09/09/21 00:04:01 48TDmZtn
「いつもの…お願い、出来るかな?」
「うん…いいよ」
シンジくんはのどかな笑みを浮かべて言いました。
二匹は近付き、見つめあい、シンジくんが大丈夫だよ、といった笑顔を見せると、アスカちゃんの前に跪きました。
その日中ずっと、シンジくんはアスカちゃんの下腹部の針を舐め続けました。
次の日の朝、シンジくんとアスカちゃんが目覚めると、幸せそうな顔で見つめあいました。
そして二匹はこう思いました。
『シンジは、絶対傷つけない。』
『アスカは、絶対傷つけない。』
二匹はいつまでも幸せに暮らしましたとさ。
おわり
601:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/21 00:05:05
最初題名つけなくてすいません…
感想言って頂けたら嬉しいです。
602:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/21 00:13:29
>>597
表層的な面はね。本質的には惣流の方がずっと不器用。そこがまた魅力だと思うけど
603:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/21 00:18:16
式波は器用に生き方を変えられる子みたいだね。
彼女は隻眼になってもたぶんうまくやっていけるんだろうなぁ。
604:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/21 00:27:32
不器用って言われると高倉健を連想するからやめて
605:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/21 00:52:31
独特な話ですねw俺は割と好き
下腹部の針を舐めるシーンが妙にエロチックに感じてしまったw
606:DISTRESS ◆xfCLDS4d/.
09/09/21 02:08:51
>>511 続きです
「!!!」
意識が戻った。あれ、確か綾波の家を出ようとしたら・・・
今何時だ?あすか・・・ そうだアスカは?
帰らなきゃ。
「目が覚めた?」
「あやにゃみ・・・」
「ごめんなさい」
「えっ、何が?」
「碇君が眠ってしまったの、私のせいなの。赤木博士にいただいた液状睡眠薬・・・」
「それがどうしたの?」
「この部屋についた時に碇君に出したお水に入れたの」
お水? あぁ、あれか。
でも・・・ 動機がまったくわからない
「どうしてだよ。なんで?」
気付いたら声が震えていた。薬使って眠らせるなんて酷すぎる。
「たぶん、あなたが好きだから」
「へ?」
「私に心と呼べる物はないに等しかった。あったとしてもそこには司令しかいなかった。
でも気付いたらあなたがいた。碇君がいた。笑ってる碇君が」
状況が飲み込めない。いまの綾波の言葉・・・ 告白なのか?
だったらなんで今?
怒りは驚きと疑惑に変わった。
「・・・」
何も言えない。聞きたいのに聞けない。
「・・・昨日学校で碇君がセカンドと言い合いしてた時に私をかばってくれた。
うれしい。・・・よく人は言うけど私は感じたことなかった。
607:DISTRESS ◆xfCLDS4d/.
09/09/21 02:34:52
それを教えてくれた。
そんな碇君がセカンドと一緒にいるのが嫌だった。だから・・・」
うそだろ・・・ あの綾波が。・・・夢か?
しかも昨日って・・・
「・・・今何時?」
「午前四時三分」
どうしよう。アスカが・・・。
こんな状況でアスカの事ばかり考えて・・・ 僕は何なんだろう?
「綾波の気持ちはわかったよ。でも今はアスカの事が心配なんだ。だから帰らせてくれるかな?」
冷静だな僕。なんでだろ・・・
「・・・わかったわ。本当にごめんなさい」
「後で学校で。じゃあ」
バタン。
綾波レイは一人残された部屋で〔涙〕を流していた。
早く。急げ僕。
真っ暗な道を全速力で走る。
今なぜ僕がこんなに全力で走っているのか。
考えられる答えはただ一つ。
好きだから。
アスカが好きだから。
やっと気付けた。あまりにもバカすぎる。鈍感すぎる。ホントバカだな、僕。
アスカもバカにしたくなるわけだ。
アスカは怒っているんだろうか?着いて何すればいいんだろう?
わからない。でも急ぐ。
20分くらいかかってやっと着いた。階段をかけあがる。
部屋のドアノブに手をかける。心臓が破裂しそうだ。
608:DISTRESS ◆xfCLDS4d/.
09/09/21 02:57:40
いくら鈍感でバカな僕でも、部屋の前に着くと肌で〔何か〕を感じ取っていた。
何があっても逃げちゃだめだ。
覚悟を決めると部屋のドアノブを回した。鍵はかかっていない。
「た、ただいま」
「・・・」
もう寝てるのかな?
リビングに入るとアスカがいた。机にうつ伏せになっている。
「アスカ?」
「・・・」
「なんだ、寝てるのか」
僕をまってて寝ちゃったのかな? そう思うと胸が痛む。
「・・・起きてるわよ」
「あああ、アスカ!あのさ、実はいろいろあって・・・」
「ねぇ?」
「・・何?」
「愛って何だろ」
「え?」
「愛って何か聞いてんのよ! 耳付いてんの?」
「・・・そんな難しいこと、わからないよ」
「前ドラマでやってたんだけどさ。一人の少年がいて。その少年に想いを寄せる少女が二人いて。
少年は二人のうちからどっちも選べない優柔不断なやつだったの。
でもある日ついに決断を下して、片方の女と寝るの。
それを知ったもう片方が少年を殺して、死体と寝てから自殺するわけ。怖いわよねぇ~
・・・で、これも愛なの?」
「そ、そんなこと・・・」
「答えろって言ってんのよ!!」
いきなりアスカが顔をあげた。
609:DISTRESS ◆xfCLDS4d/.
09/09/21 03:19:19
「いつもいつも、わからないっていってごまかして。
自分から、みんなから逃げて。
だからあたしにバカにされんのよ!このクソバカシンジ!」
右手には鋭く光るものが握られている。
まさか・・・
「アスカ落ち着いて!僕が悪かったよ!」
「またすぐ謝って! あんたって本当にバカね。
・・・そいつに惚れたあたしはもっとバカって事ね」
「アスカ、今なんて・・・」
「もういいわ。一緒に逝きましょ」
「アスカ!!!」
できる限りの大声で叫んだ。
何も言わずにアスカに駆け寄る。
思いっきり抱きしめる。
「アスカ、好きだ」
アスカが腕のなかでビクッと震えた。
「僕はバカだよ。ホントに。大好きなアスカになら殺されてもいい。
でもこれだけは言っておきたかったんだ。」
「うっ、うぅ・・・」
泣いている。
アスカが。
また泣かしちゃったよ。最低だ僕って。
「し、証拠は?」
「それは・・・」
「だいたいファーストと寝たんでしょ? 人形と寝て楽しかった?
・・・あたしの初めて、あげようと思ってたのに」
さっきよりもっと泣いてしまった。胸のあたりが涙でぐしゃぐしゃだ。
「誤解だよ。綾波と寝てなんかいないよ。・・・でも、告白された。」
610:DISTRESS ◆xfCLDS4d/.
09/09/21 03:43:57
「あの人形ぅ・・・」
右手に力がこもってる。気が気じゃないよ。
「アスカ! でも断るから。安心して!」
「できない。証拠も足りない」
「じゃあどうすれば・・・」
「あたしの部屋にきて」
「わかったけどなにを・・・」
「・・・」
黙って僕の腕をつかみ部屋へと連れていく。
「服脱いで」
「は?」
「いいから脱ぐのよ!」
言いつつ机にナイフを置いている。
「アスカ、でもまだ僕たち中学生・・・」
「はぁ? 何勝手に妄想してんのよ?」
なんなんだよ。でもとりあえず脱ぐしかない。
パンツ一枚で立ってると、
「それも脱ぐのよ!」
と言ってきた。意味がわからない。
「ベットに横になって」
もうやけくそだ。全裸の状態で横になった。
「いい、あたしがやることに耐えてよ。動かないでよ。
目つぶって」
そう言うとおでこの端をなめ始めた。
それからは苦痛の時間だった。アスカが全身をなめてきた。文字通り全身。
もの凄く怖かった。興奮するとかそれどころではない。
いちいち「シンジの○○」と、今なめている所を言いながら事を進めていた。
どこか病的だった。
マーキングでもしているつもりなんだろうか? とにかくおかしい。
611:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/21 04:17:16
続きは後ほど。
たぶん。
612:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/21 04:22:52
乙です!リアルタイムで読ませていただきました
613:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/21 05:32:08 3Uw0AIpv
小津
614:DISTRESS ◆xfCLDS4d/.
09/09/21 05:55:51
なんか寝れないから続き投下
でも耐えた。嵐が過ぎれば元のアスカに戻ってくれると思ったから。
なにより好きだったから。
アスカの意志は全くわからない。でも、今は受け入れよう。もう逃げない。
アスカが左足の小指をなめ終わった。これでようやく終わりのようだ。
「耐えたわね」
「耐えたっていうか、べつに・・・」
「気持ち悪かった?」
「ううん。どっちかって言うと怖かった」
「そ。まぁこれで第一段階は終了ね」
満足そうな笑みを浮かべる。狂気じみた、見ていて恐ろしくなる笑み。
「体、気持ち悪いでしょ。シャワー浴びてきなさいよ」
「いや、でも・・・」
「いいから早くっ!」
パチンと背中をたたいて言った。
シャワーで全身の唾液を流す。
アスカは病気なんだろうか?その原因は?
間違いなく僕だ。絶対。
気づいてあげるのが遅すぎた。好きって言うのが遅すぎた。
風呂場の壁を殴る。思いの一つ一つを込めて。
綾波になんて言えばいい?アスカは僕のこと好きなんだよな?なんでこんなに僕はバカなんだ?
怒りがわいてくる。自分への怒り。
手が切れて血がでた。でも関係ない。
ささやかな自分への罰。喜んで受けよう。
615:DISTRESS ◆xfCLDS4d/.
09/09/21 06:23:54
僕がしっかりしなくちゃ。アスカの病気は僕が治してみせる。
絶対に。
そう決心すると殴るのをやめ、風呂場を出た。
「すっきりした?」
「う、うん」
また笑っている。さっきとは別の、優しい笑み。
「おなか空いたでしょ?朝ご飯にしましょ」
朝ご飯?あ、そうかもう七時前だ。
「僕が用意するからアスカはゆっくりしててよ」
「そーお?たまには気が利くじゃない♪」
手早く調理していく。トーストに目玉焼きに簡単なサラダを作った。
「アスカ、できたよ!」
「はぁーい」
消毒液と絆創膏を持っている。
「アスカっ、怪我したの!?」
「はぁ、それあんたでしょ!」
「・・・見てたの?」
「どんどんって音したから見に行っただけよ。べ、別にいっつも見てるわけじゃないわよ!」
どーだか。本当に怪しい。うかつに行動できないや。
「ほらっ、手ぇ出しなさいよ!」
「う、うん」
さっきまでの様子はどこへ行ったんだか。
「ファーストに告られたって話ホント?」
声のトーンが変わった。注意して答えなきゃ。
「う、うん」
「くっ、あいつ・・・ でもただ振るだけじゃつまんないわ
散々見せつけて無理だって思わせた上で振ってやんのよ」
616:DISTRESS ◆xfCLDS4d/.
09/09/21 06:37:58
「そんな・・・」
顔が一気に歪む。
「ははぁん。やっぱあいつの事すk」
「違うよ! ・・・でも僕がそんな事する権利ないと思うんだ。いろいろ助けてもらったし」
「あんたばかぁ? あたしがいいって言ったらいいのよ!」
いつもの感じにさらに強力な〔何か〕が上乗せされていて、下手な反応したらすぐ崩れそうだ。
それだけは防がなきゃ。
僕たちは朝食を済ますと学校へ向かった。
617:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/21 06:39:33
ここで力尽きてみる
618:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/21 11:22:35
乙カレー
619:DISTRESS ◆xfCLDS4d/.
09/09/21 19:28:18
なんか投下するだけしといてすいません。久々の休日なんで爆睡してました。
一応解説っぽいのをすると、今回は「ヤンデレ~なアスカ」がテーマです。
あんまり重くなんないようにしたけど結構重くなってしまいました(汗)
初投下から無茶しすぎたかも・・・
こんなうんこ作品読みたくねーお、という人はNGして下さいませ。
あと少し続くんで応援してくれる方はよろしくお願いします。
620:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/21 19:30:09
乙
ちょっと怖い上、アスカが加害行為に走るなんてありえねぇとも思うがw
続き楽しみに待ってるよ
621:猫シンジ
09/09/21 21:35:51
「明日の夏祭りに行きたい、って言われてもねぇ。アスカ、行く気なかったわけ?」
食事後、帰宅したミサトさんから身も蓋もないお言葉を戴いた僕たち。
普通は近所でお祭りがあったら行きますよねハイ。
「だってさ、夏祭りなんて何をするものかも分からないし……」
「なら教えてあげるわ。祭り…それは戦い!」
「た、戦い!?」
大袈裟だなミサトさん。確かに神輿を担ぐ人たちは戦争みたいに気合入ってるけど。
僕も子供の頃に行ったっきりだから凄い人出にビックリしたけどね。
「食料調達のため小麦粉とソースの誘惑の中、自分好みの物を選び抜き……」
普通のものなのにお祭りで食べると凄く美味しく感じるんだよね。
なんだかお腹が減ってきた。アスカも喉を鳴らしてるよ。
「そして掘り出し物を得るために数々の罠を潜り抜け、時には運に身をゆだね、勝利を掴む!」
大当たりの入っていない当たりクジや売れ残りのオモチャ、射的にヨーヨー、懐かしいな。
ドイツにはそういうのは無かったのかな?
アスカのことだから『子供っぽい』とか言って参加しなかったのかもしれないけど。
「要は少ない小遣いを効率的に使って楽しむイベントってわけね。簡単じゃん」
「ふっ。祭りの奥深さは直接参加した者でないと分からないわ……」
なんか感慨深く歴戦の勇者ぶってますねミサトさん。
浴衣を着たミサトさんより、捻り鉢巻に法被姿で酔っ払ってるミサトさんが想像できるよ。
そういえばアスカは浴衣を着るのかな? 可愛いに決まってるけどどんなかな?
「祭りの葛城と呼ばれた私が徹底的に奥義を伝授してあげるわ! と言いたい所なんだけど…」
急に口を濁したミサトさんが僕を抱き上げた。かなり情けない顔してる。
「派手にやりすぎたせいで締め出し食っちゃって、今年は運営事務局側なのよ」
「何やったのよ? それに運営って、ネルフも参加してるの?」
「当たり前じゃない。うちの主催だもの」
この街は大半がネルフ関係者で、その残りもネルフ関係者相手の仕事だ。
良くも悪くもネルフ尽くしの街なのだから当然なのかもしれない。
でもネルフって非公開組織じゃなかったっけ?
622:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/21 21:36:09
期待してるお
623:猫シンジ
09/09/21 21:36:38
「酷いわよね、見てるだけなんて拷問よ。今年はリツコたちも忙しくて参加できないから良いけど」
リツコさんも一緒に参加してたのか。どんな祭りの楽しみ方をしていたんだろう?
金魚掬いとか盆踊りとか太鼓を叩くとか巨大花火を打ち上げるとか?
どちらにせよ加持さんが苦労していそうだ。
「リツコはさっさとシンジを元に戻す研究を進めて貰わなきゃ困るわよ!」
プイッとアスカが口を尖らせて僕を奪い返した。
早く人間に戻りたいのは山々だけど、お祭りで息抜きするくらいは良いと思うんだ。
最近は猫の身体にも慣れてきたしね。
「それなんだけど、シジがエヴァに乗ったデータで一気に研究が進んだらしくてね」
「本当!? シジ、あんた天才!」
「順調に行けば来週あたりにはシンジくんを元に戻せるそうよ」
「ホント! やったねシンジ! あはははは!」
アスカは僕を高々と持ち上げて満面の笑顔を見せてくれた。
僕は人間に戻ってもこの笑顔を見ることが出来るのだろうか。
元に戻れるのは嬉しいけど、それだけが少し心配だ。
「だからね。もう直ぐシジともお別れだから、お祭りで一杯思い出を作っときなさいよ」
「え……お別れって……どういうことよミサト」
「猫のシジは消えちゃうでしょ。正確にはシンジくん無意識の中に戻るだけだけど」
「シジが消えちゃう……」
いやいや、元に戻るだけだからそんなに真剣に考えなくても。
シジは僕だし、僕はシジだし。
「ほ、ほら。そんなに深く考えないでさ! 明日はパーッと楽しんできなさいよ!」
「う、うん……そうよね」
624:猫シンジ
09/09/21 21:37:40
部屋に向かうアスカの足取りは重かった。
さっきまでの笑顔が嘘のように消えてしまっている。一体どうしちゃったんだろう?
リビングに取り残されたミサトさんが『失敗した』って感じで顔に手を当てている。
「変に情が移っちゃったわね。欠けた情操教育に良いと持ったんだけど、不味ったかな…」
そんな小声が僕の猫耳に聞こえた。
アスカのベッドの横、座布団の上に敷いたタオルケットの上で寝転がる僕。
いつの頃か僕の寝床はリビングからアスカの部屋に移されていた。
もっとも毎日ベッドの方に連れ込まれて全然使ってないんだけどね。
「あんた、消えちゃうんだってさ。シンジの無意識の中に戻るなんて勝手な言い草よね」
寝転んだアスカが僕を優しく撫でている。子守唄のように僕を撫でてくれている。
何だかとても懐かしくて、凄く安心する。お母さんみたいって言ったら怒るだろうか。
「シンジが戻ってくるのは嬉しいけど、シジともお別れか……ごめんね」
仕方ないよ。元々実験失敗の緊急処置だったんだし。
消えるって言ってもシジは僕で、僕はシジだから元気出してよ。
「ぅみゃーん……」
「あ、起こしちゃった? ごめんね。明日は美味しいもの、一杯買って上げるから」
少しだけアスカの声に元気が戻ったのが嬉しい。
まだ早いけど眠くて眠くて仕方ない。そういえば昨日は寝れなかったんだよな僕。
「たくさんたくさん楽しもうね……おやすみシジ」
僕が猫になって知ったアスカは、僕の知らないアスカだった。
天才という肩書きのせいか、いつも張り詰めたように気が強くて意地っ張りなアスカ。
でも本当は優しくて、か弱くて、寂しがり屋で、温かかった。
僕はそれを知っていたはずなのに、それを全然理解しようとしていなかったらしい。
そう、僕が猫になって知ったのはアスカのことだけじゃなかった。
<つづく?>
625:猫シンジ
09/09/21 21:40:19
今回は早いですが昨日の後半みたいなものなんで両方短いです。
アスカにシジの境遇(必要がなくなったから消される)と自分の境遇(エヴァに乗れなくなったら
価値が無くなる)をダブらせて書いていましたが、そっちで悩み始めると収拾が付かなくなるので
残念ですが全部カット。
ミサトは浴衣より法被(はっぴ)にサラシの方が似合うと思います。
626:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/21 21:42:11
乙!
アスカもシジも可愛いのう~
もうじきクライマックスか。投下待ってるよ!
627:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/21 23:18:04
太鼓を叩くのはリツコしか想像できないw
628:543
09/09/22 00:20:11
皆様こんばんわ。
ぬこシンジかわいいなあ、アスカもいじらしくて頭撫でたくなりますw
毎度毎度寸止めばっかで申し訳ありませんが続き投下いたします。
今回ちょい長いです。
自転車と長髪男と観光地価格が嫌いな方のNGワード
空を見上げて
で御願いします。
629:空を見上げて
09/09/22 00:22:13
*
さて、問題はここからだ。
駅まで自転車で行くことにしたのだけれど、当たり前のように後ろに座ろうと
すると、聞きにくそうにシンジが呟く。
「アスカ、その……」
「な、何よ?」
「色が好きだって買った自転車、まだ乗ったの見たことないんだけど?」
『来たな………』
正確に言うと乗らないのではなく乗れないなのだ。あと、これほど密着できる
いい口実はそうそうない訳で。
「そ、そりゃそうよ。このへん結構坂道あるでしょ?上り坂なんて面倒なもの
私は嫌なの」
「ちぇ、それじゃあ何で買ったんだよ」
買い物帰りの自転車屋で、シンジを無理矢理つき合わせてまじまじ眺めていた
その自転車は、まだぴかぴかなままで自転車置場に鎮座している。
『イギリス製』『限定モデル』『人気商品の人気色』『クロスバイクの入門編』
……店員の様々な殺し文句で買ってしまったものだった。今できることと言えば、
シンジやミサトに感づかれないように眺め、乗った気になってイメージを膨らま
せることくらいだ。
「まあいいじゃない、早く行こうよ」
私がシンジの腰に手を回して必要以上にギュッと捕まると、自転車は慎重に滑り
出した。
「あ、あんまり段差のある所走らないでよ!」
「わかってるってば」
なだらかな下り坂で、アスファルトを吹き抜ける熱気のある風をまともに受ける。
それでも街路樹や建物の影に入ると、空気の温度は途端に下がり、心地よい
刺激がシャツの布越しに伝わってくる。
律儀なシンジは段差がありそうにな所は避けて、通らざるを得なくなるとゆっくり
減速して通過する。
630:空を見上げて
09/09/22 00:24:38
私は思う様にシンジの背中に頭を預け、その感触を満喫した。
街路樹を通り過ぎるたびに晴れた空の光線が瞬く。強すぎる光が視界を狭めて、
何を見るわけでもなく頭の中を空白にしてゆく。
そんな油断しまくりの状況で、不意にシンジが話し掛けてきた。
「アスカ」
「何よ」
「前から思ってたんだけど」
「何をよ」
信号停車で自転車が止まると、シンジが振り返って聞く。
「その、もしかして、…………自転車、乗れないの?」
巧く隠したと思った矢先の唐突な質問に、私は固まって思わず頷いた。
それから暫く二人で静止していた。
サッカーのユニフォーム姿の子供達がこっちを怪訝そうに見ていた。
横断歩道を渡り始めた子供達の囃し立てる黄色い声を聞きながら、シンジは
地雷を踏んだと悟ったらしい。
「青」
「へ?」
「信号、変わったわよ」
シンジがもたつきながら自転車を発進させ、ぎこちなく自然さを装って更に
訊いてくる。
「あぁアスカは乗れないんなら、何で自転車買ったの?」
「あ、赤い自転車好きなのよ。……悪い?」
二人して無意味に気を使って話すのは、どうなんだろう?心なしか二人とも気の
遣いどころのピントがあってない気もするけど。
「あははは、そうなんだ。知らなかったな」
こういう時私は、物理的な何かで誤魔化すしか能がない。てなわけで、ごめんね
シンジ。えいっ!
631:空を見上げて
09/09/22 00:27:22
「ったーー!何するんだよアスカ!!」
「今、ば、馬鹿にしてたでしょ?」
「し、してないよぉ。何でそうなるんだよ」
「笑ってたじゃない!それが馬鹿にしてる証拠よ!」
「アスカ言ってることが無茶苦茶だよ」
「うるさい!」
シンジの態度は嘲笑でなく寛容だったのは解っていた。
八つ当たりの矛先を向けても、ある程度の事なら許してくれる……。
そういった見込みと甘えが逆に私を苛立たせる。
『ぐだぐだ考えながら男の背中を満喫してれば世話ないわよね……』
自嘲気味に考えながら、シンジの少し乱れた息遣いと汗ばんだ背中を感じる。
あの角を右に曲がると駅に着く。ああ、もうこの特等席も帰り道までお預けかな
としんみりしていると、かつてない衝撃がお尻を襲った。
「はぅん!ふがっ!!………」
突き抜ける痛みに言葉にならない。
「あ、ごめんアスカ!……大丈夫?」
『大丈夫なわけないでしょうが……』
出会い頭に何かを避けて歩道から車道に降りてしまったらしいことは、後で
電車の中で聞いた。
そのときは一瞬宙に浮くくらいの衝撃を食らい、シンジに抗議も出来ずその場に
蹲って動けなかった。
「アスカ……立てる?」
「ムリ。むり。ちょっと今ムリ」
632:空を見上げて
09/09/22 00:29:22
まだ目の奥に火花が散っていた。
車道と歩道の間あたりに二人してしゃがみこんでいたのだから、通行人には迷惑
この上なかったとは思う。
「これ、貸しだからね、か・し」
涙目で睨みつけ、振り絞るようにそう言うと、シンジは心底済まなさそうな顔で
困惑していた。
その代償と言うかなんというか、お陰さまで電車に乗るまでも、シンジにおんぶ
させたり背中に顔埋めて我慢したりと好き放題やらせてもらった。
ま、怪我の功名と言うことにしておこう。
……クッションか何か、今度から荷台に縛りつけとこうかな……
633:空を見上げて
09/09/22 00:31:13
*
電車から降りて観光案内所でボート乗り場の場所を聞き、頼りなげにメモ帳を
見ながらシンジが先を進む。
面白いなと思ったのは、駅を出たときはおっかなびっくりだったシンジの足取りが、
周囲の雰囲気を掴むに従ってしっかりしてきたことだった。
何の訓練もなしにエヴァを乗りこなし、しかも生活環境が一挙に変わったのに
存外飄々と生きている。シンジはそういう高い適応能力を持っているように思う。
「あ、乗り場ってあそこじゃないかな?」
軽い足取りで『貸しボートと水先案内人のアリア商会』と書かれた看板にシンジ
が歩を進める。
「アスカ……」
浮かれて振り向いて手招きするシンジに、私は溜息一つついてつまらなさそうな
顔で応じて歩き出す。
内心は、公園ではしゃいでる子犬みたいなのだけれど、バカなプライドが『子供
っぽい』だの『軽い』だのといった感情を巻き起こして本心を消し去る。
ああ嫌だ。つまらない性格だな、私は……
「乗り気じゃなかったくせに随分浮かれてるわね?」
「え?そう?」
「自覚ないの?公園ではしゃいでる子犬みたいよ。ばっかみたい」
「ボートなんて乗ったことないもん。アスカはあるの?」
「別に。乗ったことないから来たんだし」
「あ、そっか、そうだよね」
屈託のない反応を見せられるたびに、自分の反応に嫌気が募る。
簡単なことでいいから、素直に反応できないだろうか?無様なくらい考えている
事が顔に出るシンジが、羨ましくなることがある――
634:空を見上げて
09/09/22 00:32:39
「ばかシンジ、お腹すいた」
ボート乗り場の受付で料金表を見て凍りついたシンジは、あまり長く眺めて
いたいものではなかった。
どうも自分がボート代を払うものと思い込んでいるらしい。
そうでなくても短い気力が尽きかけたとき、白い壁にかかっている時計の針は
十二時前を告げようとしていた。
「そうだね、お昼にしようか」
そう答えるが早いか、多少救われた顔をしたシンジの袖を引っ張って、いったん
ボート乗り場を離れる。
暫く湖畔を歩くが、休日の行楽日和とくれば、大概の御誂え向きな場所は占拠
されていた。
「あ、そうだ」
「なに?つまんないことだったら殴るわよ」
「何で殴るの?ていうか、その、飲み物作ってくるの忘れちゃってて……」
「……」
「……」
とりあえずシンジのごまかし笑いが収まるまで放置した。そのあと多少反応に
困っているシンジの片腕を取って、体を沈み込めつつ腹部に掌底をお見舞いする。
「……吩っ!」
我ながら綺麗に体重乗せて叩き込んだものだ。
「どーすんのよ!渇いた喉でもさもさサンドイッチ食べるの?そうなの?」
「ぐ……ぃやアスカ、のみも…の買えばいぃと、思う」
『ん?買う?』
「あ、そっか」
どうも最近食べ物や飲み物が魔法みたいに自動供給される生活に慣れていて、
『食べ物を買う』感覚が薄くなっていた。ま、そうとなれば話は早いわけで、
早速売ってそうな店を探すだけだ。
635:空を見上げて
09/09/22 00:35:06
「じゃ、買いに行きましょ……って、なんで蹲ってんのよバカシンジ」
「人を殴って……それ?」
「何言ってんのよバカ。ただの掌底じゃない」
「ただじゃないよ……ごれ」
「確かにいい感じに入ったけど、アンタも受身とかいい加減覚えなさいよ。
パイロットの自覚が薄すぎるのよ」
その言葉に悶絶しながらシンジの眼は抗議の色を浮かべる。私には抗議の真意が
理解できない。
『私なにか間違った事したっけ?いや、たぶんしてない筈だけど……』
「しょうがないわねえ。ホラ、かたっぽ抱えてあげるからちゃんと歩きなさいよ」
よくわからない理由で謝る事は無いと思い、シンジの右腕をかき抱いて、自分の
体にわざとらしく密着させて立ち上がらせる。一応、サービスのつもりだ。
「いや、ぞの、休まぜで……」
苦悩の顔を浮かべてシンジが懇願する。
人が折角サービスしているのに何も気付かないとは何事だ……
『やっぱり、もう少し胸が大きくならないとサービスにならないのかな?』
シンジが全然気付かないあたり、ミサトが言っていたのはあながち間違いない
のかもしれない……。
多少落ち込みつつ、手近に見えた『Rest House』の看板に、シンジを抱えて
向かった。
何故か人のいなかったシンジをベンチに座らせて、テーブルに荷物を置くと、
私は休憩所の売店に向かった。
ノドジマンの番組をみている化石になったおじいちゃんに三回くらい声をかけて、
冷蔵庫の午後の紅茶を出してもらう。
コンビニよりも値段が高い気がしたが、そういう事は考えないようにした。
やっと復活したシンジが、少々ふくれっ面になりながらバスケットをテーブルに
広げてくれていた。
636:空を見上げて
09/09/22 00:36:38
何の気なしに見上げた先に、木陰が揺れている。
影はテーブルの上で濃淡を作り、不機嫌そうなシンジの動作をマイナス方向に
際立たせて私の視界を塞ぐ。
不安と苛立ちはすぐに私の態度と行動に出てしまう……
「なによ?」
物言いたげなシンジの眼に耐え切れなくなって、聞いてしまったのは私の方。
これが二人の喧嘩開始の合図みたいなものだ。
「飲み物忘れただけでなんであそこまでされなきゃなんないか、聞かせてくれ
ないと昼ご飯お預けだよ」
「ばっかじゃないの!?自分のミス棚に上げてなんであたしを責めるのよ?」
「用意できなかったのは悪かったけど、息が出来ないくらい殴られるミスじゃない
でしょ!」
「程度の問題じゃなくて心構えの問題だっての!」
「どう考えたってアスカ中心の考えじゃないか!何で僕が一々アスカの考えに
合わせなきゃいけないんだよ」
「この前ミサトが言ってたじゃない、『和を以って尊しナース!』って」
「それは一方的にアスカに合わせろって意味じゃないよ」
「あーもうっ!ああいえばこう言う!ケチ臭い男ねぇ!この紅茶あたしのオゴリ
って事でチャラにしなさいよ!」
ここまできたら売り言葉に買い言葉だ。打算や駆け引きは遠い世界に吹き飛んで
いた。
「何逆ギレして誤魔化してんだよ!今日と言う今日はちゃんと謝るまで許さないよ!」
「誤魔化してるのはシンジじゃない!あたしはなんっにも間違ってなんかないわよ!」
「なんだよそれ!」
「あによ!」
頭の片隅で犬や猫の縄張り争いはこんな感じなのかなと思っていたけど、
闘争本能がそんな詮索を彼方に葬り去る。
637:空を見上げて
09/09/22 00:38:50
そんな睨み合いの最中に、全く空気を読めない闖入者が割って入ってきた。
「あー、その、取り込み中申し訳ないんだけど……」
「なんですか?」
「なんだってのよ?」
二人同時で声をした方向に振り返ると、司令室でよくエアギターをしている
人がいた。
「自覚あるのか知らないけど、君達二人結構目立つんだよ。それに、中学生
と言っても、一応周囲の目線考えて行動しないと」
欧米人ばりのボディランゲージをかまして、長髪のその人は友好的な態度を
アピールする。周囲の目線?知ったことではない。
シンジが応対させられているのをいいことに、私はサンドイッチにぱくついた。
『アキバサン……だっけ?まあいいや、シンジが何とかしてくれるでしょ……
むぅ、このハムサンドおいしいな。バター二種類あったのはこういう訳か』
「あの、あ…何してるんですかここで?」
『あ、今名前思い出そうとして失敗したな……』
一人そうほくそ笑んでいたけど、かくいう私もアキバサンでよかったかどうか
自信がない。
「あ、ああ?ボク?僕が何してるかって?いやぁまいったな、こんな所見られる
なんて……」
『わざとらし。他に誰がいるってーのよ。それにしてもベーコンレタスサンドは
絶品ね。私が削ったこの黒胡椒、いい味出してるじゃないのよ』
「オフの日にはね、芦ノ湖で仲間と集まってランチがてらにセッションしてるん
だよ。あ、ちなみにジャンルはフュージョンでね、観光客のリクエストがあったら
即興で演奏したりもしてるのさ。
今日はこのテーブルに座った人に声かけるって、まあそう言うノリで演奏して
たって訳。
知らない曲のプレイはスリルがあっていいんんだよ。オーディエンスの
イメージにフィットしたときは、その場の空気が、こう……ね?客と一体に
なって作る、ライヴ感覚ってやつかな。それで仲間が増える事もあるし、あ、
別にナンパ目的じゃないから誤解しないで欲しいな……」
638:空を見上げて
09/09/22 01:04:46
人付き合いのいいシンジは「はぁ」とか「へぇ」とか「凄いですね」とかの
おべんちゃらを言っているけれど、全てに上の空と言うのは見ていてわかった。
長髪の人と応対している隙にランチボックスからサンドイッチを尚もぱくつく。
『おお!たまごサンドもおいひっ!何でコンビニのとこんなに違うの?こりゃ
お茶も進みますなあ』
セッション聞きに来いから、ライブチケットの押し売りを仕掛けてきた長髪が
鬱陶しくなってきたので、ちらちらこっちに救援の目線を送ってくるシンジを
助ける意味でも長髪を牽制することにした。
「あのぅ、私たち、デート中なんですけど……」
できるだけ上目遣いを心掛けながら、気弱そうに話を遮った。
饒舌な自己陶酔はそこでぶった切られて、寂しそうに私を見たその人は、
「あ、ごめん。お邪魔だった……よね?」
と、下を向いて他にもあれこれ言い訳しながら去っていった。
「助かったよアスカ……」
「いいってことよ」
シンジはほっとした顔をしていたが、随分中身の減ったランチボックスを見た
瞬間、信じられないといった感じで悲鳴を上げた。
「てか、もう半分食べてるじゃないか!」
「だってあの人話長いんだもん」
「ああぁぁ、カツサンド全部食べてる!」
「だって美味しいんだもん。てか、シンジまた腕上げた?」
「え?いやその、よくわかんない…けど」
うん、たまには素直に感想を言ってみるものだ。
シンジは照れてしまい、さっきまでの喧嘩もすっかり忘れてしまったみたいだ。
実際に興味があったからだけど、食べた感想を交えてサンドイッチの話で盛り
上がる。
「はは、結構アスカの好み研究してるんだよ?」
屈託なくそう言うシンジに思わず赤面した。嬉しいのは確かだけど、こういう
素直な好意に慣れていないので、どう反応していいか判らない。
639:空を見上げて
09/09/22 01:06:33
思わずまた拳に訴えて誤魔化しそうになるのをすんでの所で堪える。
『ダメだそれじゃ進歩がない!』
「………た」
「え?なに?」
「だから!あぁああもう!美味しかったからまた作ってって言ったの!」
息上げて詰め寄って血走った目ですごみながら私は何を言っているのだろう?
「う……うん、その、努力……するよ」
シンジの顔が引きつっていた。違う、私が見たかったのはこんなシンジの顔
じゃない……。
けっこう、へこんだ。
つづく!
640:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/22 01:14:23
GJ!
641:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/22 02:23:09
良作続きで嬉しい
GJです
642:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/22 06:36:33
自転車乗れないアスカ。あり得んww
643:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/22 08:03:20
GJ
アキバサンはコーネル・デュプリーとかラリー・カールトンとか好きそうだなw
644:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/22 09:05:28
素晴らしいwwwアキバサンwww
GJでした!久しぶりにほんわかした作品だ~
続き楽しみに待ってる!
645:マリン@marine
09/09/22 17:28:26
>>551の続き投下します。
・イタモノ注意
・NGワード 黄昏オレンジ
646:黄昏オレンジ
09/09/22 17:30:02
**********
―なんだろう…この彼に惹かれる感じ…昔もこんな気持ちになったことがあるような…
アスカはそう感じた―
ある日、アスカはカヲルと家でのんびりくつろいでいたのだが、その時突如地震が発生した。
発生直後からガタガタと食器棚が音をたてている。
「ん、地震だね…大きいのがくるかも…」
彼の予想通り、最初は小さかった揺れが段々大きくなった。おそらく震度4ぐらいの地震だろうか。
アタシは地震というものをあまり体験したことがなかったので、その場で怯えてしまった。
「ひっ…」
「大丈夫だよアスカ」
カヲルはアタシを優しく抱きしめてくれた。
しばらくして地震がおさまった。
647:黄昏オレンジ
09/09/22 17:31:53
男女で同じ部屋に住んでいるのに、アタシに全く手を出そうとしなかった彼。彼はアタシと同じぐらいの年に見えるのに、何も要求してこない。
これぐらいの年なら普通は少しいやらしいことぐらい求めてくるんだろう、と思っていたアタシは、なんだか微妙な感情を抱いた。
いや、求めてこないならそれに越したことはないのだが、逆にこの生活を通してアタシが彼を求めるようになってしまっていた。
そしてこの瞬間ついに、アタシはアタシ自身の欲求に耐えきれなくなった。
アタシはカヲルを求めた。カヲルが…カヲルの全てが…欲しい!
「カヲル!」
「なんだいアスカ」
「カヲルが…欲しいの!」
「いいのかい?僕なんかで」
「カヲルが…いいの!」
アタシはカヲルの赤い瞳に吸い寄せられるかのようにカヲルの顔に近づいた。2人の距離はもう10cmもないだろう。
648:黄昏オレンジ
09/09/22 17:34:35
自然と抱き合ってアタシは目を閉じ、口付けが交わされようとした…
「…ダメだよ、アスカ」
カヲルがそう嘆くと、次の瞬間、ふっとあたり一面が暗くなった。
見渡してみると、目の前にいたはずのカヲルだけでなく、誰一人周りにはいなかった。しかも何もない。私はどこからか当てられたサーチライトに照らされている。
ここは本当の暗闇の空間のようだった。
「ここは…どこ?」
649:マリン@marine
09/09/22 17:37:49
ここからちょっと長くなりそうなのでまた夜にでも投下します。
650:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/22 19:17:54
支援
ハラハラしながら待ちます
651:黄昏オレンジ
09/09/22 22:04:57
**********
「ここは…どこ?」
「…あなた、本当にそれでいいの?」
女の人の声が聞こえた。その声はかなり若かったと思う。
「誰!?だれなの?」
「私よ…」
そこには、同じくどこからか当てられているサーチライトに照らされた、蒼いショートヘアーに赤い瞳の少女がたっていた。身長はアタシと同じくらいだろうか。わりと細身だ。
「あなた…誰!?」
「…そう。あなたは記憶を無くしているんだったわね。記憶を戻してあげる」
少女はそう告げると、アタシの頭の中に様々な光景が蘇ってきた。
652:黄昏オレンジ
09/09/22 22:07:26
「…!!はっ!思い出した!アンタ…ファーストじゃない…!」
アタシはほとんど全ての記憶を取り戻した。エヴァの事も、今まで起こった事も、そして…シンジの事も。
そしてそこにいたのは紛れもなく、あの零号機パイロット、そしてファーストチルドレン、綾波レイであった。
ただ、なぜかカヲルのことだけはうまく思い出せなかった。
「そうだ、あの時の…あいつ…シンジじゃない!」
そう。あの病院で横にいたのはシンジだ。
あいつはアタシを心配してくれて…あいつのことだろう。今ごろはアタシを必死で…
ダメ!ここにいちゃいけない!早くあいつの元へ…
653:黄昏オレンジ
09/09/22 22:09:58
…いや、違う。あいつはあの時アタシを裏切ったのよ!アタシはカヲルが欲しいの!あんなやつなんか…
「セカンド…あなた…最低ね。悪いけど、あなたの考えていることは全てお見通しよ」
「えっ…」
「だから早く碇君の元に行きなさい!」
珍しくレイは怒っているようだった。そしてアタシの元に寄ってきた。
「いやよ!あんなやつなんか…」
その瞬間、バシンという大きな音が響いて、アタシの頬に痛みが走った。
654:黄昏オレンジ
09/09/22 22:11:45
「…!なにすんのよ!」
「あなたは碇君の苦しみを何一つ分かってない。それに…碇君のこと…好きじゃなかったの?」
「それは…」
「碇君はあなたのわがままをなんでもかんでも聞いてくれて、あなたのために尽くそうとした。受け入れてもらおうとした。それを私は知っているわ。
だけど、あなたはいつも碇君を責めてばっかりだった。碇君から逃げていた。
それでも、彼はあなたを選んだ。あなたと一緒にいたい事を望んだ。
カヲルに惹かれる時に思い出したでしょう?昔同じ様にあなたが碇君に惹かれていったことを。
あなたはそれを覚えているわよね?まさか忘れたなんて言わせないわ。
今だって彼は必死で探しているのに、あなたは…
それでもあなたは自分に嘘をつくの?」
一瞬いつもの癖でなにか言い返してやろうと思ったが、
レイのいつになく真剣になっている瞳を見て、レイが言った言葉が、一つ一つアタシの胸に深く突き刺さっていく。
それを全て踏まえた上で考えると、アタシはレイに返す言葉がなかった。
655:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/22 22:13:02
支援
656:黄昏オレンジ
09/09/22 22:13:42
…うん。やっぱりあいつの元に戻ろう。
あいつはこんなバカなアタシを受け入れてくれたのに、アタシはあいつを受け入れて…ない。
今ごろだって…必死に…
シンジ、ごめんね…アンタの気持ち、そしてアタシの気持ち…やっと分かったの…
アタシはその場でうずくまり、大声で泣き出してしまった。
「早く碇君の元へ…でないと…あなたは後悔するわ…」
「うん…」
アタシは決めた。どんなことがあろうと、シンジを二度と手放すもんか!
シンジは悪くない!悪いのはアタシ自身よ…ごめんね…
そしてやっと…自分の気持ちに気付くことが出来た。
ありがとう…レイ。
657:黄昏オレンジ
09/09/22 22:15:23
「わかったのならいいわ。でも…」
「でも…?」
「最後にこんなことは言いたくないけれど…」
「なによ?」
何だろう。嫌な予感がする。そして、その予感は的中してしまう。
「残念だけど、碇君には死相が出てるわ…」
その言葉を聞いてアタシは愕然とした。
「嘘よ…嘘でしょ!?嘘って言いなさいよ!ねえってば!」
「ごめんなさい…私にはどうすることも出来ないの…」
「そんな…」
あいつに会えなくなるなんて嫌!せめてあいつが死ぬ前にアタシの想いを…
「レイ!早くアタシを現実に戻して!」
「分かったわ。ごめんなさい…」
そういうとアタシは現実に戻ることが出来た。
カヲルとのキスは直前で阻止されたようだ。
658:黄昏オレンジ
09/09/22 22:17:45
「カヲル…ごめん。やっぱりアタシ、待ってる人がいるから…」
「…そうかい。わかった。じゃあ気をつけてね」
「うん…」
名残惜しい…いや、違う。あいつが…あいつが待ってるから!アタシの本当の気持ちに気付くことが出来たから!
アタシが本当に求める人は…碇シンジ!アンタだけよ!
だから…今行くからね!シンジ!
アタシは玄関を勢いよく飛び出した。
659:黄昏オレンジ
09/09/22 22:19:12
**********
「ふぅ…アスカはやっと自分の気持ちに気付いたんだね。レイ、ありがとう。
でもね、アスカ…シンジ君は残念だけどもうすぐ…
幸せにね、アスカ…そしてシンジ君…」
「…カヲル…あなたの力でどうにか出来ないの?」
「君に無理なら僕にも無理さ…運命は非情だね…」
「そうね…これ以上悔しい事はないわ…」
「うん。だから、せめて絶対に次こそは…」
「ええ…」
アスカが見えなくなった後、カヲルはどこからか現れたレイと、こう呟いたという。
660:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/22 22:23:32
投下支援
661:マリン@marine
09/09/22 22:23:36
今日はこの辺で。
次回で完結します。ただ…いや、今は言わないでおきますw
ではまた。
支援して下さってる方ありがとうございます。
662:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/22 22:27:20
びみょうすぐる
663:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/22 22:57:13
CYOUKAIを思い出した
あれもこんなんばっかだった
664:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/22 23:54:21
しかしオリジナリティがないね
こんなのネットに腐るほどあるよ
665:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/22 23:59:01
そこはまぁ、こんだけネットに溢れてれば被るのは仕方ないから言ってもしゃーない
666:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/23 00:07:22
イタモノに厳しい評価がつくのは仕方ないし、十年も続いてるジャンルだしね。
読み手は自分好み以外の作品には徹底的に辛口だからあまり気にせず頑張って。
受けるネタもいいけど書きたいネタを書くのが一番だ。
667:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/23 00:45:45
記憶喪失にした意味がカヲルに惚れさせるだけとかw
しかもあっさり治るし、カヲルでも治せたっぽいのに放置してるし・・
んで、「…ダメだよ、アスカ」 カヲルww
久々に笑えました。
668:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/23 01:20:34
乙です!次、ブルーな展開が来そうですね…。
記憶が戻ってシンジへ一直線に向かうアスカもどうなることやら。
ただ他の意見にある通り、確かにカヲルの意図がよく分からなかったですね。
何故アスカとシンジが今まで踊らされてたのか…少し謎です。
669:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/23 01:24:40
フォローするほうも大変だな
670:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/23 01:30:15
オリジナリティがないのは仕方がないけど
作品の中でのキャラの動機と行動に筋が通っていない(リアリティがない)ところが多いのは、
そうすることで何かを伝えたいはずだろうと思うんだが、
それが結局何なのか、今のところはさっぱり分からない
最後まで読んだときに、「はあ。それで?」となってしまわないように、
次回は広げに広げた風呂敷がちゃんと畳まれることを希望しておこう
671:猫シンジ
09/09/23 07:43:01
夏祭り当日。今日もいい天気だ。
「あんたバカぁーっ! 一体何考えてんの!」
とまあ朝からハイテンションなのはアスカではなくミサトさん。
なにやら気合入れてお出かけ用の洋服を着たアスカが気に入らないご様子。
「祭りといえば法被か浴衣に決まってるでしょーがっ! あー、最近の若いもんは……」
「そんなの持ってるわけなーいじゃん。ねー、シジ」
「にゃーん!」
独系米国人のアスカには無茶な注文ですよミサトさん。
そりゃあ僕だって浴衣姿とか法被姿は見たいけど、今から用意するんじゃ間に合わないよ。
「ま、どうせそんなこったろうと思ったけどね。ちょっと待ちなさいよ。もうすぐ……」
ピンポーン! ピンポーン!
「ほーら来た来たー! いらっしゃーい! 待ってたわよーん!」
何なのこのハイテンション。今朝はまだ飲んでないはずなのに。
祭りがこんなに人を変えるものだったなんて僕は知らなかったよ。
出迎えられたのは綾波だった。何か大きな紙袋を持っている。
この展開で行くと中身はやっぱり……
「これ、赤木博士から」
「サンキュー! ちゃんと三人分ね、これで勝利は貰ったも同然よ!」
何に勝つんですか何に。
案の定、紙袋からはカラフルな浴衣が出てきた。
白地に赤のネルフロゴ模様、それから青地に黄色のネルフロゴ模様の二着だ。
なんて自己主張の激しい非公開組織なんだろう。父さんの趣味だろうか?
672:猫シンジ
09/09/23 07:43:45
「あたし赤いの、もーらった!」
「じゃあレイは青い方ね」
「私は別に……」
「レイ、これは命令よ。浴衣を着て夏祭りを堪能しなさい!」
「……命令なら従います」
「何この茶番……ばっかみたい」
お祭りくらいみんなで普通に楽しもうよ。
アスカだって一人で行くより綾波と一緒の方が楽しめる、よね?
「さーて、ちゃっちゃと着付けしたげるから脱いだ脱いだ」
おおお! こ、これは思ってもいなかったサプライズ!
アスカだけでなく綾波の着替えまで………って、あれれ?
「あんたはこっち。一応シンジなんだし」
ヒョイッ……テクテク……ポイッ……ピシャッ!!
一応シンジ扱いされた僕は隣の部屋に放り込まれて襖を閉められてしまった。
くぅー、子猫の力じゃ襖は開けられないよ。
でも覗きはいけないことだから大人しく黄昏て待つさ。
うん、僕は清く正しい青少年だしね。別に着替えなんて……
「あら、レイって見た目よりおっぱい大きいのねー」
「ええー、あたしの方が大きいに決まってるじゃない……ってりゃ!」
「ひゃっ! あ、あの、その…」
「うーん、思ったよりもボリュームあるわね。肌もスベスベだし」
「どれどれ私にも……本当に凄いスベスベしてる。綺麗な肌ー!」
開け開け開け開け、ここで開かなきゃもうこんなチャンスはないんだ。
だから、開いてよ――!!!
「にゃおぉ――ん!」
………現実は非情だ。
673:猫シンジ
09/09/23 07:45:41
僕的に長い時を妄想で過ごした後、ジェリコの壁が開らかれた。
浴衣姿のアスカが僕の前でしなっとポーズを取る。
「どう? 似合うかしら」
いい! 凄くいい! 日本人とかけ離れた二人の外見に浴衣が実にマッチしていてる。
特にアスカはお転婆さが微塵も感じられないほど清楚だ。
きっと和服美人がみんな大和撫子に見えるのと同じ原理なんだろうね。にゃんにゃん。
「はいはいありがとー。あんたも着替えましょうねー」
リビングで僕を待っていたのは超小型、子猫サイズの法被だ。
前足を通してお腹で紐を結わえる。おまけに髪留め用ゴムで作った捻り鉢巻を付けて完成。
背中にはネルフのロゴが入っていた。ホント自己主張の激しい組織だね。
「きゃー、シジ可愛いー!」
「うわ、凄い破壊力。でもよくこんな物が用意できたわね」
「赤木博士が『こんなこともあろうかと前々から作って置いたのよ!』って……」
どんな事態を想定していたんだよリツコさん。呆れてものが言えないよ。
「ほらほらファースト、見て見て可愛いー! 抱いてみる? 抱いてみる?」
「え……うん………可愛い///」
「でしょでしょー! もう最高ー! 今日ばっかりはリツコの趣味を見直したわ!」
リツコさん、僕も今日は素直に感謝しときます。
女の子に引っ張りだこにされるなんて初めての経験だな。
凄く嬉しい半面、僕としてではなく猫としてばかりアスカや綾波に好かれるのが少し悔しい。
でもアスカがすっかり元気になったからいいか。
「はい二人とも、お小遣い。夜店じゃカードは使えないから計画的に」
千円札は数枚、百円五百円を大量に。ミサトさん、そこまで本格的にしなくても。
「んじゃー、私は先に車で出るから、夜道は気をつけて来なさいよ!」
「はーい!」「了解……」「にゃーん!」
準備万端! さあ、お祭りだ!
<つづく?>
674:猫シンジ
09/09/23 07:47:08
綾波を出そうか散々迷って結局投入。
小出しというか小ネタしか続かないというか。
最近LASっぽくなくなってる気がしますが多分気のせいではありませんw
675:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/23 10:15:10
つまんね。飽きた
676:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/23 10:37:40
乙です!!
677:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/23 11:47:32
投下乙。
はっぴを着た猫というと学ランを着たナメ猫を思い出すw
でも劇中のネルフグッズって本当に誰が何のために作ってたのか謎だw
ほのぼの系は小出しでも安心感があっていいや。
シリアスで短く切られるとヤキモキするけど。
678:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/23 13:03:33
GJです!
>>677
あるあるwシリアスの小出しはヤキモキするね
679:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/23 15:46:47
はしゃいでるアスカが普通の女子中学生みたいでワロタw
680:543
09/09/24 01:00:11
皆様ごきげんよう。
レスくだすった皆さんありがとうございます。前回は10レス規制に泡食い
ましたw
連休終わりましたが、多分このヘタレ気味のアスカのお話は今回含めて
あと3回に分けての投下となります。
自転車乗れないアスカってあんまし想像できませんが、訓練や演習の
毎日で、しかも優先度高いメニューが目白押し……
ってなると存外そういうこともあるかなあって思いでの設定な次第。
今回はそれ以上に「えぇーー」な感じなので、
エンジョイ・アンド・エキサイティングな作品好きな人、水際に立つと転落
しちゃう習性のあるある蝕の生き残りみたいな人向けのNGワード
空を見上げて
で、御願いします。
681:空を見上げて
09/09/24 01:01:26
*
オールを漕ぐリズミカルな音がするたびに、体はわずかに後に引っ張られる。
静かな水面に波が立ち、波紋はやがて曖昧になって水面に吸い込まれていった。
飽きもせずその様を眺めて、舷側に頬杖ついて呆けているのが心地いい。
「アスカも漕いでみる?結構楽しいよ」
「いい、めんどい」
そんな楽しそうに漕いでいるの、邪魔するなんて悪いじゃないの。
それにこうやって外で二人だけの時間を満喫するのも、そうそうある機会では
ない。
「ふぅ、ちょっと休憩」
「そんなに漕ぐの楽しい?」
「うん、乗り場のおじさんに教えてもらった通りにしたら結構巧く漕げたよ。でも
掌にマメができるかも」
「マメ?」
「ほら、普段やらないことすると掌とか足とかに水ぶくれみたいなのできるやつ」
「あぁ、アレね……」
実際何の話しか判ってなかったけど、どうでも良さそうな話だったので適当に
合わせた。
シンジの鞄を枕にして船底に寝そべる。
せり上がった舷側の向こうに広がる空を、二羽の雲雀が賑やかに横切っていった。
「結構いいもんね、ボートって」
「そうだね、湖の上から富士山見るの、凄く新鮮だな」
「日本人って、本当に富士山好きよね……」
不思議に思う以上に呆れる位に、日本人は折に触れて富士山をふと眺める。
「ただの山に何があるってのよ」
「そう言われると困るけど……今日も富士山は富士山だなって、たぶん、そんな
感じかな」
「何それ?訳わかんないわよ。山が一日二日で変わったりするわけ無いじゃない」
「そうなんだろうけど、何て言うんだろ?変わらないでずっとそこにあるから、
安心しちゃうのかも。それに、日本人なら説明抜きで判っちゃうから……かな?」
682:空を見上げて
09/09/24 01:04:03
「そんなの、私にはわかんないわよ……」
『日本人には』とか言う台詞は、私には聞きたくない類の話だ。
どことなく一線を引かれて、内輪で話しているグループに無理矢理混ざる感覚。
向こうもこっちも違和感を感じてよそよそしく気遣ったふりをする、興の乗らない
交流。
その上ドライで個人主義的な価値観が染み付いた私にすれば、気遣いだとか情緒
だとかいった話し方や接し方をされると、対応に戸惑う。
「あ、そっか。んー、アスカ日本語巧いから、なんか当たり前に話しちゃって
るのかも。でも、これ日本人じゃないとわかんない感覚なのかな?」
「一から十まで日本人の感覚よ。」
その知らない世界が不快で受け入れられないものだったら、どんなに良かったか……
閉じていた世界をこじ開けたのは、目の前のシンジとミサトだった。
広がった世界をえこひいきが掻き回し、ヒカリが私の手を引いている。
なおかつオールの漕ぎ手は、四六時中私の価値観や考え方を揺さぶり続ける。
一人でいることが当たり前だった私の世界は、一人の時間を持て余し、他人の
影を追いまわす時間が確実に増えている。
一体私は、人に構ってもらってどんなものを求めているというのか……
『やめたやめた!らしくないわねアスカ、ここはやりたいように楽しめばそれで
いい。そうじゃない?』
帽子の鍔を直しながら立ち上がり、いつもの式波アスカに戻るために一芝居
打つ事にした。
「シンジ、タイタニックごっこやろうよ」
「へ?」
いきなりの展開にシンジはついてきていない。その頓狂な顔は私の嗜虐心を
煽り、行動に駆り立てる。
「ディカプリオみたいにいいとこ見せてよ!」
「や、やめなよアスカ危ないって」
683:空を見上げて
09/09/24 01:06:54
いつもの消極的な制止と侮って、私は少し大げさにシンジを見据える。
「平気よこんなの。パイロットやってればこのくらいの平衡感覚自然に身に…」
「だからあぶな…」
慌てたシンジも腰を浮かし、あまつ私は無警戒に狭いボートを闊歩していた。
一方向に体重をかけたのがいけなかった。瞬時に小さなボートはそれでバランス
が崩れる。それをカバーしようとしてもう片方に体重移動したのも、シンジと
ほぼ同時だった。
結果はさっきよりも倍の加速度でボートの舷側が水面に近付くことになる。
姿勢が低かったせいもあり、辛うじて踏みとどまったシンジをスローモーション
で見ながら、私は水面に放り出された。
世界がひっくり返り、LCLとはまるで違う冷たい水が体を包んだ。
重力に従って沈む体を、必死にもがいて這い上がる。
掴み所なく自由の利かない。空気がない恐怖と混乱が瞬時に体を襲った。
息を吸い込もうとして思いきり水をのみこんで、私のパニックは更に悪化
する。
後ろから抱きつかれた両腕が、暗い水底に引きずり込むように錯覚して、
必死にもがいた。
「………スカ、アスカ!アスカッ!」
「やだぁぁ!…すけて、たす…て」
「アスカ落ち着いて、大丈夫、大丈夫だから…あてっ!肘撃ちやめてっ!」
何とか背中の悪魔は引き剥がしたと思ったら、今度は一人で浮いていられず
また沈みはじめた。
「…がぼっ」
半分意識が吹き飛んだ状態で誰かに体を半回転させられて、更に水を飲んだ
ときに水の中からやっと解放された。
咳き込む私の左耳に、落ち着いた大好きな声が響く。
「もう大丈夫だから!アスカ」
その声はそれまでの混乱と恐怖を、砂浜に水が染み込むように落ち着かせた。
「シン…っけん…ジ?」
「もう大丈夫だよ。大丈夫」
684:空を見上げて
09/09/24 01:09:35
この時になってやっと、悪魔はシンジだったことと、連れ去るのでなく助けて
くれていることを理解できた。
安心感はさっきまでの恐怖を一気に涙腺まで駆け抜ける。私はシンジに必死で
しがみついて、むせながらしゃくり上げた。
「アスカは何も心配しなくていいからね」
「ぅん」
「ホラ、ちゃんと掴んでると大丈夫だろ?」
「うん、だいじょ…ぇほ…ぶ」
そうやってシンジはずっと耳元で囁き続けながら、固く廻した私の腕を解いて
ボートの舷側を掴ませる。
「ここで待ってて」
解いたもう片方の手を掴んでそう言うと、シンジは私の傍から離れようとする。
「やだ、やだ、ここにいて!」
離そうとする手を必死に掴み返して、私は心の底から懇願した。
根拠のない不安がなりふり構わず私を突き動かす。意味もなく何もかも失う
という狂騒が頭の中を覆っていた。
困惑したシンジはどうしたものか逡巡していたけど、掴んだ私の手を優しく
握り返し、諭すように語りかけた。
「わかったよ……。じゃあアスカ、先にボートに上がってくれる?」
泣いて震えてしゃくり上げながら、私は頷いた。
シンジに支えられて両腕で舷側にしがみつき、不恰好に片足を掛け、やっと
の事でボートの中に転がり込む。
私は無様に泣き続け、シンジを言われるがままに引き上げると、うろたえる
シンジに構わず抱きついた。
「アス……」
「うぁ、うぁぁぁぁん……」
泣きやまない私の背中におっかなびっくりでシンジの腕が廻される。
何も考えることもせず、不思議な安心感に包まれて体重をシンジに預けた。
「だいじょうぶ、だいじょうぶ……」
耳下で囁くシンジの声は、暗示のように私の心を次第に平静に導く……
685:空を見上げて
09/09/24 01:12:08
差し出す手を優しく包む存在なんて、今まで無かった。
その優しさに救われ、癒される。
安堵と平静を取り返し、理性が回復するにしたがって、皮肉にも私は
私自身に追い詰められてしまう……
泣き止んで膝を抱えて縮こまる私を、シンジは無碍にすることなく、
桟橋に引き返すためにオールを漕ぐ。
桟橋に舟を正確に寄せて、シンジがボートから飛び移る。シンジに促さ
れて私も陸に上がり、やっと不安定な足元から解放された。
「アスカ、タオル貰う?」
「……」
水上の不安定な感覚がまだ抜き去れなくて、体が時々傾いた。
『もう沢山。もう嫌。何もかも私に構わないで!』
真っ黒な感情の塊が私を覆い尽くし、人の意見を受け入れる余裕を無く
してしまっていた。
「アス……」
「帰る」
「でも、濡れたまんまだと…」
「帰る!もう帰るの!こんなの嫌!もう沢山!帰るったら帰るの!」
感情の爆発ってこう言うものなんだろうなと思う。無様だろうとカッコ
悪かろうとどうでも良かった。ただひたすらに今の自分から逃げたかった。
後々、八つ当たりされるシンジには本当に悪いと思ったけど、この時は
全く自分をコントロールできなくなっていた。
ここで叫んでいる自分は一体誰なのか、解らない不安にただ襲われて私は
怯えていた……
686:空を見上げて
09/09/24 01:18:17
自分でもなんでここまで醜態をさらしてしまったのか理解できない。
自転車に乗れない、我侭しか言わない、好き勝手しかしない、泳げない、
その上ヘマをして泣いて縋ってばかり。
こんな情けないのは一体誰だろう?激しい自己嫌悪と無力感。けれども
こんなおバカに律儀に付き合ってくれるシンジ――
依存してしまいそうだ……
その答えが私を戦慄させる。
エヴァのパイロットになるまでの競争の日々は、他人への依存や期待を
否定する毎日だった。
心を許してはいけない。好意を素直に受け取ってはいけない。出し抜か
れてはいけない。弱みを晒してはいけない。同情してはいけない。無意味に
敵を作ってはいけない。義務に従順でなくてはいけない。期待を裏切っては
いけない……
それは大きな私の蹄鉄でもあり、私を支える力でもあった。
使徒に見え、いろんな人に出会い、私の中身は大きく変わり続ける。望む、
望まないなんて事は関係もなく。
変わってゆく私は、誰?
一番最初に望まれた姿を失ってゆく私は許されるの?
願望と猜疑、期待と恐慌が交錯する心の中を、何の打算も衒いもなく、
シンジがしっかり掴んでいる。
今、このときも、自分ひとりで積み重ねたものと、静かな顔で私の我が侭
を見つめる目が私の心の支えだった。
でも私は、二つの支えに折り合いがつけられない……
つづく!
687:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 02:50:21
>>686
GJです!こういう感じのアスカも好きだ
688:マリン@marine
09/09/24 08:35:07
>>659の続き投下します。
・完結するはず
・一部グロ描写あり
・イタモノ注意
NGワード 黄昏オレンジ
689:黄昏オレンジ
09/09/24 08:37:10
**********
…アタシは走った。必死に走った。記憶を辿って病院に戻ろうとした。
病院へ戻る途中、アタシは大きな交差点に差し掛かって、ふと先を見ると、夕陽を背にした横断歩道の向こうに…シンジはいた。
人は割と多かったが、そんなの関係なしとばかりにアタシは思い切りあいつの名前を叫んだ。
「シンジぃ!」
「…!アスカ!」
シンジ…やっと…アタシ…自分の気持ちに…
シンジは横断歩道を渡ってアタシに駆け寄ってきた。やっと…やっと…
しかし、会えた喜びもつかの間。次の瞬間アタシはどん底につき落とされることになる。
690:黄昏オレンジ
09/09/24 08:38:01
**********
アタシの目の前でドゴーンという大きな音を残して、シンジの姿は見えなくなった。
「え…シンジ…?シンジ!」
―アスカのその問い掛けに対して、シンジの返事が聞こえる事は…二度となかった―
シンジは赤信号を無視してきた4tトラックに跳ねられて30m以上飛ばされ、ドンと言う鈍い音を響かせながら…アスカがいる方の歩道に叩きつけられた。
アタシは急いでシンジに駆け寄った。…反応はない。
良く見ると、シンジの体にはすり傷が無数にあり、あちこちからどす黒い血が流れ出している。
さらに右腕は肘から先が逆に折れ曲がり、左膝の一部からは骨らしきものが見え、その左足はあからさまに折れていることが確認できた。
そんな状況の中、アタシは泣き叫びたい気持ちをなんとか抑え、平常心を保ちながら、すぐにシンジの脈拍を確認した。
脈は…かろうじてある!が、呼吸はかなり弱々しい。
691:黄昏オレンジ
09/09/24 08:41:08
偶然通りがかった通行人の1人が救急車を呼んでくれた。そして救急車がきて病院に運ばれ、シンジはすぐに集中治療室に移された。
その手術中、アタシは祈った。とにかく祈った。お願い…シンジ…死なないで…
アスカには、もうシンジを恨む気持ちなど微塵もなかった。
使徒戦の時のことも、そしてサードインパクトの時のことも、全て…忘れていた。
…それから何時間たっただろうか。何やら扉の向こうから騒がしい声が聞こえてきた。そして、ふっと手術中のランプが消えた。
その後、集中治療室からぞろぞろと数人の医師が出てきた。その顔は…皆、俯いて見えなかった。
まさか…
「あの…シンジは…」
「手は尽くしました…しかし残念ですが彼は…出血多量によりお亡くなりになりました…」
「そんな…シンジ…イヤァァァァ!」
その場でアタシは泣き崩れた。アタシは…シンジに想いを伝えることが出来なかった。
692:黄昏オレンジ
09/09/24 08:42:37
アタシがこんなバカだったばっかりに…
シンジが死んだのなら…アタシはここにいる意味はない。いっそのことアタシも…
シンジ…今すぐに想いを伝えに行くからね…どこまでも付きまとってやるんだから!
そう思ったアタシは顔を涙と鼻水でぐしゃぐしゃにしながら、無我夢中で屋上へ走った。そしてフェンスを乗り越え、シンジのあとを追うようにして…屋上から飛び降りた。
「シンジ、今そっちに行くからね…」
飛び降りた数秒後、アスカは頭から地面に叩きつけられ、その場で即死した。
―数日後、ネルフ関係者の意向により葬式は密葬で行われ、2人の遺骨は同じお墓に納められた。
2人は最悪の形ではあったが…永遠に…共に過ごせることとなった―
693:黄昏オレンジ
09/09/24 08:43:58
**********
納骨の一週間後、2人のお墓の前には、夕陽を背にお線香をあげる銀髪で赤い瞳の少年と、蒼いショートヘアーに同じく赤い瞳の少女の姿があった。
そしてその少年はこう呟いたという。
「黄昏…お別れ…か。
ごめんね…2人とも…僕の力がないばかりに…守ることが出来なかった…
だからね…これだけは絶対に約束する。
今度こそ君達だけは…幸せにしてみせるよ…」と。
もうすぐ夜が来る…
THE END
694:マリン@marine
09/09/24 08:47:37
後書き
全体的に描写が足りませんでした。後々自分で読み直したら何だかよく分からない意味不なストーリーになってました。
カヲルを出したのは最後の場面と、レイとの絡みにもっていきやすいかな、と思ってオリキャラとかよりはカヲルの方がいいと思ってカヲルにしました。
最後のは一応、新劇のこれからの展開に何かしらの希望をもって書いたつもりです。…というかこれが一番書きたかった。
イタモノは思ったよりかなり難しいですね。
まだまだ自分の努力不足でした。ROMに戻ります。つまらない上にクソですみません。
広げた風呂敷も完全には畳めなかった…
読んで下さった方ありがとうございました。
695:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 09:50:16
/|:::::::::::::::::::::ヽ.:.:.:.:、:.:.:.:、:.:.:.、.:.、.:.:.:.:.:.::`゛>
/{::|:\:::::::\.:.:.:\.:.:.ヽ::.::.ヽ:.:.ヽ::::::::::.:.`゛ー- ..,__
: 何 : /:|::',:ト、::::::ヽ、:.\:.:.:.\:.:.ヽ:.:.:\.:.:.:.:.:::.:.:.:.:::.::::_;:-'´ : : :
: が : //:/:::|::',|::'、:::::::::\:.:\.:.:.ヽ:.:.:\:.:..\::::::::::::\、::::\ : : :
: 何 : /!::|::l::::/|:::l:ヽ:\::ヽ:.:\:.:\.:::ヽ:.:.:ヽ:.:.:.:\::::::::::::\ ̄ : : :
: だ : |/l::|::|::|:ト、:::::::::、、:ヽ、:.:.:.:::::::::::::::ヽ::::.:ヽ:.:.:.:.\:.:.:.ヽ:::\. : : :
: か : |::|::/l::|::|r‐ヽ:::::ヽ(ヽー,―\::::::、::::::::::ヽ::.:.::::::.:::::::ヾ. ̄ : : :
: : }//l::|:::|{(:::)ヾ、:::ヽ \!(:::) ヽ,:::ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::::::ヾ、 : : :
: わ :. |/l::|::|:::|ヽ==''" \:ヽ、ヽ=='" |:::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ、::::\
か / ',|::|:::| / `゛ |!::::::::::::::::::::::::::::ト、::ト、_` ゛`
ら l::!::::ト、 '、 _ ||::::::::::::::::::::::::ト:ヽヾ| | ̄ ̄ ̄`ヽ、
な r'"´||',::::', |:::::/l:::::|\:::ト、ヾ | | / / \
い / ll ',::', 、 ーこニ=- /!::/ ヽ:::| ヾ、 ノ ノ / ,イ ヽ、
,' | '、:, \ -- ,. '´ |;' l ヾ、. // / | l: l
| |! ヽ; ヽ /.: i! / ゛// |l / | | |
696:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 10:20:31
>>686
乙!続き待ってる!
泳げないとは…まぁそんなアスカも有かなw
697:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 12:17:33
マリンさん乙でした!
またお待ちしとります
698:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 12:35:49
>>694
乙でした。うーん…イタいだけの内容でしたね。
切なさとかの描写が無いのが少し寂しかったかな。
アスカとシンジの絡みが少なかっですしね、次作では絡んでほしいです!
ところで前作でもシンジ君ハネられましたよね、思わず「また!?」って言ってしまいました。
699:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 12:41:46
>>694
自己陶酔作者の書くシリアスのテンプレみたいで
作者の妄想にエヴァキャラのお面をかぶった登場人物
が出ているだけな内容。
正直、登場人物にキャラクターを感じないんだが。
700:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 12:52:13
>>694 感情表現が足りない。カヲルが微妙すぐる
あと、オチがあんまり面白くなかった
次はがんばれ
701:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 13:17:02
つーか、アスカがカヲルに惚れて、シンジとアスカが絡まずに両方死ぬだけの話に、
LASとしてどんな魅力があるのか誰か教えて欲しい
702:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 13:54:46
アスカをカヲルに惚れさせたのはシンジへの思いを強調させるためだろ?
703:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 13:55:50
なんの強調にもなってないけど
まぁカヲルに惚れるアスカはLASのお約束みたいなもの
704:マリン@marine
09/09/24 14:24:54
なんかもう言葉がないです。
下手すぎて申し訳ない。
1から出直してきます。
すみません…
705:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 14:29:30
まぁそう変な風に落ち込むなw
この失敗を次に活かせばおkなのさ
新作できたらまた投下してくれな
706:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 15:02:34
>>703 お約束でもないだろ
っかカヲルとアスカが絡らむLASはつまんないと思うw
>>704 がんばれ。
707:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 15:46:15
>>703
スペック的に勝ち目の無い・普通ならこっちを選ぶだろっていうイケメンとヒロインがいい雰囲気になって、
でも最終的には主人公の男を選ぶことで、ヒロインの想いを強調したり、
男側に感情移入する読者の自尊心を満たす
これは古くからラブコメのお約束
708:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 17:45:36
けどシンジのスペックもかなり高いし、普通ならそこらにいないぐらいの男だしなあ
709:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 18:04:27
708がそう思っても、大半の書き手はそう思わないってことじゃね
710:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 18:06:37
>>706
カヲル以上にレイが絡むと大抵ろくなことにならない
下手に可哀想な扱いにするとレイ好きから怒られる
扱いをよくするとLARS寄りになって微妙な感じがしてくる
レイのキャラが崩壊してる場合が多いのもダメな点
レイを出してうまくいったLASなんてほとんどない気がする
711:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 18:22:20
>>710 そうかなぁ
レイが二人の関係をひきたてる事もあると思うよ
書き手次第だと思う
712:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 18:23:53
>>709
シンジは可愛い系だから受け身のイメージがあって、女の扱いが上手くなさそう…というのもあるんだろうね
まあカヲルが女の扱い上手いかは知らないけど、シンジを転がした前科があるしなw
713:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 18:24:02
レイもカヲルも出演は別に良いんだが
矢印を勝手に変えると違和感バリバリで大抵は駄作になるな
714:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 18:25:09
同時スタートだったら、シンジはまずカヲルには勝てないっしょ
715:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 18:27:58
>>704
何はともあれ頑張れ~
作風見てると、ほのぼのしたのの方が似合いそうですね
でも結局は自分の好きなものを書くのが一番ですねw
716:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 18:33:18
>>714 それはわからんよ
シンジは何のアプローチもしなかったのにアスカあれだぞw
717:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 18:34:48
>>712
その割には気になる子には積極的に話しかけるし一途なやつなんだよな
イメージに捕らわれすぎてる気がす
冷静にスペック並べたらシンジに勝てるやつなんてほとんどいないし
718:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 18:35:52
>>714
シンジの上位互換みたいな存在だからな
最初からカヲルがいたら勝ち目は無い
そのカヲルじゃなくてシンジを選ぶことで、
それまでに築いておいた絆の強さが強調されるっていう仕組みが一つのパターン
719:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 18:38:38
上のマリンさんのとか、米どころ氏の作品とかがそのタイプだな
720:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 18:39:33
投下待ち
721:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 18:40:01
コミュニケーションスキルのあるシンジって感じなのがカヲルだけど、ガチホモはガチでシンジが好きだしなぁ
しかも、シンジ以外には変なやつ扱いされてる
書き手にとっての便利屋なのは間違いないが…
722:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 18:42:41
>ガチでシンジが好き
だからまぁ、もしシンジじゃなくてアスカに親切にしたら・・・ orz
という場合の妄想として生まれるんだろうな
723:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 18:44:42
でも最初からカヲルがいたら持ってかれるって点に関しては、別にアスカじゃなくても同じだべ
レイとかだってあっちに行ってカヲルハーレムになるだけ
724:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 18:51:02
それは無いだろw
シンジを過小評価しすぎ
725:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 18:55:35
ていうかカヲルがチートすぎ
726:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 18:58:03
シンジと似たアスカならカヲル効果は効くと思うが、レイは違うだろ
ミサトもうさんくさがってたし
727:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 18:59:52
他の男が絡むのは肉体関係なければ許容範囲だけど、カヲルが絡むのは違和感ありすぎてな
シンジよりアスカを選ぶってのが想像つかないし
728:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 19:03:10
そう言ったらカヲル効果はミサトにも効くでしょ
矛先がシンジだから胡散臭いヤツと感じる
アスカの場合も同じくだと思うがな
729:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 19:04:35
>>726
女の子といってもレイは特殊だから参考にならないわな
730:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 19:07:15
LASの間じゃカヲルってどういうキャラだと思われてんの?
個人的にはアニメキャラとしての人気は高くても実際にモテるとも思わないんだが
だって明らか変なひとだろ(アンチじゃない)
731:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 19:08:16
>>730
少なくともシリアスなFF見る限り、一般的な魅力においてシンジが勝てる相手じゃない
とは思われてる
732:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 19:09:58
それ別にLAS限定でもないだろ
LASだけに押し付けられても困る
733:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 19:11:26
やっぱりシンジはアスカと釣り合わないって思ってる部分がLAS人の中であるんじゃないか
シンジアンチじゃないよ
734:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 19:12:20
釣り合うとか…考えた事もないがw
735:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 19:14:17
いや、正直に言えば、イメージとしてあるのは事実でしょ
少なくとも、LASを書いてる人達の間では浸透してると思う
おすLASスレで人気が高い作品や作家だってそうだし
736:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 19:15:51
LMSではミサトに加持が
LRSではレイにゲンドウが
LASではアスカにカヲルが
適当な恋敵役として絡む
まあ冷静に考えれば何でカヲル???って不思議だけど
737:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 19:16:08
それお前の中だけの話だろw
スペックとか関係ないし、ましてや中学生にw
738:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 19:16:52
実はアスカがシンジに釣り合わないと言う
739:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 19:17:52
上二つと違って本編の絡み無いのになw
アスカ>シンジってのがまずあって、じゃあアスカに釣り合う男が登場するという想像が広がって、
そこでカヲル≧アスカ>シンジってのもあるからカヲルが使われる
という感じじゃなかろうか
740:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 19:18:58
>>737
「アスカ シンジ 釣り合い」とかで検索してみれば分かる
勝手に言ってるわけじゃなくて、事実そういうLASが多いよというだけ
741:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 19:19:35
LAS好きって
この2人の掛け合いとかが好きなんじゃないの?
テレビ版中期の頃とかがさ
外見的な問題とかでも無いでしょ。
ましてやそういう意味で釣り合いとか俺も考えた事も無い
742:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 19:23:03
>>736
シンジが転がされたみたいに、カヲルだとアスカが簡単に転がされそうってイメージがあるからでは
743:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 19:23:20
と・・・投下待ちだぜ?
744:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 19:28:46
>>695-743
黙って投下を待つのだ馬鹿者が!
745:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 19:31:05
>>742
いや、冷静に考えるとカヲルがシンジから女を寝取る訳ねーじゃんって意味で
746:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 19:34:15
そこは「カヲルがアスカに目を向けたら」のifってことじゃね
所詮二次創作だし、オリジナルな部分に文句言っても仕方ないし
だから投下待とうぜ
747:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 19:48:20
カヲルがホモだから助かってるのはどのカプも同じ
748:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 20:05:21
シンジさんならカヲルなんて小指ひとつで
749:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 20:08:45
>>747
それこそやっぱシンジを過小評価してるとしか
シンジはカヲルにはかなわないっつう前提があるんだろな
750:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 20:10:58
カヲルに優しくされても他の男選びそうなのって、
女王ユイさんしか思いつかぬ
751:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 20:11:20
男にして包み込むような母性を感じるからな
シンジを過小評価とかではなく、あれは別物
752:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 20:12:33
ここ小説投下スレだよね?
753:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 20:13:57
です
754:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 20:32:06
>>749
それは仕方ないつーか、LAS小説内ですら客観評価では敵わないのがデフォだしな
ギャグホモ化してるのを除けば、その逆なんて見たこともない
ま、どうせ本編ではガチホモだからアスカに手は出さんよ
755:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 21:18:53
シンジがしょぼいなんてのは暗黙の了解だから
わざわざ言うことでもない
756:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 21:20:44
冷静になれ
本人に自身が無いだけで、かなりのハイスペックだぞ>シンジ
757:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 21:33:41
755のはただのアンチシンジだろjk・・・
しょぼいと解してるSS作家が多いことや、
ましてやカヲルと女奪い合ったら本来絶対勝てないと思われてるからこそ
かえって当て馬や寝取り役にカヲルが使われるのも、
それはそれで事実だろうけど
758:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 21:46:25
どこがハイスペックなんだよ
それにシンジが一番気持ち悪いところは性格だからな
あんなネクラがもてるわけないだろ
759:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 21:47:18
な?言ったとおりだったろ
760:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 21:52:44
なんでトウケツがこんなところにまでw
761:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 22:15:00
まあでもLASの主流を見てるとシンジがショボイと思われてるのは間違いない
762:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 22:22:53
LASでショボイのはアスカじゃないの?
763:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 22:29:06
LAS小説ってシンジがアスカにふられて
「僕が全面的に悪かったんだ!」みたいなのばっかじゃん
しょぼいと思ってなかったらこの扱いは無いわな
764:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 22:55:29
今さっきこのスレで自分を追い込んで自殺しちゃうアスカの話を見たとこなんだけどね
そもそもフラれてたらLASじゃないしね
765:三つの願い
09/09/24 23:10:36
何となく思いついたので書いてみたんで、空気を読まずに投下するぜ。
カヲルとマリが登場するLASが嫌いな方は
NGワード:三つの願い
766:三つの願い
09/09/24 23:11:25
よくよく考えれば、事の発端は帰り道で拾った妙な眼鏡だった。
「何でこんなの拾ってきちゃったんだろ?」
値打ち物とも思えない古ぼけた赤縁地眼鏡。
何故か部屋まで持って帰ってきた上に磨いてしまったのが間違いだった。
キュッキュッキュッ……ボワワワーン!!
「呼ばれて飛び出てジャジャジャ―……ごふっ!」
何だか変なのが出てきたので驚いて反射的にボディーブローを入れた。
チェックのスカートに夏服のようなシャツ、長髪に赤眼鏡で全長30cmほどのよく出来た人形。
またリツコが変な発明でもして捨てたのか? それとも新種の使徒か?
私は眉を潜めてベッドの上で悶絶しているソレに問いかけた。
「あんた何よ?」
「ま、迷える子羊の願いを叶える天使マリイラストリアスエルちゃんでーす!!」
思わず窓から投げ捨てたくなるほど胡散臭い笑顔だ。
「眼鏡の封印を解いてくれたお礼に三つの願いを叶えてあげちゃうよー!」
「出、て、け!」
「うわ、即答? そこは空気読もうよ。つーかちゃんと三つ叶えないと私も困るんだってば」
「ノルマをこなさないと次の犠牲者の所へ行けないってヤツ?」
「そう、それ」
そうかそうか犠牲者か。
「あっそう。勝手に困ってなさいよ」
下も確認せずに窓から投げ捨てた。春先でもないけど常夏だとああいうのが増えて困る。
「そう言わないでさ。魔法の理論の力『マリ力(―ちから)』で恋の願いもバッチリよん」
「はっ、バカバカしい……」
ここで少し窓から這い上がってきたコイツに興味を持ってしまったのが失敗だった。
767:三つの願い
09/09/24 23:12:07
「だったらバカシンジにす……『好きだ』とか『愛してる』とか言わせて見なさいよ」
くだらないと思いつつ、絶対にアイツが言いそうにないことを指定してみた。
本当は心のどこかにそういう言葉を言わせたいという願望があったのかもしれない。
「お安い御用のパーペキじゃん。アカマキナミアオマキナミキマキナミ~~」
マリイラストリアスエル(面倒なので以下マリ)がブツブツと妖しげな呪文を唱え始めた。
どこからか取り出したステッキを振りながら人形サイズで踊っている姿は中々可愛い。
「――ガイナッタッチでバカシンジに『好きだ』とか『愛してる』とか言わせちゃえー!!」
「バカ、声が大きい!!」
「大丈夫大丈夫。私の姿は業界関係者か犠牲者にしか見えないから」
そういう問題じゃない! 好きとか愛してるとか恥ずかしい事を声に出すなっての!
全くデリカシーの無い。こんな奴、やっぱ信用なんてできるわけ―
コンコン……
『アスカ、ちょっといい?』
にゃんですとー!? いや待て私。そろそろ夕飯だと呼びに来ただけに違いない。
こんなマリ力とか願い事なんて現実に起こる分けないでしょ。自然体、自然体。
大急ぎでメイクと服の乱れをチェック、良し! 深呼吸、スーハースーハー……
「な、何かしら」
「アスカ、好きだとか愛してる……」
「ななななに言ってんのよ急に!!!!!」
ええと、これはつまり、あれね。あああああ愛の告白といやつなのではわわわわ。
静まれ私の心臓、落ち着け私。これは当然の結果であってむしろ遅すぎたくらいで―
「とかってドイツ語でなんて言うか教えて欲しいんだ。英語だとライクとラブだよね?」
「は……?」
シンジの手にクロスワードパズルの本を目視で確認。
そんなこったろうと思ったけど。寿命が一年は縮まったわよ!! この胸のトキメキを返せ!!
「自分で調べなさいよ!! このバカシンジッ!!」
と怒鳴りながらも独和辞典を叩きつけてビンタ2発で許してあげた。私ってホント優しいわ。
768:三つの願い
09/09/24 23:12:51
「うふぷぷぷ。どう? 好きとだか愛してるとか言って貰えたでしょ?」
ベッドの上でマリが腹を抱えて大爆笑している。
あんまりお腹が痛そうなので肘を鳩尾に落として笑いを止めてやった。
笑い過ぎでも死ぬことってあるのよ。
「と、とにかく私のマリ力が本物だって分かったでしょ? さあ次の願い事カモーン!」
「まあ、それは認めてやるけどさ」
さて本当に願い事が叶うとして後二つ。急に言われても思いつかないわよね。
美貌? もう十分あるし。これ以上美人になったら逆に困っちゃう。
お金? あんまり使い道思いつかないな。それに将来、仕事とかやる気なくなりそう。
世界征服? あたしなら普通に出来るし。エヴァがあれば十分だし。
シンジ? ここでまた言うとコイツにガッついてるように思われるから嫌だな。
うーん。他に何があるかな。そうだ!
「弐号機をパワーアップさせてよ。初号機の暴走みたいにババーンと強くなる奴。出来る?」
「心配御無用お安い御用、アカマキナミアオマキナミキマキナミ~~!!!」
ふふふ。これで名実ともに私がネルフのエース!
今まで対使徒戦績がよくないのは先行量産タイプ故の一点特化が無かったからよ。
ファーストどころかシンジよりも強くなっちゃいそう。
「―ビーストタッチで初号機の暴走みたいにババーンと強くなっちゃえー!! ほい完了!」
「本当に強くなったの?」
「なってるって。裏コード、ホニャララを入力するとねババーンとね……」
「ふむふむ……」
「代償として角が生えちゃったけどね。クワガタ(♀)みたいなチッコイ奴が」
「ええー、カッコ悪いー。せめて大クワガタ(♂)がいいー」
「じゃあ、それを三つ目の願いにする?」
「しない! チッコイ角でいい」
どうせなら最後の願いはシッカリ考えないとね。
769:三つの願い
09/09/24 23:13:46
「―ってあれ? あんた大きくなってない?」
最初は30cmサイズだったマリはいつの間にか1mサイズになっていた。
冷静に考えたらさっきエルボードロップした時も60cmくらいあったかもしれない。
「封印が解けて来てる証拠だね。次でキミより背が高くなるんじゃない?」
人形サイズにされていたのか。どうせろくでもない事をしたんだろうな。
「さあ最後の願いは何? 張り切って叶えちゃうよ!」
私が考え抜いた願い。それは―
「ママを生き返らせて! あたしは優しいママと一緒に暮らしたい!」
「お安い御用劇場用、アカマキナミアオマキナミキマキナミ~~!!!」
本当に……ママが生き返るの? 私に優しくしてくれるの?
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ………
一体なんの音よこれ?」
「世界が終わる音。滅亡まで後1パート13分って所かな、ハイ、ここでアイキャッチ!」
NeonGenesisEvangelion:Wish has been fulfilled
「ど、どういうことよ!?」
「キミが選んだんだよ。この世界の終わりをね」
「嘘よ? だって私はただママを―」
「死んだ人間がさぁー。生き返るわけなーいじゃーん」
あんたバカァとでも言いたげにマリは嫌みったらしく私の顔を覗き込んだ。
「そ、それなら三つ目の願い事は叶ってないじゃない!」
そうよ、私は世界の終わりなんて願っていない!
「叶うさ。この世界は終局を迎えてリセット、別の世界でキミはママと幸せな暮らしをするさ」
マリ、あんた何を言ってるの? 仮にも天使じゃなかったの?。
気がつけばマリには真っ黒なカラスのような羽、先の尖った黒い尻尾、鋭い角が生えていた。
「堕天使魔鬼波(マキナミ)とでも呼んでもらおうかニャ、夜露死苦!」
何なんだこいつは―っ!
770:三つの願い
09/09/24 23:15:37
天が裂けて血のような赤い空が広がり、地が波のように唸りをあげている。
まさか本当に世界の終わりが来るって言うの?
「世界滅亡まで後10分。死ぬ前に彼に告白でもしとく? 次の世界でもまた出会えるけどさ」
ニヤニヤ笑いにムカついてハイキックを出したが軽く避けられてしまった。
大体こいつは何故こんなに落ち着いていられるのよ?
「滅亡したらあんただって死んじゃうでしょ!」
「んんー、私にとっては生も死も等価値って奴だから。お子様には難しいかニャー」
よく分からないけどこいつは平気らしい。
「却下よ却下! 三つ目の願いは取り消し! 願い事で世界滅亡を無しにして!」
「それはダーメ。もう願い事は残ってなーいの。べろべろばぁー!」
遠くでビルが倒壊して巻き込まれた人々の悲鳴が聞こえてきた。
次々と十字架型の光の柱が広がっていく。
「何とかしてよ! あんたなら出来るんでしょ!」
「そりゃ出来なくはないよー。でもここからはギブアンドテイクじゃなきゃねー?」
そう言ってマリはいやらしい目で私を見回した。
「ギブアンドテイク…?」
「世界滅亡を止めるってんだから代償が必要さ。分かりやすく言うと悪魔に魂を売るってこと」
しまった。最初からこれが目的だったんだコイツ。
私は騙されたんだ。こんな小悪魔にあっさりと。
「くんくん。いい匂い。思った通り極上の魂だね。うふふふふ」
そのニヤニヤ笑いをやめろ!
でも今も滅亡に向かって悲鳴は増え続いている。ここで私が何とかしないと本当に―
「す、好きにすればいいでしょ!」
観念して私はドカッと座り込んだ。なんで私がこんな目にと思うと涙が溢れてくる。
もっと素直に生きればよかった。もっと言いたいこともやりたいことも一杯あったのに。
771:三つの願い
09/09/24 23:16:20
「じゃー。まずは新世界での出番を貰おうか。たーっぷりある出番を全部ね」
「よく分からないけど勝手に持って来なさいよ」
マリは舌で唇を何度も舐めながら奇妙な本に何かを書き込んでいく。
新世界がなんだかよく分からないけど、そんなことで世界が救われるのなら安いものだ。
「あはは、これで新世界に惣流・アスカ・ラングレーは『存在しない』ね!」
「どういうこと?」
「みんなが生まれ変わる中、キミだけ仲間外れ。キミの場所に私が入るのさ」
「そんな……」
「そうそう、弐号機も貰っとこうかな。くれるんでしょー。世界の為に」
「くっ……好きに乗りなさいよ」
「サンキュー、気前の良い人って大好きだよ私。チュっ!」
いちいち人を小馬鹿にした態度が癇に障る。我慢、我慢だ私。
「じゃあ最後に、キミのわんこ君を貰っちゃうかなー」
「わんこ君?」
「バカシンジって呼んでたっけ? 好きなんでしょ、彼。取引は大事なものじゃないとね」
どこからか取り出したシンジの写真に投げキッスをしている。
ふざけるな! こいつは! こいつだけは! 世界が滅んでもこの場で殺してやる!
殺してやる! 殺してやる! 殺してやる! 殺してやる! 殺してやる! 殺してやる!
殺してやる! 殺してやる! 殺してやる! 殺してやる! 殺してやる! 殺してやる!
殺してやる! 殺してやる! 殺してやる! 殺してやる! 殺してやる! 殺してやる!
772:三つの願い
09/09/24 23:19:32
バタン―ッ!!!!
「ごめんアスカ、入るよ!?」
突然ドアが勢いよく開いた。何事かと思うほど凄い勢い。
同時に聞こえた気の抜けるような声が発する安心感とともに私の殺気はゴミ箱に捨てられた。
制服の上からエプロンをしたシンジが部屋を覗いている。
まさか私を心配して様子を見に来てくれたんだろうか?
いや待て、現在進行形で世界が滅亡しているのに美味しそうなカレーの匂いが―?
「真希波……だね。全く、相変わらずだな」
シンジの後ろから銀髪の少年が顔を出した。シンジの友達だろうか。始めてみる顔だ。
二人が部屋に入り、そこからドアを閉めるとペラペラになったマリがハラリと倒れ落ちた。
それは風に乗り、窓の外へと飛んでいく。
「また会おう明智君! ふははははは!」
ペラペラのまま妙な高笑いをするマリに、銀髪が赤い二又フォークのような物を投げつけた。
マリはそれにスパゲティのように巻き取られて、そのまま一緒に虚空へと消えてしまった。
ふと気が付いて周囲を見回すといつも通りの風景が広がっている。
「何なのよ一体? それに世界が滅亡するって……」
「幻覚だよ。ただしこの世界の未来で、実際に起こる滅亡時の風景だけどね」
よく分からないけど、この騒ぎで怪我した人は誰もいないんだ。
そう思うと途端に足から力が抜けて、その場にへたり込んだ。
「後は人の欲望に付け込んで世界に干渉する程度でしかないさ。何か取引したものはある?」
取引したものって言われても新世界での出番とやらはともかく、弐号機が!
私はカクカクシカジカで取引内容を説明した。
「そいつは不味いな。取引した『もの』は取り返すのは難しいんだ」
「じゃあ、弐号機は……」
「カヲル君、何とかならないの?」
「こっちの世界の分はシンジ君の願いで相殺されているはずなんだけど、新世界の方がね」
シンジの願い? じゃあこの銀髪も天使だか堕天使だかなの?
773:三つの願い
09/09/24 23:21:41
「まあいいか。えーと惣流さんだっけ? 新世界では別の名前で生まれてくればいいさ」
「……カヲル君、僕はキミが何を言っているのかサッパリ分からないよ」
私もサッパリ。でもまあ別の世界のことなんて知ったこっちゃないし。
「それよりも弐号機を何とかしてよ!」
「うーん。シンジ君の願いがあれだったからキミ、もう乗ることはないんじゃないかな?」
「だから意味が分からないわよ!」
「平和になるってことさ」
全くノラリクラリと。こいつも優しそうな振りして私たちを騙そうとしてるんじゃないの?
「とにかくシンジ君。キミの最後の願い『アスカと仲直りしたい』は叶えたからね」
はぁ? このバカシンジはそんなことの為に願い事を使ったわけ?
あまりのバカバカしさに呆れて物が言えないわよ。
まったく、この、ばか。
「か、カヲル君! アスカの前で言うなんて酷いよ!」
「あははは。仲良くしなよ。バイバイ」
爽やかな笑顔を残してカヲルと呼ばれた銀髪は空へと消えていった。
その頃。今でない時、ここでないどこか。
「エヴァシリーズ、完成していたのにゃー? って無理! 無理だから!
止めて長いヤリ止めて! 刺さる、奥まで刺さってATフィールド避けちゃうー!
二本とか入らないから! ろんぎぬす入らないから 全員でなんてもっとだめ! アーッ!
らめぇ、食べちゃらめぇ! ぴんく色の中身みちゃらめぇ! ひっぱっちゃだめにゃ――!!!!!!!!」
774:三つの願い
09/09/24 23:22:43
「なんか変な一日だったね」
そう、思う出すだけでも本当に変な一日だった。
「まったくよ。そういえばシンジ。あんた他の願い事は何に使ったの? 教えなさいよ」
「えーと、アスカと綾波がエヴァに乗って怪我しませんようにって」
「それ、自分は含めてないの?」
「あ、忘れてた。あははは」
こいつはどこまでマイペースなのよ。もう少し男らしい欲望はないわけ? 世界征服とか!
「もう一つの願いは? あんたも三つだったんでしょ!」
「そ、それは、実はさ……」
おお、何か言い難そうな願い事を頼んだのかしら。
「買物でニンジン、買い忘れちゃってさ。出して貰った」
「あんたバカぁー!!! 貴重な願い事をなんだと思ってんのよー!!!」
「本物だとは思わなかったんだよ! そんなに言うならアスカの願いはどんなのさ!」
「あ、あたしは……//// どうだって良いでしょ!」
「ズルイよそんなの! どうせアスカだって詰まらないことに使ったくせに」
「つ、詰まらない事とは何よ! 大体あんたがそんなだからね―」
今日も第三新東京市は平和だった。
「ヘルプ! ヘルプにゃーっ!!!!」
775:三つの願い
09/09/24 23:25:42
ネタの発端は帰り道で突如思いついた「アカマキナミアオマキナミキマキナミ~」のフレーズ。
少しLASとしては強引な気もしますが箸休め程度に。
サブタイトルをドイツ語でやろうとしたら機種依存文字になったので断念。
グーグル独語辞書に「NeonGenesis」が「新世紀エヴァンゲリオン」と登録されてて吹いたw
776:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/24 23:47:18
面白かったよ。早口言葉のもじりは吹いたw
777:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/25 05:30:20
おもしろいな。所で、マリは人外なんだろうか?
778:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/25 06:58:39
面白い!!GJ!!
779:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/25 07:55:35
GJ!
電車内で笑ってしまったw
780:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/25 08:32:19
無欲過ぎなシンジの願い事に和んだ。
それとマリの凄さを再認識した。
いじめっ子でも悪魔でもペラペラのペッチャンコになって高笑いしても違和感ないとか異常w
781:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/25 09:39:05
面白いなあ。また投下してほしいです
782:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/25 13:13:39
>>754
アスカがマナに勝てないようなもんか?
783:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/25 15:16:45
それは素直さの問題だけだから違う
784:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/25 16:06:36
>>783
まあ、そう言ってもいいけど、
「マナはアスカに勝てるキャラとして(素直であるという点も含めて)作られたキャラだから」
ということだよね。
我々が実際にマナとアスカのどちらに魅力を感じるか、ということはあんまり関係なくて。
シンジとカヲルの話もそれと同じでしょ、っていうことだと思うんだけど。
785:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/25 16:19:46
マナは素直な好意を演技してるキャラなんだし、表面的な印象で勝てないのは仕方ない。
育成とかだと地の性格になってるけど。
第一印象だけなら内向的な子や攻撃的ツンデレより、爽やか君や明るい演技の方が有利なのは事実。
786:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/25 16:56:42
シンジだってカヲルにスペック面で劣ってるわけじゃなくて、あくまで性格の話だもんな
787:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/25 17:14:50
二次におけるシンジのそれはまた違うだろ
788:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/25 17:35:46
なんとしてもシンジをおとしめようとしてるお前らって、
なんでLASやってるの?
789:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/25 17:36:40
そーいうLASを書いてる人達に聞いてちょ
790:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/25 18:45:29
持論だが簡単にまとめてみた
A:客観的評価:内向的だが高スペックかつ天然で家庭的なモテモテくん。
いつも人に好かれたいと思っているくせに実際に好かれていることには鈍感。
B:シンジの主観評価:気弱な低スペックのつまらない男。
いつも人に好かれたいと思っているけど上手くいかず嫌われてばかり。
C:アスカの主観評価:Aと知りながらもハッキリ自分になびかない間はBとして見下している。
欲しいけど、手に入らないのなら「Bだから欲しくない」と思い込みたい。
結論:必要以上にシンジを低く見る人達はそれだけキャラに感情移入しているとも解釈できる。
つまり世界は滅亡する!
791:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/25 18:49:54
そうだね。ノストラダムスだね。
792:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/25 18:52:35
二次のシンジ低スペック描写は時期的にEOEの演出あたりにだまされてるだけじゃねーの
793:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/25 18:53:26
てかもういいよこの話題
794:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/25 19:05:50
>>775
コメント見るまでただの早口言葉だと思っていたよ>赤真希波青真希波黄真希波なのねw
やはりカヲルは「君が何を言ってるのか~」される立場が似合ってる。
こういうお馬鹿なノリは大好きだぜ。
795:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/25 22:58:18
アスカはマナもだがレイにも勝てない
映画でも証明されてしまった
796:543
09/09/26 00:28:06
皆様こんばんわ。
相変わらずの内容で続き投下いたします。
セカンドランの上映劇場、数が半端ないですねえ。期間はどのくらいかわかり
ませんが、新劇のインパクトは素直に嬉しいですねw
今回は短いです。そんで次で終了は予定通りと思います。
それでは、いじけアスカや躾の出来てない子供が嫌いな人向けのNGワードは
空を見上げて
で、御願い致します。
797:空を見上げて
09/09/26 00:30:19
*
ホームに着いた頃になって、私は周りの目線が気になりだした。濡れ鼠の
二人を指差して、あからさまに失笑を浴びせるカップルもいる。
無責任な視線が体中に突き刺さり、自分の全てを否定されている気がした。
堪え切れずに、シンジの腕を強く抱きしめる。
「アスカ、大丈夫?」
「ん、だいじょぶ」
心が折れて立て直せない。辛うじて踏みとどまっているのはシンジがいた
からだ。
そのシンジもかなり神経質になって廻りを見回す。自分の恥ずかしさもある
のだろうけれど、横で小さくなっている私を気遣ってくれているみたいだった。
御殿場行きの電車が静かにホームに滑り込み、電車に乗り込むとドアの脇
の席にシンジは無言で座った。
「イス…」
「なに?」
言いかけた私を不機嫌そうにシンジが遮る。
こんな状況じゃイスが濡れるんじゃないか……それを言葉に出来なかった。
ドアの脇の一人分空いた所に私も腰掛ける。とてもじゃないけど廻りを見る
余裕なんてない。
好奇心に駆られた子供がこっちに走って来て無遠慮に私とシンジを覗き込み、
母親の所に帰ると面白そうに報告している。
ちらっと見たその母親は、連れの友人と子供に「やめなさい」とか言いつつ、
口元に失笑が浮かんでいた。
『さいあくだこんなの。もうやだ。もう消えちゃいたい……』
今すぐ帰るとわがまま言った結果がこれだ。今更後悔しても遅かった。
ぎゅっと握ったシンジの手の上に、涙が落ちる。シンジは無言だ。
その母親が堪えきれずに声を出して笑った瞬間、シンジは突如立ち上がって、
私が今まで聞いたことのない激昂ぶりで叫んだ。
「笑うなぁぁ!」
狂った獣みたいにいきり立つシンジの様に車内が凍りついた。
798:空を見上げて
09/09/26 00:33:30
直視する勇気を持てなかった私は、必死にシンジの左腕を掴んで席に戻す。
どすんと音を立ててシンジは席に座ったけれど、眼の中に宿る怒りは
ひとつも鎮まっていない。
「私は大丈夫だから……だから、……ね?」
八つ当たりめいたシンジの眼光がこっちに注がれた。瞬間私は目をそらす。
その私の態度にシンジがはっとして、引き戻した腕に絡む私の手を、自由な
方の掌でぐっと掴む。
「ごめん。大きな声だして……」
「いいよ、別に」
凍りついた車内の空気が更に居心地を悪くしていた。
そんな押し潰されそうな空気の中で、斜め向かいに座っていた人がこっちに
来る。
「あの、これどうぞ」
「……あ、どうも、ありがとぅ……」
「芦ノ湖で落ちたの?大変ね」
高校生くらいの女の人が、タオルをシンジに渡してくれた。
小柄で地味な感じの人だった。でも、眼は真っ直ぐで澄んでいて、一緒にいる
だけで、人の心を軽くする雰囲気を持っていた。
「タオルあげることないじゃないか……」
「でもケイちゃん、あの子達困ってそうだったから…」
「……そっか、タエちゃんは優しいな」
席に戻ったさっきの女の人が、彼氏らしい男と仲良さそうに話しているのが
聞こえる。多少彼氏がべたべたしすぎな気がするけど、素直にうらやましいなと
思った。
『いいな、あんなふうになれたらいいな……』
二人がこっちを向いたとき、シンジと頭を下げる。
微笑み返す二人に、心の底から安堵をさせてもらった。
「いい人もいるんだね」
「うん…」
全身ずぶぬれの二人にタオル一枚では何の解決にもならないのだけれど、
たったこれだけの親切でシンジの顔から険が消え、私の中に燻ぶる弱気の虫が
小さくなった。
799:空を見上げて
09/09/26 00:35:33
人の優しさは、他の人に伝染するもの……
男にのぼせ上げた女性士官が、よく自慢がてらに聞かせてくれたのをふと思い
出した。
もらったタオルは、早速シンジが私の頭に被せる。自分ひとりで使う訳には
いかないという抗議の目線は、『これでいいんだよ』という物静かな目に撃退
された。
そんな顔されたら、照れて直視できなくなってしまう……
いつの間に、シンジと私の間の空気はピンク色になっている。
タオルをくれたカップルの人たちは一駅前で降りた。通りすがりに女の人
と私は目線が絡む。タオルの向こうに、優しい目をしたその人の微笑みが
あった。自然に頬が緩み、控えめに目礼した。
シンジは連れの男の人と同じように目で会話している。細い顎が男の人を
しぜんに追っていた。
「いい人たちね……」
「そうだね」
あと一駅という気楽さと、電車のお客なんてどうせ二度と会う事無い人たち
だと思えるようになると、今の自分の格好なんてどうでも良くなってきた。
肩に頭を預けると、シンジも繋いだ手に指を絡めて来てそれに答える。
心の底から、蕩けてしまいそうな時間。
実際都合がいいものだなと自分の事を嘲笑いながら、私は存分にそのひと時を
味わって過ごした。
つづく!
800:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/26 04:49:19 l9oXutl7
人のセックスを笑うなぁぁ
801:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/26 12:35:14
ぐううじょぶ!
802:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/09/26 19:28:05
イイですね~続き待ってます!
803:DISTRESS ◆xfCLDS4d/.
09/09/27 00:22:11
>>616 続きです
朝日が眩しい。今日は快晴って天気予報でやってたっけ。
まったく神様は僕の気持ちなんておかまいなしだな。
そんな幼稚な事を考えてる間にもアスカはカバンをぷらぷらさせながら僕の二歩ぐらい先をどんどん歩いていく。
さっきの事。夢だと思いたい。
まさかアスカがあんな事すると思わなかった。人を殺そうとする事。
そして何より他人のために自分も死のうとしたこと。
本気だったんだろうか?
またいつもの様に逃げて聞かない手もある。でも、これを聞かない限り前には進めないと思う。
本気で好きになれない。
逃げちゃだめだ
「あ、アスカ」
「何よ?」
「昨日の夜、さ、あの・・・その・・・」
「何よ!はっきりしなさいよ!」
「・・・昨日の夜本当に僕の事こ、殺す気だったの?」
「・・・さぁ、わかんない」
わかんないって。本当に何考えてんだ?
「・・・でもね、あのナイフは偽物よ」
「え?」
「あれの刃の部分、ただの銀紙でまかれたチョコなのよ」
うそだろ・・・ 僕はあんな物に踊らされていたなんて。
「冗談で・・・あんな事するなんて酷いよ!一体何考えてんだよ?」
しまった。今のアスカにはきつい物だったかも。