09/02/17 00:24:16
「ふっ。いいねえ、君たちは。女の子の話で盛り上がれてさ」
割り込んできたのはケンスケだった。
「あ~あ。俺なんか寂しいよ、ホントに」と言いながら、わざとらしく横目で僕たちを見る。
トウジが少しひるみながら「何のことか分からんわ」とごにょごにょ言って誤魔化した。
僕はこちらに火の粉が降りかかる前に視聴覚室に入ってしまおうと急いで―驚いて飛び上がりそうになった。
横から来ていた彼女―綾波レイとぶつかりそうになったのだ。思わず夢のことを思い出していた。
「あ。ど、どうぞお先に」
僕は一歩後ろに下がって言った。
彼女の存在にまったく気がつかなった。僕がぼーっとしてたのもあるかも知れないけど、気配を感じられなかったのが原因だと思う。
「ありがとう」と、転校生が呟くように言い、視聴覚室に入っていった。その場の空気が少し下がった気がした。
あれ?
僕はあることが気になって、トウジ、ケンスケの顔を順番に見たあと、ケンスケにたずねた。
「彼女、ありがとうの後に何か言わなかった? 小声で何か言ったような気がしたんだけど」
「ああ、言ったよ。聞こえなかった?」
「うん。何て言ったの?」
ケンスケは眼鏡を外し、埃がついてないかチェックしながら言った。
「"ありがとう、サードチルドレン"」