LAS小説投下総合スレ17at EVA
LAS小説投下総合スレ17 - 暇つぶし2ch218:パッチン
09/06/06 20:20:30
「はぁ…!はぁ…!はぁ…!」

誰かが怖かった。他人が怖かった。
だから逃げたんだ。
どこまで走ったかわからないぐらい走って、心臓が信じられないほどのスピードで鳴る。
苦しい…。

「はぁ…!はぁ…!はぁ…!…うぁっ!!」

何度も転びそうになりながら走った。
そして結局転ぶ。
周りにはビルが建ち並んでいる。誰もいないスクランブル交差点のど真ん中だった。

「はぁ…!はぁ…!・・・うぅぅ」

止まった瞬間から汗が吹き出して、ブルブルと全身が震える。
どんなに逃げても、怖くて怖くてたまらなくって、僕は地面で縮こまる。

「うあ…うあ…ああああああああああああああああ!!!!」
ィィンッ!!

叫んだ瞬間、音にならない音が響き、僕の周りの景色が…変わった。

顔を上げた僕は、一瞬何が起こったかわからなかった。
けど、周りに並んでいたビルの一部であろうコンクリートが遠くにとんでいく様子が小さく見えた時、何となくわかったんだ。

周辺の建物が全て紙屑のように吹き飛ばされた。

僕が叫んだ瞬間、周りの物全てが僕によって消された。

そして僕は一気に見通しのよくなった都会の真ん中で、呆然とするしかなかった。

219:パッチン
09/06/06 20:23:05


「やだな…最近この夢ばかり見てる」
目が覚めた僕は暗い部屋の中、体を起こして布団の上で膝を抱える。
さっき見た夢は、夢だけど現実の話。
3年ほど前の確かな現実だ。

サードインパクトが起きた日、赤い海から戻った僕の体には『いらない力』が宿ったらしい。

膝を抱えていた両手を前にかざし、軽く心で念じる。
ーィンッ!
すると僕の目の前に現れる六角形の心の壁。

そう、あの時周りのビル群を吹き飛ばした力は、僕が発した強力な『ATフィールド』
そしてそれは、僕の体に宿ったいらない力の正体でもあった。

あの後、動けなくなっていた僕はネルフ職員の人に保護され、ネルフの施設で検査を受けた。
色々な科学者の人が、とっかえひっかえに僕を調べたけどもATフィールドについての明確な結論は出なかった。

でも僕は…あの時感情が爆発して、暴発するように現れた巨大なATフィールドが怖くてたまらなかった。
僕が誰かを傷つけることにも繋がるそれが怖くてたまらなかったんだ。

誰かを傷つけるのは嫌だ。
でも僕はいつか誰かを憎んでしまう。
だからきっと僕はいつか誰かを殺してしまいそうで…

だから…誰にも会うことがとてつもなく怖くなる。

220:パッチン
09/06/06 20:26:12
嫌な気分を流したくて、僕はシャワー室にむかう。

この部屋は過去に命令違反をした時入った、ネルフ内の拘留所を少し改装した場所でシャワー室は設置されている。

体を綺麗にするこの時間は嫌いじゃない。
「命の洗濯か…」
ミサトさんは還ってこれたのかな。
結局僕が知ってる帰還者はアスカしかいない。

・・・アスカはよく来てくれる。
僕がこの部屋に入って2年ほどの時、急にひょっこり面会に来た。

『久しぶりねバカシンジ。色々あったけど、そんなのも踏まえて来てやったわよ』

よく意味のわからないセリフと共に現れたアスカは、それからは周1ペースでここに足を運でくる。ノリはいつも軽めだ。
最も僕を憎んいた人間だったアスカが、僕の前で昔の頃のように振る舞ったのがあまりに意外だった。
もちろん何故かという理由なんてきかないし、誰が赤い海から還ってきたかもきけない。
いつもアスカに一方的に喋ってもらうばかりだ。

「ふぅ…」
タオルで体を拭いながらシャワー室から出た僕は、着なれたジャージに袖を通して、いつものようにベッドのよこになる。

ああもういっそ自殺してしまおうか…。

何千回考えたその言葉は、結局言葉の域を越えずに終わっている。

今日も明日も僕は…何事もなく生きていく…。

221:パッチン
09/06/06 20:27:20
久しぶりに書きまして、続きます。
シンジ君の大切な日に暗い話でごめんなさいw

222:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/06/06 20:38:27
いえいえGJ
続き期待してまっせ。

223:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/06/06 21:19:23
おお、パッチン氏こっちに来てたか。いつも乙

224:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/06/07 00:42:42
乙かれです。
続き超期待しております。

225:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/06/07 00:55:49
GJ!
アスカの内面も気になる


226:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/06/07 08:29:02
投下キテタ!乙乙

227:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/06/08 22:07:00
なんで2chのLAS作家は、大した分量でもないのに、間を開けるの?
ストーリーを最後まで考えてないの?
住人の反応見て、方向性を変えるの?

228:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/06/08 22:57:36
>227
作家さんそれぞれ色んな理由があると
思いますが、パッチンさんはきちんと書いて
くれます。続き期待してます。

229:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/06/10 15:44:55
>>227
投下自体が面倒臭くなって……という不届き者も居るよ


俺の事だが


230:パッチン
09/06/13 23:02:46
『もしもし、碇シンジさん?』
「・・・はい」
『惣流アスカラングレーさんが面会に参りました』
「・・・寝てるって言って下さい」
『少々お待ち下さい』
ぷつっ・・・
『伝えます「だから起きてんでしょバカシンジ、さっさと来なさい」…とのことです』
「・・・体調が良くないから無理です」
『少々お待ち下さい』
ぷつっ・・・
『伝えます「アンタたまには違う言い訳考えなさいよ。早く出ないと、この場所バズーカで…』
「・・・もういいです、行きます」



「あのさ、結婚すんのよねアタシ…」
面会室にやって来た僕を待っていたアスカは、いつもとは違う俯き加減な姿勢で、そう話を切り出した。
「結婚…?」
「うん、結婚するの。悪い?」
キョトンとする僕にむかってアスカは更に続ける。
「アンタには言ってなかったけどさぁ、前からずっと同棲してる奴がいてね。
もうそろそろ一緒になろうかな~って…」
確かに僕は面会室の外のアスカのことなんて、これっぽっちも知らなかった。
「同棲なんかしてたんだ…」
「まあね、けっこう前からよ。初めてアンタの面会に来た日より、ずっと前から」

僕の中にいた今までのアスカが別人に変化していく気がした。

231:パッチン
09/06/13 23:03:57
「いつ…?」
「一週間後に式あげるわ。ホテルとかじゃなくて教会であげんのよ」
少し笑みをこぼしてそう言ったアスカは一枚の手紙を鞄から取り出す。
「これに式あげる場所書いてあるわ。職員の人に渡すよう言っとくから後で読んでよ」
「・・・僕行かないよ?」
「はぁ…。わかってるわよ、ただ万が一来たくなった時のため」

先日割ったガラス越しに見えるアスカは、いつものような押しがなく、どこか落ち着いた感じに見える。

「でさぁ、アタシもうここに来れなくなると思うのよ」
「・・・・・」
「シンジの所に行こうとすると、『あんな奴になんか会うな』っていつも言われて喧嘩になんのよ」
「・・・相手の人って僕のこと知ってるの?」
「んーまあね。で、結婚もするし喧嘩のタネになるようなことアタシもしたくないしさ…」

俯き加減で申し訳なさそうに喋るアスカ。
僕のことなんか気にしなくてもいいのに。

「最初はね、アンタがここから出るまで粘ってやろうって決めてたんだけど、アンタも頑固だし。
何よりアタシがアタシの幸せ見つけて、その幸せを逃がしたくなくってね♪」

232:パッチン
09/06/13 23:06:02
はにかんで言ったアスカはとても満足そうな表情を浮かべる。
「うん、それでいいと思う。僕のことなんか心配しないでいいから」
「ふふ、おあいにく様。もうアンタの顔なんか思い出したりしないから!」
小さく舌を出したアスカは席を立ち、帰り支度を始める。

「・・・相手の人って誰なの?」
「来たら教えたげるわ」
「その人のこと…好き?」
「世界で二番目かしらね」
「一番は加持さん…?」
「さぁ?誰かしら」

支度を終えたアスカは背をむけて、部屋の扉に手をかける。
『これで最後…』そう思った瞬間、僕は無意識のうちに声を上げていた。
「あ、アスカ…!」
「…なに?」
「・・・あ…。幸せに…ね?」

「・・・・・ばか」

とっさに呼びかけた僕にアスカは、そう言い残し部屋から出ていった。
一人取り残された僕はその扉をボーっと見つめている。

・・・もう二度と会うこともないんだろうか。

さよなら。幸せにねアスカ。

その後、なんだかグルグルと締め付けられるような胸を押さえ、僕はフラフラと部屋に戻っていった。



233:パッチン
09/06/13 23:07:42
「はぁ…」
夕食と共に届けられた手紙を指で弄びながら、小さくため息。
急に聞いたアスカが誰かと結婚するということ。
そしてアスカがもう僕と会わないと言ったこと。
色々な気持ちが駆け巡るけど、この気持ちはどういう名前で呼ぶものなんだろう。

とにかく、ただただキモチワルイ。

「ふぅ…」
ベッドに仰向けに寝転び、再び小さくため息。
アスカは誰と結婚するんだろう?僕のことを知ってる人で、僕のことを嫌ってる…。
・・・思い当たるふしなんて山ほどある。
だってみんな僕のことなんか嫌いなはずだ。
結局トウジには謝れなかったし、ケンスケとは喧嘩別れしたようなもの。
カヲル君は…手の感触が未だに覚えている。ごめんよカヲル君…。

気付くと僕は泣いていた。
何年かぶりの涙だった。

色んなことで頭が破裂しそうだ。
もうアスカに会えないと思うと…
アスカが誰かと結ばれると思うと…
僕が今まで傷つけた人達のことを思い出すと…

そんな思いで胸が締め付けられるたびに、目の前の『勝手に現れたATフィールド』が、より生き生きと僕を照らす。

この心の壁は、僕を何から守ろうとしているのだろう。

234:パッチン
09/06/13 23:09:36
「でも・・・本当は僕が一番望んだことなんだよね」
ポツリとそう呟く。
もともと僕は誰にも会わない人生を送るためにこの部屋に入って、
アスカがここに来るようになったことは僕にとって完全にイレギュラーなことだ。
いつも僕なんかのせいでアスカに迷惑かけていた。
でもそんなアスカがもう会いにこなくなる。
僕なんかに気を使わないと言ってくれた。
しかもアスカは結婚して幸せになる。

・・・全て素晴らしいことなのに、再び思い返せば更に胸が痛いのは何でだろう。
ふと僕はもう一度手紙に目を移す。

・・・行けばこの気持ちの正体がわかるのかな…。

この部屋を出て、招待された結婚式に出向くことが頭をよぎる。
・・・誰かに会うのは怖いけど。遠くから見るだけなら大丈夫かな…
何より今までわざわざ来てくれたアスカに出来ることといえばこれくらいしかない。

「・・・うん、行こう。これを最後に」

でもどうやって教会まで行こう。車も電車も使えな…!

思った瞬間、目の前でぼんやり揺れていたATフィールドが僕を包んで…
「うわっ…!」

そのまま僕はフワリと宙に浮いてしまった。

「・・・・・はぁ…。空まで飛べちゃうなんて…本当に化け物だね」

235:パッチン
09/06/13 23:13:07
今回ここまでです
>>227
すいません書くの遅いんです。1日1レス分を目安にやってますw
前回投下分も誕生日ギリギリに書き上げたんで、書きためも出来なくて…(言い訳ばっかり)

破の公開までには終わると思います

236:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/06/13 23:28:49
乙かれです。
この先の展開マジで楽しみにしております。

237:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/06/14 00:08:23
>>235
書き上がってから、うpすれば良くね?

238:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/06/14 01:14:40
>235
乙乙
アホはスルーでOKよ


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