落ち着いてLRS小説を投下するスレ7at EVA
落ち着いてLRS小説を投下するスレ7 - 暇つぶし2ch650: ◆IE6Fz3VBJU
09/09/28 01:31:59
「……ついてくるな」
犬に人間の言葉通じるわけがない。馬鹿げたことをしてる、とレイは思った。もっともそれを言うならこうやって犬を助けたこと自体が馬鹿げている。
いったい私は何をしているのだろう?
今日は馬鹿なことしかしない日のようだった。
犬から目を逸らすと、また歩きはじめる。
柔らかい足音から、犬が後をついてくるのが分かった。
今度は廃屋のような、レイだけが住民のマンションの前まで振り返らなかった。
「……蹴るよ?」
レイはサッカーボールを蹴るときのように、右足を後方に跳ね上げた。その姿勢のまま数秒とまる。バランス感覚が発達しているのか、微動だにしない。
仔犬は脅しなどものともせず、同じように微動だにせずレイを見つめている。
「ちっ」
舌打ちすると、跳ね上げた足を思い切り地面に叩きつけた。
アスファルトと靴底から生まれた、やや甲高い、鞭を打つような音に仔犬はびくりと身体を震わせる。
レイはふんと鼻で笑うと、階段を上りだした。
自分の部屋の前まで来ると、ドアノブに手をかけて考える。
犬が後をついてきているのは見ないでも分かっていた。
このまま素早く部屋に入って放って置けば、犬はどこかに行ってしまうだろう。それで仕舞いだ。
今日は馬鹿なことしかしていないのだから、最後ぐらいはまともな行動を取らないといけない。
私は馬鹿ではないのだから。
碇シンジに馬鹿にされるような人間ではないのだから。
レイはドアを見つめながら言った。
「あなた、ひとり……?」
仔犬が、くーんと鳴いた。
「そう。私と同じね。私も……」
レイはドアに額を押し付けた。ひんやりとした感触が心地良かった。
―私も、ひとり。
しばらくそのままでいた。
それからレイは、愚行続きの今日のなかでも、とびっきりの馬鹿げたことをした。
ドアを開けると、仔犬に向かってこう言ったのだ。
「おいで」

(続く)


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