのは、幸せだからだろうな、と思う。
リビングに入ると、シンジはいつものように窓の外を眺めていた。
「あんたも毎日飽きないわねえ」
声をかけても、シンジは黙ったままだった。
「シンジ?」
「えっ?あっアスカ!おかえり!」
「おかえりってあんた、さっきもう言ったじゃないの」
「えっあっえっと、な何かボーっとしてたみたい!」
「あんた大丈夫?全くボケボケっとするのも大概にしときなさいよ!」
「うん。ゴメン、あはは」
「まあいいわ。じゃあ、着替えてくるわね」そう言って、自分の部屋のドアを閉める。
192:何でもない普通の日
09/10/16 20:25:21
何だか今日シンジはおかしい。何かあったんだろうか?あとで問い詰めてみようと考えながら着替えを急ぐ。
どうしてこんなに私は、急いで着替えているんだろうか?
洋服の汗が気持ち悪いから?早くご飯が食べたいから?早くシンジを問い詰めたいから?どれも惜しいけど違う。
ただ、シンジと少しでも一緒に居たいからだ。私は本当に弱くなってしまったな、と苦笑いを浮かべる。
でも構わない。シンジと一緒に居られれば、自分を守るための高い鋼のようなプライドなんて、ちっぽけなものだ。
こんな風に思えるようになったのは、いつ頃のことだったろうか?
夕食を食べ始めると、やはりシンジのおかしさが目に付いた。どこか緊張しているようで落ち着きがないのだ。
それに何を話しかけても、少し上の空で聞いているし、自分からあまり話そうとしない。まるで昔のシンジみたいだ。
自分に自信がなく、いつも何かに怯えていた、あの。
二人を沈黙が覆った。すると、シンジがようやく自分から口を開いた。その言葉は、あたしに衝撃を与えた。
「あのさアスカ、僕たちもう、終わりにしよう」
「えっ?」
あたしはあまりに驚いて、こんな間抜けな言葉しか返すことが出来なかった。
193:何でもない普通の日
09/10/16 20:26:55
「どういう」
「僕さ、もうこの関係が、耐えられないんだ。今まではさ、がっ我慢してきたんだけど、もう、限界なんだ、だっだからさ」
本当に昔のシンジを見てるみたいだった。そんなシンジを見ていると突然、昔のあたしが蘇ってしまった。当然、あたしはキレた。
「冗談じゃないわよ!あんたあたしに告白する時、ずっとそばにいるよって言ったじゃないのよ!あの約束忘れたとは言わせないわよ! それにこれからはお互い嘘をつくのはやめようって言ったのに、我慢してたってことはあたしに嘘ついてたってことじゃないのよ!
確かにあたしは我侭だし我慢もさせたかもしれないけど、そんなに嫌だったなら言えばよかったじゃないの!このバカシンジ!」
あたしは気付くと平手で想いっきりシンジを殴っていた。
落ち着いてきたと同時に愕然とし、あたしはボロボロと涙を流していた。テーブルに滴が落ちる。涙が止まる気配はなかった。
「あたしには…あんたしかいないのに、どうして…どうしてよ!」あたしは泣き叫んでいた。
「ごめん…あの」
「聞きたくない!お願いっお願いだから…謝られたら…余計惨めに」涙が、止まらなかった。
今までの幸せな時間は、このための伏線だったんだ。絶望への伏線だったんだ。あたしはそうとしか考えることができなかった。
194:何でもない普通の日
09/10/16 20:28:07
「違うんだよ、アスカ!」シンジが叫んだ。隣に膝をついて、あたしの涙を拭いながら、あたしを愛でながら続けてくれた。
「ゴメンねアスカ。少し驚かせようと思って、それに言葉足らずで、だからあの要するにさ…」シンジの顔つきが変わる。
「恋人から奥さんになってほしいんだ」
「えっ?」あたしはまた、驚いて間抜けな言葉しか返せなかった。そして頬を伝いながら、とめどなく涙が零れ落ちていった。
「シンジっ!」あたしはシンジの胸に顔をうずめる。
この温もりが、この優しさが、一生あたしのものになるんだと実感し、その喜びが涙となって溢れ出しているんだな、と思った。
それでもやっぱりあたしはあたしで、心の中で青春の残滓となっているプライドは、あたしにこんな言葉を吐かせた。
「何でこんな普通の日に大事なこと言うのよ!」
自分でも驚いた。素直にありがとうと言えない自分に、でも、あたしらしくて良いかな?とも思った。シンジが答えた。
「だってさ、誕生日とかにしたら、この日が新しい特別な日にならないかな、と思ってさ」欲張りすぎかな、と言って微笑む。
「ほんとにバカね」あたしも微笑んで答える。こんな女を好きなこいつは、心底バカだとあたしは思う。
「本当にあたしで良いの?」
「アスカじゃなきゃダメなんだよ。隣にいて、幸せを一緒に探してほしいんだ」
もう十分幸せよ!と叫ぶのをグッと堪えて、あたしは泣きながら笑って、歓喜を噛みしめるように、うなずいた。
何でもない普通の日が、特別で大切な日に変わった瞬間だった。
~終~
195:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/10/16 20:45:46
短いですが以上です。感想下さると嬉しいです。